ハイブリッドテクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハイブリッドテクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のハイブリッドテクノロジーズは、日本とベトナムのリソースを融合した「ハイブリッド型サービス」によるソフトウェア開発を展開しています。今期はM&A等により事業領域を拡大しましたが、ベトナム拠点の再編や本社移転費用等が響き、売上収益は前期比3.5%減、営業利益は同73.3%減の減収減益となりました。


※本記事は、株式会社ハイブリッドテクノロジーズの有価証券報告書(第10期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ハイブリッドテクノロジーズってどんな会社?


同社は、日本人のプロジェクト管理能力とベトナムの豊富なIT人材を組み合わせた「ハイブリッド型サービス」を提供する開発企業です。

(1) 会社概要


同社は2016年、ハイブリッド型サービスの提供を目的に設立されました。2017年にはベトナムに子会社を設立し、開発体制を強化しています。2021年12月に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしました。その後、2023年のハイブリッドテックエージェントの子会社化などM&Aを推進し、2025年10月にはエアトリが同社の親会社となっています。

連結従業員数は408名、単体では49名体制です。筆頭株主は創業時からの親会社である投資会社Soltec Investments Pte. Ltd.で、第2位は事業提携先であり親会社のエアトリです。第3位には同社取締役会長であり創業者のチャン バン ミン氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
Soltec Investments Pte. Ltd. 34.51%
エアトリ 27.19%
チャン バン ミン 4.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は平川和真氏が務めています。社外取締役比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
平川 和真 代表取締役社長 監査法人、Evolable Asiaなどを経て2018年に同社入社。管理部長、取締役CFO等を歴任し、2024年12月より現職。
チャン バン ミン 取締役会長海外事業管掌 ベトナム出身。FPTなどを経て2016年に同社を設立し代表取締役社長に就任。2024年12月より現職。
窪田 陽介 取締役経営企画部管理部法務部管掌 リクルート、エボラブルアジア(現エアトリ)を経て2019年に同社入社。営業部長、取締役COO等を歴任し、2024年12月より現職。
衣笠 嘉展 取締役開発本部管掌 ヤフー、グリー、タレンティオ取締役CTO、ネクストビート執行役員CTO等を経て同社入社。取締役CTOを経て2024年12月より現職。
濱本 剛史 取締役投資戦略部財務経理部管掌 マイナビを経て2022年に同社入社。執行役員経営企画部長を経て、2024年12月より現職。
閏間 莉央 取締役事業創造本部管掌 LifeAnd設立、Blaboを経てWur代表取締役に就任(現任)。2024年12月より同社取締役(現任)。


社外取締役は、森保守(元SBIイー・トレード証券資本市場部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ハイブリッド型サービス」事業を展開しています。

(1) ストックサービス


顧客のプロジェクトに対し、準委任契約や人材派遣契約に基づいて開発工程を担う人材のリソースを提供しています。成果物の納品ではなくチームの稼働に応じて料金が発生するため、顧客の予算や市場動向に合わせて開発体制を柔軟に調整できる点が特徴です。

収益は、提供した人員の稼働に応じたサービス料を顧客から受け取るモデルです。運営は主に同社および子会社のハイブリッドテックエージェント等が担っており、日本人のプロジェクトマネージャーとベトナムのIT人材を組み合わせた体制を提供しています。

(2) フローサービス


開発期間や料金、プロダクトの詳細を事前に確定させ、請負契約に基づいてシステム開発を行い、成果物を納品するサービスです。要件定義から実装までを一気通貫で行います。完了時期や費用の見通しが立てやすい一方、仕様変更への柔軟性はストックサービスに比べ限定的です。

収益は、開発した成果物を顧客に納品することで発生します。運営は同社のほか、新潟を拠点にWeb・アプリ制作を行うドコドア株式会社などが担当しており、同社の連結化に伴いフローサービスの売上比率が高まっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第6期から第9期にかけて売上収益は順調に拡大してきましたが、第10期は微減となりました。利益面では第7期をピークに減少傾向にあり、第10期はベトナム拠点の再編やM&A関連費用、本社移転に伴う減損損失などの計上が響き、税引前損失となりました。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上収益 17億円 24億円 29億円 31億円 30億円
税引前利益 1.1億円 3.1億円 1.9億円 1.0億円 -0.1億円
利益率(%) 6.2% 12.9% 6.5% 3.1% -0.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.8億円 2.5億円 1.6億円 0.5億円 0.2億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると売上収益は3.5%の減少にとどまりましたが、営業利益は73.3%の大幅な減益となりました。これはM&Aによる事業規模拡大に伴い販管費が増加したことや、本社移転等に関連する一時的な費用が発生したことが主な要因です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上収益 31億円 30億円
売上総利益 10億円 10億円
売上総利益率(%) 19.0% 33.7%
営業利益 1.1億円 0.3億円
営業利益率(%) 3.5% 1.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.3億円(構成比13%)、役員報酬が1.0億円(同10%)を占めています。また、売上原価においては、従業員および役員に対する給付費用が19億円(売上原価の95%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


ストックサービスは、一部既存案件の終了や縮小の影響を受け、売上が減少しました。一方、フローサービスは、ドコドア株式会社の連結子会社化などが寄与し、売上が大幅に増加しました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
ストックサービス 28億円 26億円
フローサービス 3.4億円 4.7億円
連結(合計) 31億円 30億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 3.6億円 0.1億円
投資CF -3.0億円 -5.4億円
財務CF 0.1億円 0.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは常に発展途上であり、顧客と共に成長し続けます。」をミッションに掲げています。また、「New View With You」をビジョンとし、株主、従業員、顧客をはじめとした全てのステークホルダーと共に新しい景色を創造することを目指しています。

(2) 企業文化


ベトナムが持つ成長への熱量をエネルギー源とし、その熱量で日本企業が抱える課題を解決することを重視しています。常に発展途上であるという意識を持ち、日本とベトナムを融合させ、ビジネスとテクノロジーの両面から顧客のDXを推進する姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営の安定と戦略達成のための基盤として、売上収益の過半を占める「ストックサービス」の維持・拡大を最重要目標としています。その達成状況を測る指標として、「ストックサービス件数」と「ストックサービス単価」を設定しています。また、2026年9月期からはフローサービスの比率向上を見込み、新たな管理指標を追加する方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


「開発対応領域の拡大」「ソリューションの拡大」「マーケットの拡大」の3軸で成長を図ります。具体的には、上流工程やコンサルティング領域への進出、M&Aを通じたインフラ構築等の技術獲得、そしてベトナム国内市場の開拓を推進します。特にベトナム企業のNGSC社を子会社化することで、グローバルな事業展開を加速させる計画です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、ベトナムの豊富なIT人材を活用し、日本へのリソース供給力を高めることを強みとしています。ベトナムでの産学連携や高い知名度を活かし、34,000人以上の候補者リストを保有しています。日本国内においても、M&Aを含めた施策により、都市部だけでなく地方でも優秀な人材の獲得と育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 36.2歳 3.7年 5,721,501円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が小さい等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ベトナムへの依存リスク


同社グループの開発業務はベトナム子会社が中核を担っています。そのため、ベトナムでの人件費高騰や法改正、税制優遇の見直しなどが生じ、オフショア開発拠点としての優位性が低下した場合、同社グループの事業展開や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材獲得競争の激化


事業拡大には人材の確保・育成が不可欠です。同社はリファラル採用や産学連携などの施策を講じていますが、採用が計画通りに進まない場合や人材流出により育成が滞った場合、開発力やコスト競争力が低下し、失注や利益率の悪化を招く可能性があります。

(3) 特定顧客への依存


2025年9月期において、売上収益の42.4%を上位5社が占めており、特定顧客への依存度が高い状況です。新規顧客開拓により依存度を下げる取り組みを進めていますが、これらが想定通りに進まず、主要顧客の業績等の影響を受けた場合、同社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。

(4) 親会社グループとの関係


2025年10月よりエアトリが同社の親会社となりました。現時点で事業の競合等は想定されていませんが、将来的にエアトリグループの事業戦略や同社の位置付けに変更が生じた場合、またはエアトリグループへの取引依存度が相対的に高まった場合、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。