※本記事は、マイクロアド の有価証券報告書(第19期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. マイクロアドってどんな会社?
データとテクノロジーを活用したマーケティングプラットフォーム事業を展開し、独自のデータ基盤を強みとする企業です。
■(1) 会社概要
同社は2007年にサイバーエージェントの100%子会社として設立されました。2011年にDSPサービスの提供を開始し、2016年には現在の主力であるデータプラットフォーム「UNIVERSE」を始動させました。2022年に東証グロース市場へ上場を果たし、2024年にはUNCOVER TRUTHを子会社化するなど、事業拡大を続けています。
現在の従業員数は連結391名、単体246名です。筆頭株主は事業会社であるサイバーエージェントで、第2位は資産管理会社と思われるSWAY、第3位は金融機関のSBI証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| サイバーエージェント | 48.86% |
| SWAY | 5.67% |
| SBI証券 | 2.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長執行役員は渡辺 健太郎氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡辺 健太郎 | 代表取締役社長執行役員 | 1999年サイバーエージェント入社。同社アメーバ事業本部本部長、取締役等を経て、2007年7月より現職。 |
| 田中 宏幸 | 取締役副社長執行役員 | 2004年サイバーエージェント入社。ブログクリック事業部マネージャー等を経て、2007年7月より現職。 |
| 榎原 良樹 | 取締役副社長執行役員 | 三井住友銀行、サイバーエージェントを経て、2011年同社入社。執行役員等を経て、2022年10月より現職。 |
社外取締役は、森光 直代(SMBC日興証券)、谷地舘 望(セレス取締役)、宮沢 奈央(エスプール取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「データプラットフォーム事業」の単一セグメントで事業を展開していますが、サービスの内容により以下の2つに分類されます。
■(1) データプロダクトサービス
自社開発したデータプラットフォーム「UNIVERSE」やデジタルサイネージサービスを提供しています。顧客はマーケティング課題を持つ企業全般です。外部データを活用して消費者の行動特性を分析し、最適な広告配信やマーケティング支援を行います。
収益は主に、自社開発プロダクトの販売や利用に伴う広告配信料等から得ており、収穫逓増型のビジネスモデルです。運営はマイクロアド本体のほか、デジタルサイネージ領域では持分法適用会社のMADS等が担っています。
■(2) コンサルティングサービス
メディア企業向けの収益最大化支援や、海外市場向けのデジタルマーケティング支援を行っています。顧客はインターネットメディア企業や、海外進出・インバウンド対策を行う日系企業などです。
収益は、メディア収益の一部をプラットフォーム利用料として受け取るほか、他社広告サービスの代理販売手数料などから得ており、労働集約的なモデルです。運営はマイクロアド本体のほか、エンハンスやMicroAd Taiwanなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は117億円から157億円へと順調に拡大傾向にあります。経常利益は変動があるものの、直近では5.3億円と前期比で大幅に回復しました。利益率は一桁台前半から中盤で推移しており、データプロダクトサービスの成長により収益性の向上が図られています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 117億円 | 122億円 | 129億円 | 137億円 | 157億円 |
| 経常利益 | 1.5億円 | 5.9億円 | 7.4億円 | 2.9億円 | 5.3億円 |
| 利益率(%) | 1.3% | 4.8% | 5.7% | 2.1% | 3.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.4億円 | 5.0億円 | 5.7億円 | 2.8億円 | 2.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。営業利益は前期の3.1億円から6.1億円へと倍増しており、本業の収益力が強化されていることがわかります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 137億円 | 157億円 |
| 売上総利益 | 41億円 | 48億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.8% | 30.7% |
| 営業利益 | 3.1億円 | 6.1億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が20億円(構成比48%)を占めています。
■(3) セグメント収益
サービス別の売上高を見ると、データプロダクトサービス、コンサルティングサービスともに増収となりました。特にコンサルティングサービスはインバウンド需要の回復等を背景に大きく伸長しています。データプロダクトサービスも営業体制の強化等により堅調に推移しました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| データプロダクトサービス | 68億円 | 70億円 |
| コンサルティングサービス | 69億円 | 87億円 |
| 連結(合計) | 137億円 | 157億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、本業で稼いだ現金に加え、借入等の資金調達も行いながら投資を進める「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.4億円 | 7.8億円 |
| 投資CF | -18.1億円 | -11.5億円 |
| 財務CF | 10.0億円 | 1.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%でグロース市場平均(2.9%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.2%で同市場非製造業平均(43.3%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Redesigning The Future Life」というビジョンを掲げています。データとテクノロジーの力によってマーケティングを変革し、人々の生活をより良いものに、より充実したものにすることを目指して事業を展開しています。
■(2) 企業文化
デジタル社会の到来により変化・多様化する消費者の購買行動に対し、様々なデータとAIによる独自の分析基盤で対応することを使命としています。また、健全なデータ活用によるプライバシー保護にも配慮しつつ、社員の安全と心身の健康を守り、働き甲斐のある職場環境を確保することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は継続的な企業価値向上のため、売上高と営業利益の成長を重視しています。特に主力サービスである「UNIVERSE」の拡大においては、「稼働アカウント数(発注件数)」を重要な経営指標として設定しています。
* 稼働アカウント数:8,222件(前年同期比121.3%)
■(4) 成長戦略と重点施策
「UNIVERSE」の売上拡大に向け、データ契約数の増加や新たな業界業種向けプロダクトの開発を推進しています。また、生成AI等を活用した業務効率化や、インバウンド需要を取り込んだ海外コンサルティングサービスの強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業拡大を実現するため、優秀な人材の採用と育成、および長期的な定着を不可欠と考えています。中途・新卒の積極採用に加え、心理的安全性を重視した社内コミュニケーション、教育制度の充実、個々の能力開発に取り組み、高い生産性を発揮できる組織体制の構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 31.5歳 | 5.7年 | 6,650,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.4% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット広告市場の変動
主要な事業対象であるインターネット広告市場は景気動向の影響を受けやすい傾向があります。特定の業界に依存しないよう努めていますが、景気悪化に伴い広告主が予算を削減した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新への対応
インターネット関連技術は革新のスピードが速く、新たなサービスが次々と生まれています。同社が技術革新への対応に遅れた場合、サービスの陳腐化や競争力の低下を招く恐れがあります。また、既存システムの改良や新規開発のための追加投資が必要となる場合があります。
■(3) データ規制とプライバシー保護
事業において消費者の行動データを活用していますが、個人情報保護法やCookie規制などの影響を受けます。法令遵守体制を整えていますが、将来的な規制強化やプラットフォーム事業者(OS・ブラウザ等)による仕様変更によっては、サービスの見直しが必要となり、業績に影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。