AViC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AViC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のAViCは、インターネット広告やSEOコンサルティングなどのデジタルマーケティング事業を展開する企業です。2025年9月期の連結業績は、M&Aや大型顧客の開拓が奏功し、売上高27億円(前期比38.6%増)、経常利益7億円(同65.5%増)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社AViC の有価証券報告書(第13期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AViCってどんな会社?


インターネット広告の運用代行やSEOコンサルティング等のデジタルマーケティングサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社の前身は2013年に設立されましたが、2018年3月に現代表の市原氏が就任し、現社名への変更とデジタルマーケティング事業を開始したことで実質的な創業を迎えました。同年9月にSEOコンサルティングを開始し、2022年6月に東証グロース市場へ上場しました。2025年5月にはSNSマーケティングを行うリアレーションを完全子会社化するなど、事業拡大を進めています。

2025年9月30日時点で、連結従業員数は91名、単体では72名です。大株主は、代表取締役社長である市原氏の資産管理を行う投資事業組合が筆頭株主であり、第2位は創業関係者の投資事業組合、第3位は信託銀行となっています。経営陣が主要株主として名を連ねるオーナー経営の側面を持ちます。

氏名 持株比率
市原創吾・ミダス投資事業有限責任組合 34.40%
岩田匡平・ミダス投資事業有限責任組合 22.30%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 10.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は市原創吾氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
市原 創吾 代表取締役社長 サイバーエージェントを経て2018年同社代表取締役社長に就任。FACT、リアレーション、ASYマーケティング取締役を兼任。2018年より現職。
笹野 誠 取締役CFO みずほフィナンシャルグループを経て2020年同社入社。CFOとして財務戦略を統括。FACT、リアレーション等の取締役を兼任。2020年より現職。


社外取締役は、安生あづさ(あんじょう会計事務所代表)、山元雄太(山元法律事務所代表)、長利一心(元メルカリ執行役員Japan Region COO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルマーケティング事業」の単一セグメントで構成されています。具体的には以下のサービスを展開しています。

(1) インターネット広告サービス


検索連動型広告やディスプレイ広告、インフィード広告などの運用型広告を中心に、広告配信の代行やコンサルティングを提供しています。主要プラットフォームのアルゴリズムを分析し、最適な入札やクリエイティブ制作を行うことで広告効果の最大化を図ります。

収益は、クライアントから広告媒体費とコンサルティング手数料を受け取るモデルです。コンサルティングのみの場合は手数料のみを収受します。運営は主に同社が行っています。

(2) SEOコンサルティングサービス


検索エンジンの検索結果における順位上昇を目指し、キーワード選定、サイト構造の最適化、コンテンツ制作などを支援します。自社開発ツールを用いて競合分析や施策のシミュレーションを行い、効率的な集客増加をサポートします。

収益は、クライアントからコンサルティング手数料および記事コンテンツ制作料を受け取るモデルです。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2025年9月期は前期比で大幅な増収増益となりました。売上高は約1.4倍、経常利益は約1.7倍に伸長しており、利益率も27%台と高い水準を維持しています。積極的なM&Aや営業体制の強化により、事業規模が急速に拡大していることが読み取れます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 19億円 27億円
経常利益 4.4億円 7.3億円
利益率(%) 22.8% 27.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.1億円 5.4億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。売上総利益率は約60%と高く、高収益体質であることがわかります。販管費も増加していますが、増収効果がそれを上回り、営業利益率は27.0%と高い水準を達成しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 19億円 27億円
売上総利益 11億円 16億円
売上総利益率(%) 58.7% 60.8%
営業利益 4.5億円 7.2億円
営業利益率(%) 23.1% 27.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.8億円(構成比31%)、支払報酬が1.6億円(同18%)を占めています。売上原価については、サービス提供にかかる外注費などの経費が一定割合を占める構造となっています。

(3) セグメント収益


インターネット広告サービスは、営業体制の強化等により前期比約1.6倍の売上成長を達成しました。SEOコンサルティングサービスも堅調に推移しています。全体として、主力の広告事業が牽引する形で大幅な増収となっています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
インターネット広告 11億円 18億円
SEOコンサルティング 8億円 8億円
連結(合計) 19億円 27億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


2025年9月期は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)に加え、借入等による資金調達(財務CFプラス)を行い、それを子会社株式取得などの投資(投資CFマイナス)に充てる「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 3.2億円 6.7億円
投資CF 0.0億円 -1.7億円
財務CF 1.5億円 3.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Team AViC がビジネスドライバーとなり、世の中に新たな景色を創る」をミッションに掲げています。クライアントとビジネスを共にドライブさせ、その価値を広く浸透させることで、社会に新たな視点や価値観をもたらすことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、高い品質のサービス提供、業界最高水準の売上高成長率、高い事業生産性(営業利益率)を再現性をもって実現することにこだわった経営を行っています。また、人材を「有効化(イネーブルメント)」するための取り組みを重視しており、能力の可視化と重点的な育成施策により、未経験者の早期戦力化を図る文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、社員1人当たりの生産性、社員数、および営業利益の絶対額を重視する経営指標としています。具体的な数値目標は明示されていませんが、自社開発ツールの活用と独自の育成プロジェクトにより、高い生産性を維持しながら組織拡大を図り、営業利益の絶対額を最大化することで、将来の非連続な成長に向けた投資余力を高める方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


質の高いサービス提供を通じて直接取引や大手代理店との協業を拡大し、特にマーケティング予算の大きいエンタープライズクライアントのシェア向上を目指しています。また、AI技術を活用したクリエイティブ制作ソリューションの開発や、M&A・海外進出を含むインオーガニック成長も視野に入れています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


サービスの質を維持するために、「採用→育成」をサステナブルに機能させることを重視しています。未経験者を早期戦力化するための研修制度の充実や「イネーブルメント・プロジェクト」を通じた育成に注力すると同時に、業務効率化のための自社開発ツールへの投資を行い、生産性の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 29.7歳 2.8年 6,790,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律および育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の比率(38.1%)、女性の管理職比率(6.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット広告を巡る事業環境について


インターネット広告市場は拡大傾向にありますが、景気変動や広告主の戦略変更の影響を受けやすい特性があります。同社グループは顧客の分散を進めていますが、景気悪化時には広告予算の縮小などが業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新への対応について


業界の技術革新は急速で、広告主のニーズも多様化しています。同社グループは最新技術の導入や開発に努めていますが、対応が遅れた場合、競争力の低下を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 競合他社との関係について


市場拡大に伴い新規参入が増加しており、競争環境にあります。同社グループはサービス品質の向上に努めていますが、競合による革新的な技術開発や競争激化が進んだ場合、事業や業績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。