※本記事は、ビジネスコーチ株式会社 の有価証券報告書(第21期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ビジネスコーチってどんな会社?
ビジネスコーチングを通じてクライアント企業の人材開発や組織変革を支援する「人的資本経営のプロデューサー」です。
■(1) 会社概要
2005年にコーチングサービスの提供を目的に設立され、法人向け1対n型コーチングの販売を開始しました。2009年には経営幹部向けのエグゼクティブコーチングを開始し、2016年にクラウドコーチングシステムを提供開始しました。2022年10月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。2025年1月には会社分割により持株会社体制へ移行し、同年11月には株式会社日本経済新聞社との資本業務提携を行いました。
2025年9月30日時点で、連結従業員数は59名、単体従業員数は59名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である有限会社コーチ・エフで、第2位は取締役副社長の橋場剛氏、第3位は代表取締役社長の細川馨氏となっており、経営陣とその関係会社が主要株主を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社コーチ・エフ | 35.58% |
| 橋場 剛 | 7.87% |
| 細川 馨 | 2.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は細川馨氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 細川 馨 | 代表取締役社長 | 1980年セゾン生命保険入社。2003年有限会社コーチ・エフ創業。2005年同社を創業し代表取締役に就任、2025年より現職。 |
| 橋場 剛 | 取締役副社長 | 1997年アクセンチュア入社。2005年同社創業に伴い取締役就任。常務、専務を経て2017年取締役副社長に就任、2023年よりエグゼクティブコーチ本部長。 |
| 吉田 信輔 | 取締役CFO兼経営管理本部長 | 2005年株式会社光通信入社。株式会社ベクトルなどを経て2024年7月同社入社。2024年12月より現職。 |
社外取締役は、軒名彰(元日興システムソリューションズ代表取締役会長)、山下美砂(元アクサ生命保険常務執行役員)、渡部昭彦(元ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス代表取締役)、三浦太(公認会計士・元EY新日本有限責任監査法人シニアパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「人材開発事業」および「DX事業」事業を展開しています。
■人材開発事業
主に企業の経営層や管理職層を対象に、ビジネスコーチングを中心とした人材開発サービスを提供しています。1対1で行う「エグゼクティブコーチング」や「ビジネスリーダーコーチング」、1対n形式の「ビジネスコーチングプログラム」などを展開し、行動変容を促すクラウドシステムも提供しています。
収益は、顧客企業から受け取るコーチングサービスの対価や研修プログラムの実施料金、クラウドシステムの利用料などから構成されています。運営は主にビジネスコーチ株式会社および子会社のコーポレートコーチ株式会社、エグゼクティブコーチ株式会社、B-Connect株式会社が行っています。
■DX事業
クライアント企業の購買活動の効率化やDX推進を支援する事業です。間接材を中心とした販管費のコスト削減コンサルティングサービスや、業務プロセスの改善提案から開発・運用までを行うITサービスを提供していました。なお、この事業を担っていたKDテクノロジーズ株式会社は2025年9月末に全株式が譲渡されています。
収益は、コスト削減成果に応じた成功報酬や固定報酬、およびITサービスのコンサルティング料や開発費から構成されていました。運営はKDテクノロジーズ株式会社が行っていました。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近2期間の業績を見ると、売上高は順調に拡大しており、成長基調にあることがわかります。利益面でも、経常利益率が向上しており、収益性が高まっています。当期純利益については前期より減少していますが、全体としては増収増益(経常利益ベース)の傾向にあります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 16.0億円 | 20.0億円 |
| 経常利益 | 0.8億円 | 1.8億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.5億円 | 0.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は60%を超える高い水準を維持しており、付加価値の高いサービスを提供できていることがうかがえます。営業利益率は前期の5.0%から8.2%へと大きく改善しており、本業の収益力が強化されています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 16.0億円 | 20.0億円 |
| 売上総利益 | 9.7億円 | 12.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.8% | 62.3% |
| 営業利益 | 0.8億円 | 1.6億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.4億円(構成比50%)、業務委託費が1.0億円(同10%)を占めています。売上原価においては、外注加工費が1.7億円(構成比22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
人材開発事業、DX事業ともに増収となりました。特に主力のコーチングサービスを含む人材開発事業が堅調に推移しました。DX事業も増収となりましたが、子会社株式譲渡により第3四半期までの連結取り込みとなっています。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人材開発事業 | 12.9億円 | 15.9億円 | 1.3億円 | 1.3億円 | 8.2% |
| DX事業 | 3.1億円 | 4.2億円 | -0.4億円 | 0.3億円 | 8.2% |
| その他 | - | - | - | - | - |
| 調整額 | - | - | -0.1億円 | -0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 16.0億円 | 20.0億円 | 0.8億円 | 1.6億円 | 8.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**改善型**(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.4億円 | 0.9億円 |
| 投資CF | -1.3億円 | 0.2億円 |
| 財務CF | -1.2億円 | -0.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「一人ひとりの多様な魅力、想い、能力の発揮を支援し、働く人が幸せを感じられる社会の持続的発展を可能にする」というパーパスを掲げています。「人的資本経営のプロデューサー」として、クライアント企業の企業価値向上支援を行うことをミッションとし、日本企業の人的資本経営を牽引するリーディングカンパニーとしての地位確立を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「一流で一番」をスローガンに掲げ、社員一人ひとりの成長と組織力の向上を重視する文化を持っています。健全で効率的な職場環境の整備を目指し、「Welcome Your Voice制度(匿名の目安箱)」による全社改善運動や、メンター1on1制度を通じた対話の機会創出など、エンゲージメント向上に向けた施策を積極的に実施しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、クライアント企業の課題解決に貢献するための重要指標として、以下の数値を目標として掲げています。
* 取引先1社当たり売上高
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「人的資本経営のプロデューサー」として、人材開発事業への経営資源集中を進めています。具体的には、1対1や1対nのコーチングサービスに加え、人材育成・評価・採用など人事全般にわたるソリューションを拡充し、ワンストップ支援体制を強化します。また、2025年11月の株式会社日本経済新聞社との資本業務提携を通じ、同社のブランド力・顧客基盤と、同社の実行支援力を掛け合わせ、人的資本経営の社会的浸透を加速させます。
* パートナーコーチの増員(259名体制の整備)
* M&Aの推進及びグループ企業間のシナジー最大化
* データ活用やHRテック企業との連携推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は中途採用のみを行い、職種別・即戦力採用とジョブ型人事制度を導入しています。「人材力」と「組織力」の向上をテーマに、データ活用によるハイパフォーマンス人材とのマッチングや、OJTを中心としたコーチングスキルの活用による育成を実施しています。また、次期経営者育成に向けたサクセッションプランや管理職向け外部コーチングなどを通じ、個々の多様性を活かした成長支援を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 40.2歳 | 3.5年 | 6,674,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.0% |
| 男性育児休業取得率 | 3.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男女賃金差異(非正規雇用)は、同社は対象となる労働者がいないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(78pt)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材確保と組織基盤に関するリスク
同社の成長には、顧客の課題解決と変革を推進できる「人的資本経営のプロデューサー」としての資質を持つ人材の確保と育成が不可欠です。計画通りの人材採用が進まない場合や、主要な人材が流出した場合、事業運営や成長戦略に支障をきたす可能性があります。
■(2) M&A等による投資回収リスク
事業領域拡大や新規参入を目的としたM&Aにおいて、事業環境の変化等により買収先企業の業績が計画を下回った場合、のれんの減損損失が発生し、同社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) システム開発に関するリスク
クラウドコーチングシステム等の開発において、高度化・複雑化に伴い想定以上の工数や追加対応が必要となった場合、採算が悪化する可能性があります。また、システム障害等の発生によりサービスの提供が困難となった場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 情報管理に関するリスク
事業活動を通じて顧客企業の機密情報や多数の個人情報を保有しており、サイバー攻撃や内部不正等によりこれらの情報が外部へ漏洩した場合、社会的信用の低下や損害賠償請求等が発生し、同社グループの事業活動や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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