※本記事は、株式会社エリッツホールディングス の有価証券報告書(第14期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エリッツホールディングスってどんな会社?
同社は、京都・滋賀エリアを地盤に、不動産賃貸仲介・管理および関連サービスをワンストップで提供する持株会社です。
■(1) 会社概要
1989年に創業し、賃貸マンション仲介および管理業務を開始しました。その後、京都・滋賀エリアでの店舗展開を進め、2012年にグループ統括を行う持株会社として同社を設立しました。2023年には東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしています。近年は、マレーシアでの海外事業や不動産特定共同事業など、事業領域の拡大にも取り組んでいます。
2025年9月30日現在、連結従業員数は405名、提出会社(単体)は51名です。筆頭株主は創業者の槙野常美氏で、第2位は取締役の黒田富久子氏、第3位は同じく取締役の佐々木茂喜氏となっており、経営陣が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 槙野常美 | 43.05% |
| 黒田富久子 | 8.41% |
| 佐々木茂喜 | 7.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は槙野常美氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 槙野 常美 | 代表取締役社長 | 1989年長栄ホーム(現エリッツ)設立に伴い代表取締役社長就任。2012年同社代表取締役社長就任より現職。 |
| 平山 浩 | 専務取締役内務部長 | 1997年長栄ホーム(現エリッツ)入社。2013年同社専務取締役内務部長就任より現職。 |
| 佐々木茂喜 | 常務取締役 | 1989年長栄ホーム(現エリッツ)設立に伴い取締役就任。2016年エリッツ代表取締役社長就任、同社常務取締役として現職。 |
| 黒田富久子 | 取締役人材開発部長 | 1989年長栄ホーム(現エリッツ)設立に伴い取締役就任。2012年同社取締役人材開発部長就任より現職。 |
社外取締役は、添田訓嗣(添田訓嗣税理士事務所所長)、寺本髙廣(ビジョナリー代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産仲介事業」「不動産管理事業」「居住者サポート事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■不動産仲介事業
主に賃貸マンション・アパート等の賃貸仲介および不動産売買仲介を行っています。京都・滋賀を中心に近畿圏で店舗を展開し、学生や社会人向けに物件を紹介しています。また、自社保有物件の賃貸やリノベーション、不動産開発事業も手がけています。
収益は、入居者および物件オーナーからの仲介手数料、オーナーからの業務委託手数料、不動産売却収入などが柱です。運営は主に株式会社エリッツ、株式会社エリッツ不動産販売、および同社が行っています。
■不動産管理事業
賃貸マンション・アパート等の建物管理および入居者管理を担っています。建物の保守管理、清掃、家賃の収納代行、契約更新手続き、退去時の改装工事などを総合的に提供しています。また、分譲マンションの管理組合運営サポートも行っています。
収益は、物件オーナーからの管理委託料、改装工事収入、契約更新に伴う手数料などから得ています。運営は主に株式会社エリッツ建物管理、株式会社ARC建物管理が行っています。
■居住者サポート事業
賃貸物件の入居者やオーナーに対し、火災保険の代理店業務、家賃滞納保証、引越サービス、インターネットやライフラインの取次など、住まいに関連する付帯サービスを提供しています。
収益は、保険会社からの代理店手数料、入居者からの保証料、引越代金、各種サービスの取次手数料などが主な源泉です。運営は同社、株式会社エリッツ、株式会社VASTなどグループ各社が連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は46億円から64億円へと順調に拡大傾向にあります。経常利益も6億円台から10億円台へと増加しており、安定した収益基盤を築いています。利益率も10%台中盤から後半と高い水準を維持しています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 46億円 | 49億円 | 56億円 | 58億円 | 64億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 7億円 | 10億円 | 10億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 14.2% | 14.1% | 17.7% | 16.6% | 16.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 4億円 | 7億円 | 6億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。売上総利益率は70%台後半と非常に高い水準を維持しており、収益性の高さが際立っています。営業利益率も16%前後で推移しており、販管費の増加を吸収して利益を確保しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 58億円 | 64億円 |
| 売上総利益 | 45億円 | 49億円 |
| 売上総利益率(%) | 77.4% | 76.3% |
| 営業利益 | 10億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 16.6% | 16.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が22億円(構成比57%)、広告宣伝費が4億円(同9%)を占めています。売上原価については、人件費や外注費などが主な内訳と考えられますが、サービス業のため原価率は低く抑えられています。
■(3) セグメント収益
不動産仲介事業は賃貸仲介手数料や業務委託料が伸長し増収となりましたが、店舗出店コスト等により微減益となりました。不動産管理事業は管理戸数の増加により増収増益を達成しました。居住者サポート事業も各種サービスが堅調で増収となりましたが、セグメント間費用の増加で横ばいの利益となりました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産仲介事業 | 30億円 | 33億円 | 6億円 | 6億円 | 17.7% |
| 不動産管理事業 | 22億円 | 23億円 | 3億円 | 4億円 | 17.6% |
| 居住者サポート事業 | 7億円 | 8億円 | 5億円 | 4億円 | 58.5% |
| 連結(合計) | 58億円 | 64億円 | 10億円 | 10億円 | 16.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の一部を投資に回し(投資CFマイナス)、借入金の返済や配当支払いを行う(財務CFマイナス)「健全型」のパターンを示しています。安定した営業キャッシュ・フローを基盤に、健全な財務運営が行われています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 9億円 |
| 投資CF | -5億円 | -2億円 |
| 財務CF | -1億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.9%でスタンダード市場平均(7.2%)を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も55.6%で市場平均(非製造業48.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「安心・安全・癒し・環境」をテーマに暮らしを提案し、質の高い情報とサービスによって「夢のある住空間とゆとりある生活の実現」に貢献することを企業理念としています。100年以上続く企業を目指し、本物の商品やサービスを提供し続けることを掲げています。
■(2) 企業文化
「仕事を通じて地域社会に貢献する」「不動産業の地位向上に努める」などの経営方針に基づき、誠実で公正な企業活動を重視する文化があります。また、「働き甲斐があり自己成長のできる職場作り」「全従業員の生活向上」を掲げ、従業員の成長と生活の充実を重視する姿勢が示されています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2026年9月期~2028年9月期)において、「管理拡大」「仲介拡大」「財務体質の強化」を3つの戦略テーマとしています。経営目標の達成状況を判断する指標として、以下の数値を重視しています。
* 管理物件数(戸数)
* 仲介件数
* 資産合計、自己資本比率、総資本経常利益率
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、既存の京都・滋賀エリアでのシェア拡大に加え、大阪・奈良・兵庫など近隣他府県への店舗展開を進める戦略です。また、独自会員組織を通じたオーナー支援の強化や、IT技術を活用した業務効率化、人材育成にも注力し、競争力の強化を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の長所・短所を見極め、多種多様な人材が活躍できる環境構築を目指しています。国籍、性別、学歴等にとらわれず、共通の価値観に基づくビジョン実現に向けて、従業員のスキル向上とキャリアアップを支援しています。また、働き甲斐があり自己成長できる職場作りと全従業員の生活向上を掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 38.5歳 | 10.2年 | 3,933,250円 |
※平均年間給与には賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | - |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 62.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | - |
※提出会社等は公表義務の対象ではないため記載を省略しています。連結子会社(株)エリッツは男性育児休業取得率のみ公表し、他は選択していないため記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、不動産事業に関する国家資格の取得者数(宅地建物取引士183人等)、育児休暇復帰率(100.0%)、労災発生件数(8件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要動向について
主力の賃貸仲介事業は、景気動向や人口動態の影響を直接受けます。少子高齢化による学生数の減少や、オンライン授業の定着、企業の転勤抑制などが進むと、単身者を中心とした賃貸需要が減退し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 不動産市況動向について
景気後退や供給過剰により不動産市況が悪化した場合、管理物件の入居率や賃料水準が低下し、管理収入の減少につながる恐れがあります。また、自社保有物件の価値下落や家賃収入の減少など、資産価値や収益性に影響を与える可能性があります。
■(3) 競合について
不動産仲介および管理事業は、大手企業を含む多数の競合が存在し、競争が激化しやすい環境にあります。同社はシステム活用やスケールメリットによる差別化を図っていますが、競合他社の動向や価格競争によっては、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(4) 季節変動・業績偏重について
不動産仲介および管理事業は、新生活が始まる1月から3月に需要が集中する季節変動性があります。この期間に年間の契約件数や売上の多くが計上されるため、繁忙期の需要動向や業務対応の成否が通期の業績に大きな影響を与える構造となっています。



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