ニッポンインシュア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニッポンインシュア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、賃貸住宅の家賃債務保証サービスを中核事業としています。また、介護費や入院費の保証、コインランドリー等の運営も展開しています。直近の業績は、売上高37億円(前期比16.0%増)、経常利益8億円(同88.9%増)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、ニッポンインシュア株式会社の有価証券報告書(第25期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニッポンインシュアってどんな会社?


家賃債務保証サービスを主力とし、介護・医療費保証へも領域を拡大している企業です。地域密着型の店舗運営も行っています。

(1) 会社概要


2002年に前身となるエム・サポートが設立され、2008年に家賃債務保証サービスを開始しました。2014年に現在の商号であるニッポンインシュアへ変更し、2019年には介護費および入院費の債務保証サービスを開始しました。2023年10月に東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たし、事業基盤の強化と社会的信用の向上を図っています。

同社の従業員数は単体で118名です。大株主構成については、筆頭株主は豊島不動産、第2位はMサポート、第3位はサンコー管理となっています。

氏名 持株比率
豊島不動産 10.70%
Mサポート 10.62%
サンコー管理 10.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は坂本 真也氏が務めています。取締役5名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
坂本 真也 代表取締役社長 1998年三好不動産入社。同社賃貸管理部部長などを経て2018年より現職。
竹村 洋一 専務取締役兼管理事業部長 2009年三好不動産入社。2018年同社取締役管理事業部長を経て2023年より現職。
德岡 拓郎 取締役兼営業事業部長 2010年三好不動産入社。2018年同社取締役営業事業部長に就任し現職。


社外取締役は、兼田 康文(公認会計士・税理士)、北原 正(社会保険労務士法人代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「保証事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 保証事業


賃貸住宅の契約時に連帯保証人の役割を果たす「家賃債務保証サービス」を中核に、高齢化社会に対応した「介護費債務保証」や「入院費債務保証」を提供しています。不動産管理会社や介護施設、医療機関を通じてサービスを提供し、滞納リスクの解消や業務効率化を支援しています。

主な収益源は、入居者等の契約者から受け取る初回保証料および1年ごとの更新保証料です。家賃滞納時には同社が代位弁済を行い、その後求償権に基づいて回収を行います。運営は同社が行っています。

(2) その他


フランチャイズ加盟による店舗運営事業を展開しています。具体的には、IoT型機器を導入したコインランドリー「WASHハウス」や、女性専用フィットネスクラブ「カーブス」の運営を行っています。福岡県内を中心に店舗を展開し、地域住民の生活利便性向上や健康増進に寄与しています。

収益は、コインランドリー利用者からの利用料や、フィットネスクラブ会員からの入会金・月会費などです。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大しており、特に直近では大幅な増収を達成しています。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに高い成長率を示しており、利益率も20%を超える高水準で推移しています。事業規模の拡大とともに収益性も向上していることが読み取れます。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 22億円 26億円 29億円 32億円 37億円
経常利益 1.9億円 4.1億円 2.9億円 4.1億円 8億円
利益率(%) 8.9% 15.6% 10.2% 12.7% 20.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.1億円 2.6億円 2.0億円 2.8億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上原価率は低下傾向にあり、売上総利益率は改善しています。営業利益についても大幅な増益となっており、販管費の増加を吸収して利益率が向上していることから、効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 32億円 37億円
売上総利益 19億円 23億円
売上総利益率(%) 58.6% 62.7%
営業利益 4.2億円 8億円
営業利益率(%) 13.0% 20.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比25%)を占めています。売上原価においては、支払手数料が8億円(構成比57%)、貸倒引当金繰入額が3億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


保証事業は新規顧客の獲得や既存顧客への提案強化により、売上高、利益ともに大きく伸長しました。その他事業においても、店舗運営の品質向上や会員獲得活動により増収増益となっています。全社費用を除いた調整額の影響はあるものの、主力の保証事業が高い収益性を牽引しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
保証事業 30億円 35億円 7億円 10億円 29.4%
その他 2億円 2億円 0.3億円 0.4億円 15.9%
調整額 - - -3億円 -3億円 -
連結(合計) 32億円 37億円 4億円 8億円 20.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 2.0億円 3.8億円
投資CF -0.6億円 -0.7億円
財務CF 6億円 -0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「全従業員の物心両面の幸せを追求すると同時に人と地域社会の進歩発展に貢献する」という経営理念を掲げています。また、連帯保証人制度に代わる「機関保証」の普及を実現することをミッションとし、より身近で安心して利用できる保証事業を通じて、多くの人々へ快適な住環境を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社はコンプライアンス経営を徹底し、経営の健全性と透明性の確保に努めています。「リスクマネジメント・コンプライアンス対応規程」に基づき、全社員が法令遵守やリスク管理の重要性を認識する文化を醸成しています。また、多様な人材が活躍できる環境づくりや、社員一人ひとりの付加価値を高めるための教育研修にも力を入れています。

(3) 経営計画・目標


同社は、家賃債務保証サービスの拡大が企業価値向上につながると捉え、以下の指標を目標として経営指標の向上に努めています。
* 初回保証契約件数
* 初回保証契約単価
* 求償債権発生率(賃料月額合計額に対する代位弁済額の比率)
* 求償債権回収率(請求発生額に対する回収額の比率)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、主力の家賃債務保証サービスの拡大に加え、介護費・入院費債務保証サービスの市場開拓を進め、事業拡大を目指しています。具体的には、新規取引先の開拓、独自システム「Cloud Insure」のリニューアルや新商品開発による既存顧客への対応強化、IT技術の活用による業務効率化とリスク管理強化に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材獲得競争が激化する中、社員一人ひとりの付加価値向上を重要視しています。採用後も教育研修の機会と内容を充実させ、企業理念および経営方針を理解した社員の育成を行っています。また、多様な人材の活躍推進や、育児・介護と就業の両立支援など、働き方の選択肢を増やす取り組みも進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 37.0歳 4.6年 4,817,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 38.4%
男性労働者の育児休業取得率 -
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) -


※男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 賃貸不動産市況の動向


同社の主力サービスである家賃債務保証は賃貸不動産市場に依存しています。人口減少や世帯数の減少、賃料相場や賃金水準の変動などにより、賃貸不動産市況が低迷した場合、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合について


家賃保証業界は参入障壁が低く、多くの企業が存在し競争が激化しやすい環境にあります。同社は独自ノウハウやアフターフォロー体制で差別化を図っていますが、他社による新商品・サービスの提供や価格競争により優位性が失われた場合、経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) 信用リスク


賃借人の家賃滞納時に代位弁済を行うため、回収不能リスクがあります。与信審査や管理回収体制を整備していますが、経済環境の悪化等により代位弁済が増加し、回収が長期化または不能となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、貸倒引当金の見積もり不足が生じた場合も同様のリスクがあります。

(4) 法的規制及び制度等の変更


現在は家賃債務保証サービスに対する直接的な法的制限はありませんが、国土交通省の登録制度等が設けられています。今後、法令改正や新たな規制の導入により事業環境が変化した場合、同社の事業運営や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。