※本記事は、株式会社Laboro.AI の有価証券報告書(第10期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Laboro.AIってどんな会社?
顧客企業の戦略に合わせたオーダーメイドのAIソリューション開発と、導入コンサルティングを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2016年に設立され、「カスタムAI」サービスの提供および独自の「ソリューションデザイン」手法体系の整備を開始しました。2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。その後、2024年にX-AI.Laboを関連会社化(後に全株式売却)し、2025年4月には株式会社CAGLAを完全子会社化するなど、組織体制の拡大を進めています。
同社グループの従業員数は連結で100名(単体91名)です。筆頭株主は同社代表取締役CEOの椎橋徹夫氏および代表取締役COO兼CTOの藤原弘将氏で、それぞれ同率で株式を保有しています。第3位株主には、資本業務提携先である大手広告代理店の博報堂が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 椎橋 徹夫 | 23.90% |
| 藤原 弘将 | 23.90% |
| 博報堂 | 7.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.0%です。代表取締役CEOは椎橋徹夫氏が務めています。取締役4名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は50%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 椎橋 徹夫 | 代表取締役CEO | ボストン・コンサルティング・グループ、東京大学大学院技術経営戦略学専攻(松尾研究室)を経て、2016年に同社を設立し代表取締役CEOに就任。2022年より椎橋&Co.代表取締役も兼任。 |
| 藤原 弘将 | 代表取締役COO兼CTO | 産業技術総合研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、PKSHA Technologyを経て、2016年に同社代表取締役CTOに就任。2022年より現職。CAGLA取締役も兼任。 |
社外取締役は、菅野寛(早稲田大学大学院教授・元BCG)、岩崎俊博(元野村證券副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「カスタムAIソリューション事業」および「システム開発事業」を展開しています。
■(1) カスタムAIソリューション事業
顧客企業の成長戦略や経営課題に合わせ、最先端の機械学習技術を応用したオーダーメイドのAIソリューションを開発・提供しています。AI技術とビジネスの両方に精通したコンサルタント(ソリューションデザイナ)とエンジニアがチームを組み、企画構想から開発、導入、継続的なチューニングまでを一気通貫で行います。
収益は、AIソリューションの設計・開発およびその導入を通じたコンサルティングに対する対価として、プロジェクトメンバーのアサインに応じた委託料等を顧客企業から受け取るモデルです。運営は主にLaboro.AIが行っています。
■(2) システム開発事業
自動車産業をはじめとする製造業の顧客企業を中心に、システム開発やUI/UXデザインの開発を行っています。特にグラフデータベースの開発技術に強みを持ち、データ管理システムの構築なども手掛けています。
本事業は、2025年9月期よりグループ会社となった株式会社CAGLAの事業領域です。顧客のニーズに合わせたシステム開発やデザイン開発を提供し、対価を得ています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社は第10期より連結財務諸表を作成しているため、過去との比較については連結ベースでの記載がありません。第10期の売上高は19億円、経常利益は1.7億円、当期純利益は1.5億円となっています。
| 項目 | 2025年9月期 |
|---|---|
| 売上高 | 19.0億円 |
| 経常利益 | 1.7億円 |
| 利益率(%) | 8.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.5億円 |
■(2) 損益計算書
第10期の連結損益計算書では、売上高19億円に対し、売上総利益は13億円、営業利益は1.9億円を計上しています。
| 項目 | 2025年9月期 |
|---|---|
| 売上高 | 19.0億円 |
| 売上総利益 | 12.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 66.9% |
| 営業利益 | 1.9億円 |
| 営業利益率(%) | 10.1% |
販売費及び一般管理費は10.8億円で、主な内訳として給料賃金が3.7億円(構成比約34%)、減価償却費が0.2億円(同約2%)となっています。また、売上原価は6.3億円でした。
■(3) セグメント収益
主力のカスタムAIソリューション事業が売上の大半を占めています。システム開発事業は期中に子会社化した株式会社CAGLAの事業であり、寄与期間が限定的であるため売上規模は小さくなっています。
| 区分 | 売上(2025年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| カスタムAIソリューション事業 | 18.9億円 | 2.5億円 | 13.2% |
| システム開発事業 | 0.1億円 | -0.6億円 | -457.9% |
| 調整額 | -0.1億円 | 0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 19.0億円 | 1.9億円 | 10.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年9月期 |
|---|---|
| 営業CF | 2.2億円 |
| 投資CF | 3.0億円 |
| 財務CF | 0.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均(グロース市場平均2.9%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は90.6%で市場平均(グロース市場平均43.3%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「すべての産業の新たな姿をつくる。」「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」をミッションに掲げています。各産業の代表的な企業と協働し、顧客企業だけでなく産業全体、さらには社会全体の本質的な構造転換へ貢献することを目指しています。最先端技術とビジネス戦略の結びつきを強化し、産業全体の進化を牽引する方針です。
■(2) 企業文化
同社は、AI技術に対する深い理解・知見と、顧客企業の成長戦略や事業課題への深い理解・洞察を両立し繋ぎ合わせる「ソリューションデザイン」という概念を重視しています。これを体現する「ソリューションデザイナ」等の専門人材を育成し、AIイノベーションを再現性を持って創出する新しいタイプのプロフェッショナル集団を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、より高い成長性および収益性を確保する観点から、「売上高成長率」および「売上高総利益率」を主な経営指標としています。また、主力のカスタムAIソリューション事業においては、顧客企業との長期的関係構築を重視し「継続顧客からの売上高成長率」、産業全体のイノベーション促進を目指すことから「新規顧客の獲得件数」も重要な指標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
AIプロジェクトの伴走支援能力をノウハウ化し、範囲の経済を効かせることによる事業成長を目指しています。具体的には、新規製品・サービスの創出やビジネスモデル変革につながる「バリューアップ型AIテーマ」に注力領域を絞り、先行プロジェクトで培った技術やノウハウを再利用可能な資産として蓄積・応用する戦略をとっています。
* ポジショニング確保:「研究開発型産業分野」(半導体、化学等)と「社会基盤・生活者産業分野」(流通、インフラ等)に重点的に取り組みます。
* ケイパビリティ構築:優秀な人材の獲得・育成と、再利用可能な技術的資産(ソリューション開発ノウハウ、ハードウェア一体型基盤、AI開発フレームワーク)の蓄積を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
データサイエンス等の先端技術とビジネス面を熟知した優秀な人材の確保と育成を重視しています。性別・国籍・年齢等に制限を設けず多様な人材を登用し、高い給与水準や資格取得・学術支援制度の充実を図っています。また、リモートワークや副業を認めるなど、個々人の裁量を拡大しライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 36.2歳 | 2.4年 | 9,683,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社グループは、小規模な組織体制であるため、重要性も加味した上で、年齢、国籍、性別等の区分で管理職の構成割合や人数の目標値等は定めておりません。そのため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AIソリューション市場について
AI技術の急速な発展やDXニーズにより市場拡大が予測される一方、マクロ経済の影響でAI投資が縮小した場合、業績に影響する可能性があります。また、技術革新が急速であるため、非連続な代替技術の出現等により技術的優位性を維持できないリスクや、競合他社の参入による競争激化のリスクがあります。
■(2) 特定の取引先に対する売上比率について
同社は大企業との大規模プロジェクトを進める傾向があり、2025年9月期の上位取引先3社で売上の29.0%を占めています。新規開拓により比率は低下傾向にありますが、予期せぬ要因でこれら顧客との取引規模が縮小した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定の人物への依存について
代表取締役CEO椎橋徹夫氏および代表取締役COO兼CTO藤原弘将氏は、経営・事業戦略に関して専門的な知識と技術を有し、重要な役割を果たしています。組織的な経営体制の整備を進めていますが、両名が退職した場合、事業や経営成績に影響が出る可能性があります。
■(4) 人材の確保及び育成について
事業拡大に伴い、エンジニアやソリューションデザイナ等の優秀な人材確保が不可欠です。採用施策や育成制度の充実を図っていますが、計画通りに人材を採用・定着・育成できず、顧客需要に対応する体制を構築できない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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