タスキホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タスキホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所グロース市場に上場し、IoTレジデンス開発を中心とするLife Platform事業を展開する企業です。2024年の経営統合を経て、売上高は744億円、経常利益は78億円へと大幅な増収増益を達成しました。積極的な用地取得と販売により、事業規模の拡大を加速させています。


※本記事は、株式会社タスキホールディングス の有価証券報告書(第2期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タスキホールディングスってどんな会社?


IoTレジデンスの企画開発や不動産テック領域でのSaaS提供など、不動産とテクノロジーを融合させた事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は2024年4月にタスキと新日本建物の経営統合により、共同持株会社として設立されました。中核となるタスキは2013年に新日本建物の子会社として設立後、2017年に独立、2020年に東証マザーズへ上場しました。その後、不動産テック領域やリファイニング事業へ参入し、再び新日本建物と統合して現在に至ります。

2025年9月30日時点の従業員数は連結147名、単体29名です。筆頭株主は個人株主の村上三郎氏で、第2位は電子部品等の製造販売を行う東京ウエルズ、第3位は金融システム開発を行うユニテックスです。

氏名 持株比率
村上三郎 16.23%
東京ウエルズ 5.22%
ユニテックス 2.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は柏村雄氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
柏村雄 代表取締役社長 新日本建物を経てタスキに入社。経営管理部長等を歴任し、2021年よりタスキ代表取締役社長。2024年4月より現職。
村田浩司 取締役 明和地所、新日本建物を経てタスキへ転籍。事業部長等を歴任し、2018年よりタスキ代表取締役社長。2024年4月より現職。
近藤学 取締役 新日本建物を経て、同社執行役員、取締役等を歴任。2022年より新日本建物代表取締役社長。2024年4月より同社代表取締役会長。2024年12月より現職。


社外取締役は、小野田麻衣子(ライトスタッフ代表取締役)、大場睦子(スターチス税理士法人代表)、野口謙吾(三井住友信託銀行エグゼクティブアドバイザー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Life Platform事業」、「Finance Consulting事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) Life Platform事業


東京23区を中心に、IoT対応設備を標準仕様とした新築投資用レジデンスの企画・開発・販売を行っています。また、中古物件の再生を行うリファイニング事業、物流施設の開発、不動産オーナー向けの資産コンサルティング、不動産クラウドファンディングの運営なども手掛けています。

販売による収益が主軸であり、投資家や企業への物件売却代金が収益源となります。また、クラウドファンディングの組成・運用による手数料収入も得ています。運営は主にタスキ、新日本建物、オーラが行っています。

(2) Finance Consulting事業


不動産事業者の中でも、特に中小企業やスタートアップ企業をターゲットとして、不動産事業にかかわる融資を行っています。同社グループのノウハウを活用した不動産査定により、柔軟な対応を強みとしています。

融資先からの利息収入や手数料が主な収益源となります。運営は主にタスキプロスが行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、SaaS事業等を展開しています。不動産業界向けのDXプロダクトの開発・販売を行い、業務効率化やデジタル化を支援しています。

顧客からのサービス利用料などが収益源となります。運営は主に非連結子会社のZISEDAIが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年の経営統合により、事業規模が大きく拡大しています。直近の決算では売上高が700億円台、経常利益は70億円台に達しており、利益率も10%を超える高水準で推移しています。統合効果により収益力が強化されていることが読み取れます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 475億円 744億円
経常利益 36億円 78億円
利益率(%) 7.5% 10.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 27億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに倍増に近い成長を見せています。売上総利益率は約17%から約20%へと改善しており、収益性の向上が確認できます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 475億円 744億円
売上総利益 80億円 148億円
売上総利益率(%) 16.8% 19.9%
営業利益 41億円 88億円
営業利益率(%) 8.6% 11.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14億円(構成比23%)、販売手数料が10億円(同16%)を占めています。売上原価に関しては、その大半を物件開発に伴う用地費や建築費等が占めています。

(3) セグメント収益


主力のLife Platform事業が売上・利益ともに大きく伸長し、全社の成長を牽引しています。Finance Consulting事業は売上規模は小さいものの、一定の利益率を確保しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
Life Platform事業 473億円 742億円 41億円 87億円 11.7%
Finance Consulting事業 2億円 2億円 1億円 1億円 50.3%
その他 0億円 0.1億円 -1億円 0.4億円 591.4%
調整額 -0.2億円 -0.2億円 -1億円 0.4億円 -
連結(合計) 475億円 744億円 41億円 88億円 11.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCFパターンは「勝負型(本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続)」です。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -13億円 -58億円
投資CF -26億円 -17億円
財務CF 68億円 193億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人を起点に。空間をデジタルに。未来を変える仕組みをつくる。」という存在意義(MISSION)と、「価値をつなげば、未来はもっと良くなる。」という展望(VISION)を掲げています。これまでの「あたりまえ」を変えることで、より良い未来を創造することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、組織全体で共有すべき6つの価値観(VALUES)を掲げています。「TECHNOLOGY(最先端のテクノロジーを人のために)」、「ADVANCE(未来を見据える先見力)」、「SUSTAINABLE(サステナブルな世界)」、「USER FIRST(お客様のために)」、「KEEN(少数精鋭で挑む)」、「INNOVATION(ベンチャーマインド)」です。

(3) 経営計画・目標


同社は長期ビジョンおよび中期経営計画を策定しており、経営統合によるグループシナジーを源泉とした成長を目指しています。

* 2033年9月期(長期ビジョン)に連結売上高2,000億円
* SaaS事業導入企業数1,500社

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存事業の安定成長とM&Aによる事業規模・領域の拡大を戦略の柱としています。特に、SaaS事業のARR(年間経常収益)増大とLife Platform事業の拡大を重点施策とし、経営体制の強化やDX推進、システム安定性の確保に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、専門人材の自律的な成長を支え、グループ間の交流により新たな価値創造をもたらす人材育成に取り組んでいます。また、多様な人材が能力を発揮できる職場環境の整備に努め、ワークライフマネジメントを後押しする制度構築や組織風土の醸成を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 39.3歳 3.8年 7,043,025円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均時間外労働(20.4時間)、有給取得率(71.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況等の影響について


不動産業界は景気、金利、地価、建設費等の影響を受けやすい傾向にあります。これらが変動することで、賃貸収入の減少や建築費の上昇、融資環境の変化などが生じ、同社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 資金調達について


事業資金を金融機関からの借入に依存しており、有利子負債依存度が高い傾向にあります。金利上昇や金融機関の融資姿勢の変化により、支払利息の増加や資金調達の制約が生じた場合、物件取得や工事発注に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 事業用地の取得について


東京23区を中心とした事業展開を行っていますが、地価の急激な上昇や競合激化により、計画通りに優良な事業用地を取得できない可能性があります。また、経済状況の急変により事業計画の変更や中止を余儀なくされた場合、手付金の放棄等が発生するリスクがあります。

(4) 収益計上基準及び業績変動について


物件の引渡し時点で収益を認識しているため、引渡し時期によっては四半期ごとの業績に偏りが生じる可能性があります。また、工事遅延や不測の事態により引渡しが遅れた場合、計画していた時期に売上が計上できず、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。