※本記事は、株式会社PRISM BioLab の有価証券報告書(第14期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. PRISM BioLabってどんな会社?
独自のペプチド模倣技術「PepMetics」を用い、これまで創薬困難とされた標的に対する新薬開発を行うバイオベンチャーです。
■(1) 会社概要
2006年に前身であるPRISM BioLab(旧 PRISM Pharma)が設立され、2011年にはエーザイとの導出契約を締結しました。2012年に自社開発事業の展開を目的に現法人を新設分割により設立し、2018年には旧法人を吸収合併しています。その後、海外製薬大手との提携を重ね、2024年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
同社の従業員数は35名(単体)です。筆頭株主は政府系金融機関が出資するベンチャーキャピタルであるDBJキャピタル投資事業有限責任組合で、第2位、第3位も同様に投資事業有限責任組合が名を連ねています。創業者や事業会社ではなく、複数のベンチャーキャピタルが主要株主となっているのが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| DBJキャピタル投資事業有限責任組合 | 15.83% |
| WMグロース3号投資事業有限責任組合 | 9.98% |
| 大和日台バイオベンチャー2号投資事業有限責任組合 | 9.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役は竹原大氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 竹原 大 | 代表取締役 | 1986年リクルート入社。アドバンテッジリスクマネジメント代表取締役副社長、ザイオソフト取締役CFOを経て、2011年PRISM BioLab(現同社)執行役員CFO。2016年12月より現職。 |
| 朴 煕万 | 取締役研究開発部長 | 2000年ノバルティスファーマ入社。Novartis Institutes for BioMedical Research、ラクオリア創薬を経て、2021年同社入社。2022年1月より現職。 |
社外取締役は、古島ひろみ(元ノバルティスファーマ執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「創薬事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自社開発事業
同社独自の技術基盤である「PepMetics技術」を用い、治療法のない疾患に対する新薬候補を自社で創出する事業です。具体的には、創薬標的の選定からヒット化合物の創出、臨床候補化合物への最適化を行い、初期の臨床試験等を進めながら製薬会社へ導出(ライセンスアウト)します。
この事業の収益は、製薬会社とのライセンス契約に基づく契約一時金(アップフロント)、開発の進捗に応じたマイルストン収入、および製品販売後のロイヤリティ収入から成ります。開発資金を自社で負担するリスクがありますが、導出に成功すれば大きなリターンが見込めるモデルで、運営は同社が行っています。
■(2) 共同開発事業
製薬会社が保有する創薬標的に対して、同社の「PepMetics技術」やライブラリーを提供し、共同で新薬候補を探索・開発する事業です。製薬会社が攻略困難とする標的に対しても、同社の技術を用いることでヒット化合物を創出することが期待されています。
収益源は、共同研究に伴う研究費収入、契約一時金、開発進捗に応じたマイルストン収入、および販売後のロイヤリティ収入です。自社開発事業に比べて同社側の投資負担が少なく、早期からの収益化が見込める点が特徴です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は提携契約の状況により変動していますが、2025年9月期は前期比で倍増し過去最高水準となりました。利益面では、創薬ベンチャーとして研究開発への先行投資を継続しているため、特定の期を除き損失計上が続いています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 0.6億円 | 6億円 | 1.1億円 | 3.1億円 | 6.8億円 |
| 経常利益 | -1.5億円 | 0.8億円 | -5.0億円 | -8.3億円 | -7.5億円 |
| 利益率(%) | -261.4% | 14.2% | -440.6% | -272.1% | -110.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.6億円 | 0.7億円 | -5.3億円 | -10.5億円 | -8.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は共同開発事業の進展により大きく伸長し、売上総利益も増加しました。一方で、研究開発体制の強化に伴い販売費及び一般管理費も増加しており、営業損失が継続しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3.1億円 | 6.8億円 |
| 売上総利益 | 1.6億円 | 2.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 52.5% | 39.8% |
| 営業利益 | -7.8億円 | -7.7億円 |
| 営業利益率(%) | -256.0% | -114.3% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が6.2億円(構成比59%)を占めており、創薬企業としての積極的な研究開発投資が費用の大半を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は創薬事業の単一セグメントですが、売上高は大幅に増加しました。これは主に共同開発事業におけるマイルストン達成や契約終了に伴う収益認識によるものです。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| 創薬事業 | 3.1億円 | 6.8億円 |
| 連結(合計) | 3.1億円 | 6.8億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は本業の研究開発活動による赤字と投資活動を、手元資金や財務活動(株式発行等)で賄っている「勝負型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.5億円 | -14.7億円 |
| 投資CF | -2.4億円 | -0.7億円 |
| 財務CF | 33.7億円 | 0.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、独自の「PepMetics技術」によって、これまで創薬が困難とされていた標的(Undruggable Targets)を創薬可能(Druggable)にし、新たな創薬パラダイムを作り出すことを目指しています。そして、治療法のなかった病気を治療することを使命として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、優秀な研究者が薬を創り出すという同じ目的に向かって連携し、公平に議論し、革新を生み出し続けることが創薬事業の発展に最も重要であるという基本理念を持っています。この理念のもと、専門分野ごとの縦割りではなく、経営陣と従業員が自由闊達に議論を交わせる組織風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は現在、研究開発段階のプロジェクトが多く不確実性が高いため、具体的な数値目標となる経営指標は定めていません。その代わりに、将来的な成長要素として重要となる「研究開発における各段階(標的探索、ヒット化合物探索、リード化合物探索、リード最適化)のプログラム数」を経営指標として管理しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、自社開発事業と共同開発事業のハイブリッドモデルにより成長を目指しています。自社開発では、確度の高いプログラムに資源を集中し、早期の導出を目指すとともに、常に新規プログラムを創出しパイプラインを充実させます。共同開発では、実績を積み重ねることで契約の大型化を図り、継続的な収益基盤を構築することを目指しています。
* 共同開発事業における新規契約の獲得(年2件程度を目標)
* AI技術や生物物理学等の新技術導入による創薬基盤の強化
* 研究開発および事業開発を推進するための人材採用と育成
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、創薬基盤技術「PepMetics」の改良・発展を支える人材の確保と育成を成長の源泉と位置付けています。採用においては、性別や年齢に関わらず能力と意欲を重視し、優秀な研究者がモチベーションを持って研究に取り組めるよう、公平な評価制度や研究環境の整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 45.0歳 | 2.0年 | 9,460,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新薬開発の不確実性
医薬品開発は長期間と多額の投資を要する一方で、成功確率が著しく低いビジネスです。臨床試験の結果や規制当局の審査基準の変更などにより、開発の中止や延期が発生する可能性があります。これにより、開発投資が回収できず、将来期待される収益が得られなくなるリスクがあります。
■(2) 資金繰りについて
同社は先行投資型のビジネスモデルであり、継続的に営業損失を計上しています。自社開発事業への投資等が収益を上回る状況が続く中、安定的な収益源が確保できるまでの間、適切な時期に資金調達ができなければ、事業継続に懸念が生じる可能性があります。
■(3) 他社とのアライアンスにおけるリスク
同社のビジネスモデルは製薬会社への導出や共同研究に依存しています。提携先との関係悪化や契約終了、また提携先での開発方針の変更や遅延が発生した場合、マイルストン収入やロイヤリティ収入が得られなくなり、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 業務委託先の工場の閉鎖又は操業停止
同社は製造等の業務を外部へ委託しています。技術的問題、災害、パンデミック等により委託先の施設が閉鎖または操業停止となった場合、原体の供給やデータの取得が滞り、研究開発や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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