Faber Company 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Faber Company 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、「ミエルカSEO」等のデジタルマーケティング自動化ツールを提供する企業です。2025年9月期は、大手企業への販売強化や既存顧客へのクロスセルが進み、売上高は前期比10.5%増、経常利益は同22.3%増の増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社Faber Company の有価証券報告書(第20期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Faber Companyってどんな会社?


デジタルマーケティングの自動化ツール「ミエルカ」シリーズと、専門人材による支援サービスを提供し、「辺境の知から“マーケティングゼロ”を実現する」を掲げる企業です。

(1) 会社概要


2005年に有限会社セルフデザインとして設立され、2015年にWebサイト流入最大化支援ツール「ミエルカ(現ミエルカSEO)」をリリースしました。2016年にはベトナムの開発拠点を法人化して体制を強化し、2024年7月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしました。

同グループは連結従業員100名、単体80名で構成されています。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるさくらキャピタルで、第2位は創業者個人、第3位は光通信グループの投資事業組合となっています。

氏名 持株比率
さくらキャピタル 45.68%
古澤 暢央 7.15%
光通信KK投資事業有限責任組合 5.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役は稲次正樹氏と古澤暢央氏が務めています。社外取締役比率は約71.4%です。

氏名 役職 主な経歴
稲次 正樹 代表取締役 アミューズ、大広、サイバーエージェント等を経てセプテーニグループに入社。2011年に同社取締役社長に就任し、2018年より現職。事業活動および経営管理を統括。
古澤 暢央 代表取締役執行役員Founder 光通信、ぷらっとホームを経て2005年に同社(旧セルフデザイン)を設立。ベトナム子会社代表などを歴任し、現在は事業戦略立案や組織構築を牽引。


社外取締役は、石坂茂(IBJ代表取締役社長)、中川隆(元SBIホールディングス代表取締役副社長)、本橋信之(元アサツーディ・ケイ財経本部長)、根本鮎子(弁護士)、高橋龍徳(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ミエルカ事業」の単一セグメントですが、提供形態により「デジタルマーケティング自動化ツール」および「デジタルマーケティングリソース」等に分類して事業を展開しています。

(1) ミエルカ事業(デジタルマーケティング自動化ツール)


Webサイトのコンテンツ評価・改善提案を行う「ミエルカSEO」や、ユーザー行動を可視化する「ミエルカヒートマップ」、店舗情報を一元管理する「ローカルミエルカ」などのクラウド型ツールを提供しています。AI技術を活用したデータ解析により、企業のデジタルマーケティングの生産性向上を支援しています。

収益は主に、ツールを利用する顧客企業からの月額利用料(サブスクリプション)から得ています。運営は主にFaber Companyが行っており、開発の一部をベトナムの子会社Faber Vietnam Co., Ltd.が担っています。

(2) ミエルカ事業(デジタルマーケティングリソース)


即戦力となるフリーランスや副業の専門人材を企業に紹介・提供する「ミエルカコネクト」や、高度な専門性が求められる課題に対するコンサルティングサービス(ソリューションサービス)を展開しています。ツールの提供だけでなく、人材や教育、コンサルティングのリソースを組み合わせることで、顧客の課題解決を支援します。

収益は、人材マッチングによる業務委託料や、コンサルティングサービスに対するフィーから得ています。運営はFaber Companyが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年9月期から2025年9月期までの業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりで推移しており、直近では26億円規模に達しています。利益面でも、経常利益は3億円台を安定して維持・成長させており、当期純利益も増加傾向にあります。売上高経常利益率は10%台半ばで推移しており、安定した収益性を確保しています。

項目 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 20.0億円 21.8億円 23.2億円 25.6億円
経常利益 3.1億円 3.1億円 3.1億円 3.8億円
利益率(%) 15.6% 14.2% 13.4% 14.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.1億円 2.2億円 2.2億円 2.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約69%と高い水準を維持しています。営業利益率も14%台で推移しており、本業でしっかりと利益を出せる収益構造となっています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 23.2億円 25.6億円
売上総利益 15.8億円 17.7億円
売上総利益率(%) 68.4% 69.3%
営業利益 3.3億円 3.8億円
営業利益率(%) 14.4% 14.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.9億円(構成比35%)、販売促進費が2.0億円(同14%)を占めています。売上原価に関しては、外注費等が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


サービス別の売上状況を見ると、主力である自動化ツールが堅調に推移する中、人材・コンサルティング等のリソース提供サービスが前期比で大きく伸長しました。企業のデジタルマーケティング投資意欲の向上や人材不足を背景に、両サービスともに需要が拡大しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
デジタルマーケティング自動化ツール 13.6億円 14.4億円
デジタルマーケティングリソース 9.4億円 11.1億円
その他 0.1億円 0.1億円
連結(合計) 23.2億円 25.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の営業活動でキャッシュを獲得し、それを投資有価証券の取得や子会社の株式取得などの投資活動に充てています。手元資金は潤沢であり、無借金経営に近い健全なキャッシュ・フローの状態と言えます(健全型)。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 2.2億円 2.1億円
投資CF -0.0億円 -3.8億円
財務CF 2.7億円 -億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「辺境の知から“マーケティングゼロ”を実現する」というパーパスを掲げています。これは、「マーケティングをやらないと、どんなにいいものでも届かない」世界から、「マーケティングをやらなくても、いいものは届く」という、売り手と買い手の境界線が存在しない世界の実現を目指すものです。

(2) 企業文化


同社は、自社が有している価値観・強み・行動を「DNAマップ」として整理しています。このDNAマップを採用や育成活動に活用することで、継続的な企業文化の醸成を図っています。全社研修や昇格時の研修を通じて価値観を共有し、従業員の才能や潜在能力の最大化に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は持続的な成長と企業価値向上において、「1社あたりから発生する月額粗利益」を重要視しています。豊富なサービスラインナップを活かしてクロスセルを行い、顧客単価を上昇させることを方針としており、契約社数とともに重要なKPIとして管理しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、検索エンジンのアップデート等に迅速に対応する体制整備や、AI技術を活用したサービス競争力の向上に注力しています。また、既存顧客へのクロスセルによる顧客単価の上昇、新規事業の開拓、および積極的な販売促進活動による認知度・ブランド力の向上を重点施策として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、優秀な人材の確保と育成を不可欠と考え、知名度向上や教育の充実に注力しています。独自の「DNAマップ」を用いた採用・育成を行い、個々の才能を見極め最大化することを目指しています。また、1on1面談の推進や「職人会議」を通じた専門人材の育成により、働きがいのある環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 33.5歳 4.0年 6,570,681円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は、女性活躍推進法および育児・介護休業法の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) プラットフォームへの対応


同社事業はGoogle等の検索エンジンプラットフォームに依存しており、不定期なアップデート情報を適時に取得しサービスへ反映する必要があります。対応の遅れやプラットフォームの方針変更によっては、サービスの正確性が損なわれ、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 技術革新への対応


デジタルマーケティング市場は生成AIなどの技術革新が速く、顧客ニーズも変化しやすい特徴があります。新たな技術やサービスへの対応が遅れた場合、競争力が低下し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は継続的な人材投資等で対応を図っています。

(3) 人材の確保及び育成


事業拡大には、マネジメント人材、営業、エンジニア、専門性の高いマーケターなど多岐にわたる人材が必要です。人材流動性の高い業界において、必要な時期に優秀な人材を確保できない場合や既存人材が流出した場合、経営戦略の遂行や業績に影響が生じる可能性があります。

(4) 特定の人物への依存


代表取締役執行役員Founderである古澤暢央氏は、創業者として経営方針や事業戦略において重要な役割を果たしています。組織体制の強化により同氏への過度な依存を減らす方針ですが、現時点で同氏の業務継続が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。