※本記事は、株式会社ROXX の有価証券報告書(第12期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ROXXってどんな会社?
ノンデスクワーカーの正社員化を推進する転職プラットフォーム「Zキャリア」を運営するHR Tech企業です。
■(1) 会社概要
2013年に株式会社RENOとして設立され、2016年に人材紹介会社向けサービスを開始しました。2018年に求人プラットフォーム(現Zキャリア)を立ち上げ、2019年に現商号へ変更、同年リファレンスチェックサービス「back check」を開始しました。2024年9月に東証グロース市場へ上場を果たし、2025年には「back check」事業を譲渡して選択と集中を進めています。
同社(単体)の従業員数は305名です。筆頭株主は創業者で代表取締役の中嶋 汰朗氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は人材サービス大手のパーソルキャリアです。パーソルキャリアとは業務提携契約を締結しており、事業面でも協力関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中嶋 汰朗 | 16.63% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 6.38% |
| パーソルキャリア株式会社 | 6.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役は中嶋 汰朗氏です。取締役会における社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中嶋 汰朗 | 代表取締役 | 2013年11月同社設立、代表取締役就任。2022年2月株式会社ROXX Ⅱ設立、同社代表取締役就任。同社代表取締役より現職。 |
社外取締役は、杉山 全功(元株式会社ザッパラス代表取締役社長)、福留 大士(株式会社チェンジホールディングス代表取締役兼執行役員社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「HR Tech事業」として以下のサービスを展開しています。
■(1) Zキャリア
主に製造・建設・運輸・サービス業等に従事するノンデスクワーカーに最適化した転職プラットフォームです。正社員希望の求職者、未経験人材を採用する求人企業、および人材紹介会社(パートナー紹介会社)をつなぐ役割を果たしており、特に未経験採用に積極的な大手企業の求人を多く取り扱っています。
収益は、求人企業から採用決定時に受け取る「採用成果報酬」および「採用事務手数料」と、パートナー紹介会社から受け取る月額の「プラットフォーム利用料」から構成されています。運営はROXXが行っており、全国約400社のパートナー紹介会社と連携して集客を行っています。
■(2) back check(事業譲渡済)
オンライン完結型のリファレンスチェックおよびコンプライアンスチェックサービスです。採用予定者の前職での評価や勤務状況などを確認する機能を提供し、採用ミスマッチの防止やコンプライアンスリスクの低減を支援していました。
収益は、サービスを利用する求人企業からの利用料等で構成されていました。なお、本事業は同社の事業ポートフォリオ整理の一環として、2025年9月に新設分割により設立したback check株式会社へ承継された後、全株式がエン株式会社へ譲渡されています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大しており、直近の第12期では45億円に達しています。利益面では、先行投資による営業損失が継続しており経常損失を計上していますが、第12期は事業譲渡による特別利益の計上で当期純利益が黒字化しました。成長投資を優先しつつ、一時的な要因で最終黒字を確保した形です。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9億円 | 12億円 | 21億円 | 35億円 | 45億円 |
| 経常利益 | -6億円 | -7億円 | -7億円 | -5億円 | -8億円 |
| 利益率(%) | -67.3% | -61.7% | -35.8% | -14.3% | -17.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -6億円 | -8億円 | -7億円 | -5億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約30%増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。一方で、積極的な事業拡大に伴い販売費及び一般管理費が増加しており、営業損失幅は拡大しました。売上成長に伴い粗利は確保できていますが、成長投資が先行している状況です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 35億円 | 45億円 |
| 売上総利益 | 30億円 | 38億円 |
| 売上総利益率(%) | 85.7% | 83.2% |
| 営業利益 | -5億円 | -7億円 |
| 営業利益率(%) | -13.5% | -16.0% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が16億円(構成比35%)、給料及び手当が14億円(同31%)を占めています。売上原価では、労務費が5.3億円(構成比70%)と大半を占めています。
■(3) セグメント収益
主力サービスの「Zキャリア」が売上高39億円と全体の約86%を占め、前期比34%増と大きく伸長しました。「back check」も増収でしたが、事業譲渡により今後は「Zキャリア」への集中が一層進む見込みです。単一セグメントのため利益情報は開示されていません。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) |
|---|---|---|
| Zキャリア | 29億円 | 39億円 |
| back check | 6億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 35億円 | 45億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業赤字を資産売却+借入で補填している「救済型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -6億円 | -10億円 |
| 投資CF | -0.6億円 | 17億円 |
| 財務CF | 25億円 | 8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は73.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「時代の転換点を創る」をミッションとして掲げています。テクノロジーを活用することでノンデスクワーカーの正社員化を推進し、所得向上を目指すHR Techカンパニーとして、日本の労働問題を解消していくことで社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
ミッション達成のために、3つのバリューを定めています。「ROCK(固定観念に囚われず、自らが正しいことを全力で証明する)」、「BAND(互いに欠けている部分を補い、一人ではなし得ない大きな成果を生む)」、「SHOW(あらゆる状況においても変化を恐れず、常にベストパフォーマンスを発揮する)」を行動指針としています。
■(3) 経営計画・目標
売上高の最大化が企業価値向上につながると考え、重要な経営指標と位置付けています。将来的には売上高100億円の達成を目指し、高い成長率の維持を図る方針です。また、重要指標としてGMV(流通取引総額)、テイクレート、求職者登録数、成約単価を重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力サービス「Zキャリア」において蓄積されたデータの活用と、AI技術を活用したサービス開発強化を進め、ノンデスク領域におけるポジショニング確立を目指します。具体的には、求職者と求人企業のマッチングにAIを活用することで転職支援の均一化や成約率最大化を図り、生産性を改善しつつ通期での黒字化を見込んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高い成長率の継続には優秀な人材の採用と組織体制の整備が重要と考え、積極的な採用活動を行っています。また、全社横断の能力開発プログラムを通じた研修を行い、特に自社キャリアアドバイザーにおいては蓄積したナレッジとAI活用による早期戦力化を進めています。従業員が働きやすい環境や人事制度の拡充も実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 29.7歳 | 2.0年 | 5,606,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 18.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 70.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 70.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 71.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 183.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネットの利用環境について
同社はインターネット技術を活用して事業を運営しているため、新たな規制の導入や弊害の発生、その他予期せざる要因によりインターネットの利用環境に大きな変化が生じた場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 景気変動と雇用情勢について
人材紹介会社の支援及び企業の人材採用支援を主たる事業としているため、雇用情勢の変動に影響を受ける可能性があります。想定を上回る景気悪化が起こり、求人企業の雇用水準が低迷する事態が発生した場合は、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 新規参入と競合について
人材採用市場には多数の競合が存在します。同社はノンデスクワーカー市場で優位性を築いていますが、伝統的な人材紹介業者や新興プレイヤーが同領域に注力した場合、競争が激化し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 技術革新への対応について
新技術の積極的な投入により市場ニーズに合致したサービスを構築する方針ですが、技術革新への対応が遅れた場合や、当初の計画を上回る開発費等の費用が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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