Sapeet 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Sapeet 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Sapeet(サピート)は東証グロース市場に上場。PKSHA Technologyの子会社です。Expert AIを中核技術とし、顧客ニーズに合わせたAIソリューション開発や、AI姿勢分析等のSaaSを展開しています。2025年9月期はAIソリューションの拡大等が寄与し、大幅な増収により黒字転換を達成しました。


※本記事は、株式会社Sapeet の有価証券報告書(第10期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Sapeetってどんな会社?


AIと3D技術を強みとする東大発スタートアップで、AIソリューションとSaaSプロダクトを展開しています。

(1) 会社概要


2016年に3D技術を活用したバーチャルフィッティングサービスの事業化を目的に設立されました。2018年にPKSHA Technologyの連結子会社となり、2020年にAI姿勢分析システム「シセイカルテ」の提供を開始。2024年10月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

2025年9月末時点で、連結子会社を持たない単体企業であり、従業員数は53名です。筆頭株主はその他の関係会社であるPKSHA Technology、第2位は創業者の築山英治氏、第3位は資本業務提携関係にある日本テレビホールディングスです。

氏名 持株比率
PKSHA Technology 35.97%
築山 英治 19.72%
日本テレビホールディングス 13.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は築山 英治氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
築山 英治 代表取締役社長 2016年3月同社設立、代表取締役社長就任。2016年より現職。
尾形 友里恵 取締役AI・DX事業本部長 日本アイ・ビー・エム、ITプロパートナーズ(現 Hajimari)を経て2018年同社入社。2020年執行役員、2021年取締役就任。2022年10月より現職。
佐藤 琢治 取締役経営管理本部長 いちよし証券、FiNC(現 FiNC Technologies)内部監査室長、日本データサイエンス研究所(現 JDSC)を経て2022年同社入社。2022年10月より現職。


社外取締役は、前山 義一(元リクルート マーケティング局GM)、竹村 純也(公認会計士)、三浦 千絵(弁護士)です。

2. 事業内容


同社は、「Expert AI事業」の単一セグメントで事業を展開しており、主に「AIソリューション」と「AIプロダクト」の2つのサービスを提供しています。

(1) AIソリューション


顧客企業のニーズに合わせて、同社が保有するAIや3D技術のアルゴリズムモジュールを組み合わせたプロダクト開発やコンサルティングを行います。身体分析アルゴリズムやLLMを用いた生成AIモジュールの活用、AIエージェントの開発など、戦略策定から開発・実装、保守運用まで一気通貫で支援します。

収益は、主に準委任契約に基づく開発支援やコンサルティング料、導入後の保守運用費やライセンス料といったストック売上から得ています。運営はSapeetが行っています。

(2) AIプロダクト


「カルティ」ブランドで、AI姿勢分析・可視化ツール「シセイカルテ」、カスタマイズ可能な電子カルテ「マルチカルテ」、AIロープレツール「カルティロープレ」等のSaaSを提供しています。整体院、接骨院、フィットネス等の店舗DXや接客・営業の強化を支援します。

収益は、サービスの利用に対する月額利用料(サブスクリプション)や、サービス利用開始に伴う初期設定料金から得ています。契約期間内は原則解約不可のプランが中心で、ストック型で収益が積み上がるモデルです。運営はSapeetが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績は、売上高が急速に拡大しており、成長フェーズにあります。利益面では、先行投資により赤字が続いていましたが、2025年9月期において営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも黒字転換を果たしました。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 2.0億円 3.0億円 4.2億円 6.3億円 10.0億円
経常利益 -0.1億円 -0.9億円 -1.5億円 -0.3億円 0.5億円
利益率(%) -6.9% -29.8% -35.0% -4.5% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 -0.9億円 -1.5億円 -0.3億円 0.7億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大傾向にあります。先行投資を継続しつつも、増収効果により固定費が吸収され、営業黒字化を実現しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 6.3億円 10.0億円
売上総利益 3.8億円 5.0億円
売上総利益率(%) 60.2% 50.3%
営業利益 -0.2億円 0.6億円
営業利益率(%) -3.0% 5.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が1.3億円(構成比29%)、広告宣伝費が0.7億円(同16%)を占めています。売上原価においては、外注費が3.2億円(売上原価の65%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は、Expert AI事業の単一セグメントのため、サービスごとの利益は開示されていません。AIソリューションとAIプロダクトの両輪で事業が拡大しており、特に売上高の大幅な成長が利益の改善に寄与しています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


積極型(営業CF+、投資CF-、財務CF+)。営業活動でキャッシュを生み出しつつ、株式発行等で資金調達を行い、ソフトウエア等の投資に充てています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF -0.3億円 0.5億円
投資CF -1.0億円 -1.0億円
財務CF 2.0億円 0.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.2%で市場平均を大きく上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ひとを科学し、寄り添いをつくる」をミッションとして掲げています。人の身体性・精神性・行動をデータとロジックに基づき分析・可視化し、その技術を使いやすい仕組みとして提供することで、人と社会が最適な状態で触れ合い、人のポテンシャル解放や生活の質向上により、心身ともに豊かになれる世界の実現を目指しています。

(2) 企業文化


ミッションを達成するための行動指針として「愛あるお節介」「自ら変わり、変える」「プロフェッショナルとしての誇り」を掲げ、企業文化の醸成に取り組んでいます。また、OKRを活用した目標管理や、信頼関係構築・成長支援を目的とした1on1を実施し、エンゲージメント向上に努めています。

(3) 経営計画・目標


高い成長性と安定的な収益基盤の両立を目指し、売上高成長率、ARR(Annual Recurring Revenue)、および取引社数を重要な経営指標(KPI)と位置付けています。特に売上高成長率については、40%以上をターゲットとしています。

(4) 成長戦略と重点施策


短中期的には「デスクレスワーカーのエンパワーメント」と「ウェルネスデータの分析・可視化による健康寿命の延伸」に取り組みます。AIソリューションの知見を活かしたAIプロダクトの開発・拡充、生成AIやAIエージェントの開発強化、および海外展開を視野に入れた事業拡大を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のために、優秀な人材の確保と育成を重視しています。特に開発体制の強化に向けて、エンジニアやアルゴリズムエンジニアの採用に注力するほか、営業体制の強化のための人材採用も積極的に行っています。エンゲージメント向上施策やOKRによる目標管理を通じ、成長できる環境作りを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 35.6歳 2.5年 6,949,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ターゲットとなる業界について


AIシステム市場の拡大を見込んでいますが、市場拡大ペースの鈍化や競争優位性が発揮できない場合、成長が阻害される可能性があります。サービスの横展開やラインナップ拡充で対応していますが、顕在化した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) マクロ経済の影響


AIプロダクトは個人事業主や中小事業者に多く利用されており、景気後退による顧客の廃業やサービス利用減少のリスクがあります。顧客の分散やAIソリューションでの大企業取引によりリスク分散を図っていますが、影響を受ける可能性があります。

(3) 競合他社との競争


AI・ウェルネス領域には多くの企業が参入しており、競争激化により競争力が低下する可能性があります。蓄積データやアルゴリズムの活用、オンボーディング支援等による差別化を図っていますが、競争環境の変化が業績に影響を与える可能性があります。

(4) 技術革新への対応


AIや3D技術は急速に進歩しており、技術革新への対応遅れや開発コストの増加が発生するリスクがあります。継続的な情報収集や優秀なエンジニアの確保に努めていますが、対応できない場合は競争力低下や業績への影響が懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。