ミライロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミライロ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所グロース市場に上場しており、障害を価値に変える「バリアバリュー」を掲げ、ユニバーサルデザインの監修やデジタル障害者手帳「ミライロID」等の事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比17.3%増と伸長した一方、当期純利益は54.4%減の減益となりました。


※本記事は、株式会社ミライロの有価証券報告書(第16期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ミライロってどんな会社?


同社は、「バリアバリュー」を理念とし、ユニバーサルデザインのコンサルティングやデジタル障害者手帳「ミライロID」の運営を行う企業です。

(1) 会社概要


2010年に大阪市で設立され、バリアフリー監修等のサービスを開始しました。2013年に日本ユニバーサルマナー協会を設立して検定事業を本格化させ、2019年には主力となるデジタル障害者手帳「ミライロID」をリリースしました。その後、マイナポータル連携や鉄道事業者での導入を経て利用を拡大し、2025年3月に東京証券取引所グロース市場へ株式を上場しました。

2025年9月30日時点の従業員数は単体で50名です。大株主については、筆頭株主は創業者の垣内俊哉氏で、第2位は共同創業者で取締役副社長の民野剛郎氏です。第3位は社外取締役の谷間真氏となっています。

氏名 持株比率
垣内 俊哉 27.95%
民野 剛郎 27.77%
谷間 真 1.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は垣内俊哉氏が務めています。社外取締役比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
垣内 俊哉 代表取締役社長 2010年6月同社代表取締役社長に就任(現任)。日本ユニバーサルマナー協会代表理事やバリアバリュー財団理事長などを兼務し、レオス・キャピタルワークス社外取締役等も務める。
民野 剛郎 取締役副社長経営管理部長 2010年6月同社取締役副社長に就任。コーポレート本部長を経て、2022年10月より現職。日本ユニバーサルマナー協会理事も務める。
橋本 寛之 取締役営業部長 トータルトラスト管財、バンタンを経て2017年4月同社入社。ソリューション本部長等を経て2022年10月より現職。
井原 充貴 取締役ITソリューション部長兼社長室長 みずほ銀行、ブレーンヒューマニティーを経て2015年6月同社入社。ITソリューション部長等を経て2025年10月より現職。
森田 啓 取締役ビジネスソリューション部長 ソフトバンク・モバイル、星野リゾート・マネジメントを経て2016年1月同社入社。2022年12月より現職。
梶尾 武志 取締役経営企画部長 マザーハウスを経て2016年4月同社入社。営業・マーケティング部長等を経て2022年12月より現職。


社外取締役は、谷間真(T-REVIVEコンサルティング代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「バリアバリュー事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) デジタル障害者手帳「ミライロID」


障害者手帳の情報をスマートフォンで管理・提示できるアプリを提供しています。ユーザーは障害者手帳の携行負担を軽減でき、導入事業者は手帳確認業務の効率化や不正利用防止が可能となります。また、アプリ内でクーポン配信やチケット販売、オンラインストア機能なども提供し、障害者の社会参加と消費活動を促進しています。

収益は、導入企業からの広告掲載料やシステム連携利用料、チケット販売手数料等から得ています。また、自治体や公共交通機関との連携によりインフラとしての普及を進めています。運営は主にミライロが行っています。

(2) バリアバリューソリューション


企業や自治体に対し、障害者や高齢者等への対応を学ぶ「ユニバーサルマナー検定」や研修を提供しています。また、障害当事者による施設調査や製品モニターを行う「ミライロ・リサーチ」、バリアフリー情報のマップ化支援なども行い、ハード・ソフト両面から環境整備を支援しています。

収益は、企業や団体からの研修受講料、検定料、コンサルティングフィー、リサーチ業務委託費等から得ています。法改正による合理的配慮の義務化等を背景に需要を取り込んでいます。運営は主にミライロが行っています。

(3) コミュニケーションサポート


聴覚障害者等に向けた情報保障サービス「ミライロ・コネクト」を展開しています。遠隔手話通訳サービスや手話リレーサービス、手話・文字通訳者の派遣を行い、コミュニケーションのバリア解消を支援しています。また、手話通訳者育成のためのオンライン講座も提供しています。

収益は、サービスの導入企業や自治体からの利用料、通訳派遣料、電話リレーサービスの受託業務費等から得ています。運営は主にミライロが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第12期の3.9億円から第16期の8.3億円へと順調に拡大しています。利益面では第13期まで損失計上が続いていましたが、第14期に黒字転換を果たしました。第15期には利益率が大きく向上しましたが、第16期は増収ながらも上場関連費用等の計上により減益となっています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 3.9億円 6.2億円 5.8億円 7.1億円 8.3億円
経常利益 -1.3億円 -0.5億円 0.1億円 1.2億円 1.2億円
利益率(%) -33.3% -7.6% 1.9% 17.1% 14.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.3億円 -0.6億円 0.1億円 1.8億円 0.8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は17.3%増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。一方で、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益率は微増にとどまっています。積極的な事業活動に伴うコスト増を吸収しつつ、黒字基調を維持しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 7.1億円 8.3億円
売上総利益 4.6億円 5.6億円
売上総利益率(%) 64.9% 66.9%
営業利益 1.2億円 1.4億円
営業利益率(%) 16.5% 17.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が0.9億円(構成比21%)、業務委託費が0.5億円(同11%)、支払手数料が0.4億円(同11%)を占めています。売上原価においては、労務費が1.6億円(構成比57%)、経費が1.1億円(同42%)となっています。

(3) セグメント収益


各事業区分の売上動向を見ると、主力の「ユニバーサルマナー研修及び検定」が法改正の追い風を受けて伸長しています。「ミライロIDソリューション」もユーザー数増加に伴い拡大し、「コミュニケーションサポート」も安定して成長しています。全領域で増収となっており、事業基盤が拡大しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
ミライロIDソリューション 2.4億円 2.8億円
ユニバーサルマナー研修及び検定 3.0億円 3.6億円
コミュニケーションサポート 1.7億円 1.9億円
連結(合計) 7.1億円 8.3億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で現金を稼ぎ出しつつ、財務活動(主に株式発行)による資金調達も行い、手元資金を厚くしながら事業投資に備えている状態です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 1.4億円 1.8億円
投資CF -0.4億円 -0.4億円
財務CF -0.4億円 3.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「バリアバリュー」を企業理念として掲げています。これは、障害(バリア)を取り除くことで新たな価値(バリュー)に転換することを意味しています。この理念のもと、障害者とその家族が今日を楽しみ、明日を期待できる社会を実現するためのインフラやソリューションを提供しています。

(2) 企業文化


社名である「ミライロ」には、「誰もが自らの色を描ける未来、自らの路を歩める未来をつくる」という意味が込められており、これを経営方針としています。多様な視点、経験、感性を活かし、創造と革新を追求する姿勢を重視しています。障害当事者の視点を起点としたビジネス展開が組織の根幹にあります。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高や利益に加え、以下の指標を重視して経営を行っています。

* 「ミライロID」の導入事業者数
* 「ミライロID」のユーザー数
* バリアバリューソリューションにおける取引先数と1社あたりの平均売上高

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、デジタル障害者手帳「ミライロID」を軸としたDXによる社会改革と、バリアバリューソリューションの提供を成長の両輪としています。特に「ミライロID」の利便性向上によるユーザー・導入事業者の拡大、および他企業との連携によるサービス開発に注力し、継続的な収益拡大を目指しています。

* 「ミライロID」のUI改善や機能開発による利便性向上
* 連携企業との協業による新たなサービス開発
* バリアバリューソリューションの複合提案による収益化
* 障害に関する知識と経験を有する人材の採用・育成

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社の競争力の源泉は、障害に関する知識と経験を有する人材にあるとしています。企業理念に共感し、高い成長意欲と使命感を持った人材を積極的に採用・育成することで企業力を強化する方針です。また、マネジメント層の育成やコンプライアンス教育の徹底により、内部管理体制の強化にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 38.3歳 5.5年 4,959,940円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 障害者関連市場と関連法令の動向について


同社は障害者差別解消法などの関連法令の目的達成に向けたソリューションを提供しています。これらの法律の改廃、規制の新設、適用基準の変更などがあった場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) ミライロIDに競合する企業の参入について


「ミライロID」はマイナポータルAPI連携などで信頼性を確保していますが、競合企業による類似アプリの提供やサービスの模倣が行われた場合、事業展開に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 収益事業に競合する企業の参入について


バリアバリューソリューション事業には許認可制度がなく参入障壁が相対的に低いため、新規参入企業が増加する可能性があります。競争が激化した場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 経営成績の変動について


顧客あたりの売上の最大化や継続的な取引が想定通りに進まず、ソリューション提供が単発での受注に留まるような場合には、成長が見込めず、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。