ストライク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ストライク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場するM&A仲介会社です。公認会計士・税理士を中心とした専門家集団によるM&A仲介事業を展開しています。2025年9月期の業績は、大型案件による単価上昇と成約数増加により、売上高は203億円と過去最高を更新して増収となりましたが、積極的な採用活動等による販管費の増加により減益となりました。


※本記事は、株式会社ストライク の有価証券報告書(第29期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ストライクってどんな会社?


公認会計士や税理士が主体となり、M&A仲介や付随するコンサルティングを行う専門家集団です。

(1) 会社概要


1997年にM&A仲介業務を目的として設立され、1999年にはインターネット上のマッチングサイト「M&A市場SMART」を開設しました。2016年に東京証券取引所マザーズへ上場し、翌2017年に市場第一部へ変更、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。2023年には日本企業投資基盤を設立するなど、事業領域の拡大を進めています。

2025年9月30日現在の従業員数は単体で452名です。大株主構成は、筆頭株主が代表取締役社長である荒井邦彦氏の資産管理会社であるK&Company、第2位が荒井邦彦氏本人となっており、創業家が株式の約40%を保有しています。第3位は信託銀行の信託口です。

氏名 持株比率
K&Company 27.34%
荒井 邦彦 12.87%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は荒井邦彦氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
荒井 邦彦 代表取締役社長 太田昭和監査法人を経て1997年に同社設立、代表取締役社長就任。日本企業投資基盤代表取締役やM&A支援機関協会代表理事などを歴任し現職。
鈴木 伸雄 取締役副社長 協和銀行入行後、あさひ銀事業投資取締役などを経て2003年に同社入社。2009年より取締役副社長。セルバンク取締役などを兼務し現職。
金田 和也 常務取締役執行役員コンサルティング本部担当 あずさ監査法人を経て2009年に同社入社。執行役員企業情報部担当などを経て2021年より常務取締役兼執行役員コンサルティング本部担当。
中村 康一 取締役執行役員管理部担当 太田昭和監査法人を経て公認会計士・税理士事務所を開業。2014年に同社取締役就任、2018年より取締役兼執行役員管理部担当。


社外取締役は、古本裕二(元矢作建設工業代表取締役副社長)、荒木二郎(元住信リース代表取締役社長)、小駒望(公認会計士)、酒巻弘(元DBJ証券代表取締役社長)、加藤知子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「M&A仲介事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

M&A仲介事業


同社は、企業の合併・買収(M&A)の仲介を主たる事業としています。後継者不在による事業承継型M&Aに加え、企業の成長を目指す成長戦略型M&Aや、スタートアップのEXIT支援としてのイノベーション型M&Aなど、多様なニーズに対応しています。また、インターネット上のマッチングサイト「M&A市場SMART」を活用した相手先探索も行っています。

主な収益は、譲渡企業と買収企業の双方から受け取る着手金、基本合意報酬、成約報酬などの手数料収入です。仲介業務以外にも、ファイナンシャル・アドバイザリー業務、デューディリジェンス業務、企業評価業務、戦略コンサルティング業務などを提供しており、運営は主にストライクが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は90億円から203億円へと継続的に拡大しています。経常利益は35億円から63億円の水準で推移しており、高い利益率を維持していますが、直近では積極的な人材採用や体制強化に伴うコスト増により利益率はやや低下傾向にあります。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 90億円 107億円 138億円 181億円 203億円
経常利益 35億円 42億円 52億円 68億円 63億円
利益率(%) 38.5% 39.4% 37.7% 37.3% 31.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 30億円 39億円 50億円 47億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、販管費の増加率が売上高の伸びを上回ったため、営業利益は減少しました。営業利益率は依然として30%を超える高水準を維持しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 181億円 203億円
売上総利益 116億円 119億円
売上総利益率(%) 64.0% 58.7%
営業利益 68億円 63億円
営業利益率(%) 37.3% 31.2%


販売費及び一般管理費のうち、地代家賃が10億円(構成比18%)、広告宣伝費が8億円(同15%)を占めています。売上原価においては、給与手当が25億円(構成比30%)、賞与が30億円(同35%)と人件費が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


同社はM&A仲介事業の単一セグメントのため、セグメント利益は開示していません。大型案件の成約や成約件数の増加により、売上高は前期比で増加しました。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を元手に、投資活動や株主還元を行いつつも財務の健全性を維持している「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 63億円 38億円
投資CF -10億円 -3億円
財務CF -10億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世界を変える仲間をつくる。」をミッションとして掲げています。個の力では達成できないことでも、仲間を増やし協力し合うことで実現できるという考えに基づき、複数の会社が力を合わせて成長・発展するための仲間づくりこそがM&Aの本質であると捉え、その支援を通じて顧客の成長・発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、行動規範の一つとして「個の力を結集し、最高のチームになる。」を掲げています。多様な人材が個の能力を最大限発揮し、皆が協力し合うことで最高の成果を生み出すことを重視しています。また、成果主義に基づく給与制度や人事考課制度を採用しつつ、チームとして多様な案件に対応することを通じて個人の経験を高める文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、今後3年間において成約組数および売上高を増加させていくことを当面の目標としています。人員増加が売上に寄与するまでの期間を考慮し、先行指標となる新規受託件数やコンサルタント増員数についても目標を設定しています。

* 2026年9月期目標:売上高243億円、成約組数329組、新規受託1,270件
* 2027年9月期目標:売上高272億円、成約組数370組、新規受託1,445件
* 2028年9月期目標:売上高300億円、成約組数411組、新規受託1,639件

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、サービス品質の向上、人材の確保・育成、多様なM&Aニーズへの対応、事業領域の拡大を重点課題としています。特に、コンサルタントの採用を中途中心から新卒中心へ徐々にシフトし、教育体制を強化することで持続的な成長を目指します。また、M&A仲介だけでなくFA業務の拡充や、グループ経営への移行を見据えた体制整備を進める方針です。

* 2026年9月期中に持株会社体制へ移行する方針

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、M&A仲介事業の成長には人的資源が最重要と考え、優秀なコンサルタントの獲得・育成・維持に取り組んでいます。採用では、専門知識や多様な経験を持つ人材を属性に関わらず獲得し、安定確保のため新卒採用へも注力する方針です。育成面では、研修の充実やチーム制による経験蓄積を推進し、成果主義に基づく評価制度で定着率向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 33.2歳 2.5年 15,210,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.0%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 34.7%
男女賃金差異(正規雇用) 37.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 149.5%


※男性労働者の育児休業取得率については、対象となる労働者がいないため「-」となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正規雇用者数(77名)、日商簿記2級またはこれに準ずる資格取得(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) M&A市場の低迷


経済環境の悪化や金融市場の動向によりM&Aニーズが減少し、市場が縮小した場合、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。過去にはリーマンショックや震災等の影響で市場が一時的に縮小した経緯があり、同様の経済情勢の変化や大規模な自然災害が発生した場合、業績への悪影響が想定されます。

(2) M&Aに関する法的規制


現在、M&A仲介業務に対する直接的な法的規制や許認可制度はありませんが、将来的に新たな法令制定や規制導入が行われた場合、または関連法改正により社会的なM&Aニーズが変化した場合、同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。現時点では具体的な法規制の予定はないと認識されています。

(3) 中小M&Aガイドラインの遵守


中小企業庁が定める「中小M&Aガイドライン」への違反等により、M&A支援機関登録制度の登録が取り消された場合、同社の経営成績等に影響が出る可能性があります。また、ガイドラインの強化により業務負担が増加した場合も影響が懸念されますが、現状では適切な対応を行っており、発生可能性は低いと判断されています。

(4) 同業者との競合


M&A仲介事業は参入障壁が比較的低く、多数の事業者が存在するため、競争激化が予想されます。現在は業務品質を中心とした競争へ変化しており、同社は研修や有資格者の採用等で差別化を図っていますが、競争環境がさらに激化した場合には、同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。