※本記事は、ウイルコホールディングス の有価証券報告書(第47期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ウイルコホールディングスってどんな会社?
同社グループは商業印刷や知育図書の出版、美容・健康食品の通信販売など多様な事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1979年にわかさ屋美術印刷として設立され、1989年に商業印刷事業を拡大しました。2005年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2012年に持株会社体制へ移行して現社名に変更しました。2022年にスタンダード市場へ移行し、2025年にはウエーブを子会社化してネット印刷事業を強化しています。
従業員数は連結で389名、単体で22名体制です。筆頭株主はわかさ屋で、第2位は桂紙業、第3位は北國銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| わかさ屋 | 19.32% |
| 桂紙業 | 6.41% |
| 北國銀行 | 4.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は松浦昌宏氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松浦昌宏 | 代表取締役社長 | 1998年わかさ屋情報印刷入社。ウイル・コーポレーション取締役専務執行役員などを経て、2020年同社顧問。2025年1月より現職。 |
| 鈴木正守 | 取締役 | 2000年メディアシーク入社。極楽湯取締役執行役員CFOなどを経て、2024年同社執行役員CCO。2025年2月より現職。 |
| 北風英雄 | 取締役(常勤監査等委員) | 1995年ウイル・コーポレーション入社。同社情報・印刷事業部製造本部長、取締役執行役員新商品開発本部などを経て、2025年1月より現職。 |
社外取締役は、大関暁夫(元横浜銀行中央林間支店長)、染井法雄(染井・前田・中川法律事務所設立)、高野寧績(高野会計事務所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報・印刷事業」、「知育事業」、および「通信販売事業」を展開しています。
■情報・印刷事業
チラシ、カタログ、パンフレットなどの宣伝印刷物やダイレクトメール、業務印刷物の製造・販売を行っています。また、特殊ラベルやシールの製造、デジタルコンテンツの企画・制作、工場自動化機器の開発・製造・販売なども幅広く手掛けており、多様な顧客ニーズに対応しています。
製品を納品した時点で収益を認識し、顧客から販売代金を受け取るビジネスモデルです。ネット印刷販売事業なども展開しており、事業の運営は主にウイル・コーポレーションやウエーブ、日本特殊加工印刷、ピーディックが行っています。
■知育事業
幼稚園や保育園、学校向けに図書の出版や販売、教材の製作および販売を行っています。少子化の影響を受けるなかでも、学校図書館向け書籍の充実や100円ショップ向け商品の拡大、障害児支援に向けた商品開発などを通じて、教育現場に価値を提供しています。
顧客に書籍や教材を納品した時点で収益を認識し、代金を受け取るビジネスモデルです。一部の返品権付き販売においては、変動対価に関する定めに従って適切に会計処理を行っています。事業の運営は主に鈴木出版やアルバが行っています。
■通信販売事業
一般消費者向けに美容食品や健康補助食品などの通信販売を行っています。受注獲得効率の高い商品の販売に注力し、広告宣伝費を抑えながら効果的な販売活動を推進しており、成功報酬型のインバウンド販売やアウトバウンド販売を積極的に活用しています。
顧客に美容食品や健康補助食品などの商品を納品した時点で収益を認識し、商品代金を受け取るビジネスモデルとなっています。商品の出荷時から納品までの期間が通常であるため、出荷時点で収益を計上しています。事業の運営は主に笹岡薬品通販が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は107億円から85億円へと漸減傾向が続いています。経常利益も過去3期間で減益傾向が続いており、直近の2025年10月期では原材料費や物流費の上昇などが重なり経常赤字が拡大しました。当期利益も赤字幅が広がる厳しい業績推移となっています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 90億円 | 88億円 | 86億円 | 85億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 3億円 | 0.2億円 | -2億円 | -7億円 |
| 利益率(%) | 3.1% | 3.7% | 0.2% | -2.0% | -7.7% |
| 当期利益 | 2億円 | 3億円 | 1億円 | -6億円 | -8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となりましたが、売上総利益は減少幅が大きく、売上総利益率は悪化しています。営業利益も赤字幅が拡大しており、収益性の改善が急務となっています。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 86億円 | 85億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.1% | 14.3% |
| 営業利益 | -2億円 | -6億円 |
| 営業利益率(%) | -2.5% | -7.3% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造発送費が5億円(構成比25.4%)、従業員給料手当が5億円(同24.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の情報・印刷事業はデジタル印刷設備の活用を進めましたが、既存の印刷受注減を補えず微減となりました。知育事業と通信販売事業もそれぞれ減少しており、全体として減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) |
|---|---|---|
| 情報・印刷事業 | 78億円 | 78億円 |
| 知育事業 | 7億円 | 7億円 |
| 通信販売事業 | 0.5億円 | 0.4億円 |
| 連結(合計) | 86億円 | 85億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ウイルコホールディングスは、情報・印刷事業を中心に、事業活動を通じて資金を生み出す一方、投資活動や財務活動で資金を使用しています。営業活動では、事業の損失や投資有価証券の売却益、減損損失などが影響し、資金が流出しました。投資活動では、有価証券の取得や子会社株式の取得で資金が流出しましたが、有価証券の売却で資金が流入しました。財務活動では、借入金の返済や自己株式の取得で資金が流出しましたが、短期借入れで資金が流入しました。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -481百万円 | -669百万円 |
| 投資CF | -563百万円 | -86百万円 |
| 財務CF | -583百万円 | -652百万円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
情報発信事業(情報・印刷事業、知育事業および通信販売事業)を通じて社会に貢献することを経営理念としています。営業と技術の総合力を発揮し、顧客とその先の顧客を視野に入れた製品やサービスを開発・提供することで信頼を満たし、適正な利益を確保しながら「100年後も評価される企業」であることを目指しています。
■(2) 企業文化
「スピード」、「チャレンジ」、「シナジー(融合)」、「チャンス」、「創造力」という5つのキーワードを重視しています。これらを原動力として、スローガンである「安心品質を。」を実現する製品やサービスを提供し、社会における企業の存在価値を高めながら持続的な成長を目指す組織風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
具体的な中長期の数値目標(中期経営計画など)は有価証券報告書に明記されていませんが、継続的な収益力の基準指標として「経常利益額」、成長性の観点から「売上高」を重要な経営指標に設定しています。また、事業ごとの収益性を測る「売上高営業利益率」や、財務の安定性を示す「自己資本比率」を補助指標として管理しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力の情報・印刷事業では、拡大するデジタル印刷市場に対応する受注フローの構築と設備を活かした営業展開を進め、子会社ウエーブとのシナジー創出で受注拡大とコスト削減を図ります。知育事業では100円ショップ向け商品の拡大や絵本のサブスクリプション展開に取り組みます。通信販売事業では成功報酬型の販売手法を活用し、費用抑制と売上拡大の両立を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長のための最も大切な資源は「人的資本」であるという考えのもと、社員一人ひとりが健やかに生き生きと働ける職場環境づくりに努めています。仕事と子育てが両立できる制度の整備に加えて、女性が管理職として活躍でき、性別を問わず自己実現を図りやすい環境の構築を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 43.7歳 | 8.4年 | 4,137,384円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 86.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障害者雇用率(1.9%)、男性の平均勤続年数に対する女性の平均勤続年数の割合(79.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 媒体変化に伴うマーケティングリスク
商業印刷は紙からインターネットへの媒体変化の影響を強く受けており、従来型のチラシなどは需要の縮小や受注単価の低下が見られます。独自の短納期製品の提供や効率的な集客提案を展開していますが、環境変化が想定を超えた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動リスク
商業印刷事業の原価構成において、原材料のうち特に紙の占める割合が高くなっています。今後、原材料価格がさらに上昇した場合、そのコスト増加分を受注価格へ転嫁するまでに時間を要することや、十分な価格反映が困難なケースが生じ、収益を圧迫するリスクがあります。
■(3) 特定の得意先・仕入先への依存リスク
同社グループが保有する特殊な印刷機や加工機により、他社より比較優位にある製品が存在します。顧客ニーズと合致することで集中的な発注・受注が発生しやすく、双方にとって経済的合理性がある反面、特定の得意先や仕入先に取引が偏るリスクがあります。



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