0 編集部が注目した重点ポイント
①主力事業engageをカカクコム社へ事業承継する
2026年4月1日付で、求人プラットフォーム「engage(エンゲージ)」事業を新会社へ分割し、その株式の85.1%を株式会社カカクコムへ譲渡することを決定しました。競争が激化する採用市場において、外部資源を活用した成長加速を目指す大きな決断です。これにより、同事業に関連するキャリア機会は新会社へと移行しますが、エン本体は経営資源を「エン転職」などの主力領域へ集中させる方針です。
②back check買収で活躍・定着領域を強化する
2025年10月より、リファレンスチェック(採用候補者の実績確認)サービスを展開するback check株式会社を新規連結しました。同社の買収により、単なる「入社」にとどまらない「入社後の活躍・定着」を支援するサービスラインナップが拡充されています。新規事業領域での組織拡大が続いており、HRテック分野での専門性を磨きたい人材にとって魅力的なフィールドが広がっています。
③エン転職の再強化に向けた構造改革を完遂する
現在、同社は2026年3月期までの2年間を「構造改革期」と位置づけ、主力メディアであるエン転職の改善プロジェクトを50件以上稼働させています。広告宣伝費や人件費の最適化を進めつつ、ミドル・ハイクラス向け(AMBI、ミドルの転職)の拡充も並行して推進。2030年の過去最高益更新を見据えた、組織の筋肉質化とサービス価値の抜本的な見直しが急ピッチで進んでいます。
1 連結業績ハイライト
出典:2026年3月期 第3四半期 決算説明資料 P.13
2026年3月期第3四半期の累計売上高は437.2億円となりました。一見すると大幅な減収に見えますが、これはITエンジニア派遣における売上計上基準の変更(グロス計上から利益分のみを計上するネット計上への変更)による影響が約46億円含まれており、実質的にはメディア以外の領域で堅調な推移を見せています。利益面では、主力事業「エン転職」での投資抑制による影響や、構造改革に伴う戦略的な費用投入が重なり、営業利益は31.0億円となりました。
通期計画に対する進捗率は、売上高が約70.3%と概ね順調な推移です。一方で、利益項目については、通期の営業利益予想28.0億円を第3四半期時点で既に111%超過達成しています。第4四半期にプロモーション等の追加投資を予定しているため通期予想は据え置かれていますが、収益性は想定を上回るペースで改善しています。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:2026年3月期 第3四半期 決算説明資料 P.15
国内 採用サービス(メディア・エージェント)
事業内容:「エン転職」「AMBI」等の求人メディア運営、および「エン エージェント」「エンワールド・ジャパン」による人材紹介。
業績推移:メディア領域は売上高222.4億円(前年同期比▲15.3%)と苦戦。一方でエージェント領域は売上高79.5億円(+7.6%)と伸長。
注目ポイント:エンワールド・ジャパンにおいてコンサルタントを増員した効果が顕著に現れており、増収増益を達成しています。主力メディアの「エン転職」は、過去の投資抑制の影響から脱しつつあり、利用企業数が底を打って上昇傾向に転じています。また、紹介求人の質においてオリコン顧客満足度1位を獲得するなど、サービスの質的向上が進んでおり、コンサルティング能力を活かしたい人材にとって好機といえます。
採用サービス その他(HRテック)
事業内容:採用管理システム「ゼクウ」やリファレンスチェック「back check」等のHR関連SaaSを提供。
業績推移:売上高17.3億円(+33.5%)、営業利益4.7億円(+41.5%)と極めて高い成長を実現。
注目ポイント:(注:当3Qよりback check社を新規連結)。ゼクウにおける取引単価の向上と新規連結効果により、セグメント全体で大幅な増収増益となりました。従来の求人メディアに頼らないストック型の収益モデルへの転換を象徴する領域です。テクノロジーを駆使して採用の非効率を解決するプロダクトに関わりたいエンジニアやPMの需要が急増しています。
教育・評価サービス
事業内容:オンライン研修「エンカレッジ」や適性テスト、タレントマネジメントシステムの提供。
業績推移:売上高13.3億円(+10.5%)、営業利益3.5億円(前年同期比 ▲2.7%)。
注目ポイント:適性テストの利用拡大により、売上高は二桁成長を記録しました。営業利益の微減は、次世代サービスに向けたサイト開発関連コストの増加による先行投資的な側面が強く、基盤は盤石です。人材育成のデータ活用が社会課題となる中、同社が持つ膨大な口コミ・評価データを新規事業に繋げる戦略が進んでおり、データ分析や教育コンテンツ企画の重要性が高まっています。
海外(インド・ベトナム等)
事業内容:インドでのIT人材派遣(Future Focus Infotech)やベトナム最大の求人サイト「VietnamWorks」等の運営。
業績推移:売上高46.2億円(+5.2%)、営業利益8.8億円(+104.5%)。
注目ポイント:米国事業の成長によりインド拠点でのIT派遣が伸長し、利益率が大幅に向上しました。ベトナムにおいても市場シェア1位を堅持しており、グループ利益の重要な柱へと成長しています。グローバルな環境で事業開発やマネジメントに挑戦したい人材にとって、国内以上にダイナミックな機会が存在する領域です。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:2026年3月期 第3四半期 決算説明資料 P.11
エンは2030年に創業30周年を迎え、過去最高益(116億円)の更新を目指す壮大なロードマップを掲げています。足元の構造改革により、engage事業の切り出しといった「選択と集中」が進んだことで、経営資源の再配分が可能になりました。今後は「エン転職」の再成長と、人材紹介・HRテック領域の拡充という二段構えの戦略で攻めに転じます。
採用における注目点は、組織の「若返り」と「専門性の深化」です。常務執行役員に元吉野家CMOの田中安人氏、執行役員CMOに大手人材会社出身の今井猛氏を新たに招聘するなど、経営層の大幅な強化が行われています。これは、これまでの自前主義を脱し、外部の知見を取り入れて変革を加速させる強い意志の現れです。既存の仕組みを変える「定番革新」をリードできる自律型の人材には、かつてない裁量とチャンスが与えられるでしょう。
4 求職者へのアドバイス
志望動機のヒント
同社は現在、「仕事を大切に。転職は慎重に。」という独自の哲学を再定義し、マッチングの質を高めるための50以上の改善プロジェクトを動かしています。単に「売上を伸ばす」のではなく、「入社後の活躍」という本質的な価値に向き合う姿勢に共感できるかどうかが鍵です。特に、主力事業の構造改革という変革期特有のダイナミズムを自らの手で加速させたい、という意欲は高く評価されるでしょう。HRテックや人材紹介といった成長領域における「専門性の掛け合わせ」によるキャリア形成を語るのが有効です。
面接での逆質問例
・「engage事業の承継により、エン本体の経営資源はどの事業の、どのような具体的施策に重点配分される予定でしょうか?」
・「エン転職の再強化において、50件のプロジェクトが稼働しているとのことですが、現場の社員にはどのような『定番革新』の姿勢が求められていますか?」
・「back check社の買収により、『入社後の活躍・定着』をより定量的に評価できるようになったと思いますが、そのデータは既存の求人メディア事業にどのように還元されていますか?」
5 転職者が知っておきたい現場のリアル(口コミ)
福利厚生はほぼない
福利厚生はほぼないです。家賃補助等もなく、交通費も実費払いです。特段福利厚生で恩恵を受けたことがないので、知らないだけかもしれませんが。コーヒーや食べ物等も特に置いていることはない。
(20代後半・管理関連職・女性) [キャリコネの口コミを読む]※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料
- エン株式会社 2026年3月期 第3四半期 決算説明資料
- エン株式会社 2026年3月期 第3四半期 決算短信〔日本基準〕(連結)



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