エン・ジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エン・ジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する人材サービス企業。求人サイト「エン転職」やHR-Techサービス「engage」などを運営し、「入社後活躍」を掲げています。直近の業績は、国内求人サイトの効率化による利用企業数減などが響き減収となりましたが、投資有価証券売却益等により増益となりました。


※本記事は、エン・ジャパン株式会社の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エン・ジャパンってどんな会社?


求人情報サイトの運営や人材紹介、HR-Techサービスを展開。「入社後活躍」を掲げ、採用支援から定着・活躍支援までを一貫して行う企業です。

(1) 会社概要


2000年にエン・ジャパンを設立し、「[en]社会人の就職情報(現エン転職)」を開設しました。2001年に株式を上場。2013年にはベトナム最大手の求人サイト運営会社等を子会社化し海外展開を加速させました。その後、2016年に採用支援ツール「engage」を提供開始、2021年にはセールス・マーケティング支援の「エンSX」事業を開始するなど、人材領域を中心に多角化を進めています。

同社の連結従業員数は3,430名(単体2,254名)です。筆頭株主は創業者で現会長兼社長の越智通勝氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業者のリーダーシップのもと、独自のビジネスモデルを展開しています。

氏名 持株比率
越智 通勝 10.73%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.60%
日本カストディ銀行(信託口) 8.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長兼社長は越智通勝氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
越智 通勝 代表取締役会長兼社長 日本ブレーンセンター代表取締役を経て、2000年に同社設立、代表取締役に就任。会長職を経て2025年4月より現職。
河合   恩 常務取締役執行役員 1990年日本ブレーンセンター入社。同社ブランド企画室長等を経て、2021年より常務取締役。2024年8月よりSI採用推進室長。
鈴木 孝二 取締役 1995年日本ブレーンセンター入社。2008年から2025年まで同社代表取締役社長を務め、現在はエンワールド・ジャパン代表取締役会長等を兼任。
寺田 輝 之 取締役執行役員デジタルプロダクト開発本部長 2002年入社。サイト企画部部長等を経て、2014年よりデジタルプロダクト開発本部長。2024年7月よりAIテクノロジー室長を兼務。
岩﨑 拓 央 取締役執行役員HRメディア&テクノロジー採用支援事業部長 2003年入社。中途求人メディア事業部長、engage事業部長等を経て2024年4月より現職。エンSX代表取締役社長を兼任。
沼山 祥 史 取締役執行役員人材紹介事業部長 2005年入社。派遣会社支援事業部長、人財プラットフォーム事業部事業部長等を経て2024年4月より現職。


社外取締役は、坂倉亘(One Capital取締役COO)、林有理(元リクルート編集長・元四條畷市副市長)、井垣太介(弁護士)、石川俊彦(公認会計士)、西川岳志(パナソニックコネクト代表取締役執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「人材サービス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) HR-Tech engage


採用支援ツール「engage(エンゲージ)」を提供しています。企業は無料で採用サイト作成や求人掲載ができ、求職者は多様な求人に応募可能です。
収益は、主に採用支援ツールの有料機能利用料として顧客企業から受け取ります。運営は主にエン・ジャパンが行っています。

(2) 人財プラットフォーム


「AMBI(若手ハイキャリア向け)」「ミドルの転職(ミドル世代向け)」などの求人サイトを運営しています。人材紹介会社や求人企業がデータベース上の求職者にスカウトを送るプラットフォームです。
収益は、人材紹介会社や一般企業から、システム利用料や成果報酬型の紹介料として受け取ります。運営は主にエン・ジャパンが行っています。

(3) 国内求人サイト


総合転職情報サイト「エン転職」、派遣情報サイト「エン派遣」、アルバイト情報サイト「エンバイト」などを運営しています。
収益は、求人掲載を希望する顧客企業からの広告掲載料です。運営は主にエン・ジャパンが行っています。

(4) 国内人材紹介


「エン エージェント」や「en world」ブランドで人材紹介サービスを提供しています。キャリアパートナーが求職者と企業の間に立ち、マッチングを支援します。
収益は、入社決定時に成功報酬として顧客企業から受け取る紹介料です。運営はエン・ジャパンおよびエンワールド・ジャパンが行っています。

(5) 海外事業


ベトナムやインドにおいて求人サイト運営や人材紹介、IT人材派遣を行っています。「Vietnam Works」や「Navigos Search」などが主要ブランドです。
収益は、求人広告掲載料、人材紹介料、人材派遣料などです。運営はNavigos Group Vietnam Joint Stock CompanyやFuture Focus Infotech Pvt. Ltd.などの海外子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の推移を見ると、売上高は2023年3月期まで拡大傾向にありましたが、その後は横ばいから微減で推移しています。一方、利益面では2023年3月期に一時低下したものの、直近2期は回復傾向にあります。特に当期は投資有価証券売却益の計上などにより、当期純利益が大きく増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 427億円 545億円 677億円 677億円 657億円
経常利益 79億円 101億円 41億円 54億円 59億円
利益率(%) 18.6% 18.6% 6.0% 7.9% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 35億円 66億円 27億円 42億円 76億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となりましたが、コストコントロール等により営業利益率は改善しています。売上原価率は約20%と低く、高い売上総利益率を維持しています。販管費の抑制も利益率向上に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 677億円 657億円
売上総利益 540億円 524億円
売上総利益率(%) 79.7% 79.8%
営業利益 52億円 59億円
営業利益率(%) 7.6% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が153億円(構成比32.9%)、給料及び手当が82億円(同17.7%)を占めています。広告宣伝費の抑制が販管費全体の減少につながっています。

(3) セグメント収益


HR-Tech engageや人財プラットフォームなどの注力領域は増収となりましたが、主力の国内求人サイトは広告宣伝費の抑制による利用企業数減少で減収となりました。海外事業も契約形態変更の影響等で減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
HR-Tech engage 72億円 97億円
人財プラットフォーム 71億円 78億円
国内求人サイト 294億円 250億円
国内人材紹介 99億円 99億円
その他 33億円 51億円
海外 116億円 101億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、株主価値向上に資する戦略的な投資と株主還元強化を基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や有価証券売却益等によりプラスとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却や預金の払戻しによる収入があったものの、固定資産取得や預金等によりマイナスとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによりマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 64億円 81億円
投資CF -41億円 -8億円
財務CF -79億円 -30億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「誰かのため、社会のために懸命になる人を増やし、世界をよくする」というパーパス(存在意義)を掲げています。また、「Inner Calling & Work Hard」をスローガンとし、人と企業のより良い出会いを生み出し、社会の活力向上に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「入社後活躍」を重視する文化を持っています。単なるマッチングにとどまらず、入社した人が定着し活躍することこそがゴールであるという考え方です。また、従業員一人ひとりがいかなる環境でも活躍できる普遍的な能力「CareerSelectAbility®(キャリア自己選択力)」を高めることを推奨しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年3月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画を策定していましたが、事業環境の急速な変化を受け、経営方針および事業戦略の大幅な見直しが必要と判断しています。新たな経営体制への移行とともに、事業ポートフォリオの再構築などを進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


深刻化する労働力不足を背景に、人材の流動化や獲得競争が激化すると予測しています。これに対応するため、事業ポートフォリオの再構築、コーポレート・ガバナンスの強化、経営意思決定の迅速化を図ります。また、中長期的には成長が見込まれるインド・ベトナム等の海外事業や、テクノロジー活用による生産性向上にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人ひとりの「CareerSelectAbility®(キャリア自己選択力)」の向上を育成方針の柱としています。これは環境変化に関わらず活躍できる普遍的な能力を指し、その獲得・発揮度合いを人事評価基準としています。多様な働き方の推進や女性活躍支援プロジェクト「WOMenLABO」なども展開しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 30.8歳 4.3年 5,331,000円


※平均年間給与は、1年以上継続して就業した従業員の給与、賞与及び基準外賃金の平均です。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.4%
男性育児休業取得率 23.9%
男女賃金差異(全労働者) 72.1%
男女賃金差異(正規) 88.0%
男女賃金差異(非正規) 74.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CareerSelectAbility®のスコアが上がった従業員の比率(54.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気の変動、雇用情勢及び感染症について


人材ビジネスは景気動向や雇用情勢の影響を受けやすく、想定を超えた経済環境の悪化や大規模な感染症の流行があった場合、求人需要の減退などを通じて業績に影響を与える可能性があります。

(2) 個人情報保護について


求職者等の個人情報を多数取り扱っているため、外部漏洩や不正利用等のトラブルが発生した場合、法的責任やブランドイメージの毀損により、業績に影響を与える可能性があります。

(3) M&Aについて


事業拡大の一環としてM&Aを実施していますが、偶発債務の発生や事業環境の変化により計画通りの展開ができなかった場合、のれん等の減損処理が発生し、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 内部管理体制の充実及び法令遵守について


国内外で子会社が増加する中、不正行為や法令違反のリスクが高まっています。内部統制システムや監査体制を整備していますが、これらが十分に機能しない場合や従業員の不正等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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