※本記事は、エン株式会社 (旧会社名 エン・ジャパン株式会社) の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
エンは、人材採用から入社後の活躍までを一貫して支援する人材サービス事業を展開しています。求人情報サイトの運営、人材紹介、教育評価など多岐にわたるサービスを同社グループ各社とともに提供しています。
単体従業員数は2,014名、連結従業員数は3,191名です。同社グループの報告セグメントは人材サービス事業の単一セグメントとなっています。
主な国内グループ会社は、(連結子会社)エンワールド・ジャパン(人材紹介・人材派遣)などです。
同社グループは構造改革の一環としてengage事業の譲渡を決定しました。また、リファレンスチェックサービスを展開するback checkを新規連結しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
エンは人材サービス事業を展開しており、人材の成長と活躍を重視する企業文化がうかがえます。従業員のキャリア形成を支援し、多様な働き方を推進する環境が整っていることが特徴です。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は平均年齢が比較的若く、勤続年数も平均的な水準を示しています。これは、若手社員が活躍し、キャリアを築いていく機会が多い環境であることを示唆しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,401,000円 |
| 平均勤続年数 | 4年11ヶ月 |
| 平均年齢 | 31.0歳 |
| 単体従業員数 | 2,014人 |
| 連結従業員数 | 3,191人 |
| 単体のグループ内比率 | 63.1% |
一部の連結子会社は、従業員の退職給付に充てるため、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両制度を採用しています。確定給付制度では退職一時金制度を採用しており、給与と勤務期間に基づいた一時金が支給されます。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社は、持続的な企業価値向上を実現する上で、人材を最も重要な経営資本の一つと位置付けています。従業員一人ひとりの「CareerSelectAbility®」(キャリアの自己選択力)を高め、その発揮を通じて生産性、付加価値及び収益性の向上につなげることを人材戦略の基本方針としています。
人事制度は、考え方・能力連動、成果連動、市場水準をふまえた方針を基本としています。その中で、CareerSelectAbility®の獲得・発揮度合いを人事評価の重要な指標として位置付け、報酬に反映することで、個人の成長と事業成果の創出を連動させています。
従業員の持続的な能力開発を支援するため、仕事のアサインメント、上司・部下間のコミュニケーション促進、各種人事制度及び教育カリキュラムを提供しています。また、20代からマネジメントに挑戦できる「チャレンジ管理職制度」や、出産・育児等のライフイベントを経てもキャリアを断絶させない「スマートグロース制度」を設け、多様な人材が能力を発揮し継続的に成長できる環境を整備しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 23.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 50.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 74.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 87.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 70.9% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
エンは、人材サービス事業を主軸に、求人情報サイトの運営や人材紹介、教育評価を通じて、企業の「人材採用・入社後活躍」を支援しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
エンは人材サービス事業の単一セグメントで、求人情報サイトの運営、人材紹介、教育評価を通じて、企業の「人材採用・入社後活躍」を支援しています。同社グループは、求人情報サイト「エン転職」や人材紹介サービス「エージェント」を主力としています。また、採用管理システムを提供するゼクウやリファレンスチェックサービスを展開するback check、タレントマネジメントシステムやオンボーディングサービスも手掛けています。
収益は、これらのサービス利用料や成功報酬などから得ています。当連結会計年度は、事業ポートフォリオの見直しの一環としてengage事業の譲渡を決定しました。国内では「エン転職」が利用企業数を増やしたものの減収となり、「engage」も減収となりました。
一方で、グローバル人材紹介を展開する「エンワールド・ジャパン」を含むエージェント事業は、コンサルタントの増員や生産性改善により増収となりました。採用管理システムやリファレンスチェックサービス、タレントマネジメントシステムなどの教育・評価サービスも売上を伸ばしています。海外事業では、ベトナム国内の景気回復や米国でのITエンジニア派遣事業の成長により増収となりました。同社グループの売上高は日本が中心ですが、アジア地域からも収益を得ています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの売上高は直近5期で変動が見られます。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益も同様に推移しています。当期は売上高、各利益ともに前期から減少しました。前期は投資有価証券売却益を計上しましたが、当期は重要な特別利益の計上がありませんでした。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 545億円 | 677億円 | 677億円 | 657億円 | 591億円 |
| 経常利益 | 101億円 | 40.7億円 | 53.7億円 | 59.4億円 | 41.9億円 |
| 経常利益率 | 18.6% | 6.0% | 7.9% | 9.0% | 7.1% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 66.3億円 | 26.9億円 | 42.0億円 | 76.3億円 | 26.2億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 147.71 | 60.98 | 102.38 | 186.76 | 66.42 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
当期の連結従業員1人あたり売上高は前期から減少しました。同様に、従業員1人あたり営業利益も前期から減少しています。これは、当連結会計年度における売上高および営業利益の減少が影響していると考えられます。これらの指標は、組織全体の効率性や収益創出能力の傾向を示すものとなります。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 19.1百万円 | 18.5百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 1.7百万円 | 1.2百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務状況は、事業活動で得た資金を成長投資に充てている状況を示しています。これは、将来に向けた積極的な事業展開を進めている段階にあることを表しています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率が63.1%とプライム市場の非製造業平均を大きく上回る水準を維持しています。これは強固な財務体質を示しています。一方で、ROE(自己資本利益率)は7.7%とプライム市場平均を下回っており、前期から減少しています。手元資金である現金及び預金は185億円となっています。これらの状況は、同社グループが安定した経営基盤を持ちつつ、収益性の改善と資金の効率的な活用が今後の課題であることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 376億円 | 318億円 |
| 自己資本比率 | 65.0% | 63.1% |
| ROE(自己資本利益率) | 22.2% | 7.7% |
| 現金及び預金 | 275億円 | 185億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは35.5億円のプラスとなりました。これは税金等調整前当期純利益や減価償却費があったこと等によるものです。しかし、前期と比較すると減少しています。投資活動によるキャッシュ・フローは65.2億円のマイナスとなり、無形固定資産の取得や定期預金の預入による支出が主な要因です。これは前期よりもマイナス幅が拡大しています。
財務活動によるキャッシュ・フローは80.5億円のマイナスとなり、自己株式の取得による支出が主な要因です。その結果、本業で得た資金を投資に充てた後のフリーキャッシュ・フローは29.7億円のマイナスとなりました。この状況は、同社グループが事業活動で得た資金を、将来の成長に向けた投資に積極的に振り向けている段階にあることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 80.6億円 | 35.5億円 |
| 投資CF | △8.4億円 | △65.2億円 |
| 財務CF | △30.2億円 | △80.5億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 72.2億円 | △29.7億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループの事業領域においては、市場規模の縮小や成長鈍化、または各種サービスの競争力低下や価格下落が業績に影響を与える可能性があります。また、事業を展開する市場には多数の競合他社が存在しており、競合他社が同水準のサービスを低い価格で提供した場合や斬新なサービスを提供した場合、同社グループのシェアが下がり業績に影響を与えるリスクがあります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、優秀な人材の確保・育成に重点的に取り組んでいます。しかし、必要な人材を確保・育成できない場合や事業ノウハウを持った人材が社外へ流出した場合には、同社グループの事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
エンは、「誰かのため、社会のために懸命になる人を増やし、世界をよくする」というパーパス(存在意義)のもと、人と企業の“縁”に関わるビジネスを展開しています。このセクションでは、同社グループがどのような価値観や文化を大切にし、どのような未来を目指しているのかをご紹介します。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
エンは、「誰かのため、社会のために懸命になる人を増やし、世界をよくする」というパーパス(存在意義)を掲げています。
同社グループは、人と組織の課題解決を使命としています。
事業活動を通じて人材と企業の最適なマッチングを実現し、社会全体の生産性向上と持続的成長に貢献することを目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
エンは、「誰かのため、社会のために懸命になる人を増やし、世界をよくする」というパーパスのもと、事業を展開しています。
同社グループは、地球環境の保全や、固定観念にとらわれないイノベーティブな事業創造のための多様な人材の活躍を推進しています。
サステナビリティ課題を事業戦略と一体的に位置付け、持続的な企業価値向上に取り組む姿勢を示しています。
特に「働きがいと経済成長」および「質の高い教育の提供」を重要課題(マテリアリティ)として特定しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、国内人材ビジネス市場における構造的な労働力不足の深刻化や人材獲得競争の激化を経営環境として認識しています。
雇用の流動性の高まりやサービス選択の多様化・高度化により、人材マッチングの難易度が一段と高まっている状況です。
AI技術の急速な進展とAI・デジタル人材の需要拡大も、人材需給の偏在を強める傾向にあると捉えています。
これらの事業環境の変化を踏まえ、同社グループは経営方針および事業戦略の抜本的な見直し(構造改革)を進めています。
今後は、事業ポートフォリオの再構築、コーポレート・ガバナンスの強化、意思決定の迅速化を推進する方針です。
また、AIをはじめとするテクノロジー活用を積極的に進めることを重点テーマとしています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
エンは、取締役の職務執行の監査等を担う監査等委員を取締役会の構成員とすることで、監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンスの充実を図っています。公正な経営システム作りに取り組むことで、健全な成長を目指す体制です。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
エンの株主構成を見ると、代表取締役会長兼社長である越智通勝氏が筆頭株主として名を連ねています。また、一般財団法人エン人材教育財団も上位株主となっており、創業家や関連団体が同社グループの経営を支える資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 越智 通勝 | 11.61% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.16% |
| 一般財団法人エン人材教育財団 | 8.10% |
なお、前事業年度末において主要株主でなかった日本マスタートラスト信託銀行は、当事業年度末現在では主要株主となっています。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は7名(男性6名・女性1名)で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役会長兼社長は越智通勝氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 越智 通勝 | 代表取締役会長兼社長 | 1983年8月株式会社日本ブレーンセンター設立、代表取締役。2000年1月同社設立、2000年12月同社代表取締役。2025年4月より同社代表取締役会長兼社長より現職。 |
| 寺田 輝之 | 取締役AI・プロダクト開発室長 | 2002年4月同社入社。2015年4月同社執行役員。2021年6月同社取締役執行役員。2026年4月より同社取締役、2026年5月より同社AI・プロダクト開発室長より現職。 |
| 中島 純 | 取締役執行役員経営管理室長 | 2006年4月同社入社。2021年4月同社執行役員。2025年6月より同社取締役執行役員、2026年4月より同社経営管理室長より現職。 |
社外取締役は、林有理氏(株式会社アイネック社外取締役)、井垣太介氏(弁護士法人西村あさひ法律事務所法人社員弁護士・監査等委員)、石川俊彦氏(株式会社ビジネスブレイン太田昭和取締役会長・監査等委員)、西川岳志氏(パナソニック コネクトグループ エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社制度を採用しています。監査等委員会は3名の社外取締役で構成され、取締役会の監督機能を強化しています。また、任意の指名・報酬委員会を設置し、社外取締役が過半数を占めることで、取締役の人事・報酬等に関する独立性・客観性を高めています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
エンでは、取締役(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く)の報酬は、基本報酬、業績連動報酬(賞与)、中長期的な業績連動報酬としての株式報酬型ストックオプションによって構成されています。株主利益と連動したインセンティブとして機能するよう設計されており、指名・報酬委員会が確認・検証を行っています。監査等委員である取締役の報酬は、経営に対する独立性・客観性を重視する観点から、定期同額給与(基本報酬)のみで構成されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 7名 | 1.2億円 | 16.7百万円 |
| 社外役員 | 5名 | 21百万円 | 4.2百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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