エン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するエンは、求人サイト「エン転職」や人材紹介などを展開する人材サービス事業を主力としています。直近の業績では、一部事業の譲渡決定や投資適正化の影響などにより、売上高は591億円の減収、営業利益は40億円の減益となりましたが、主力サービスでの利用企業数増加等を図っています。


※本記事は、エン株式会社の有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エンってどんな会社?


総合転職情報サイトなどの求人メディア運営と、人材紹介等の採用支援サービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


2000年1月に求人求職情報サイトの企画・開発等を目的として設立され、「エン転職」をオープンしました。2001年6月に上場し、その後、人材紹介サービスや新卒学生向けスカウトサービスを開始しています。海外でもベトナムやインドで人材関連会社を子会社化し、グローバルに事業を拡大しています。

従業員数は連結で3,191名、単体で2,014名です。筆頭株主は創業者の越智通勝氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は人材育成を目的とする財団法人となっています。

氏名 持株比率
越智通勝 11.61%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.16%
一般財団法人エン人材教育財団 8.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役会長兼社長は越智通勝氏で、社外取締役比率は57.1%となっています。

氏名 役職 主な経歴
越智通勝 代表取締役会長兼社長 1983年日本ブレーンセンター設立、代表取締役。2000年同社設立。エン人材教育財団代表理事などを経て、2025年4月より現職。
寺田輝之 取締役AI・プロダクト開発室長 2002年同社入社。サイト企画部部長、デジタルプロダクト開発本部長、AIテクノロジー室長などを経て、2026年5月より現職。
中島純 取締役執行役員経営管理室長 2006年同社入社。派遣会社支援事業部事業部長、ゼクウ代表取締役社長、経営戦略本部長などを経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、林有理(元大阪府四條畷市副市長)、井垣太介(西村あさひ法律事務所法人社員弁護士)、石川俊彦(元ビジネスブレイン太田昭和社長)、西川岳志(パナソニックコネクト副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「人材サービス事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) メディア事業

総合転職情報サイト「エン転職」や若手ハイキャリア特化型「AMBI」、アルバイト求人「エンバイト」などの求人サイトを運営し、企業と求職者のマッチングを支援しています。収益は主に企業からの求人広告の掲載料金などで構成されており、契約期間にわたりサービスを提供することで対価を受け取ります。運営は主に同社が行っています。

(2) エージェント(人材紹介)事業

社員の中途採用ニーズを持つ企業に対し、専任のキャリアパートナーが転職希望者を紹介する人材紹介サービス「エン エージェント」などを提供しています。転職希望者の入社が成立した時点で紹介手数料を受け取る成果報酬型の収益モデルとなっています。運営は同社のほか、グローバル人材を扱うエンワールド・ジャパンが担当しています。

(3) 海外事業

インドやベトナム等の海外市場において、求人サイトの運営や人材紹介サービスのほか、IT・テクノロジー分野を中心とした人材派遣サービスを提供しています。人材派遣サービスでは、労働力の提供に応じて派遣期間の稼働実績をベースに派遣手数料を受け取る仕組みです。ベトナムではNavigos Group、インドではFuture Focus Infotech等が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は677億円規模まで成長した後に投資適正化等により直近で591億円となりました。経常利益は50億円前後で推移していましたが、直近では42億円となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 545億円 677億円 677億円 657億円 591億円
経常利益 101億円 41億円 54億円 59億円 42億円
利益率(%) 18.6% 6.0% 7.9% 9.0% 7.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 73億円 26億円 29億円 76億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い売上総利益も減少しましたが、売上総利益率は80%台の高い水準を維持しています。また、費用効率化を進めたものの、減収幅が大きく営業利益は減少傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 657億円 591億円
売上総利益 524億円 496億円
売上総利益率(%) 79.8% 83.9%
営業利益 59億円 40億円
営業利益率(%) 9.0% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が147億円(構成比32%)、給与手当が123億円(同27%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は人材サービス事業の単一セグメントであるため、事業全体の売上高の推移を示しています。前期から当期にかけて減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
人材サービス事業 657億円 591億円
連結(合計) 657億円 591億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであることから、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 81億円 36億円
投資CF -8億円 -65億円
財務CF -30億円 -80億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「誰かのため、社会のために懸命になる人を増やし、世界をよくする」というパーパス(存在意義)を掲げています。「人」と「企業」の縁に関わる領域でビジネスを展開し、事業活動を通じて人材と企業の最適なマッチングを実現することで、社会全体の生産性向上と持続的成長に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、従業員一人ひとりの「CareerSelectAbility®(キャリア自己選択力)」を高めることを重視しています。いかなる状況においても自身が望むキャリアを選べる普遍的な能力の獲得を後押しし、その発揮度合いを人事評価の基準としています。これにより組織の変化への適応力を高めています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年3月期を最終年度とする中期経営計画のもと、事業環境の急速な変化を踏まえた経営方針および事業戦略の抜本的な見直し(構造改革)を進めています。人材獲得競争が激化する中で、事業ポートフォリオの見直しやコスト削減、および成長投資の3つを最重要戦略として位置づけています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の競争優位性を左右する重要な要素としてAIをはじめとするテクノロジーの活用を積極的に推進しています。AIの進展をサービス高度化と提供価値拡張のドライバーとし、データ活用の高度化や業務効率化を図ります。また、経済成長が著しいインドやベトナム等、海外での高度人材ニーズの拡大にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人ひとりのCareerSelectAbility®の獲得・発揮を人事評価の重要な指標とし、報酬に反映させることで個人の成長と事業成果の創出を連動させています。また、20代からマネジメントに挑戦できる制度や、出産・育児を経てもキャリアを断絶させない制度を設け、多様な人材が成長できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 31.0歳 4.9年 5,401,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.7%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.5%
男女賃金差異(正規雇用) 87.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CareerSelectAbility®のスコアが上がった従業員の比率(51.6%)、社内電子化割合(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気の変動と雇用情勢の影響

同社の事業は景気動向や雇用情勢の影響を受けやすく、想定を超えた経済環境の変化や大規模な感染症の流行等が発生した場合、企業の採用需要が減少し、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 個人情報保護と情報漏洩

大量の個人情報を扱うため、外部漏洩や不適切な利用、改ざん等の重大なトラブルが発生した場合、法的責任を課せられるだけでなく、ブランドイメージが毀損し事業運営に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 技術開発に伴うサービスの陳腐化

インターネット関連事業は技術革新が著しく、AI等の新技術を用いたサービスの提供が求められます。他社が革新的な新サービスを開発し、同社の対応が遅れた場合、業界内での競争力が低下するリスクがあります。

(4) 検索エンジンへの集客依存

インターネットユーザーの多くは検索サイトを利用して情報を入手しています。検索エンジン運営者による上位表示方針の変更やシステムトラブル等により検索結果が優位に働かない場合、集客効果が減退する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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