NSグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NSグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NSグループは東証プライム上場企業です。主力は家賃債務保証事業と集金代行サービスです。業績は新規保証料や更新保証料の増加により営業収益298億円、当期利益63億円と増収増益トレンドにあります。AI審査導入による業務効率化も寄与しており、事業用保証領域の拡大で持続的な成長を目指しています。


※本記事は、NSグループの有価証券報告書(第5期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. NSグループってどんな会社?


家賃債務保証と集金代行サービスを主力事業とし、不動産賃貸市場のインフラを担う企業です。

(1) 会社概要


1997年に日本セーフティーを設立し、家賃債務保証事業を開始しました。2021年にベインキャピタルグループのファンドが設立したBCJ-54が全株式を取得し、完全子会社化を実施しました。2023年にNSグループへ商号変更し、2025年12月には東京証券取引所プライム市場への上場を果たしています。

従業員数は連結で788名、単体で65名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるBVアセットで、第2位はファンドの常任代理人であるSMBC日興証券、第3位は創業者の大谷彰宏氏となっています。

氏名 持株比率
BVアセット 45.00%
BCPE SAY CAYMAN, L.P.(常任代理人 SMBC日興証券) 5.22%
大谷彰宏 4.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は大塚孝之氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
大塚孝之 代表取締役社長 リクルート等を経てGEジャパン執行役員などを歴任し、2024年12月に代表取締役社長に就任。2025年10月より現職。
鳳山一洋 専務取締役 1999年に旧日本セーフティーに入社し取締役に就任。常務や専務などを経て、2025年10月より現職。
清水信 取締役相談役 旧日本セーフティー代表取締役などを経て、2023年12月に取締役相談役に就任し、2025年10月より現職。


社外取締役は、茂野祥子(弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー)、松澤元雄(モリト社外取締役)、吉川友貞(プライムロード代表取締役社長)、松尾信吉(ネクストリープ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「家賃債務保証事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

家賃債務保証事業


入居者の連帯保証人となり、家賃等の保証を約束する家賃債務保証サービスや、家賃の集金業務を代行する集金代行サービスを提供しています。居住用、事業用、駐車場などの幅広い賃貸物件の入居者や、物件を管理・所有する不動産会社および賃貸人が主な顧客です。

収益源は、入居者から受け取る契約時の新規保証料および更新保証料のほか、集金代行手数料です。独自の審査ノウハウとAI技術を活用した滞納予測モデルにより、高い審査通過率と回収率を両立しています。事業の運営は主に日本セーフティーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績は、新規保証料の増加や事業用保証分野の成長を背景に増収増益の傾向が続いています。利益率も30%前後と高い水準を維持しており、安定した収益基盤を確立しています。

項目 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 239億円 263億円 298億円
税引前利益 68億円 88億円 94億円
利益率(%) 28.3% 33.4% 31.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 51億円 57億円 63億円

(2) 損益計算書


売上収益は安定して伸長しており、営業利益も増加傾向にあります。回収率の高さを背景に、貸倒関連費用や訴訟費用を適切にコントロールしていることが収益の増加に寄与しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 263億円 298億円
営業利益 88億円 99億円
営業利益率(%) 33.5% 33.1%


販売費及び一般管理費(営業費用)のうち、支払手数料が60億円(構成比30%)、従業員給付費用が59億円(同29%)、貸倒関連費用が36億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは家賃債務保証事業の単一セグメントです。新規契約件数の増加や家賃単価の上昇により新規保証料が伸びたほか、更新保証料や集金代行手数料も順調に推移し、全社的な増益につながっています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスであり、営業利益で借入返済を進めつつ投資を手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 43億円 83億円
投資CF 0億円 -5億円
財務CF -11億円 -72億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「つくるぞ、新・新生活」というミッション(MISSION)を掲げています。また、「新生活を、もっと新しく、もっと便利に、そしてワクワクを」というビジョン(VISION)の実現を目指し、幅広く安心して利用できる賃貸住宅市場の成長に貢献し、信頼される企業となることを使命としています。

(2) 企業文化


同社グループでは、全ての役員および従業員がコンプライアンスを遵守することが重大な社会的責務であると考えています。これを経営上の最重要事項と位置づけ、法令や社内規程に留まらず社会規範に至るまで全てのルールを遵守する健全な企業文化を重視し、安定的な業務運営と社会からの信頼獲得に努めています。

(3) 経営計画・目標


経営管理上の最も重要な指標として「調整後EBITDA」を設定しています。また、客観的な事業指標として申込件数、契約件数および代位弁済した際の債権回収率を掲げています。さらに、資本効率の向上を図るためROE(自己資本当期純利益率)も重要な経営指標と位置づけています。

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な成長に向けて、住居用保証での安定的な収益拡大を図りつつ、事業用保証や豊富な顧客データを活用した新規事業の推進を目指しています。また、AIを活用した審査モデルによる与信精度の向上と回収率の維持、DX推進による業務効率化、M&Aや業務提携を活用した市場シェアの拡大に注力しています。

* 売上高:2027年 約365億円
* 契約件数:2027年 約385千件

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な企業価値の向上に向けて、性別や国籍、キャリアに拘らない多様な人材の採用と育成を推進しています。従業員の成長と長期的なキャリア形成を支援するため、各種研修やe-ラーニングを通じた学びの機会を提供し、一人ひとりがやりがいを持って働ける柔軟な労働環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 35.2歳 5.4年 5,171,376円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.4%
男性育児休業取得率 56.3%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 151.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(2029年30%)、障碍者雇用数目標(2029年25名)、男性育休取得率目標(2029年30%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 賃貸不動産市場の動向


同社の家賃債務保証サービスは、日本の賃貸不動産市場、特に住宅用不動産市場の影響を大きく受けます。人口動態の変化などにより賃貸不動産市場が低迷した場合、持続的な円安などのマクロ経済要因と相まって、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制の導入と法改正


現状では家賃債務保証事業に対する法的規制は存在しませんが、今後、新たな法的規制の導入や既存法令の改正が行われた場合、事業活動に制約が生じたり、保証サービスへの需要が減少したりすることで、同社の業績やキャッシュ・フローに影響を与えるリスクがあります。

(3) 他社の新規参入と競争激化


家賃債務保証事業は許認可の面で参入障壁が低く、特に小規模な不動産会社向けの市場では販売手数料や審査プロセスの簡便性を巡る競争が激化しています。大規模な顧客データを持つ競合が参入し、より迅速で正確な審査を実施した場合、同社の競争力や収益性に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報漏洩とサイバー攻撃


同社は個人情報を含む多くの顧客情報や機密情報を取り扱っています。情報セキュリティ対策を講じていますが、サイバー攻撃の高度化や不正アクセス、その他の要因で情報漏洩が発生した場合、損害賠償責任の負担や行政処分、社会的信用の低下につながり、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。