※本記事は、株式会社ムービン・ストラテジック・キャリアの有価証券報告書(第26期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ムービン・ストラテジック・キャリアってどんな会社?
ハイエンド人材領域に特化した人材紹介サービスを提供し、プロフェッショナルファームへの転職支援を行う企業です。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1997年に設立されたムービン(現リオディオス)に遡ります。1999年よりコンサルティング業界特化の人材コンサルティング事業を開始し、2000年にムービン・ストラテジック・キャリアが設立されました。2023年にリオディオスから転職支援サイト等の事業を譲受し、2025年10月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
従業員数は連結で124名、単体で90名です。筆頭株主は創業者である神川貴実彦氏の資産管理会社であるリオディオスで、第2位は神川貴実彦氏本人、第3位は神川宏子氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| リオディオス | 29.02% |
| 神川貴実彦 | 20.14% |
| 神川宏子 | 8.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は神川貴実彦氏が務めています。取締役3名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 神川貴実彦 | 代表取締役社長 | 1995年ボストン・コンサルティング・グループ入社。1997年ムービン(現リオディオス)設立、代表取締役。2000年同社設立、代表取締役社長に就任し現職。 |
| 西田和雅 | 取締役 | 2008年日本政策投資銀行入行。2010年同社入社。2019年より現職。 |
社外取締役は、椎名茂(元プライスウォーターハウスクーパース社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「人材紹介事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■人材紹介事業
コンサルティングファームをはじめとしたプロフェッショナルファームへの人材紹介サービスを提供しています。特に経営コンサルタントの採用支援に強みを持ち、求人企業の条件に合致するハイエンド人材を、自社データベースや外部の転職スカウトサイトを通じてマッチングし紹介しています。
収益源は求職者が求人企業に入社した時点で発生する完全成功報酬制の紹介手数料です。長年の実績により培ったブランド力による自社メディア経由での集客を主力としており、事業の運営はムービン・ストラテジック・キャリアおよび連結子会社のエージェント1が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に直近の事業年度では、キャリアアドバイザーの人員増加や成約単価の上昇が寄与し、売上高、利益ともに大幅な伸びを記録しており、利益率も40%を超える高水準で推移しています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 23.2億円 | 23.9億円 | 38.0億円 |
| 経常利益 | 5.1億円 | 8.6億円 | 17.6億円 |
| 利益率(%) | 22.0% | 36.2% | 46.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.4億円 | 5.1億円 | 9.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益も順調に増加しています。自社データベースを活用した集客が主力であるため、売上総利益率は95%を超える極めて高い水準を維持しており、収益性の高いビジネスモデルであることがわかります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 23.9億円 | 38.0億円 |
| 売上総利益 | 22.9億円 | 36.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 95.7% | 95.3% |
| 営業利益 | 8.6億円 | 17.6億円 |
| 営業利益率(%) | 36.1% | 46.4% |
販売費及び一般管理費18.6億円のうち、給料及び手当が6.8億円(構成比36%)、賞与が3.6億円(同20%)を占めています。売上原価は1.8億円で、外部媒体に対するデータベース利用料が主な内訳となっています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「積極型」のパターンを示しています。営業で利益を出し、投資を行う状態です。なお、財務CFのプラスは新株発行(上場)による資金調達が主な要因です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.8億円 | 17.8億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -1.4億円 |
| 財務CF | -0.1億円 | 6.8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は41.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.9%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を大きく上回る優良な水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「リーダーが育つプラットフォームの創造」をビジョンに掲げ、真のリーダーが育つプラットフォームを創造することで日本社会の発展に貢献することを目指しています。リーダーを目指すハイエンド人材に対し、人材紹介サービスを通じてプロフェッショナルファームでの成長機会を提供することで、社会課題の解決と新しい価値の創出に貢献しています。
■(2) 企業文化
同社は求職者に対して、一度きりの転職支援に留まらない「一生涯のキャリアパートナー」として寄り添う姿勢を重視しています。登録者起点でのサービス提供を心掛け、中長期的なキャリア形成を見据えた継続的なフォローアップや情報提供を行うことで、求職者との強固な信頼関係を築く文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は独自のポジショニングを強固なものとするため、売上高を重要な経営指標と位置づけています。また、売上向上を牽引するキャリアアドバイザーの人数や、ハイエンド人材とのネットワーク構築状況を示す自社データベースの累計登録者数を重要KPIとして設定し、適正な利益確保に向けて営業利益も重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、事業を牽引する人材の採用強化と育成を推進する「人的資本投資」を最優先の課題としています。また、動画やSNS等の多様なチャネルを活用した「自社メディアの集客力強化」や、潜在的な転職ニーズに早期対応する「自社データベースの更なる活用」、既存領域の拡大に向けた「M&Aの活用」を重点施策として展開しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業拡大を牽引する優秀な人材の確保と育成を成長の礎と位置づけています。キャリアアドバイザーの採用強化を進めるとともに、継続的な勉強会などを通じた育成体制を整備し、早期戦力化を図っています。また、魅力的な報酬水準の維持や働きやすい環境づくりを推進し、人的資本の価値最大化に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 32.9歳 | 2.1年 | 9,899,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は法令による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気動向と採用需要の変動
同社の人材紹介事業は完全成功報酬制であるため、国内景気の減速等により顧客企業の採用動向が悪化した場合、業績に大きく影響する可能性があります。同社は景気変動の影響を相対的に受けにくいハイキャリア領域に注力し、多様な業界での取引先開拓を進めています。
■(2) 自社データベースの集客力低下
同社の売上の大部分は自社サイトを通じた集客に依存しています。検索順位の低下等で自社サイトからの登録者数が減少した場合、成約件数の減少や外部媒体利用に伴う利益率の低下が生じ、経営成績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 人材の確保および育成の遅延
事業拡大には優秀なキャリアアドバイザーの確保と育成が不可欠です。適切な時期に必要な人材を採用・育成できない場合や、既存の人材が流出した場合、サービスの質や事業運営に支障をきたし、同社の成長や業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。