パワーエックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パワーエックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パワーエックスは東京証券取引所グロース市場に上場し、蓄電型発電所の製作を主力とする企業です。大型定置用蓄電システムや蓄電池型急速EV充電システムの開発から販売、運用までを一貫して手がけています。直近の業績は、定置用蓄電池の納品進捗により売上高が大幅に増加し、経常赤字も縮小傾向にあります。


※本記事は、株式会社パワーエックスの有価証券報告書(第5期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. パワーエックスってどんな会社?


蓄電池製品の開発・製造から蓄電所の運用までを手がけ、日本のエネルギー自給率向上に貢献する企業です。

(1) 会社概要


2021年3月に設立され、2022年8月には蓄電池型急速EV充電システムや大型定置用蓄電システムの受注を開始しました。2023年6月に岡山県玉野市に蓄電池製造工場を建設し、2024年2月には電気運搬船の開発等を行う海上パワーグリッドを設立しました。2025年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場しています。

従業員数は連結で179名、単体で163名です。筆頭株主は創業者の伊藤正裕氏が代表を務めるFAROUTで、第2位はアキュメン、第3位は今治造船です。

氏名 持株比率
FAROUT 13.04%
アキュメン 8.80%
今治造船 6.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表執行役社長CEOは伊藤正裕氏が務めています。取締役7名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は71.4%です。

氏名 役職 主な経歴
伊藤正裕 取締役 代表執行役社長CEO 2000年ヤッパ設立、2015年スタートトゥデイ工務店代表取締役CEO、ZOZO取締役COO等を経て、2021年同社設立。2022年より現職。
鍵本忠尚 取締役会長 2005年アキュメンバイオファーマ代表取締役社長、2012年日本網膜研究所代表取締役社長等を経て、2021年同社設立とともに現職。


社外取締役は、パオロ・セルッティ(Northvolt North America, Inc.北米CEO)、シーザー・セングプタ(元Google,Inc.バイス・プレジデント)、マーク・ターセク(元ザ・ネイチャー・コンサーバンシー)、芹澤貢(元マニュファクチャラーズ銀行会長兼CEO)、佐久間達哉(元法務省法務総合研究所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは「蓄電システム等事業」の単一セグメントですが、領域ごとに「BESS事業」「EVCS事業」「電力事業」を展開しています。

BESS事業


「BESS事業」は、Battery Energy Storage System(バッテリーエネルギー貯蔵システム/蓄電システム)の頭文字をとった名称です。

大型定置用蓄電システムや中型定置用蓄電システムの製造販売およびメンテナンスを行っています。発電事業者や都市開発業者、自動車関連メーカーなどを顧客とし、再生可能エネルギーの有効活用や電力系統の安定供給を支援するソリューションを提供しています。

製品の販売代金や運用管理ソフトウエアの提供、保守メンテナンス費用などが主な収益源です。顧客のニーズに応じた導入サポートから遠隔監視システムを用いた保全までを一貫してサポートしており、同社および子会社のPowerX Manufacturingが事業運営を担っています。

EVCS事業


「EVCS事業」は、Electric Vehicle Charge Station(エレクトリック・ビークル・チャージ・ステーション)の頭文字をとったものです。

蓄電池型急速EV充電システムの製造販売や、同製品を活用したEVユーザー向け充電サービスの提供を行っています。カーディーラーや運送業者、および一般のEVユーザーが主な顧客であり、高圧受電設備を不要とする低コストでの急速充電インフラを展開しています。

充電設備の販売代金や、自社拠点で提供するEV充電サービスにおける充電料金が主な収益源です。再生可能エネルギーを用いた超急速充電を実現するハードウェアおよび自社開発アプリの提供を含め、同社が主体となって直営およびFC拠点の運営を行っています。

電力事業


蓄電池を使ったオフサイトPPAをはじめとする電力提供サービスや、蓄電所の開発・運営サービスを展開しています。高い再エネ比率の実現や安定供給を求めるオフィスビル、商業施設、および蓄電所オーナーなどが主な顧客です。

電力供給による電気料金や、蓄電所オーナーからの固定リース料、電力市場での運用によるアグリゲーション収益などが主な収益源です。再エネの調達から供給、蓄電所の充放電最適化までを手がけ、同社が事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第4期から第5期にかけて大幅な成長を遂げています。経常利益および当期利益は、事業立ち上げや生産設備への先行投資により赤字が継続しているものの、売上規模の拡大に伴い直近の第5期では赤字幅が大きく縮小する傾向にあります。

項目 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 3億円 62億円 193億円
経常利益 -57億円 -57億円 -18億円
利益率(%) -1754.4% -92.5% -9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -62億円 -80億円 -16億円

(2) 損益計算書


売上高の急激な増加に伴い売上総利益も大きく伸びており、売上総利益率は改善傾向にあります。販売費及び一般管理費の増加により営業赤字となっていますが、売上規模の拡大効果により営業利益率のマイナス幅は大幅に改善しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 62億円 193億円
売上総利益 15億円 52億円
売上総利益率(%) 25.1% 27.1%
営業利益 -49億円 -7億円
営業利益率(%) -80.2% -3.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が18億円(構成比30%)、給料及び手当が11億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは「蓄電システム等事業」の単一セグメントなので、領域ごとの利益は開示されていません。

主力のBESS事業は大型蓄電システムの納品が順調に進捗し、売上高が前期比で大きく増加しています。電力事業も電力販売や製品販売が好調で増収となりました。一方、EVCS事業は急速充電器の納品減少により減収となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
BESS事業 41億円 171億円
EVCS事業 16億円 11億円
電力事業 4億円 11億円
連結(合計) 62億円 193億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスの「積極型」です。本業からのキャッシュ創出がプラスに転じ、株式発行等で調達した資金も活用して成長に向けた生産設備等への積極的な投資を継続していることが伺えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -70億円 14億円
投資CF -15億円 -15億円
財務CF 87億円 63億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-43.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も23.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「永遠に、エネルギーに困らない地球」をビジョンとして掲げています。また、「日本のエネルギー自給率の向上を実現する」ことをミッションとして定めており、自然エネルギーの普及ならびに蓄電・送電技術にイノベーションを起こすことで、脱炭素時代を担う次世代型のエネルギー企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営戦略の実現において全社員が高度な専門性を備えた「プロフェッショナル」として能力を最大限に発揮することを重視しています。「自律したプロフェッショナル人材による少数精鋭の機動性の高い組織」を理想の組織像とし、ミッションへの強い共感を基盤に、グローバルかつ多様性に富んだ企業文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長性と企業価値の向上の達成状況を測るため、売上高、受注残高、EBITDA、ROA、ROEおよび温室効果ガス(GHG)削減貢献量を重要な経営指標として設定しています。多額の初期投資を必要とするため一過性の償却負担に左右されにくいEBITDAや、自然エネルギー普及の目安となるGHG削減貢献量を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な事業拡大と収益基盤の確立に向けて、既存事業の連続的成長と非連続的成長をバランスよく遂行することを課題としています。生産キャパシティの確保や部材調達価格上昇への対応を進めつつ、量産型データセンター事業への参入やBESS事業の海外進出などを通じて、さらなる収益性の拡大を図っていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社の事業の継続的な成長と発展のためには、優秀な人材の確保と育成が極めて重要であると位置づけています。日本のエネルギー自給率向上というミッションに共感するプロフェッショナル人材の獲得を最優先とし、積極的な採用活動を継続するとともに、社内教育の充実や適切な目標管理、人事評価を行っていく方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.7歳 1.8年 11,851,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.6%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.9%
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の割合(14.8%)、全社員に占めるエンジニア職社員の割合(41.2%)、エンジニア組織における外国籍の比率(51.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 再生可能エネルギー市場に関するリスク


政府のエネルギー基本計画が改定され関連補助金が削減される場合や、技術革新などにより再生可能エネルギー市場が想定通りに成長しない場合、同社グループの蓄電池等の製品需要が伸び悩み、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料調達と価格変動リスク


蓄電池の主要部品である電池モジュールを中国の特定の仕入先に依存しており、供給能力の低下や地政学リスクにより調達が困難になる懸念があります。また、原材料価格の高騰や為替変動によるコスト上昇が収益性を圧迫するリスクが存在します。

(3) 製品製造と生産能力確保のリスク


大型定置用蓄電システムの大半を外部に製造委託しているため、契約の継続が困難になると製品供給に重大な支障をきたします。また、需要拡大に応じた自社工場の増設・拡張計画が、資金調達や建設コスト高騰等の要因により遅延するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。