※本記事は、株式会社フツパーの有価証券報告書(第6期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フツパーってどんな会社?
フツパーは製造業界を中心に、AI技術やIoT技術を活用した外観検査自動化などのサービスを提供する企業です。なお、社名の「フツパー(Hutzper)」はヘブライ語由来の言葉で、「リスクを恐れず野心を抱くこと」「大胆に臆することなく物事をやり抜く姿勢」を意味すると説明されています。
■(1) 会社概要
2020年4月の設立後、同年7月に外観検査自動化AI「メキキバイト」の提供を開始しました。2022年には分析サービス「カスタムHutzperAI」、2024年に人材配置最適化「スキルパズル」、2025年に生成AIソリューション「ラクラグ」と提供領域を広げ、2025年12月に上場を果たしました。
従業員数は単体で68名体制です。筆頭株主は創業者の大西洋氏で、第2位は役員の黒瀬康太氏、第3位はベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合であるANRI4号投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大西洋 | 22.77% |
| 黒瀬康太 | 7.58% |
| ANRI4号投資事業有限責任組合 | 6.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は大西洋氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大西洋 | 代表取締役社長CEO | 日東電工等を経て、2020年4月に同社共同設立。2026年3月より現職。 |
| 黒瀬康太 | 取締役副社長COO | 日本アイ・ビー・エムを経て、2020年4月に同社共同設立。2026年3月より現職。 |
| 弓場一輝 | 取締役CTO | 2020年4月に同社を共同設立。2026年3月より現職。 |
| 髙木真一郎 | 取締役CFO兼管理本部長 | あずさ監査法人、デコルテ・ホールディングス等を経て、2026年3月より現職。 |
社外取締役は、渋谷順(ノースディテール代表取締役社長)、釜谷芳充(新日本監査法人出身)、廣瀬雄二郎(元日本情報通信代表取締役社長)、氏家真紀子(梅ヶ枝中央法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「製造業向けAIサービス」事業の単一セグメントにおいて、複数のサービスを展開しています。
■(1) 画像認識AIサービス
メインの「メキキバイト」を通じて、製造ラインに適した照明やカメラの選定・設置からAIモデル構築までを一気通貫で提供しています。エッジAIとクラウドシステムを組み合わせ、ネットワーク不要の高速処理と顧客自身による精度向上の両立を実現しています。
ハードウェアのスポット販売に加え、AI構築やクラウドシステム「Hutzper Insight」のライセンスをサブスクリプションの月額利用料として提供し、同社が収益を得ています。
■(2) 分析AIサービス
顧客が保有するビッグデータを活用し、現場データをもとにした在庫予測や故障予測などの分析サービスを提供しています。製造業における豊富な知見を活かしたコンサルティングからMLOpsの構築まで、幅広い支援を行っています。
顧客課題に合わせた分析設計からAIモデルの構築、運用支援などのサービスをスポット販売で提供することで、同社が収益を獲得しています。
■(3) その他AIサービス
スキルに応じた人材配置最適化システム「スキルパズル」や、インターネット接続不要で社内ナレッジを活用できる生成AIソリューション「ラクラグ」などを提供し、人手不足や業務効率化の課題解決を支援しています。
「スキルパズル」は利用人数に応じた従量課金によるサブスクリプションで提供し、「ラクラグ」はハードウェアとソフトウェアの一体型販売により、同社が収益を上げています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりの成長を続けており、特に直近の事業年度では前期比で倍増以上の急成長を遂げています。それに伴い、先行投資により計上していた経常赤字から大幅な経常黒字へと転換を果たし、利益率も30%を超える水準に改善するなど、収益性が急速に高まっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 0.4億円 | 0.8億円 | 1.1億円 | 3.1億円 | 6.0億円 | 12.6億円 |
| 経常利益 | 0.0億円 | -0.2億円 | -0.5億円 | -1.1億円 | -0.7億円 | 3.9億円 |
| 利益率(%) | 7.0% | -21.8% | -44.7% | -36.0% | -10.8% | 30.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.0億円 | -0.2億円 | -0.5億円 | -1.3億円 | -0.2億円 | 3.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しており、売上総利益率自体も大きく向上しています。また、事業規模の拡大によって営業利益が黒字化し、高い営業利益率を確保できる収益構造へと変化していることが確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6.0億円 | 12.6億円 |
| 売上総利益 | 3.1億円 | 8.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.1% | 65.0% |
| 営業利益 | -0.7億円 | 4.0億円 |
| 営業利益率(%) | -11.5% | 31.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与賃金が1.3億円(構成比30%)、支払手数料が0.6億円(同14%)を占めています。売上原価においては、材料費が2.1億円(構成比48%)、労務費が2.0億円(同45%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社グループは、「製造業向けAIサービス」事業の単一セグメントで、サービスごとの利益は開示していません。
主力である画像認識AIサービスが全体の売上の多くを牽引しており、導入案件の増加や大型化により前期比で大幅な増収となっています。また、分析AIサービスやその他AIサービスも堅調に伸びており、事業基盤の拡大が進んでいます。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 画像認識AIサービス | 3.7億円 | 9.1億円 |
| 分析AIサービス | 2.3億円 | 3.1億円 |
| その他AIサービス | 0.1億円 | 0.4億円 |
| 連結(合計) | 6.0億円 | 12.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
2025年12月期は営業CFが約2億円の黒字となり、本業からキャッシュを創出できる体制に移行しつつあります。財務CFは上場に伴う株式発行を中心に約14億円の資金流入となり、手元現金は約19億円まで積み上がっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.4億円 | 2.1億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -0.2億円 |
| 財務CF | 0.6億円 | 14.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.9%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「最新テクノロジーを確かな労働力に」をミッションとし、深刻な人手不足やDX化などの大きな課題に直面している日本の製造業に向けてAIを利用したサービスの開発・販売を展開しています。最新技術を用いて製造業の生産性や効率性を改善し、日本のモノづくりの発展に貢献していくことを理念として掲げています。
■(2) 企業文化
事業の推進には性別や年齢にとらわれない多様な人材が必要不可欠であり競争力の源泉であるという考えのもと、個々の能力に応じた適切な登用と育成を行っています。四半期ごとの評価制度を通じてスキル向上とキャリアパス支援を行い、一人ひとりが自己実現を果たせるよう取り組む組織文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、「売上高」および「営業利益」を重視し、高い成長性と収益性の確保を目指しています。また、継続的な事業拡大の観点から、「受注残高」「取引社数」「ライセンス収入」「継続顧客売上高」などのKPIも設定し、経営状態のモニタリングを実施しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
実際の製造現場における知見と高い実装力を活かし、既存サービスの複数ライン展開や同一顧客からの複数回受注による顧客単価の最大化に取り組んでいます。また、国内市場にとどまらず海外市場への展開や、物流・建設などの他業界へ応用可能なソリューションの提供も視野に入れ、持続的なシェア拡大とサプライチェーン全体の最適化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な人材の確保と柔軟な働き方の実現を重要視しています。継続的な働き方改革を推進し、リモートワークや時短勤務制度、フレックスタイム制度などを活用してワークライフ・バランスを整えるとともに、四半期ごとの評価による個々の能力に応じた適切な登用や育成を通じて、従業員が能力を十分に発揮できる環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 34.9歳 | 2.2年 | 5,965,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 優秀な人材の確保及び育成について
IT業界における人材獲得競争が激しい中、必要な人材を適時に十分確保できない場合や、同社の優秀な人材が流出してしまった場合、事業展開に制約が生じ、今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場動向と技術革新への対応
AI関連市場は技術革新のスピードが速く、生成AIの普及などで市場は拡大傾向にあります。しかし、関連法規制の変更や景気変動による企業の投資縮小、あるいは代替技術の出現によって技術的優位性を維持できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 情報管理について
顧客企業に対してソリューションを提供する際、機密情報や個人情報を一時的に取得・閲覧することがあります。情報漏洩が発生した場合、損害賠償責任の負担や顧客からの信用失墜につながり、事業活動に支障をきたす可能性があります。



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