※本記事は、ベーシックの有価証券報告書(第22期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ベーシックってどんな会社?
SaaS型のワークフローツールを通じて、企業のフロントオフィス業務のDX化と生産性向上を支援しています。
■(1) 会社概要
同社は2004年3月に設立されました。2014年10月にマーケティングオートメーションツールのβ版をリリースし、2016年に「ferret One」へ改称しました。2017年に「formrun」を運営する企業を完全子会社化し、その後事業を譲受しています。2026年3月には東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。
現在の従業員数は単体で110名です。筆頭株主は創業者の秋山勝氏で、第2位はベンチャーキャピタルのOne Capital1号投資事業有限責任組合、第3位には個人投資家が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 秋山 勝 | 37.61% |
| One Capital1号投資事業有限責任組合 | 8.46% |
| 滝日 伴則 | 7.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役の秋山勝氏が経営を牽引しており、社外取締役比率は80.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 秋山 勝 | 代表取締役 | 1995年正和商事、1999年グッドウィル・コミュニケーション、2001年トランス・コスモスを経て、2004年3月に同社を設立し代表取締役に就任。 |
社外取締役は、早見泰弘(ワイズ代表取締役)、畠山清治(ペイロール取締役)、大西秀亜(アバージェンス代表取締役)、菅沼匠(リンクパートナーズ法律事務所代表パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ワークフロー事業」を単一セグメントとして展開しており、主に以下の2つのプロダクトを中心としたサービスを提供しています。
■(1) ferret One
Webサイトを起点としたBtoBマーケティング向けのワークフローツールです。CMSとMA機能を中心に構成され、サイト制作からメール配信、顧客管理、AIによるコンテンツ生成までを統合的に運用できます。専門知識がなくてもマーケティングを自走化できる環境を提供し、マーケティング業務全体のDX化を支援しています。
サブスクリプション型の月額利用料と、導入支援や運用コンサルティング等のソリューション型収益が主な収益源です。運営は同社が行っています。
■(2) formrun
フォーム入力を起点に、問い合わせや営業対応などの業務を管理運営するワークフローツールです。プログラミングの知識がなくても多様な用途のフォームを作成でき、チームでの顧客対応や進捗状況を見える化・自動化することで、対応漏れの防止や業務効率化に貢献しています。
こちらも継続的な月額課金によるサブスクリプション型を基本とし、用途に応じた機能拡張オプションなどを提供して収益を得ています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して成長を続けており、9億円台から22億円規模へと拡大しています。利益面では先行投資等により赤字が続いていましたが、増収に伴う利益率の改善が進み、直近の期では経常利益および当期純利益ともに黒字転換を達成しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9.6億円 | 12.4億円 | 15.6億円 | 18.2億円 | 22.8億円 |
| 経常利益 | -6.4億円 | -8.2億円 | -4.4億円 | -2.0億円 | 2.6億円 |
| 利益率(%) | -66.1% | -66.6% | -28.2% | -10.8% | 11.6% |
| 当期純利益 | -5.5億円 | -8.3億円 | -4.2億円 | -1.6億円 | 3.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の堅調な伸びに伴い、売上総利益も増加し、利益率も80%を超える高水準となっています。コストコントロールの効果もあり、営業利益は赤字から大幅な黒字へと改善しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 18.2億円 | 22.8億円 |
| 売上総利益 | 14.1億円 | 18.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 77.5% | 80.2% |
| 営業利益 | -1.8億円 | 2.7億円 |
| 営業利益率(%) | -10.1% | 11.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が6.2億円(構成比40.1%)、広告宣伝費が1.8億円(同11.4%)、システム利用料が1.7億円(同11.0%)を占めています。売上原価のうち、外注費が2.3億円(構成比51.4%)、システム利用料が1.1億円(同24.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はワークフロー事業の単一セグメントですが、サービス区分別の売上を見ると、継続的な利用料であるサブスクリプション型サービスが全体の約8割を占めており、安定したストック収益基盤として成長を牽引しています。導入支援等のソリューション型サービスも順調に拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| サブスクリプション型サービス | 14.2億円 | 17.5億円 |
| ソリューション型サービス | 4.1億円 | 5.3億円 |
| 連結(合計) | 18.2億円 | 22.8億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2.6億円 | 2.3億円 |
| 投資CF | - | -0.4億円 |
| 財務CF | -0.7億円 | -2.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は62.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「事業の成長を人の数で解決しない」というパーパスを掲げています。労働人口が減少する時代において、人に依存した従来型の成長モデルから脱却し、仕組みとAIを活用した持続的な成長モデルへの転換を推進しています。業務プロセスのDX化により、社会や組織の変革を牽引するワークフローカンパニーを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は創業以来、「問題解決の集団」として社会課題に向き合う姿勢を重視しています。社内では従業員がAIを活用し、自ら業務効率化のためのワークフローを構築するなど、生産性の向上を追求する文化が根付いています。また、現場の知識やノウハウを形式知化し、全社で共有するナレッジマネジメントの文化も確立されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は主にサブスクリプションモデルでサービスを提供しているため、毎月経常的に得られる月額利用料の積み上がり状況を示すMRR(月次経常収益)の拡大を重要な経営指標として位置づけています。あわせて、有料顧客数や顧客単価、解約率などをモニタリングし、持続的な事業成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は既存事業の成長性と収益性を高めるため、以下の3つの成長戦略を推進しています。既存チャネルの最適化や新チャネルの開拓によるオーガニック成長、既存顧客にAIを活用した新プロダクトを連携・提供するコンパウンド戦略、そして専任組織の設置による既存大手顧客の深耕を通じた高単価顧客の創出に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、優秀な人材の確保と育成を最も重要な経営資源と位置づけています。採用においては能力だけでなく、同社のコンピテンシーやミッション・ビジョンとの親和性を重視し、長期的に活躍できる人材の獲得を目指しています。また、教育研修やキャリア開発の機会を拡充し、人材と組織が共に成長できる環境づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 33.3歳 | 4.9年 | 6,471,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 89.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合他社の動向による影響
同社の提供するSaaS領域にはすでに競合サービスが存在しており、今後も新規参入等により競争環境が激化する可能性があります。機能強化やブランド認知の拡大で差別化を図っていますが、効果的な差別化が行えない場合、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) AI等に関わる技術革新への対応
事業領域は技術革新が極めて早く、新技術を活用したサービス開発の継続が不可欠です。開発リソースの制約等によりAI技術の進展への対応が遅れた場合や、生成AI分野における法規制の強化、出力結果の信頼性確保に課題が生じた場合、事業に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定サービスへの依存
同社の売上高は現在、「ferret One」および「formrun」という二つの主力プロダクトに大きく依存しています。競合サービスとの競争激化などにより、これらの主力サービスの売上高が大幅に減少した場合、特定サービスへの依存度が高いことから、業績に直接的な影響を及ぼすリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。