HUMAN MADE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HUMAN MADE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するHUMAN MADEは、「過去と未来の融合」をテーマにアパレルやライフスタイル雑貨を企画・販売するブランド事業を展開しています。直近の業績では、海外需要の拡大やインバウンド需要を取り込んだことで売上高と営業利益ともに大幅な増収増益を達成し、成長を続けています。


※本記事は、HUMAN MADE株式会社の有価証券報告書(第10期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. HUMAN MADEってどんな会社?


主力の「HUMAN MADE」ブランドを展開し、付加価値の高いアパレルや雑貨の企画から販売までを手掛ける企業です。

(1) 会社概要


2016年にオツモとして設立され、アパレル等の製造・販売を開始しました。2017年にオフラインストアをオープンし、2021年にはカレーショップのCURRY UPを吸収合併しています。2024年に現在のHUMAN MADEに社名を変更し、2025年に東京証券取引所グロース市場へ新規上場を果たしました。

同社の従業員数は193名(単体)です。筆頭株主は創業者である長尾智明氏の資産管理を行うNIGOLDで、第2位はアドバイザーも務めるアーティストのWILLIAMS PHARRELL氏、第3位は信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。

氏名 持株比率
NIGOLD 42.42%
WILLIAMS PHARRELL 18.15%
日本カストディ銀行(信託口) 6.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役CEO兼COOは松沼礼氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松沼礼 代表取締役CEO兼COO ファーストリテイリングやユニクロでジャパンマーケティング統括部長等を歴任し、2024年5月より現職。
柳澤純一 取締役CFO 有限責任監査法人トーマツやデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーを経て、2018年10月より現職。
鳩山玲人 取締役CSO 三菱商事やサンリオ常務取締役等を経て鳩山総合研究所代表取締役を務め、2021年1月より現職。


社外取締役は、岡本紫苑(元ヤフーCFO)、デーヴィッド・マークス(元Google合同会社ディレクター)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ブランド事業」および「その他」事業を展開しています。

ブランド事業


「過去と未来の融合」をテーマに、品質の高い素材やディテールにこだわったアパレル製品やライフスタイル雑貨を企画・デザイン・生産しています。クリエイターや世界的な著名ブランドとのコラボレーションも積極的に展開し、国内外の一般ファンやアーティストなどの著名人から広く支持を集めています。

収益は、主に同社が運営するダイレクトチャネル(自社ECや自社店舗)での販売から得ています。自社チャネルを展開すると効率が悪化する海外エリアについては、現地の高級百貨店やパートナー企業への卸売を通じて売上を獲得するモデルを構築しています。

その他事業


魅力的なライフスタイルの提案の一環として、飲食店舗の運営や、同社が保有する知的財産(IP)のライセンスアウトを行っています。HUMAN MADEブランドの店舗内にカレーショップやコーヒーショップを併設し、ブランドの世界観を体感できる空間を提供しています。

収益は、同社が自社ブランドのカレーショップ「CURRY UP」や協業先のコーヒー店を運営し、顧客からの飲食代金を得ています。また、自社で展開しにくい地域や商品カテゴリにおいては、外部企業へIPをライセンスアウトし、ライセンス料を受け取っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、国内外の需要拡大やインバウンド消費の取り込みにより、売上高は一貫して右肩上がりで成長しています。利益面でも収益性の改善が進み、経常利益率は年々向上して高い水準を維持しており、安定した増収増益のトレンドが続いています。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 32億円 54億円 84億円 113億円 143億円
経常利益 7億円 13億円 23億円 32億円 43億円
利益率(%) 20.9% 23.0% 26.9% 28.2% 30.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 9億円 16億円 21億円 29億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益と営業利益も順調に拡大しています。調達先の最適化や販売価格の見直しなどの効果により、売上総利益率および営業利益率ともに前期から改善しており、高い収益力を確保していることがわかります。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 113億円 143億円
売上総利益 69億円 93億円
売上総利益率(%) 61.2% 65.4%
営業利益 32億円 45億円
営業利益率(%) 28.2% 31.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が10億円(構成比21%)、支払手数料が8億円(同16%)、地代家賃が6億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はブランド事業の単一セグメントですが、販売チャネル別の実績を見ると、国内外の店舗展開の強化やインバウンド需要の増加により、自社店舗での売上が大幅に拡大しています。自社ECや卸売等も堅調に推移し、全体的な増収を牽引しました。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期)
自社EC 37億円 42億円
自社店舗 54億円 77億円
卸売 19億円 19億円
その他 3億円 5億円
連結(合計) 113億円 143億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で稼ぎ出した資金に加え、資金調達も行いながら積極的な投資を継続する「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 21億円 31億円
投資CF -7億円 -13億円
財務CF 2億円 26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は32.8%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も81.3%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人間の閃きが生み出し、人間の手が創り出す輝きを、世界へ。」をミッションに掲げています。効率や正解を超越したアイデアと人の手によるクリエイションで新たなカルチャーを生み出し、世界中の人々に「人生に、ココロ弾ける瞬間を」というビジョンの提供を目指しています。同時にクリエイターの活躍の場を世界に広げる役割も担っています。

(2) 企業文化


同社は行動指針として3つのバリューを定めています。全方位にアンテナを張り感性を磨き続ける「SENSIBILITY(感性)」、相手をリスペクトしポジティブに壁を乗り越える「HUMANITY(人間性)」、徹底的にやり抜く「TENACITY(粘り強さ)」です。これらを土台に、ユーモアとリスペクトを持ちながらチーム一丸となって価値創造に取り組む文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社はブランドエクイティの蓄積を最重視し、中期経営計画を通じて成長性と収益性の両立を目指しています。長期間にわたる継続的な成長や安定的な財務基盤の維持に向け、売上高成長率、営業利益率、ROE、株主資本比率を主要な経営指標として定めています。

* 売上高成長率
* 営業利益率
* ROE(自己資本利益率)
* 株主資本比率

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、既存ブランドの海外展開の加速とブランドポートフォリオの拡大に注力します。アジアを中心とした海外拠点の拡充や、クリエイターネットワークを活かした新規ブランドの立ち上げ・M&Aを推進します。また、品質向上と適正な生産管理により商品消化率を高め、高付加価値の商品を正価で提供する効率的な事業モデルを追求します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は持続的な成長に向けて、多様性のある人材と組織の育成を推進しています。企業ミッションやバリューの浸透を通じた文化の醸成や、主体性のあるキャリア形成支援に投資を行っています。また、時差出勤、テレワーク、副業制度の導入など柔軟な働き方を促進し、ワークライフ・バランスを整えながらパフォーマンスを最大化できる環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 32.4歳 2.2年 6,198,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 87.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 65.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ブランド価値の毀損リスク


同社の売上は大半が主力の「HUMAN MADE」ブランドで構成されており、ブランドの価値変動が業績に直結します。著名人やグローバル企業とのコラボレーションを通じて認知度を高め、品質管理基準の明文化等で品質低下を防ぐ方針ですが、ブランドイメージが低下した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 創業者・クリエイティブディレクターへの依存リスク


同社は創業者である長尾智明(NIGO)氏とクリエイティブディレクター契約を結んでおり、同氏が商品や店舗の企画等のディレクションを担っています。外部採用や人材育成により特定個人に依存しない体制づくりを進めていますが、何らかの理由で契約が終了・変更となった場合、事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(3) グローバル展開に向けた人的資本の確保リスク


ブランド力を支え、成長を継続するためには人材の確保と育成が不可欠です。社内公募制度や管理職研修の導入等で次世代リーダーの育成を進めていますが、特に海外拠点の管理体制を担う経営人材や専門職の獲得競争は激しく、計画通りに人材が確保できない場合は事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。