※本記事は、株式会社ノースサンドの有価証券報告書(第11期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月28日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ノースサンドってどんな会社?
同社は、「人にフォーカスしたコンサルティング」を強みとし、企業の多様な課題解決を支援するコンサルティング会社です。
■(1) 会社概要
同社は2015年にITコンサルティング事業を目的として設立されました。その後、業務領域をビジネスコンサルティングにも拡大し、2022年には情報共有ツール「Notion」の販売代理および導入コンサルティングサービスも開始しています。事業規模を順調に拡大し、2025年に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。
現在の従業員数は単体で1,762名に達しています。同社は創業者である前田知紘氏が代表を務めており、筆頭株主は同氏の資産管理会社であるグーニーズです。第2位株主も前田氏個人であり、第3位には金融機関等の口座管理を行うUBS AGが名を連ねるなど、創業者等による株式の保有比率が高い資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| グーニーズ | 43.48% |
| 前田知紘 | 6.09% |
| UBS AG LONDON A/C IPB SEGREGATED CLIENT ACCOUNT | 3.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長CEOは前田知紘氏が務めています。社外取締役の比率は37.5%(8名中3名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前田知紘 | 代表取締役社長CEO | ベルシステム24、サイベース等を経て、ベイカレントに入社。2015年同社入社、2016年より現職。 |
| 佐々木耕平 | 取締役CHRO | ソフトバンクモバイル等を経て、ベイカレントに入社。2015年同社入社、2026年より現職。 |
| 河野智晃 | 取締役CSO | ベイカレント等を経て、2015年同社入社。取締役兼執行役員営業担当などを経て、2026年より現職。 |
| 小久江省隆 | 取締役CFO | 中部電力、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー等を経て、2022年同社入社。2026年より現職。 |
| 野本朋宏 | 取締役常勤監査等委員 | セントラルサービス、グリムス等を経て、Paidyに入社。2023年同社入社、2026年より現職。 |
社外取締役は、楠本美砂(グロービス パートナーファカルティ)、渡邉迅(名川・岡村法律事務所 副所長)、田中俊太(シュノリーモ 代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンサルティング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■IT・ビジネスコンサルティング
IT領域(戦略・企画からシステム実装・運用まで)とNon-IT領域(マーケティング、営業、人事などの業務改善)を区別することなく、包括的かつ総合的なコンサルティングサービスを提供しています。高い「人間力」を持つコンサルタントが顧客の感情に寄り添いながら、課題解決を支援している点が特徴です。
各業界の事業部門や情報システム部門などの顧客から、プロジェクト単位のコンサルティング報酬を受け取ります。コンサルタントの業務と案件開拓の営業活動を明確に分業し、安定した品質と高い稼働率を実現しています。運営は同社が行っています。
■Notionサービス
同社は、オールインワンの情報共有ツールである「Notion」の世界初の販売代理店として、専用のサポート部署を設置しています。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための情報共有やコミュニケーション基盤の整備を支援しています。
企業などの顧客から、ソフトウェアのライセンス費用や、導入設計から運用定着までに係るコンサルティング費用を受け取ります。自社の活用ノウハウとコンサルティングスキルを組み合わせることで付加価値を提供しています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の直近5年間の業績は、右肩上がりの高成長を継続しています。コンサルタントの大幅な人員増強と高稼働率の維持が奏功し、売上高は毎年力強く拡大しています。それに伴い経常利益・当期利益も急拡大しており、利益率も20%台に乗せるなど収益性の大幅な向上が見られます。
| 項目 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 24億円 | 44億円 | 92億円 | 164億円 | 262億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 3億円 | 11億円 | 28億円 | 55億円 |
| 利益率(%) | 15.6% | 6.9% | 11.6% | 17.0% | 20.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 0.3億円 | 8億円 | 20億円 | 40億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益・営業利益ともに倍増に近いペースで拡大しています。売上総利益率は46%台から49%弱へと改善しており、固定費の吸収効果や平均単価の向上により、営業利益率も21%台へと高水準な成長を実現しています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 164億円 | 262億円 |
| 売上総利益 | 76億円 | 128億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.4% | 48.8% |
| 営業利益 | 28億円 | 55億円 |
| 営業利益率(%) | 16.9% | 21.2% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が33億円(構成比46%)、給料及び手当が19億円(同26%)、採用教育費が19億円(同26%)を占めています。また、売上原価の内訳は労務費が98億円(構成比73%)、経費が36億円(同27%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社はコンサルティング事業の単一セグメントであり、サービスごとの収益を開示していません。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で力強く現金を稼ぎ出しながら、株式発行による大型の資金調達も実施し、手元資金を劇的に増加させている「超・急成長フェーズ」特有の推移を示しています。本業の大幅なキャッシュ創出力向上と、大型資金調達による盤石な財務基盤が特徴です。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 19.3億円 | 42.9億円 |
| 投資CF | -3.9億円 | -18.7億円 |
| 財務CF | 1.3億円 | 89.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は41.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も75.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「世界をデザインする」というビジョンと、「カッコいい会社を増やす」というミッションを掲げています。この「カッコいい」とは表面的な意味ではなく、社会にまだない新しい価値を提供し、従業員一人ひとりが誇りを持って働ける状態を意味しており、コンサルティングサービスを通じて持続的な成長とより良い社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社はコンサルティングのスキル以上に、コンサルタントという「人」にフォーカスする企業文化を持っています。「愛嬌・素直さ・しつこさ」といった人間力を重視し、全従業員の共通言語として行動指針「8RULES」を徹底しています。従業員がこの指針を体現することで、顧客に寄り添うおもてなしのサービスを提供し、同社のファンを増やす好循環を生み出しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は売上高の持続的な成長を実現するため、「コンサルタントの人数」「稼働率」「平均単価」の3つの指標を客観的な経営目標として重要視しています。創業以来90%以上という高水準の稼働率を維持しつつ、採用活動を通じた人員の拡大と、顧客への高い価値提供による平均単価の継続的な向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「ファンづくりサイクル」という独自の仕組みを活用し、採用・組織運営・営業活動の各段階で関わる人を自社のファンにすることで持続的な成長を図ります。今後の重点施策として、理念に共感する人材の確保と育成、営業とコンサルタントの分業体制強化による安定した稼働率の維持、そして売上高の成長に伴う固定費率の低下を通じた営業利益率の向上を掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、コンサルティングスキルや経験よりも「愛嬌・素直さ・しつこさ」を備え、理念に深く共感する人材を重視した「カルチャーマッチ採用」を徹底しています。未経験者でも活躍できるよう職位別研修等の育成体制を整備するほか、社内提案会や立候補制の社内プロジェクト(クエスト制度)を通じて、コンサルタントの成長機会を豊富に提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 32.1歳 | 1.8年 | 6,893千円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.4% |
| 男性育休取得率 | 72.3% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 73.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 91.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(26.2%)、エンゲージメントレーティング(AAA)、離職率(7.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定顧客への依存リスク
同社は顧客ポートフォリオの多様化に努めているものの、売上高上位20社に対する売上割合が57.4%を占めています。そのため、これら主要顧客の経営方針の変更や業績悪化等が生じた場合、同社の財務状況や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材採用と育成の競争激化
同社は持続的な成長に向けて人材の確保と育成に注力していますが、コンサルティング業界における人材獲得競争は激化しています。計画通りに人材を確保・育成できない場合や、他社へ人材が流出するような事態が発生した場合、競争力の低下やサービス品質の悪化につながる恐れがあります。
■(3) 情報セキュリティと漏洩リスク
コンサルティングサービスの提供にあたり、顧客の機密情報や個人情報を取り扱うため、厳格な情報管理とセキュリティ対策を講じています。しかし、万が一サイバー攻撃や予期せぬトラブルにより情報漏洩等が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償問題に発展し、事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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