SBI新生銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SBI新生銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SBI新生銀行は東京証券取引所プライム市場に上場する総合金融グループです。法人・個人向けに幅広い金融商品やサービスを提供し、海外事業や証券投資も展開しています。直近の業績は、預金量や営業性資産の拡大、金利環境の正常化を背景に、経常収益、経常利益ともに大幅な増収増益を達成し、好調に推移しています。


※本記事は、SBI新生銀行の有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SBI新生銀行ってどんな会社?


法人・個人向けの幅広い金融サービスを展開し、国内外の多様なニーズに応える総合金融グループです。

(1) 会社概要


1952年に日本長期信用銀行として設立され、2000年に新生銀行へ社名変更しました。2004年には普通銀行へ転換し、総合金融サービスを拡充しています。2021年にSBIホールディングスが親会社となり、2023年に現在のSBI新生銀行へ社名を変更、2025年12月には東証プライム市場へ上場を果たしました。

現在の同社グループは、連結従業員数5,828名、単体従業員数2,419名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は親会社であり事業連携を行うSBIホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はQATAR HOLDING LLCとなっています。

氏名 持株比率
SBIホールディングス 71.21%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 2.63%
QATAR HOLDING LLC 1.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.2%です。代表取締役社長最高経営責任者は川島克哉氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
川島 克哉 代表取締役社長最高経営責任者 野村證券、ソフトバンク等を経て、住信SBIネット銀行代表取締役副社長COO等を歴任。2022年より現職。
畑尾 勝巳 取締役 東京銀行入行後、三菱東京UFJ銀行常務執行役員米州本部長等を歴任。SBIホールディングス執行役員等を経て現職。
寺澤 英輔 取締役 同行入行後、グループ組織戦略部シニアマネージャー、グループ経営企画部GM、常務執行役員等を経て現職。


社外取締役は、寺田昌弘(三浦法律事務所パートナー弁護士)、瀧口友里奈(グローブエイト代表取締役)、谷崎勝教(日本総研ホールディングス代表取締役社長)、林眞琴(森・濱田松本法律事務所客員弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「法人業務」「個人業務」「海外事業」および「その他」事業を展開しています。

法人業務


事業法人のほか、公共法人、金融法人向けに幅広い金融商品やサービス、アドバイザリー業務、ウェルスマネージメント業務などを提供しています。また、不動産金融、プロジェクトファイナンスや事業承継支援、リースなどの専門的な金融商品も取り扱っています。
主な収益源は、法人顧客への貸出に伴う金利収入や、ファイナンスの組成・アドバイザリー業務に伴う各種手数料収入です。運営は同社を中心に、リース事業を展開する昭和リース、信託業務を担うSBI新生信託銀行などのグループ各社が行っています。

個人業務


個人顧客向けの預金や投資信託などのリテールバンキング機能に加え、無担保カードローン、ショッピングクレジット、ペイメント業務など多様な金融サービスを提供しています。また、不動産金融やクレジットカード業務などを通じたサービス展開も行っています。
収益モデルは、個人向けローンやクレジット利用に伴う金利・手数料収入、および投資信託・保険商品の販売に伴う手数料収入などから構成されます。運営は同社のほか、新生フィナンシャル、アプラス、SBI新生アセットファイナンスなどの子会社が行っています。

海外事業/証券投資/その他


海外事業では、グループの海外連結子会社や関連会社等を通じて、主に現地での小口ファイナンスの提供を行っています。証券投資事業では、債券などの金融商品を通じた市場性運用による収益獲得を目指した活動を行っています。
収益源は、海外顧客への貸出から得られる金利収入や、市場での有価証券運用に伴う運用益・売却益などです。運営は同社の市場部門のほか、海外子会社のUDC Finance Limitedなどのグループ各社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、安定的な成長基調を維持しています。経常収益は毎期増加を続け、特に直近2期間では金利環境の正常化やバンキングビジネスの収益機会拡大により大幅な増収を記録しました。経常利益および当期利益も力強い伸びを示しており、利益率も継続して向上するなど、強固な収益基盤の確立が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 3,733億円 4,219億円 5,308億円 6,140億円 7,741億円
経常利益 283億円 521億円 611億円 778億円 1,234億円
利益率(%) 7.6% 12.3% 11.5% 12.7% 15.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 204億円 428億円 579億円 845億円 1,134億円

(2) 損益計算書


経常収益および業務粗利益ともに前年を大きく上回る結果となりました。資金利益の減少を、役務取引等利益や特定取引利益、その他業務利益などの非資金利益の伸長がカバーし、業務粗利益の増加に貢献しています。与信関連費用の減少なども寄与し、全体の収益性が大きく向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 6,140億円 7,741億円
業務粗利益 2,987億円 3,346億円
業務粗利益率(%) 48.6% 43.2%


営業経費のうち、物件費が1,103億円(構成比62.0%)、人件費が676億円(同38.0%)を占めています。システム関連費用や人件費の増加が全体の経費増の主な要因となっています。

(3) セグメント収益


各事業セグメントにおいて堅調な推移を見せています。法人業務は貸出残高の増加やベンチャー投資のエグジット等により増益を達成しました。個人業務は住宅ローンや債権流動化に伴う収益計上が寄与し業績を牽引しています。一方、海外事業や証券投資等を含む領域は資金調達コストの増加等により減益となりました。

区分 業務粗利益(2025年3月期) 業務粗利益(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
法人業務 919億円 1,200億円 277億円 661億円 55.1%
個人業務 1,672億円 1,903億円 295億円 441億円 23.2%
海外事業/証券投資/その他 395億円 243億円 258億円 81億円 33.3%
連結(合計) 2,987億円 3,346億円 831億円 1,184億円 35.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのプラスは通常の事業会社とは異なる資金動向を反映している可能性があります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1,985億円 1,914億円
投資CF -1,292億円 -1,189億円
財務CF -48億円 127億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


SBIグループ共通の経営理念である「正しい倫理的価値観を持つ」「金融イノベーターたれ」などの価値観のもと、同社グループでは「安定した収益力を持ち、国内外産業経済の発展に貢献し、お客さまに求められる銀行グループ」などを目指すべき姿として掲げています。透明性の高い経営を志向しています。

(2) 企業文化


SBIグループの普遍的な基本観である「顧客中心主義」や、「公益は私益に繋がる」という理念を共有しています。経験や歴史を踏まえつつ、多様な才能や文化を評価し、新たな変化に挑戦し続ける文化を重視しています。また、環境や社会課題の解決を経営の最重要課題の一つと捉え、サステナビリティ経営を推進しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画では、「次世代の金融、共に築き切り拓く未来」をビジョンに掲げ、「次世代金融」「第4のメガバンクの中核」「持続的な成長の実現」「公的資金完済の早期実現」を要素としています。2027年度の財務目標は以下の通りです。

・税引前純利益:1,250億円
・RORA:1.0%程度
・預金量:15.0兆円
・営業性資産:16.5兆円
・連結自己資本比率:8%台後半

(4) 成長戦略と重点施策


金利環境の正常化を捉え、国内バンキングビジネスを成長ドライバーに位置づけています。SBIグループ内での全方位的な融合や、地域金融機関・外部パートナーとの連携を通じて収益機会を拡大します。また、「量の拡大」と「質の向上」を意識した量質転化を追求し、戦略的ITシステム投資などを進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画において「人的資本経営の有機的発展」を基本戦略の一つに掲げ、「採用・育成・活躍」を柱としています。専門性と実行力を備えた人材を多様なチャネルから確保し、自律的なキャリア形成を支援するための研修環境を整備しています。また、ダイバーシティ推進や柔軟な働き方を支える制度の拡充に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.7歳 13.1年 8,558,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.2%
男性育児休業取得率 140.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 57.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、フルタイム労働者一人当たりの各月ごとの法定時間外労働・法定休日労働時間(20.9時間)、平均有給休暇取得率(71.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金融市場の急変に伴う保有有価証券の価値下落


各国中央銀行の金融政策の変更や、さらなる政策金利の引き上げを端緒とした金利上昇により、保有する有価証券の価値が下落するリスクがあります。これにより同社グループの資本余力が低下し、当初計画していた事業展開やリスクテイクが制限される可能性があります。

(2) 預金獲得競争の激化による資金調達コストの増加


金利上昇環境下における金融機関間の預金金利競争の激化に伴い、法人預金や個人預金の資金流出、あるいは追加的な資金調達コストが発生するリスクがあります。コンシューマーファイナンス事業などにおいて、調達コストの増加分を貸出金利へ十分に反映できない場合、収益力が低下する可能性があります。

(3) サイバー攻撃やシステム障害による業務停止


金融犯罪の巧妙化やランサムウェアなどの高度なサイバー攻撃により、顧客情報の流出や決済機能が停止するリスクがあります。また、新システムの導入プロジェクトの遅延や外部委託先起因の障害復旧の遅れが生じた場合、直接的な損失の発生に加え、顧客からの信頼低下やレピュテーションの毀損につながるおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。