スタートライン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタートライン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタートラインは、東京証券取引所グロース市場に上場し、「障害者」と「働く」をワンストップで支援する障害者雇用支援サービス事業を展開する企業です。主力のパッケージサービス等が堅調に推移し、直近の業績は売上高56億円、経常利益3.7億円と大幅な増収増益を達成しており、今後のさらなる成長が期待されます。


※本記事は、スタートラインの有価証券報告書(第17期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スタートラインってどんな会社?


同社は障害者雇用支援サービス事業と障害者福祉事業を展開し、多様な人々の可能性の拡張を目指す企業です。

(1) 会社概要


2009年に神奈川県で設立され、障害者向けサテライトオフィスサービス(現INCLU)を開始しました。2017年には屋内農園型障害者雇用支援サービス「IBUKI」、2022年にはロースタリー型「BYSN」の提供を開始してサービスを拡充しています。2025年には東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

当期の従業員数は単体で420名です。筆頭株主は資産管理業務などを行うストーンで、第2位は同じく資産管理等のウエスト、第3位は創業社長の西村賢治氏です。

氏名 持株比率
ストーン 26.68%
ウエスト 10.36%
西村 賢治 5.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は西村賢治氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
西村 賢治 代表取締役社長 1999年フルキャスト転籍などを経て、2009年同社設立に伴い代表取締役社長に就任。日本障害者雇用促進事業者協会理事長などを経て現職。
長谷川 新里 取締役 2004年フルキャスト入社などを経て、2009年同社設立に伴い取締役に就任。スタートライン・プラネット代表取締役などを経て現職。
白木 孝一 取締役 1999年フルキャスト入社などを経て、2009年同社設立に伴い取締役に就任し現職。
井上 剛 取締役 1996年フルキャスト入社、財務経理部長などを経て、2020年同社取締役に就任し現職。
石川 敬啓 取締役 1990年リゾートワールド(現フルキャストホールディングス)専務取締役などを経て、2012年同社取締役に就任し現職。


社外取締役は、佐藤香織(鳥飼総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「障害者雇用支援サービス事業」および「その他」事業を展開しています。

障害者雇用支援サービス事業


障害者雇用を行う企業等を対象に、コーヒーの焙煎業務を通じた「BYSN」や、屋内農園での植物栽培を通じた「IBUKI」、オフィスワーク業務を行う「INCLU」など、障害者の採用、訓練、定着をワンストップで支援する多彩なパッケージサービスを提供しています。

主な収益源は、サービス利用料等のストック売上や、焙煎機・植物栽培装置などの物販売上、採用やコンサルティングに関わるワンタイム売上です。運営は同社が行っています。

その他(障害者福祉事業)


行政から障害福祉サービス受給者証を発行された障害者を対象に、企業等への就職前訓練や定着を支援する「FITIME」や、カフェ店舗での実践的業務を通じた就労継続支援B型「GOOD THE GOOD」を提供しています。

主な収益源は、利用者一人当たりの利用日数に応じて行政から受け取る基本報酬や加算報酬等です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで順調に拡大を続けています。利益面では一時的に落ち込む時期もありましたが、直近では主力サービスの伸長とコスト管理の徹底により、経常利益および当期利益ともに大幅な増益を達成し、高い収益性を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 26億円 32億円 36億円 45億円 56億円
経常利益 -1.2億円 1.5億円 0.7億円 2.3億円 3.7億円
利益率(%) -4.8% 4.6% 2.0% 5.1% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.2億円 0.8億円 0.3億円 1.4億円 4.3億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益も順調に増加しています。売上総利益率の改善に加えて、販売費及び一般管理費の増加を売上成長の範囲内にコントロールしたことで、営業利益は前期比で大きく伸長し、営業利益率も向上する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 45億円 56億円
売上総利益 16億円 21億円
売上総利益率(%) 36.7% 37.6%
営業利益 2.6億円 4.5億円
営業利益率(%) 5.9% 8.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比36%)、支払手数料が2億円(同12%)を占めています。また、売上原価においては経費が18億円(構成比58%)、労務費が13億円(同42%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である障害者雇用支援サービス事業は、既存サービスの継続的な改善や新規出店、サービスの拡充により顧客需要を的確に取り込み、増収を牽引しました。また、その他(障害者福祉事業)においても、既存拠点の堅調な推移により順調に売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
障害者雇用支援サービス事業 44億円 56億円
その他 0.3億円 0.4億円
連結(合計) 45億円 56億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4.7億円 6.9億円
投資CF -8.6億円 -15.2億円
財務CF 4.2億円 19.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は33.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社の企業理念は「自分をおもいやり、人をおもいやり、その先をおもいやる。」です。創業時からの軸である「一人でも多くの人が、自分らしく生き、喜びを実感できる社会の実現」を目指し、障害者の雇用支援や就労支援の枠を超えて、多様な人々の可能性を拡張し、誰もが自分らしく生きる社会の実現を社会的使命として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、障害者と向き合うだけでなく、社会全体で「支援」を行うことを重視しています。多様な関係者との対話や相互理解を促進し、「共に働く」社会の実現を目指す文化があります。これを支えるのが、人への想いと科学的根拠に基づく支援技術からなる「支援力」であり、専門性の高い支援員が現場を支えています。

(3) 経営計画・目標


同社は、高い成長性および生産性をもって収益に結びつけ、継続的に成長していくことを目標としています。具体的な指標として「継続的に支援をさせていただいている対象者数」と「支援をさせていただいている対象顧客社数」を重視しており、支援対象者数の拡大や顧客数の増加を目指した経営管理を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


「支援力」と「豊富なサービスラインナップ」を強みに、主力の障害者雇用支援サービス事業へ人材と資金を集中投下します。ストック売上の積み上げによる安定基盤の確保を図りつつ、得られた利益をもとに新規出店や新サービスの開発、非障害者領域を含む生きづらさを抱える人向けの事業展開などを推し進め、中長期的な企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、障害者に対する直接的な支援や教育を担う人材の質がサービスの質に直結すると考えています。「自分をおもいやり、人をおもいやり、その先をおもいやる。」という理念に共感する人材の採用・育成を成長の要と位置づけ、教育機関としての社内大学設立や階層別研修、勤務体系の多様化、ICT活用による負担軽減などを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.6歳 3.7年 4,325,863円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 36.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.7%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 84.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(7.3%)、育児休業取得率(100%)、平均残業時間(15時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法改正等に伴う制度変更リスク

「障害者雇用促進法」などに基づく法定雇用率制度の動向や見直しが、主力サービスの解約や業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は行政の動向を注視し、制度に関わらず障害者雇用を積極的に行う顧客を増やすことに注力しています。

(2) 新規出店に関わるリスク

事業拡大のための新規出店にあたり、適切な物件の確保遅れや、内外装工事における資材調達の遅延・価格高騰などが生じた場合、出店計画に支障をきたし、成長や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報の管理とセキュリティリスク

顧客情報や障害者の機微な個人情報を多数保有しており、外部からの不正アクセス等により情報漏洩が発生した場合、社会的信用の低下やサービスの解約発生、新規顧客開拓の鈍化などに繋がるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。