※本記事は、ヒトトヒトホールディングス株式会社の有価証券報告書(第7期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ヒトトヒトホールディングスってどんな会社?
スポーツイベントの運営や商業施設の警備、人材派遣などの人財サービス事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1974年に日本総業として設立され、明治神宮野球場の清掃や運営業務を開始したのが始まりです。1998年以降は各種プロスポーツ興行の運営や商業施設の警備などへ事業を拡大し、子会社を設立・買収してきました。2019年のLBOを経て持株会社体制へ移行し、2020年に現在のヒトトヒトホールディングスへ商号変更、2026年に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしました。
従業員数は連結で402名、単体で23名です。筆頭株主はJ-GIA1号投資事業有限責任組合で、第2位はトリプルトレジャーズ、第3位は三井不動産です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| J-GIA1号投資事業有限責任組合 | 84.60% |
| トリプルトレジャーズ | 7.50% |
| 三井不動産 | 3.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長兼グループCEOは松本哲裕氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松本哲裕 | 代表取締役社長兼グループCEO | 1998年日本総業(現ヒトトヒト)入社。同社常務や代表取締役副社長などを経て、2022年より現職。 |
| 田中満 | 取締役兼グループCOO | 1989年熊谷組入社。ジョーンズラングラサール等を経て、日本総業常務等を歴任し、2022年より現職。 |
| 八木由治 | 取締役兼グループCFO | 1991年日本リース入社。ウェザーニューズやフィナンテック等を経て、日本総業入社。2023年より現職。 |
社外取締役は、藤原摂(日本成長投資アライアンスパートナー)、濱岡洋一郎(元ジョーンズラングラサール社長)、前川理佐(武藤綜合法律事務所弁護士)、福薗健(福薗会計代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、人財サービス事業を展開しています。
■イベントマネジメント事業
プロ野球、Jリーグ、Bリーグやゴルフ等の各種スポーツイベント、音楽ライブ等の主催者向けに、警備や整理案内、清掃等の運営支援サービスを提供しています。繁閑の差が大きいイベントに対し、学生を中心とした大規模な人材プールを活用して適宜人員を供給します。
イベント主催者からイベントの運営・警備等の受託対価を受け取ります。運営は主にヒトトヒトが行っています。
■ビルマネジメント事業
商業施設やオフィスビル、建設工事現場において、施設警備や交通誘導警備、清掃業務を提供しています。施設特性や曜日等による繁閑差に応じた柔軟な配置計画を立案し、従業者や来場者、通行者の安全確保に努めています。
ビル管理会社等の発注企業や元請企業から、警備・清掃等の業務委託料を受け取ります。運営は主にヒトトヒト、エース警備保障、エースガードが行っています。
■人財サポート事業
移動体通信関連企業等への人材派遣や、モバイル機器・消費財を中心としたセールスプロモーション業務を行っています。専門知識を備えたスタッフを育成し、顧客の営業活動や業務サポートを支援しています。
通信事業者や販売代理店等の顧客から、人材派遣料やプロモーション業務の受託対価を受け取ります。運営は主にヒトトヒトキャリアライズが行っています。
■その他の事業
グループ各社のサービスに付随する資機材・装飾物の調達や工事、屋内型多目的運動施設の運営などを行っています。
設備の利用料や調達・工事の対価を受け取ります。運営は主にノティオが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績推移を見ると、売上収益は安定して成長を続けており、それに伴い税引前利益も大幅な増益を達成しています。特に直近の期間では、大規模なイベント関連業務の受託などが寄与し、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 156億円 | 168億円 | 201億円 |
| 税引前利益 | 0.9億円 | 5.1億円 | 9.0億円 |
| 利益率(%) | 0.6% | 3.0% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.2億円 | 3.4億円 | 6.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の拡大に伴い、売上総利益及び営業利益も増加傾向にあります。特に営業利益率は改善が進んでおり、収益性の向上が伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 168億円 | 201億円 |
| 売上総利益 | 5.2億円 | 7.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 3.1% | 3.7% |
| 営業利益 | 7.1億円 | 10.4億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.6億円(構成比30%)、支払手数料が1.1億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは人財サービス事業の単一セグメントで事業を展開しており、イベントマネジメントやビルマネジメントなどの好調により、全体として増収増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結(合計) | 168億円 | 201億円 | 7.1億円 | 10.4億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態(健全型)と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.4億円 | 13.7億円 |
| 投資CF | -0.6億円 | -0.2億円 |
| 財務CF | -7.3億円 | -15.8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.9%で市場平均をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念は「経済活動において人間性の涵養をはかり、それを表現しうる力を持つ」です。また、経営方針として「あらゆる時代において、人が人間性を最大限に発揮できる機会をつくり続けること。」というビジョンと、「人と人を、人がやるべき仕事でつなぐ。」というミッションを掲げています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「人は大切な財産であり、共に成長する存在」という共通の考え方を事業の根幹に据えています。それぞれの事業で培ったノウハウを相互に活かし、人材の流動化や情報の共有化を通じてサービスを提供しています。従業員一人ひとりが社会人として成長し、付加価値を高めることを重視する文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標達成状況を判断するための指標として、成長性に関する「売上収益」、収益性に関する「営業利益」及び「営業利益率」、健全性に関する「のれん/自己資本比率」及び「ネット有利子負債/自己資本比率」を定めています。具体的な数値目標として、のれん残高の50%程度、借入金残高と同程度の額に達するまで自己資本を充実させることを目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
イベント需要の拡大やインフレに伴う労働環境の変化に対応するため、複数領域での施策を推進しています。プロスポーツや大型商業施設などの優位性を活かした従業員の積極的採用や、臨時イベント業務の受託によるアルバイトの稼働率向上に注力しています。また、プロモーション展開を通じた新規顧客の獲得や、労務費上昇分の販売価格への転嫁交渉を進めることで、収益拡大を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業を担う人材の多様性を確保するため、男女の区別なくキャリアアップのための教育研修や定期面談を実施し、中核となる人材の育成を目指しています。また、イベントマネジメントやビルマネジメントなど事業をまたがる人事異動を定期的に行うことで、新たな業務での稼働を早める取り組みや、AIを活用した教育プログラムの開発などを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.3歳 | 5.2年 | 6,363,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.2% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 64.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職における中途採用者の割合(64%)、従業員(アルバイト従業員を含む)のうち66歳以上の割合(26.5%)、労働者に占める女性労働者の割合(19.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ファンドの投資判断による影響
同社の筆頭株主であるファンドの運用受託者による投資判断によって、株式の売却や役員の選任・解任、組織再編等の株主総会決議に重要な影響が及ぶ可能性があります。対話を通じた株主利益の最大化に努めています。
■(2) 労務管理とコンプライアンスに関するリスク
多くの人的労働力に依存しており、働き方改革関連法の施行や労働基準法の改正に伴う労働環境の変化への対応が求められます。人材の流出や人件費上昇に加え、法令違反による社会的信用の失墜が生じるリスクがあります。
■(3) グループガバナンスの機能不全リスク
持株会社と複数の事業子会社で構成されているため、グループガバナンスが適切に機能しない場合、内部統制の無効化や事業計画の未達など、企業価値の向上を阻害するリスクがあります。コンプライアンス体制の強化や定期的な経営状況の共有で対処しています。
■(4) のれん減損による財務悪化リスク
過去のM&AやLBOに伴い、総資産に占めるのれんの割合が高くなっています。事業環境の変化により将来キャッシュ・フローが減少し、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合には、減損損失が発生して業績に影響を及ぼす可能性があります。



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