バトンズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バトンズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バトンズは東京証券取引所グロース市場に上場し、インターネットを活用したM&Aプラットフォーム「BATONZ」の企画・開発・運営を主軸とするM&Aテクノロジー事業を展開しています。直近の業績では、M&A成約単価の上昇やSaaS提供社数の増加が牽引し、大幅な増収と各段階利益の急増を達成しています。


※本記事は、株式会社バトンズの有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. バトンズってどんな会社?


同社は、全国の事業承継課題を解決するため、安全で効率的なM&Aプラットフォームを提供しています。

(1) 会社概要


同社は2018年4月、日本M&Aセンターから分社化し、アンドビズとして設立されました。同年10月にサービス名を「BATONZ」へリニューアルし、2019年に現在の社名へ変更しました。その後、M&A支援機関向けSaaSや各種会員サービスの拡充を進め、2026年4月に東証グロース市場へ上場しました。

同社の従業員数は単体で126名です。筆頭株主は事業会社の日本M&Aセンターホールディングスで、第2位は代表取締役社長の神瀬悠一氏、第3位は常務取締役の宮竹秀太郎氏となっており、経営陣と事業会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本M&Aセンターホールディングス 32.47%
神瀬 悠一 22.03%
宮竹 秀太郎 13.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長CEOは神瀬悠一氏が務めています。取締役のうち4名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
神瀬 悠一 代表取締役社長CEO 日本ユニシス、リクルート等の執行役員を経て、2019年同社取締役CMO。2022年より現職。
宮竹 秀太郎 常務取締役 佐川急便、日本M&Aセンター等を経て、2018年同社取締役COO。2026年より現職。
海山 龍明 取締役COO デロイトトーマツコンサルティング等を経て、2023年同社執行役員。2025年より現職。
木村 博史 取締役CFO フロンティア・マネジメント、リクルート経営企画部長等を経て、2025年同社執行役員CFO。2026年より現職。
鈴木 安夫 取締役 足利銀行、日本M&Aセンター等を経て、2018年同社非常勤取締役。2026年より現職。


社外取締役は、田中優子(元トヨタ自動車・スペースマーケット社外取締役等)、永田靖子(元日本M&Aセンター上席執行役員等)、浅野恵理(辻・本郷税理士法人シニアパートナー等)、江端重信(三宅坂総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、M&Aテクノロジー事業の単一セグメントとして各種サービスを展開しています。

(1) M&Aプラットフォーム


「BATONZ」は、M&Aを行う売り手と買い手、M&A支援機関が利用するインターネットを活用したダイレクトマッチングの場です。個人から上場企業まで多様なユーザーが登録し、大小様々なM&A案件の交渉や成約が行われています。オプションとして売り手向けのFA支援や、買い手向けのソーシング支援も提供しています。

収益源は、M&A成約時に買い手から受領するシステム利用料(成約価額の2%など)や、有料オプション会員からの月額利用料、売り手からのFA支援手数料です。運営は同社が行っており、多数のマッチングを創出しながら、安心安全な取引の実現に向けたサポートを実施しています。

(2) M&A SaaS


M&A支援機関(M&A専門業者、士業等専門家、金融機関等)に対し、M&Aアドバイザー業務のDX化や効率化を実現するシステムをSaaS形態で提供しています。案件探し、企業価値評価、契約書雛型、バーチャルデータルームなど、受託から成約までの主要業務をカバーする25の機能群を備えています。

収益源は、導入顧客であるM&A支援機関や金融機関からプランに応じて受領する月額システム利用料です。運営は同社が行っており、多くの支援機関の業務推進に不可欠なサービスとなることで安定的な継続収益を確保しつつ、プラットフォームへの売り案件流通の拡大にも繋げています。

(3) その他


行政や地方公共団体からのM&A・事業承継分野に関する受託事業や、M&Aに関する講演、コンサルティング、情報メディアの発刊等を行っています。また、事業パートナーとの提携により、M&A前後のCXO人材や成長推進人材を紹介する人材紹介事業も展開しています。

収益源は、行政等からの委託料や、広告掲載に伴う広告費、人材紹介に関する手数料などです。運営は同社が行っており、M&Aを起点とした経営支援ソリューションを拡充することで、ビジネス全体のサクセスパートナーとしてのポジショニング確立を目指しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して力強い成長を続けており、5億円規模から20億円規模へと大幅に拡大しています。経常利益は一時的に先行投資等で赤字となる期もありましたが、直近では高収益化が進み、利益率が18%を超える水準へと大きく飛躍しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5億円 7億円 12億円 14億円 20億円
経常利益 0.5億円 -0.6億円 1億円 0.6億円 4億円
利益率(%) 9.0% -8.0% 8.8% 4.2% 18.3%
当期純利益 0.8億円 -0.6億円 0.7億円 0.4億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な伸びに対して、売上原価の増加は抑えられており、売上総利益率は80%台後半の高い水準を維持しています。これにより、積極的な販売促進や人材投資を行いつつも、営業利益が大幅に増加し、収益性が飛躍的に向上していることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 14億円 20億円
売上総利益 11億円 17億円
売上総利益率(%) 82.0% 84.7%
営業利益 0.5億円 4億円
営業利益率(%) 3.8% 18.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4億円(構成比34%)、支払手数料が3億円(同19%)、広告宣伝費が1億円(同7%)を占めています。売上原価については、労務費が2億円(構成比54%)、経費が1億円(同46%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はM&Aテクノロジー事業の単一セグメントですが、サービス別の売上構成を見ると、主力のM&Aプラットフォームサービスが大幅な増収を牽引しています。また、M&A SaaSサービスやその他事業も順調に売上を拡大させています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
M&Aプラットフォーム 10億円 15億円
M&A SaaS 4億円 4億円
その他 0.3億円 0.6億円
連結(合計) 14億円 20億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFの増減が発生していないことから、営業利益によって投資を賄っている健全な財務状態であることが読み取れます。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は45.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も59.5%で市場平均を上回っており、いずれも高い水準にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1億円 5億円
投資CF -0.6億円 -0.8億円
財務CF - -

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「誰でも、何処でも、簡単に、自由に、M&Aが出来る社会を実現する」をビジョンとして掲げています。日本の後継者問題や企業継続の課題解決に取り組み、M&Aが一部の経営者だけに限定されていた現状を打破し、多くの価値ある事業を次世代へと繋ぐことを使命として経営を行っています。

(2) 企業文化


同社は「経営者の成功を『全力で応援』する」、「『成約できる環境』を創り続ける」という2つのミッションのもとで事業を推進しています。また、行動指針を「HIGH-FIVE」というキーワードで5つに具体化し、表彰制度とも連動させてナレッジを共有することで、組織全体への浸透を図る文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長を目指し、M&Aプラットフォームの利用者数や案件数を基盤とした収益モデルの拡大を目標としています。具体的には、M&Aプラットフォームの「システム利用料単価」の向上や、SaaSサービスの「M&A支援機関数」および「ARPPU(1ユーザー当たりの月間平均利用料金)」の増加など、各サービスの主要な経営指標(KPI)を継続的にモニタリングし、収益性の向上に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


短中期的にはM&Aプラットフォームのシェア拡大を進め、「M&A業界におけるデファクト・スタンダード」となることを目指しています。非公開案件を取り扱うクローズド機能の実装による「売り案件の流通拡大」、AIを活用した財務分析や候補企業リストの自動作成等による「M&A業務の非連続な効率化」、人材紹介事業など「M&A周辺の経営課題の解消」を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、M&Aに関する高い専門性、深い顧客理解、そしてプラットフォームを支える高い技術力を兼ね備えた人材の育成・確保を不可欠としています。多様なキャリアパスの構築、ミッショングレード制による成果重視型の評価・報酬制度、独自の「M&Aプロフェッショナル制度」を通じた成長支援、そしてリモートワークやワーケーションを活用した柔軟な職場環境の整備を人材戦略の柱として推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.6歳 2.7年 6,880,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.0%
男性育児休業取得率 166.7%
男女賃金差異(全労働者) 77.1%
男女賃金差異(正規雇用) 75.6%
男女賃金差異(非正規雇用) -

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) M&A支援機関への依存と連携リスク


同社が運営するM&Aプラットフォームにおける売り案件の約5割はM&A支援機関からの持込であり、一定の依存度を有しています。サービス品質の低下や競合他社の台頭により、主要なM&A支援機関の離反や新たな獲得が困難となった場合、同社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) プラットフォームの健全性・安全性確保


取引プロセスの安全性を確保するため、全案件の審査や継続的なモニタリング、中間報告の義務化などの施策を実施しています。しかし、取引当事者間の交渉内容や契約履行状況を完全に把握することは困難な側面もあり、不正な取引やトラブルが発生してプラットフォームの信用が失墜した場合、事業展開に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) M&A取引にかかる成約未報告行為


M&Aの成約報酬は当事者からの報告に基づき売上計上されますが、支払いを免れるための不正な未報告行為が発生するリスクがあります。成約を自動検知する仕組みの導入や表明保証保険の拡大等で防止に努めていますが、不正行為が悪質化し、これらの施策が十分に機能しなくなった場合、機会損失が生じる可能性があります。

(4) 技術革新への対応遅れ


同社は生成AI等の技術を積極的に取り入れ、サービスの効率化を推進しています。しかし、新たなノウハウやテクノロジーの獲得・活用に遅れが生じ、競合他社がより優れたサービスを展開して競争力が相対的に低下した場合には、同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。