【財務分析】朝日新聞社はリストラ継続中!?「早期割増退職金」に10億円支出

【財務分析】朝日新聞社はリストラ継続中!?「早期割増退職金」に10億円支出

朝日新聞社の2019年3月期有価証券報告書には、前年になくなった「早期割増退職金」の項目が復活していました。約10億円が計上されており、社内では引き続き「転進支援制度の実施に伴う割増退職金」の支給とともに、人員削減のリストラが行われていることがうかがえます。


損益計算書(PL):売上減をコストカットでカバー

朝日新聞社の2019年3月期の売上高は3,750億円で、前期比で3.7%減っています。

売上原価は2715億円で、前期比3.5%減とコストダウンを図りましたが、売上高の減少をカバーできず、売上総利益は1034億円で前期比4.3%減。粗利率は27.6%で同0.2pt減となっています。

販売費及び一般管理費は945億円で、前期比5.7%減と大きくコスト削減を進めた結果、営業利益は89億円で同13.2%増、営業利益率は2.4%で同0.4pt増となりました。

これを受けて経常利益も前期比で増加しましたが、特別損失として「早期割増退職金」10億9300万円を計上したこともあり、税金等調整前当期純利益および親会社株主に帰属する当期純利益は減少しています。

なお、「早期割増退職金」は2016年3月期に22億5400万円、2017年3月期に30億1400万円が計上されていましたが、2018年3月期にはゼロになっていました。2019年3月期の額は以前と比べると少ないですが、いわゆる「転進支援制度」による人員削減が引き続き行われていることが分かります。

セグメント分析:利益の柱は不動産。メディアの利益率は0.6%

朝日新聞社の事業セグメントは「メディア・コンテンツ事業」と「不動産事業」「その他の事業」の3つに分けられます。

  • メディア・コンテンツ事業:朝日新聞などの「各種新聞等の発行・販売事業」、週刊朝日などの「各種出版物の発行・販売事業」
  • 不動産事業:不動産の賃貸事業、不動産管理業、空港での免税店や機内食事業、貴金属及び美術工芸品などの制作・販売
  • その他の事業:朝日カルチャーセンターによる「文化事業」、テレビ放送事業・ラジオ放送事業・ケーブルテレビ事業などの「電波事業」、人材ビジネスや旅行業などの「その他事業」

なお、以前は、メディア・コンテンツ事業は「新聞出版の事業」、不動産事業は「賃貸事業」と呼ばれていましたが、2017年3月期より、その他事業の一部を不動産事業に変更するなどの経営管理区分の一部変更とともに名称を見直しています。

2019年3月期のメディア・コンテンツ事業は、売上高の89.1%を占めていますが、セグメント利益計の構成比では21.9%に下がっています。売上の9割、利益の2割といったところ。メディア事業のセグメント利益率はわずか0.6%と極めて低くなっています。

一方の不動産事業のセグメント利益率は18.4%。売上高構成比は21.9%にとどまっていますが、セグメント利益計の構成比では76.8%を占めており、会社の利益創出の柱となっています。

貸借対照表(BS):財務状況は安泰

朝日新聞社の2019年3月期の総資産は6141億円で、この4年間で微増しています。

純資産合計は右肩上がりに増えており、3823億円で前期比2.4%増。一方で、負債は削減傾向にあり、固定負債は1662億円で前期比1.3%減、流動負債は655億円で同0.1%減となっています。

会社の財務体質の長期的な安全性を測る株主資本比率は53.1%で、前期比1.3pt増。サービス業の平均52.9%と同水準です。また、短期的な支払能力を測る流動比率は225.9%で、同11.3pt増。200%超で安全水域と言われているので、それをクリアしています。

売上高は減っていますが財務状況は改善しており、不安要素はないと言えるでしょう。

キャッシュフロー計算書(CF):リストラが復活している

2019年3月期の各キャッシュフローは、前期と比べて大きく減っています。

営業活動によるキャッシュフローは163億円で前期比41.6%減。投資活動によるキャッシュフローはマイナス106.17億円で、マイナス額は同63.3%減。財務活動によるキャッシュフローはマイナス13.24億円で、マイナス額は同36.9%減となっています。

営業CFマージンは4.4%で、前期比2.8pt減です。サービス業の平均7.5%と比べると低水準です。

これらの要因について、営業CFが大きく増加した2018年3月期の有価証券報告書は、その要因について「前年同期にあった転進支援制度の実施に伴う割増退職金の支出がほぼなくなり、税金等調整前当期利益が増えたため」「大阪の中之島フェスティバルタワー・ウエストなど大型商業ビルの完成に伴う減価償却費の増加」などをあげています。

また、2019年3月期の有価証券報告書には、営業CFの減少要因は「主に税金等調整前当期純利益の減少」「未払消費税が減少したこと」などとしか書かれていませんが、連結損益計算書には「早期割増退職金」の項目が復活し10億9300万円計上されています。この額は、2016年3月期の22億5400万円、2017年3月期の30億1400万円と比べると少ないですが、早期退職による人員削減が引き続き行われていることが分かります。

資本効率分析:当期純利益に回復基調

2017年3月期までは「転進支援制度」に伴って発生していた「早期割増退職金」(特別損失)により利益額が圧縮されていましたが、2018年3月期にはこれがゼロになり利益が回復しています。しかし2019年3月期にはふたたび10億円余が計上されて、その影響がそのまま出ています。

まとめ:新聞事業では利益を生み出せない状態に

2015年3月期から2019年3月期までの4年間で、朝日新聞社のメディア・コンテンツ事業は売上高が17%、セグメント利益が34%減っています。主要事業の「新聞事業」は、もはや利益を生み出すことができていない状態といっていいでしょう。

問題は、新聞の発行には「印刷設備」と「配達(デリバリー)」「平均1200万円を超える高給な社員の人件費」という巨額の固定費がかかっていることです。記者はリストラで減らし、印刷工場も一部停止しましたが、急激なコスト削減は困難です。このまま部数が減っていけば、赤字はさらに大きくなっていくことでしょう。

日本経済新聞などとは異なり、特徴の薄い大衆紙である朝日新聞は、今後デジタル有料会員が大きく増えることは考えられません。当面は内容面・体制面の改善を進めつつ、人員削減を継続しながら、紙の新聞を延命させる以外に選択肢はないでしょう。

なお、朝日新聞社を退職しているのは、中高年だけではありません。企業口コミサイト「キャリコネ」には、すでに退職した20代の男性社員が、会社の将来性についてこう振り返っています。

新聞業界自体が斜陽産業です。以前は本当にびっくりするぐらいの高い給与が支払われていました。しかし、いまや給与はどんどんカットされていて、本当の意味での将来性がないと感じてしまいました。また、デジタル化が進み、ネットニュースが台頭している中で、いまだ新聞でニュースを出していく意味を見出せなくなってしまいました。(2019.3.31)

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