【財務分析】メルカリが最終赤字137億円 今後は「3事業」に選択と集中

【財務分析】メルカリが最終赤字137億円 今後は「3事業」に選択と集中

2018年6月19日の東証マザーズ上場から1年強。2019年6月期のメルカリには、ヨーロッパ市場からの撤退や、サッカーJリーグチーム「鹿島アントラーズ」の子会社化などがありました。売上は好調であるものの、相変わらずの積極投資で2019年6月期も赤字決算となっています。


損益計算書(PL):売上増も販管費拡大で「営業赤字」

メルカリの2019年6月期の売上高は516億円で、前期比44.5%増と大幅アップとなりました。

売上原価は128億円で前期比89.0%増でしたが、売上総利益は388億円を確保し同34.0%増。この結果、前期比5.9pt減と若干下がったものの、75.1%と高い粗利率を誇っています。 

ただし、販売費及び一般管理費が509億円売上高に匹敵するほどの規模まで拡大し、前期比52.7%増となったため、営業損益は121億円の赤字、営業利益率もマイナス23.5%となっています。

なお、2018年6月期の有価証券報告書によると、前期は販管費の半数を超える168億円が「広告宣伝費」として使われていました。

今年2月13日には、スマートフォン決済サービス「メルペイ」の提供を開始しており、国内外の「メルカリ」事業とともに相当の広告宣伝費をかけているものと見られます。

また、連結従業員数が前期末の1140人から1826人へ1.6倍に増加しています。最近は「専門性の高いエンジニア」に限った採用に絞り込んでおり、人件費の増加も大きいでしょう。

出典:2019年6月期決算説明会資料

セグメント分析:「メルカリ(国内)」が売上の89.5%

メルカリは「マーケットプレイス関連事業」の単一セグメントで、事業セグメント別の内訳を公表していません。決算説明会資料でも、主要事業を「メルカリ事業(国内)」「メルカリ事業(米国)」および「メルペイ」の3本柱としていますが、売上・利益等の内訳を掲載していません。

なお、決算説明会資料には「メルカリ事業(国内)」の業績概要が記載されています。2019年6月期のGMV(総取引額)は4902億円で、前期比41.3%増です。

「メルカリ」とは専用アプリ上で中古品の個人間売買を行えるサービスです。主な収益は売買が成立した際に出品者から徴収する1割の手数料です。

売上高462億円は全社売上の89.5%を占めており、現状では会社全体を牽引していることが分かります。調整後営業損益は94億円で、国内メルカリ事業単体では黒字。米国事業とメルペイで大きな投資を行っていることがうかがえます。

出典:2019年6月期決算説明会資料

貸借対照表(BS):負債増加もキャッシュリッチで問題なし

メルカリの総資産は急激に増えており、2019年6月期には1636億円となりました。

前期に急激に増えた純資産合計は509億円で、6.4%減とやや少なくなっています。

一方、負債は大きく増えており、特に固定負債は517億円で前期比171.9%増となっています。流動負債は610億円で同37.7%増でした。

なお、流動資産は1518億円と豊富で、その内訳は82.7%に相当する1255億円が「現金及び預金」を占めるキャッシュリッチな会社です。これは新規上場に伴う資金調達によるものが大きいです。

これにより流動比率は248.8%と高く、前期比9.0pt減となっているものの、安全水域である200%超を達成しており短期的な支払能力に全く問題はありません。

会社の財務体質の長期的な安全性を測る株主資本比率は31.2%。前期比15.0pt減となったこともあり、サービス業の平均52.9%を大きく下回っていますが、現在は将来の成長に備えた投資を優先していると見られます。

キャッシュフロー計算書(CF):営業CFがマイナス72億円に

2019年6月期の営業活動によるキャッシュフローはマイナス72億円。前期に続くマイナスで、その額は2倍超となっています。決算短信ではこの理由について、主に次のように説明しています。

税金等調整前当期純損失12,567百万円に、預り金の増加額22,077百万円、未収入金の増加額11,405百万円、預け金の増加額4,608百万円、未払金の増加額2,442百万円、貸倒引当金の増加額946百万円、株式報酬引当金の増加額905百万円を調整し、また、法人税等の支払額2,491百万円、及び差入保証金の増加額3,929百万円によるもの」

通常のケースでは、営業CFがマイナスになることは望ましくないとされています。ただしメルカリの場合は、投資フェイズで当期純利益がマイナスであること、売上高の急増に伴い未収入金や貸倒引当金などが増えていること、などから直ちにネガティブな評価にならないでしょう。

投資活動によるキャッシュフローはマイナス28億円で、前期比44.3%増。これは主に「有形固定資産の取得による支出1,699百万円、及び敷金の差入による支出940百万円によるもの」とのことです。

財務活動によるキャッシュフローは322億円で、前期の半分に。これは主に「長期借入れによる収入50,000百万円、長期借入金の返済による支出25,308百万円、及び当社普通株式の東京証券取引所マザーズへの上場に伴い、当社普通株式2,840,500株のオーバーアロットメントによる売出しを行ったこと等による株式の発行による収入8,665百万円によるもの」とのことです。

営業CFとともに、営業CFマージンもフリーキャッシュフローも2期連続マイナスです。

資本効率分析:当期赤字は137億円まで拡大

2019年6月期の親会社株主に帰属する当期純利益はマイナス137億円で、マイナス額は前期の2倍近くに増えています。利益が出ていないため、ROEもROAもマイナスですが、戦略的な判断で利益を出していないことから、ネガティブな評価にはならないでしょう。

まとめ:「メルペイ」と「メルカリ」のシナジー効果に期待

メルカリは上場以前から、メルカリブランドを用いた数多くの新規事業を立ち上げて来ました。しかし短期間のうちに撤退を決め、現在の3事業への絞り込みを行っています。撤退した事業は、例えば以下のようなものです。

  • 地域コミュニティーサービス「メルカリアッテ」
  • 即時買取・現金化サービス「メルカリNOW」
  • 個人のスキルシェア「teacha(ティーチャ)」
  • ブランド品フリマアプリ「メルカリメゾンズ 」
  • 本・CD・ゲーム等フリマアプリ「メルカリカウル」
  • 旅行記アプリ「メルトリップ」
  • メルカリのライブコマース機能「メルカリチャンネル」
  • 自転車シェアリングの「メルチャリ」
  • 「メルカリ」のヨーロッパ(英国)事業

これだけの事業から撤退しながら、集中投資によって市場を取りに行っているのが「メルカリ」と「メルペイ」です。それぞれの領域では競争が激しくなっており、広告宣伝費の投入などが多額となっていますが、会社としては2つの領域にシナジー効果があると見込んでいるようです。

メルカリは7月にサッカーJリーグの「鹿島アントラーズ」の経営権を取得し、オフィシャルショップに「メルペイ」を導入するなど、課題だった男性層や40代以上の中年層の取り込みを狙っています。

今後もこの3つの事業を中心に、相乗効果を狙える展開を進めていくものと見られます。

なお、決算を発表した8月8日以降、メルカリの株価は急落しています。

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