【財務分析】ワークマンがユニクロを上回る営業利益率20%を実現している理由

【財務分析】ワークマンがユニクロを上回る営業利益率20%を実現している理由

ここ1年で株価が2倍超に伸びていると話題のワークマン。主力だったワーキングウエア(作業服)の需要が減少する見通しの中で、アウトドアウエアやスポーツウエア、レインウエアのプライベートブランドを強化。新型店「ワークマンプラス」の好調で業績がアップしています。財務分析をベースにその強さに迫ります。


ワークマンの株価の上昇は著しいものがあります。

損益計算書(PL):営業利益は前期比27.6%増

ワークマンが運営する店舗には、フランチャイズ加盟店と直営店があります。したがって収入源には、商品を販売して得る「売上高」のほか、加盟店からのチャージ等の「営業収入」があり、これを合わせて「営業総収入」といいます。

ワークマンの2019年3月期決算は、営業総収入が669億円で前期比19.4%増。ここ数年の推移(2.4%→5.0%→7.7%)と比べて大きく伸びたことがわかります。

営業利益は13.5億円で前期比27.6%増、営業利益率は20.2%で同1.3pt増でした。利益水準が高く、非常に良い結果と言えるでしょう。

貸借対照表(BS):流動比率は460%超

総資産も営業総収入に比例するように増加し、669億円で前期比12.7%増。このうち、固定負債は29.7億円で前期比1.3%と微増でしたが、流動負債は132億円で同21.5%と大きく増えました。

流動負債の増加は気になる点かも知れませんが、200%以上で安定水準と言われ、小売業では平均166%程度の流動比率が463.8%と非常に高い水準を維持していますので、不安はまったくないと言えるでしょう。

キャッシュフロー計算書(CF):営業CFは微減

営業CF、投資CF、財務CFのいずれも前期比で減少しました。営業総収入が好調に伸びている中、営業CFが96億円で前期比2.0%に当たる1.9億円減少しています。

この主な要因は、たな卸資産の増加であり、売上高が急増することに伴うもので必ずしもネガティブなものではありません。

売上拡大や店舗数増加によって、商品在庫が一時的に増加した結果と見られます。しかしワークマンは、後述するように「棚卸資産回転率」も悪くないので、不良在庫となって悪影響を及ぼす可能性も低いと考えられます。

営業総収入を通じて現金を稼ぐ力を示す営業CFマージンは14.4%で、前期比3.2pt減。ただし小売業の平均4.8%と比較すると、依然として高い水準を確保しています。

資本効率分析:ROE・ROAは右肩上がり

営業総収入・営業利益とともに当期純利益が伸長し、ROE(株主資本利益率)、ROA(総資産利益率)も3期連続で増加しています。

ROEは15.5%(小売業の平均5.2%)、ROAは12.5%(同6.1%)ともに、業界平均を大きく上回っています。

Q1.売上増加率が急に高くなった理由

財務諸表分析を踏まえて生じた疑問について、さらに掘り下げて分析します。

(1) 新型店「ワークマンプラス」の効果

ワークマンの2019年3月期売上高は前期比で19.4%増えており、ここ数年続いていた1桁台の推移と比べても著しく高くなっています。これは、2018年9月に出店を開始した新型店「ワークマンプラス」の効果が大きいようです。

ワークマンプラスは、PB(プライベートブランド)商品を全面に押し出しながら、これまでのプロ作業員ではなく、一般顧客へのリーチを試みた新しいタイプの店舗です。これが大当たりして一気に顧客層の拡大に成功し、来客数が大きく伸びました。

出典:2019年3月期 決算説明会資料

客単価(2671円)や一人あたりの買物点数(2.7)は前期比でほぼ変わらず、店舗増加数も16店舗(1店舗当たり売上1.1億円)ですから、売上増加の主な要因は来客数が大きく伸びたことによることが分かります。

また、他店との差別化要因にもなっている「アウトドア向け」「スポーツ向け」「防水防寒」といったPB(プライベートブランド)商品の伸び率も大きく(売上高は前期比44.1%増)、売上高増加に貢献しています。

出典:2019年3月期 決算説明会資料

(2) 主要事業「ワーキングウェア」の健闘

東京オリンピックに伴う建設需要の増加もあり、国内建設投資市場はゆるやかに拡大しているものの、職人の数は減っており作業服の需要は減少傾向にあるようです。

そんな中、ワークマンはワーキングウエアで着実に売上を伸ばし続け、今でも主力商品です。売上高全体に占める割合は30.8%と商品分野の中で最も高く、前期比で20%以上と全事業平均を上回っています。

ワークマンの強さは、全国840店舗以上を展開している業界最大手であり、メーカーとの共同開発によりスケールメリットを生かして、顧客ニーズに合った商品展開ができることがあげられます。

競合となるのは小規模の個人商店。品揃えもメーカー主導で、後継者不足のため今後は数が減っていくことが予想されます。ワークマンの競争力は非常に高いといえるでしょう(参考:個人投資家向け会社説明会資料ワークマン2019年)。

Q2.営業利益率20%超の理由

アパレル業界の平均的な営業利益率が3~5%、高利益率を誇るユニクロでさえ営業利益率10.9%(2019年5月)ですから、ワークマンの20.2%がいかに高いかが分かるでしょう。

(1)「フランチャイズシステム」であること

高利益率を根底から支える理由は「フランチャイズシステム」というビジネスモデルです。本部がフランチャイズ・ストア(加盟店)に対し、情報やノウハウの供与、資金面の応援などを行うことで、「ワークマン・チャージ収入」を得るしくみです。

粗利益の約4割が加盟店の収入となり、残りの6割はロイヤリティとして本部に入ります。そこから本部は商品配送コストやプロモーション費用を支払い、残りが利益となります。このほか、加盟店はフランチャイズ契約(6年)に350万円、業務委託契約(1年)に150万円を支払います。

フランチャイズ率は、82.8%(17/3末)→84.3%(18/3末)→87.7%(19/3末)と着実に高まっており、20年末にはフランチャイズ率92.8%を予想しています。

なお、ワークマンの社員数(単体)は266人(19/3末)で、全国840以上の店舗を動かしています。フランチャイズ加盟店が店舗運営をしてくれるので、ワークマンは本部人員をそれほど増加させることなく店舗展開ができ、間接費を抑えられるメリットもあります。

(2)「ベイシアグループ」の一員であること

高利益率を実現しているもうひとつの理由として、ワークマンが規模のメリットをうまく使っていることがあげられます。

ワークマンは「ベイシアグループ」という大きな流通グループ企業の主要企業です。ベイシアグループは、ショッピングセンターのベイシアをはじめとして、ホームセンターのカインズ、コンビニのセーブオンなどの小売チェーンを中心に、グループ総売上9000億円を誇る企業グループです。

商品開発、人材育成、ロジスティクス、情報システムなどの各分野で連携することで、1社単独の経営に比べて効率的な経営を実現しやすい環境にあります。

個人投資家向け会社説明会 2019年9月

(3)「効率経営」の取り組み

ワークマンは業界最大手の売上高と店舗数を誇っており、規模を生かした効率的な経営を行うことで利益率を高めています。

商品が効率的に売れているか、売れ残りなどのロスが少ないかを示す「棚卸資産回転率」は6.99で、ファーストリテイリングの3.92に比べてかなり良い数字です。

この数字は、マーチャンダイザー(MD)が生産量や販売戦略まで一手に担うなど、独自のルールを設け運用する独自の「需要予測システム」が支えていると言われています。

本部への発注自動化、ワークマン、需要予測システム導入。Icon outbound

https://messe.nikkei.co.jp/rt/news/135610.html

[ 2017年3月22日 / 日経MJ(流通新聞) ]【前橋】作業服チェーンのワークマンは4月から、店舗から本部への発注業務の自動化を始める。

効率的な販売ができるということは、コストのロスが少なくて済むということになり、高付加価値の商品を投入することができます。ワークマンの売上原価率は62.4%ですが、ワークマンの土屋哲雄常務は「目指すは原価率65%」と公言しているようです。

ワークマン驚異の原価率65% アマゾンに定価で勝てるモノづくりIcon outbound

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00122/00003/

職人御用達のイメージが強かったワークマンが、時代の先端に躍り出た。2018年9月、一般向けの新業態「ワークマンプラス」の出店を開始。プロ品質のカジュアルウエアが激安価格で並び、ワークマンから縁遠かった消費者が飛びついた。

広告宣伝費の低さも、高収益の理由になっています。アパレル業界の売上高広告宣伝費率は3%前後と言われ、ファーストリテイリングの広告宣伝費率は3.3%(2019年5月期)ですが、ワークマンは0.4%(2019年3月期)と非常に低いです。

その背景には、イメージ・ブランドではなく機能性で売るプロ仕様の商品であることや、口コミやSNSで評判が広がったことなどがあるでしょう。流行の要素が弱く、売れ残った在庫は翌シーズンに回せるので、売り切りのための値引きが不要になることもメリットです。

このほか、「独自開拓した中国や東南アジアなど海外工場との直接取引」が、高い原価率にもかかわらず利益をあげられる要因とする取材報道もあります。

ワークマンが大ブレイク、低価格高品質でも利益が出せる3つの秘訣Icon outbound

https://diamond.jp/articles/-/203914?page=3

新業態「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」が大ブレークしたワークマン。集客の鍵を握るのはPB(プライベートブランド)商品だ。マーチャンダイザー(MD)が値付けから企画し、生産量や販売戦略まで一手に担う。

まとめ:「急拡大」にリスクはないか

ワークマンの2019年3月末現在の営業店舗数は、フランチャイズが734店舗、直営店が103店舗、合計837店舗となっています。

個人投資家向け会社説明会資料によると、2025年までには1000店舗に増やし、今後の出店はすべて「ワークマンプラス」で展開する予定です。

方針としては東京・神奈川・千葉・大阪・福岡といった大都市を中心にドミナント強化をするということです。同一商圏内に集中して店舗を出店することですが、それによって1店舗あたりの収益性が落ちるおそれは否定できません。

いまは目新しさから新規顧客の増加が続いていますが、これを維持するためには商品開発や広告宣伝などのさらなる強化が必要になり、これまでのような効率経営ができないかもしれません。絶好調のワークマンが今後どう変わっていくか、注目されます。

この記事の執筆者

企業戦略の策定や分析をしています。分かりやすい財務分析を目指します。