【本決算】サントリー食品インターナショナル 過半数の利益上げる海外市場に「コロナ禍」の不安

【本決算】サントリー食品インターナショナル 過半数の利益上げる海外市場に「コロナ禍」の不安

グループ内で清涼飲料と食品を担当するサントリー食品インターナショナル。「天然水」「BOSS」「伊右衛門」などの国内ヒット商品がありますが、利益の過半数は海外市場から。ここ数年は業績が伸び悩んでいますが、昨今の新型コロナウイルスも大きな逆風となりそうです。財務諸表などを基に会社の現状と課題を整理します。


損益計算書(PL):売上と営業利益は微増

サントリー食品インターナショナルの2019年12月期決算は、売上収益は前期比0.4%増の1兆2994億円、営業利益は同0.3%増の1139億円と増収増益でした。

売上原価は前期比0.6%増の7633億円で、粗利率は同0.1pt減の41.3%。販管費は前期と同水準の4221億円で、営業利益率も前期と同水準の8.8%となっています。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比13.9%減の689億円でした。主な減益要因は、法人所得税費用の増加や、当期純利益のうちの非支配持分の割合増加などです。

前期はアジア事業での事業売却益の発生により実際負担税率が下がっていましたが、今期はこれが無かったため法人所得税費用が増えています。また、タイやベトナムの子会社の業績が伸長した影響で、非支配持分に帰属する当期純利益が増えています。

なお、2020年12月期の業績は、売上高が1兆3380億円(前期比3.0%増)、営業利益が1170億円(同2.7%増)、当期純利益が700億円(同1.6%増)と増収増益が予想されています。

セグメント分析:利益の過半数は海外から

サントリー食品インターナショナルは、サントリーホールディングス傘下の子会社で、サントリーグループの飲料・食品事業の中核を担う企業です。事業セグメントは以下の5つに分かれています。

  • 日本事業:国内でのミネラルウォーター、コーヒー飲料、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、特定保健用食品等の製造・販売
  • 欧州事業:フランス、英国、スペイン、アフリカにおける炭酸飲料「オランジーナ」「シュウェップス」、果汁飲料「オアシス」「ライビーナ」、スポーツドリンク「ルコゼード」等の製造・販売
  • アジア事業:ベトナムにおけるエナジードリンク「String」、茶飲料「TEA+」等の販売。タイにおける炭酸飲料「PEPSI」等の販売。タイを含む東南アジア、台湾等における健康食品の製造・販売
  • オセアニア事業:ニュージーランド、オーストラリアを中心とした地域での清涼飲料の製造・販売
  • 米州事業:米国のノースカロライナ州を中心とした清涼飲料の製造・販売

2019年12月期の売上高構成比は、日本事業が54.2%の7043億円(前期比0.6%減)、欧州事業が17.1%の2225億円(同6.9%減)、アジア事業が17.8%の2317億円(同11.7%増)、オセアニア事業が4.1%の532億円(同1.8%減)、米州事業が6.8%の878億円(同3.2%増)となっています。

セグメント利益は、日本事業が42.4%の535億円(前期比1.5%増)、欧州事業が26.2%の330億円(同13.4%増)、アジア事業が20.0%の252億円(同13.7%減)、オセアニア事業が4.9%の61億円(同3.7%減)、米州事業が6.5%の82億円(同2.9%減)です。

ここ数年の業績推移をみると、アジア事業は2016年12月期から売上収益は40.8%増、営業利益は46.0%増と大きく伸びています。2019年12月期は減益となっていますが、これは前期に計上された食品及びインスタントコーヒー事業の売却益120億円がなくなった影響によるものです。一方で日本事業は売上利益ともに横ばいが続いています。

出典:2019年度決算説明会

日本における主要ブランド販売数量の内訳は、「サントリー天然水」が24.9%の1億1310万ケース、「BOSS」が24.5%の1億1180万ケースで、この2つのブランドで約半数を占めます。次いで「伊右衛門」が11.2%の5120万ケース、「サントリー烏龍茶」が5.5%の2500万ケース、「PEPSI」が4.4%の2020万ケース、「グリーンダカラ」が9.3%の4230万ケースとなっています。

中核ブランドの「サントリー天然水」は2016年、サントリーコーヒー「BOSS」は2018年に1億ケースの大台を突破。現在、日本の飲料ブランドで1億ケースを超えているのは、この2つと日本コカ・コーラのコーヒー「ジョージア」のみです。

2019年12月期は、「BOSS」の販売数量は順調に伸び、前期比3.6%増となったものの、悪天候の影響により「サントリー天然水」の販売数量が落ちたため、日本事業の売上は減少しました。

欧州事業の主要ブランド販売数量は、「ルコゼード」が4億600万L、「オアシス」が2億7600万L、「オランジーナ」が1億6400万L、「シュウェップス」が1億3400万L、「ライビーナ」が8600万Lでした。2019年12月期は、フランスにおいて「オアシス」が苦戦しましたが、英国での「ルコゼード」の販売は好調で前期比6.6%増となっています。

出典:2019年度決算説明会

キャッシュフロー計算書(CF):現金を稼ぐ力は業界内トップ

2019年12月期の営業CFは前期比16.6%増の1706億円でした。主に、税引前利益3億7300万円の増加のほか、棚卸資産の減少や仕入債務及びその他の債務の増加によるものです。

これに伴い、売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業CFマージンも同1.8pt増の13.1%に改善しています。

同じ飲料メーカーでは、アサヒグループホールディングスが12.1%、キリンホールディングスが9.2%、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスが4.7%、伊藤園が5.2%となっており、競合他社と比べて高めの水準となっています。

投資CFはマイナス594億円で、マイナス額は前期比1.4%増。前期に発生した子会社株式の売却による収入が無くなり、子会社株式の取得による支出は大幅減。有形固定資産及び無形資産の取得による支出がやや増えて、全体のマイナス額は微増となっています。

フリーCFは1112億円で前期比26.7%増で、キャッシュが潤沢です。

財務CFはマイナス1152億円で、マイナス額は前期の約2倍です。主に、前期に発生した長期借入れによる収入と社債の発行による収入がなくなり、短期借入金の返済による支出、社債の償還による支出、リース負債の返済による支出、非支配持分への配当金の支払額などが増えたためです。

貸借対照表(BS):財務安全性は改善傾向

2019年12月期末の資産合計は前期比1.8%増の1兆5673億円。流動資産は同0.7%増の4463億円、固定資産は同2.3%増の1兆1210億円です。固定資産の増加は、IFRS第16号「リース」適用により使用権資産が増加したことによるものです。

流動負債は前期比5.2%増の4619億円。仕入債務及びその他の債務や、その他の金融負債がやや増えています。固定負債は同11.1%減の2678億円です。IFRS第16号「リース」適用によるその他の金融負債の増加があったものの、長期借入金が大きく減少しています。有利子負債残高は同26.7%減の2074億円です。

純資産合計は前期比4.8%増の8376億円でした。

短期の支払能力を測る流動比率は前期比4.4pt減の96.6%。流動比率は一般に120%以上であれば安全とされ、100%を下回ると財務安全性に不安があるとされます。前期よりは悪化していますが、ここ数年は改善傾向にあります。

長期の支払能力を測る固定比率は前期比5.1pt減の148.2%。固定比率は低いほどよく、100%を超えると借入によって固定資産を購入していることになります。

同じ飲料メーカーでは、アサヒグループホールディングスが193.0%、キリンホールディングスが176.6%、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスが128.0%と、100%を超えている企業が多く、生産拠点の土地建物を所有したりM&Aで企業を買収したりすることで固定資産が多くなっています。

長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は前期比1.8pt増の48.3%。一般に30%で安全とされる30%を超えているものの、優良企業とされる50%には届いていません。

投資分析:ROE・ROAは業界平均水準

2019年12月期の親会社株主に帰属する当期純利益は前期比13.9%減の689億円でした。これに伴い、ROE(自己資本利益率)は同2.0pt減の9.4%、ROA(総資産利益率)も同0.8pt減の4.4%に悪化しています。

競合他社と比較すると、伊藤園(ROE9.9%、ROA4.8%)がほぼ同じ水準で、キリンホールディングス(ROE6.5%、ROA2.5%)よりも高いものの、アサヒグループホールディングス(ROE11.9%、ROA4.6%)を下回る水準となっています。

EPS(1株当たり利益)は前期比13.9%減の222.94円。BPS(1株当たり純資産)は純資産の増加により同5.8%増の2448.44円となっています。

配当性向は前期比4.9pt増の35.0%で、上場企業平均の約30%を上回っています。今期の配当金は、前期と同じ年78.0円(中間配当39.0円、期末配当39.0円)で、2020年12月期も変わらない予定となっています。

まとめ:新型コロナウイルスが強い逆風に

サントリー食品インターナショナルの株価は、2019年4月1日に5280円の高値をつけましたが、その後下がり、8月頃から2020年2月前半までは横ばいが続きました。

2020年2月後半からは、新型コロナウイルス肺炎による世界同時株安の影響で株価は下がり、3月13日には3520円の安値に。現在は4000円前後を推移しています。

サントリー食品インターナショナルは、2019年12月期の売上がM&A要素を除くと2%を下回る伸長にとどまったことから、今後はブランド投資をしっかり行うことで売上を伸ばしていきたいとしています。

これにより、2020年12月期の売上収益は1.2%増、営業利益は1.0%増、数量ベースでは約1.0%増となる業績予想を立てていました。しかし昨今の新型コロナ禍の影響を考えると、実現は困難と見られます。

主力の日本市場では、飲食店の営業自粛や在宅勤務への転換が相次いでおり、清涼飲料の消費も落ち込むと予想されます。日本に次いで大きい欧州市場でも新型コロナ感染者が多数発生していることから、同様の影響があるでしょう。利益の過半数を海外市場で上げるグローバル企業ならではの強い逆風となりそうです。

出典:2019年度決算説明会

この記事の執筆者

自動車・IT系が得意。分かりやすい記事を発信できるよう努めます。