【20年3月期】オリンパス、赤字続きのカメラ部門売却 内視鏡事業は中国が急成長

【20年3月期】オリンパス、赤字続きのカメラ部門売却 内視鏡事業は中国が急成長

光学機器を手掛けるオリンパス。大正期に創業し顕微鏡や体温計などを製造販売。現在も利益の9割超を内視鏡や治療機器などの医療分野が生み出しています。海外売上比率は8割を超えるグローバル企業です。売上高が伸び悩み利益率も低下する中、3期連続赤字のカメラ部門の売却を発表後、株価が急上昇。財務諸表を基に現状と課題を整理します。


損益計算書(PL):売上微増もコスト削減で利益回復

オリンパスの2020年3月期決算は、売上高は前期比0.4%増の7974億円、営業利益は前期の3倍となる835億円で増収増益でした。

売上原価は前期比4.8%増の2978億円に増え、売上総利益は同2.0%減の4996億円に減少。粗利率は同1.5pt減の62.6%に悪化しました。主に、十二指腸内視鏡対応のため⼀時的な費用として104億円を売上原価に計上したことが要因です。

一方、販管費は前期比13.5%減の4161億円と大きく減少。前期比で研究開発費160億円、販売促進費50億円、旅費交通費39億円を削減できたためです。

また、その他の費用に関しても、前期に発生した証券訴訟の損害賠償請求の和解に伴う解決金などの一時費用441億円がなくなり、大幅に減少しています。

これにより、前期3.6%と大きく落ち込んだ営業利益率は前期比6.9pt増の10.5%に改善しています。

このほか、為替差損の影響により金融費用も減少し、親会社株主に帰属する当期純利益は前期の6.3倍となる517億円に増加しています。

2021年3月期の業績予想については、2020年6月24日に発表予定でしたが、延期となりました。新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により、合理的な算定が未だ困難な状況とのことです。

セグメント分析:利益の大半を内視鏡事業が生み出す

オリンパスは、光学機器や電子機器の製造販売を行っている会社で、医療分野に強く、消化器内視鏡は世界シェア1位となっています。報告セグメントは、今期より従来の「医療事業」が「内視鏡事業」「治療機器事業」に分割され、以下の5つに変更されました。

  • 内視鏡事業:消化器内視鏡、外科内視鏡、内視鏡システム、修理サービス
  • 治療機器事業:内視鏡処置具、エネルギー・デバイス、泌尿器科・婦人科及び耳鼻咽喉科製品
  • 科学事業:生物顕微鏡、工業用顕微鏡、工業用内視鏡、非破壊検査機器
  • 映像事業:デジタルカメラ、録音機
  • その他事業:生体材料など

出典:2020年3月期連結決算概況

2020年3月期の売上高構成比は、内視鏡事業が53.4%の4257億円、治療機器事業が27.1%の2161億円、科学事業が13.2%の1052億円、映像事業が5.5%の436億円、その他事業が0.8%の68億円でした。

営業利益では、内視鏡事業が1094億円で利益の大半を占めています。残りの事業については、治療機器事業が262億円、科学事業が100億円と黒字ですが、映像事業は104億円の赤字、その他事業は27億円の赤字となっています。

内視鏡事業の売上高は前期比1.6%増、営業利益は同21.9%増。新型コロナウィルス感染拡大の影響はあったものの、中国の高い売上成長を主要因として海外が好調に推移し、増収。また、販管費の効率化により増益となりました。

治療機器事業の売上高は前期比0.3%増、営業利益は同18.2%増。新型コロナウィルス感染拡大の影響により、第4四半期は北米、中国等で減収となったものの、処置具を中心に売上を伸ばし、通期では増収でした。また、前期に発生した一時費用の減少等により増益となりました。

科学事業の売上高は前期比0.9%増、営業利益は同22.9%増。新型コロナウィルス感染拡大の影響により一部地域で納品の延期等が発生したものの、生物顕微鏡が全地域で好調に推移したほか、非破壊検査機器が北米を中心として売上を伸ばしました。また、販管費の効率的なコントロールにより、過去最高の営業利益となりました。

映像事業の売上高は前期比10.4%減、赤字額は同43.1%減。スマートフォンの台頭等による厳しい事業環境に加え、新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり減収。一方で、前期に発生した生産拠点の再編に伴う費用がなくなったことや販管費の効率化により、赤字は縮小しました。

その他事業の売上高は前期比2.0%増、赤字額は同22.1%減。生体材料が堅調に推移したことにより増収。また、新規事業の探索活動費用の効率化により、赤字が縮小しました。

出典:2020年3月期連結決算概況

地域別の売上高を見ると、海外の売上が全体の81.9%を占めています。内訳は、北米が40.8%、欧州が29.3%、中国が15.8%、アジア・オセアニアが11.1%、その他が3.0%です。割合としては北米が主力ですが、近年は医療分野における中国の成長が著しく、特に2020年3月期の売上高は前期比22.0%増と急成長しています。

オリンパスは、新型コロナウィルス感染拡大の影響はあるものの、今後も中国での成長トレンドは変わらない見込みであるとしており、引き続き着実に成長機会を捉えていく方針です。

出典:2020年3月期連結決算概況

キャッシュフロー計算書(CF):現金を稼ぐ力が大幅改善

2020年3月期の営業CFは前期比99.5%増の1335億円。主に、税引前利益が前期から577億円増加したことや、非資金項目である減価償却費および償却費が増加したためです。

これに伴い、売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業CFマージンも前期比8.3pt増の16.7%に改善しています。この水準は上場企業の中でも比較的上位の「現金を稼ぐ力の強い企業」です。

投資CFはマイナス624億円で、マイナス額は前期比3.5%増。主に、研究開発が順調に進み、より多くの開発費が資産化されたことにより、無形資産の取得による支出が増加したためです。

これらにより、フリーCFは前期の10.7倍となる711億円と大幅に増加しました。

財務CFはマイナス195億円で、マイナス額は前期比76.5%減。自己株式の取得による支出が934億円増加した一方で、コマーシャル・ペーパーや社債による収入も大幅に増加したためです。

これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は1627億円で、前期から481億円増えており、資金を確保できています。

貸借対照表(BS):有利子負債残高と固定比率が急増

2020年3月期末の資産合計は前期比9.0%増の1兆157億円。流動資産は同11.1%増の5067億円、固定資産は同6.9%増の5090億円です。

流動資産の増加は、主に、現金の増加や、新型コロナウィルス感染拡大により想定通りに売上が伸びず在庫が増加したことによるものです。固定資産の増加は、IFRS第16号の適用に伴う有形固定資産の増加や、無形資産の増加によるものです。

流動負債は前期比16.1%増の3338億円。主に、コマーシャル・ペーパーの発行によるものです。固定負債は同53.3%増の3099億円。主に、社債の発行やIFRS第16号適用に伴うその他の金融負債の増加によるものです。

これにより、有利子負債残高は前期比47.6%増の2809億円と大幅増。株主資本に対する有利子負債残高の比率は75.8%で、望ましいとされる100%以下ではあるものの、前期の43.1%から大きく増えています。

純資産合計は前期比15.9%減の3720億円に減少。主に、2019年8月に実施した自己株式の取得によるものです。

短期の支払能力を測る流動比率は前期比6.8pt減の151.8%。流動比率は一般に120%以上であれば安全とされ、安全性に問題はありません。

長期の支払能力を測る固定比率は前期比29.4pt増の137.3%。固定比率は低いほどよく、100%を超えると借入によって固定資産を購入していることになります。オリンパスは、生産設備などの有形固定資産やのれんが多いため固定比率が高く、リース取引の計上や株主資本の減少によりさらに悪化しています。

長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は前期比10.8pt減の36.5%。株主資本比率は、業種によっても異なりますが一般に30%で安全とされ、安全ラインは超えているものの優良企業とされる50%には届いていません。

投資分析:ROEは高水準

2020年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は前期の6.3倍となる517億円でした。

これに伴い、ROE(自己資本利益率)は前期比10.9pt増の12.7%に改善し、精密機器業の業界平均6.6%を大きく上回っています。ROA(総資産利益率)も同4.5pt増の5.3%に改善しましたが、こちらは業界平均の5.5%をわずかに下回っています。

なお、オリンパスは2019年8月に自己株式の取得を行っており、8015万3100株(金額で933億7836万円)を取得しています。

EPS(1株当たり利益)は前期の6.6倍となる39.4円。BPS(1株当たり純資産)は純資産の減少により同10.7%減の288.4円となっています。

配当性向は前期比100.3pt減25.4%に悪化し、上場企業平均の約30%を下回りました。今期の配当金は前期から20円減配の10.0円ですが、2019年4月に普通株式1株につき4株の割合で株式分割を行っており、株式分割を考慮しない場合は前期から10円増配の40.0円になるとのことです。2021年3月期の配当額は未定となっています。

まとめ:株式市場は「映像事業の売却」を好感しコロナ前の年初来高値に迫る

オリンパスの株価は、2019年後半から2020年2月にかけて、自社株買い、第2四半期決算での大幅増益、業績予想の上方修正などにより上昇し続け、2020年2月7日には2148円の高値を付けました。 しかし、その後は新型コロナウイルス肺炎による世界同時株安の影響で急落し、3月19日には1264円の安値となりました。

その後、株価はやや上昇したものの、4月から5月中旬までは横ばいが続きました。しかし、5月25日頃から上昇し始め、29日の本決算後はさらに上昇。一旦、落ち着きを見せた後、6月25日に映像事業の売却が発表されたことを受けて、翌26日には2143.5円まで上昇し、コロナ前の年初来高値に迫りました。

オリンパスは、本決算において、全事業で需要の回復には一定の時間がかかり、特にコンシューマ製品を扱う映像事業はより時間がかかる見通しと発表していました。

この対策として、コマーシャル・ペーパーを追加で約800億円発行し、手元流動性を確保。4月より、新規採用の見直し・凍結、新規プロジェクトの開始時期の精査・延期、優先順位の見直し等、緊急の費用統制を開始しています。

しかし、想定以上に新型コロナウィルス感染拡大による売上高の減少傾向が続いているため、2020年6月24日に予定していた2021年3月期業績予想の公開を延期。また、同日、映像事業の売却を発表しました。これにより、今後は、収益性の高い医療分野に注力する方針です。

医療分野では、2020年4月、欧州とアジアの一部地域で次世代消化器内視鏡システム「EVIS X1(イーヴィス エックスワン)」の販売を開始しており、その他の地域についても、順次導入を進めていく計画となっています。

この他にも、成長を牽引する新製品開発への投資は継続して行う方針で、現在、人工知能(AI)などの次世代技術を開発中とのことです。

出典:2021年3月期連結業績予想の公表延期に関するお知らせ(参考資料)

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