「大手企業」とは?
一般的には、業界での知名度やシェア率の高い企業が「大手企業」と呼ばれます。明確な定義はありませんが、創業から歴史のある企業や国内シェアの高い企業、グローバルな事業展開をしている企業など、その特徴は様々です。
似た意味で使われる言葉に「大企業」がありますが、これは事業規模に基づいて定義されています。中小企業基本法では、資本金や従業員数などに基づいて「中小企業」の基準が定められており、これを超える企業が「大企業」です。
「大手企業」と呼ばれる企業は、この「大企業」の定義に当てはまるケースが多くありますが、必ずしもイコールではないため注意が必要です。
■仕事の内容と進め方
大手企業の仕事の特徴として、以下の点が挙げられます。
- 企業や商品の知名度が高いため、営業活動がスムーズ
- 顧客基盤が既に築かれている
- 大規模プロジェクトが多い
知名度やシェア率の高さに関連する特徴が多く、「大規模な仕事に携われる」「誰もが知っている商品(事業)に関われる」といった充実感を感じられる人も多くいます。
また、大手企業に勤務する場合、仕事の進め方にも以下のような特徴があります。
- プロジェクト規模が大きいため、多くの人と関わり合う
- 「組織」を意識した動きが重要
- 社内の派閥や政治圧があるケースも多く、「根回し力」が必要
- 意識決定のプロセスが複雑で、時間がかかる
- 昔ながらの仕事の流れがあり、その慣例を変えにくい
携わる仕事が大規模であることは、メリットにもデメリットにもなり得ます。多くの人と関わり合うことで学びや刺激も多い一方で、意思決定にも時間がかかるほか、組織内でうまく立ち回っていくことが求められます。大きなプロジェクトに携わるということは、「プロジェクト全体から見ると、1人ひとりの裁量は小さい」ということでもあるのです。
■環境
大手企業の仕事では多くの人が関わり合うため、情報量や人材資源が豊富にあります。多様な価値観の中で仕事を進められるだけでなく、様々な専門性を持つプロフェッショナルも多く、何かあれば相談しやすい環境であると言えます。
大手企業は組織力があるため、研修制度や教育制度が整い、福利厚生も充実している傾向があります。プロジェクト規模が大きいため、国内外問わず転勤があるケースも多いでしょう。
■身につくスキル
大手企業で働くことで、以下のようなスキルを身につけることができます。
- 多様な人との連携力や調整力
- 折衝力
- コミュニケーション能力
- 広い視野
- 仕事のマニュアル化
- 環境適応力
■メリット・デメリット
メリット
大規模な仕事に携わることができる
幅広い人脈を築くことができる
社会的信用を得やすい
経営基盤や給与面で比較的安定しており、福利厚生も充実している
デメリット
個人より「組織」を優先した働き方で、様々な制限がある
意思決定や仕事のスピード感が遅い
異動もあり、携わる事業や勤務地を選べない
「ベンチャー企業」とは?
一般的には、既存のビジネスモデルに工夫を加えて、独自のアイデアで新しいサービスやビジネスを展開する企業が「ベンチャー企業」と呼ばれます。「ベンチャービジネス」から派生して作られた和製英語であり、「新たに立ち上がったスモールビジネス」のような意味合いで使われることが多いです。明確な基準はないものの、設立からの年数が若い企業が多く、企業規模も小規模から中規模であるケースがほとんどです。
似た意味で使われる言葉に「スタートアップ」がありますが、これはアメリカのシリコンバレーが発祥とされていて、これまでにない革新的なビジネスモデルで、短期間での成長を目指す企業のことです。
ベンチャー企業とスタートアップは、大手企業との対比の中では同じくくりで考えられることもありますが、成り立ちやビジネスモデル等には大きな違いがあると言えます。
■仕事の内容と進め方
ベンチャー企業の仕事の特徴として、以下の点が挙げられます。
- 組織や仕事内容の変化が激しく、新規事業が立ち上がりやすい
- 企業や商品の知名度が低いため、営業活動は新規開拓が中心
- プロジェクトの規模が小さい
プロジェクト規模は小さいながらも、新規事業が立ち上がりやすく、小回りが利きやすいと言えます。知名度が低いという点も、「まだ知られていないものを、自分の力で世に広めていく」という使命感ややりがいに変えている人も多くいます。
また、ベンチャー企業に勤務する場合、仕事の進め方にも以下のような特徴があります。
- チームプレイより個人プレイが多く、仕事の裁量が大きい
- ゼネラリストとして、自分で何でもこなしていく
- 若手の頃から重要な仕事を任せてもらいやすく、自発性が求められる
- 意思決定にスピード感がある
ベンチャー企業は、組織力としては低い傾向がありますが、その分任せてもらえる仕事が多く、意思決定にもスピード感があります。自分で様々なことを実現したいという想いがあり、推進していく機動力や突破力のある人にとっては、魅力的な環境だと言えるでしょう。
■環境
ベンチャー企業はビジネス規模が比較的小さい分、社員と経営層との距離が近い傾向があります。そのため、社員は経営層から直接学べることが多くあるほか、事業の全体像が見やすく、ビジネス感覚が身につきやすいです。また、現場の声が経営層に届きやすく、行動力がある人にとっては積極的に意見やアイデアを発しやすい環境であるといえます。
大企業のように複数拠点を抱えるケースは少ないため、基本的には転勤はありません。リモートワークやフレックス制度を積極的に取り入れるなど、働き方に融通が利くケースも多いですが、福利厚生は大企業ほど整備されていないかもしれません。
■身につくスキル
ベンチャー企業で働くことで、以下のようなスキルを身につけることができます。
- 提案力
- 交渉力
- 自己発信力
- 企画力
- 推進力
- 変化への柔軟な対応力
- 幅広い業務経験
■メリット・デメリット
メリット
個人の裁量が大きい仕事を任せてもらえる
経営層に近い視点でビジネス感覚を身につけることができる
スピード感を持って幅広い業務を経験することができる
社内で企画やアイデアを発信しやすい
デメリット
携わる仕事の規模は小さい
社会的信用が小さい
労働環境面で会社に守ってもらいにくい
これからの時代にこそ「ベンチャー企業」がおすすめな理由
このように、大手企業とベンチャー企業には、仕事内容や企業カルチャー、働き方などの点で様々な違いがあります。どちらを選ぶかは求職者の方の志向性によりますが、「転職するなら、大手企業とベンチャー企業どちらがいいですか?」と聞かれたら、私は人材紹介エージェントとして様々な企業のビジネス動向や求人案件を見てきた経験から「ベンチャー企業」をおすすめします。
その理由を、「世の中のビジネスの流れ」「収入面のトレンド」「これからの時代を生き抜くための仕事と個人ブランディング」の観点からご紹介します。
■世の中のビジネスの流れ
DXが進み急速に変化する世の中の流れを受けて、ビジネスの主流も変わりつつあります。 平成元年と平成31年の世界時価総額ランキングを比べてみると、平成元年には数多く名を連ねていた日本の銀行やメーカーといった企業が、平成31年にはほとんど姿を消してしまっています。1990年代から2000年代初期にかけてのインターネットバブルを皮切りに、ECサービスを展開するAmazonやWalmart、動画配信サービスを展開するNetflixやディズニーなどが業績を伸ばしており、ランキングは米国企業が席巻。ビジネスの主流も変化しつつあることが伺えます。 (参考:https://media.startup-db.com/research/marketcap-global)
こうした世の中の流れを受けて、日本企業の在り方やビジネス展開も大きな変化を迎えています。例えば、小売りビジネスではAIやロボットに代替できる仕事が増えてきており、これまで人が担っていた仕事がどんどん自動化されつつあります。大手の生活雑貨店でも在庫管理やレジ対応の自動化が進んでおり、このままいくといずれ「店長」という仕事がなくなる日も来るかもしれません。食品スーパー業界においては、生鮮食品は地産地消に、パッケージ化できるものはネットスーパーによる宅配に置き換えられていくことで、大手スーパーの店舗も物流拠点化が進むでしょう。 そうなってくると、転職先を考える上で「大手企業」のメリットは、一昔前と比べて感じられにくくなってきます。世の中でさらにDX化が進みビジネスの仕組みが変わっても、AIやロボットに代替することのできない“強み”を活かして活躍するためには、組織に依存しない「個の力」を存分に高めておく必要があります。その上で、最初にご説明したような「個人の裁量が大きい仕事を任せてもらえる」「経営層に近い視点でビジネス感覚を身につけることができる」「スピード感を持って幅広い業務を経験することができる」といったベンチャー企業ならではの経験は、必ず大きなプラスになるはずです。
■収入面のトレンド
大手企業に勤務することのメリットの一つは、給与面の安定性や退職金、福利厚生です。これも近年少しずつ変わりつつあります。 上記にご説明したような世の中の流れやビジネスの変化を受けて、今まで安定していると言われていた日本の大手企業も、そうも言っていられない状況になってきました。時価総額ランキングの変化を見ても分かるように、平成元年には数多くランクインしていた日本の大手企業はランク外になっており、一昔前のような“安定神話”は崩れつつあります。また、大手企業に就職する最大のメリットとも言われていた退職金制度も、近年は廃止する企業が増えつつあるのです。 ベンチャー企業は福利厚生面では大企業に劣るものの、個人の頑張りが給与に反映されやすい側面もあるほか、副業を認めているケースも多いため、結果的にベンチャー企業の方が高収入になることも増えています。特にこの「副業」は、収入面だけでなく個人ブランディングの観点からも重要なポイントになりますので、詳しくご紹介します。
■これからの時代を生き抜くための仕事と個人ブランディング
近年は多様な働き方が取り入れられるようになり、副業や複業をする人も増えてきました。新型コロナウイルス流行の影響でリモートワーク化が進み、この傾向はますます顕著になっています。 これは「より多くの収入を得る」ということだけでなく、個人ブランディングの側面が強く表れています。組織の枠組みだけでは実現できないようなビジネスの在り方を、個の力で実現していくというもので、こうした経験を通してよりスキルアップしていくことが当たり前の世の中になりつつあります。 パーソル研究所の調査によると、2018年の調査時には48.8%の企業が副業を全面的に禁止しており、全面容認している企業は14.4%に過ぎませんでした。2021年の調査では少し改善され、全面禁止は45.1%に減少、全面容認は23.7%に増えています。(出典:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/sidejob2.html)
ところが、多くの大手企業では今でも副業を禁止にしているほか、個人ブランディングには欠かせないSNSの利用を禁止しているケースも少なくありません。これは世の中の流れに反しており、これからの時代を生き抜いていく上では、ベンチャー企業のようなより「個」を重視した自由度の高い働き方が必須であると言えます。
こういうベンチャー企業は要注意!リスク回避術
これまで、ベンチャー企業がおすすめな理由をご紹介してきましたが、転職先として検討する際には注意すべき点もあります。以下の点はしっかりと確認し、不安がある場合は避けるようにしましょう。
- 社長が過度に“ワンマン”でないか
ベンチャー企業の場合、社長がワンマンであるケースは多いのですが、「社員の声に耳を傾けてくれるかどうか」は見極める必要があります。社長が現場からの声を一切聞かず、自分の思うがままに推し進めようとする場合は、ベンチャー企業で働くからこその良さを発揮できる環境ではないため要注意です。
- 資金力があるかどうか どんなに素晴らしい企業でも、倒産してしまっては元も子もありません。資金調達の有無や既存事業の利益状況を調べて見定める必要があります。
- 営業やマーケティングの体制が整っているか
ベンチャー企業では、扱っている商品が素晴らしいものであっても「売る人がいない」「商品のことを知ってもらえていない」とった課題を抱えるケースがよくあります。こうした課題を認識し、解決するための営業体制やマーケティング体制を整えているかどうかは、しっかりと確認しておく必要があります。
ポイント
具体例を挙げるとすると、調剤薬局向けサービスを展開する医療ベンチャーの株式会社カケハシや企業間物流に携わるベンチャー株式会社Hacobuは、資金調達ベースでの注目度も高くおすすめです。
こうした観点で情報収集することは、転職先を検討する上でとても重要ですが、企業ホームページ等の“外から見た情報”だけで判断するのは難しいものです。そこで、私たちのような転職専門エージェントをぜひご活用ください。グローバルウェイ・エージェントがお手伝いします(登録フォームに飛びます)。費用は一切かかりません。
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「転職エージェントって何?」という方はこちらの記事をお読みください。
幅広いビジネス経験を積み、「個」を高めてキャリアアップを
変化の激しい時代を生き抜くためには、ベンチャー企業の「個人の裁量が大きい仕事を任せてもらえる」「経営層に近い視点でビジネス感覚を身につけることができる」「スピード感を持って幅広い業務を経験することができる」といった経験がかならず活きてくると考えます。一昔前に「安定している」と言われていた大手企業で、なかなか個のスキルアップを図ることができないままの時間を過ごすのはもったいないのではないでしょうか。 もちろん、転職先を考える上では、それぞれの志向性に合わせて様々な側面から検討していく必要があります。その上で、一度きりの人生を思い切り楽しむためにも、「ベンチャー企業でのチャレンジに舵を切る」という選択肢を検討されてみてはいかがでしょうか。
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