0 編集部が注目した重点ポイント
① 燃料価格変動の利益押し上げにより経常利益2,821億円を確保する
2026年3月期中間決算では、燃料価格の変動が料金に反映されるまでのタイムラグ(期ずれ)がプラスに働いたことで、本業の儲けを示す経常利益が前年同期比で314億円の増益となりました。販売電力量の減少により売上高は減収となりましたが、JERAなどの持分法適用会社を通じた収益改善が大きく寄与しています。
② 燃料デブリ取り出し準備で巨額損失を計上し最終赤字へ転落する
福島第一原子力発電所の燃料デブリ取り出しに向けた準備作業費用として、新たに9,041億円の災害特別損失を計上しました。この巨額の会計処理により、親会社株主に帰属する中間純損益は7,123億円の損失となりました。廃炉に向けた具体的な工法や工程が示されたことによる、将来費用の早期見積もり反映という構造的な変化が生じています。
③ 柏崎刈羽原発の再稼働時期が不透明で通期予想を未定とする
2025年度の通期業績予想については、経営の重要マイルストーンである柏崎刈羽原子力発電所の再稼働時期を見通せないことから、現時点で「未定」としています。収支へのインパクトが極めて大きい電源構成の最適化が遅れている一方で、送配電や小売、再生可能エネルギーの各事業は堅調に利益を積み上げており、転職者にとっては各事業会社の自立的な成長性が注目されます。
1 連結業績ハイライト
出典:2025年度第2四半期(中間期)決算概要 P.2
売上高は、他社への契約切り替えが進んだことや気温影響による販売電力量の減少を主因として、3兆1,502億円(前年同期比2,046億円減)となりました。一方で、経常利益については、燃料価格の変動が販売単価に反映される際の「期ずれ影響」が前年同期より810億円好転したことなどが寄与し、2,821億円の利益を確保しています。
注目すべきは、今回計上された巨額の「災害特別損失」です。燃料デブリの取り出し準備に係る新たに見込まれる作業費用等として9,030億円を計上したことで、純利益は大幅なマイナスとなりました。これにより、自己資本比率も25.1%から20.3%へ低下しており、財務体質の健全化が引き続き大きな経営課題となっています。
なお、通期業績予想については、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働時期が依然として未定であることから「公表なし」となっています。この不確実性が高い経営環境下で、いかにコスト削減と新規事業の収益化を進めるかが、転職者にとっての活躍の鍵となります。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:2025年度第2四半期(中間期)決算概要 P.4
東京電力ホールディングス (HD)
事業内容:グループ全体の経営戦略策定、原子力発電、廃炉作業の統括。
業績推移:経常利益は1,423億円(前年同期比+34億円)。子会社からの配当収入増が主因。
注目ポイント:廃炉・賠償の責任を果たしつつ、柏崎刈羽の再稼働に向けた安全対策強化を推進しています。燃料デブリ取り出し工法の策定など、世界に類を見ない難易度の高いプロジェクト管理能力が求められています。
東京電力フュエル&パワー (FP)
事業内容:火力発電事業(主にJERAへの出資を通じた事業運営)。
業績推移:経常利益は727億円(前年同期比+197億円)。JERAでの期ずれ好転が寄与。
注目ポイント:火力事業を統合したJERAの持分法投資損益が利益の源泉です。海外事業や再生可能エネルギー発電事業の利益増など、グローバルなエネルギー供給体制の最適化が収益性を支えています。
東京電力パワーグリッド (PG)
事業内容:送配電事業、電力需給調整。地域インフラの維持管理。
業績推移:経常利益は939億円(前年同期比+125億円)。需給調整費用の減少が利益を押し上げ。
注目ポイント:エリア需要の微増に加え、需給調整に係る費用の203億円減少など、運用効率化が顕著です。電力システム改革が進む中、安定供給と低コスト化を両立する高度な系統運用エンジニアリングが重要視されています。
東京電力エナジーパートナー (EP)
事業内容:電力・ガスの小売販売、ソリューション提案。
業績推移:経常利益は1,078億円(前年同期比+282億円)。期ずれ影響の好転が主因。
注目ポイント:競争激化や他社切替の影響で小売販売電力量は前年同期比で7.6%減少しています。一方、ガス契約数は149万件と堅調に増加。単なる電力販売から、顧客のエネルギー消費全体を最適化する付加価値提案への転換を急いでいます。
東京電力リニューアブルパワー (RP)
事業内容:水力、風力、太陽光等の再生可能エネルギー発電。
業績推移:経常利益は433億円(前年同期比+29億円)。修繕費の抑制により増益。
注目ポイント:出水率の低下(96.8%)により卸電力販売は減少しましたが、徹底した修繕費コントロールで増益を確保。カーボンニュートラルの主役として、既存拠点の効率化と新規開発を並行して進める高い技術力が不可欠です。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:2025年度第2四半期(中間期)決算概要 P.5
2025年度の通期見通しについて、会社側は「未定」とする極めて慎重な姿勢を崩していません。これは柏崎刈羽原子力発電所の再稼働時期が見通せないことが最大の要因ですが、一方で小売市場での競争激化や燃料価格の不確実性など、外部環境の厳しさも背景にあります。
転職者の視点で注目すべきは、今回新たに計上された「燃料デブリ取り出し準備費用」の詳細です。2025年7月に示された新たな作業のあり方を踏まえた見積もり増であり、これは「廃炉」という巨大プロジェクトが計画段階から実行準備段階へと移ったことを示唆しています。長期にわたる社会的責務を果たすための専門技術、デジタルトランスフォーメーションを活用した現場管理など、新たなスキルセットが求められる機会が増えています。
4 求職者へのアドバイス
志望動機のヒント
「安定した公益企業」というイメージではなく、「世界最大級の廃炉プロジェクトと、カーボンニュートラルへの挑戦」という変革期にある事実を志望動機に盛り込みましょう。特に、リニューアブルパワー事業やパワーグリッド事業で見られる経営効率化への実績に触れ、自身の専門性がどうコスト削減や安定供給に寄与できるかを語ることが有効です。
面接での逆質問例
「柏崎刈羽原発の再稼働が未定という状況下で、各事業会社が自律的な収益改善をどう進めているか、現場での具体的な取り組みを教えてください」「燃料デブリ取り出しに向けた新たな技術導入やデジタル活用において、中途採用者に期待される役割は何でしょうか」など、決算資料に記載された課題に基づいた質問を投げかけてみましょう。
5 転職者が知っておきたい現場のリアル(口コミ)
子育て中の社員にとっては働きやすい環境
在宅勤務が柔軟に認められており、特に子育て中の社員にとっては働きやすい環境が整っています。子どもの送り迎えのために一時的に仕事を離れることも許容されており、育児に対する理解が深いと感じます。産休から復帰した女性社員も多く、無理なく職場に戻れる体制が整っています。
(30代後半・システムエンジニア・女性) [キャリコネの口コミを読む]時間や期限に対する意識が薄い
職場では時間や期限に対する意識が薄いと感じることが多く、役所のようなペースで進むことがしばしばです。
(30代後半・コンサルティング営業・男性) [キャリコネの口コミを読む]※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料:
- 2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)
- 2025年度第2四半期(中間期)決算概要



2019年より企業口コミサイト「キャリコネ」担当として、数多くの企業の口コミ情報、決算資料、中期経営計画を横断的に分析。現在はリサコ編集部長として、一次情報と現場の声を突き合わせた企業研究コンテンツの企画・編集・品質管理を統括し、転職希望者の意思決定に資する情報提供を行っている。