不動テトラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

不動テトラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の建設会社。テトラポッド等のブロック事業、地盤改良事業、土木事業を展開します。第79期連結業績は、大型工事の稼働や地盤改良事業の受注環境が良好に推移したこと等により、売上高696億円(前期比増収)、営業利益32億円(前期比増益)となりました。


※本記事は、株式会社不動テトラ の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 不動テトラってどんな会社?


消波ブロック「テトラポッド」で知られる建設会社。土木・地盤改良・ブロックの3事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社の源流は1947年に設立された株式会社瀧田ノ組(後の不動建設)に遡ります。1961年にはテトラポッドの製作販売を行う事業会社が設立されました。2006年に不動建設と株式会社テトラが合併し、現在の商号となりました。2020年には愛知ベース工業等を子会社化し、地盤改良事業の体制を強化しています。

連結従業員数は992名、単体では845名です。筆頭株主は常任代理人を通じたゴールドマン・サックス・インターナショナルで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も信託銀行であり、機関投資家や資産管理機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 24.29%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.64%
日本カストディ銀行(信託口) 4.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は奥田眞也氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
奥田 眞也 代表取締役社長 1980年入社。東京本店副本店長、地盤事業本部長等を経て、2015年代表取締役、2018年より現職。
大林 淳 取締役執行役員副社長(土木事業・地盤事業・ブロック環境事業担当) 1984年入社。地盤事業本部副本部長、地盤事業本部長等を経て、2024年執行役員副社長、2025年より現職。
川地 洋治 取締役常務執行役員(管理本部長、安全品質環境本部担当) 1992年入社。管理本部総務人事部長、管理本部副本部長等を経て、2023年常務執行役員、2025年より現職。


社外取締役は、大沢真理(東京大学名誉教授)、川村倫大(元三菱UFJリサーチ&コンサルティング部長)、黒田清行(弁護士)、鈴木昌治(元日本公認会計士協会副会長)、前田清(元三菱製紙専務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「地盤改良事業」「ブロック事業」および「その他」事業を展開しています。

土木事業


道路、トンネル、橋梁、下水道などの陸上土木工事や、港湾、埋立護岸、海岸などの海洋土木工事を施工しています。官公庁や民間企業が主な顧客です。

工事の進捗に応じた請負代金が主な収益源です。運営は同社および連結子会社の高橋秋和建設が相互に工事の発注または受注を行いながら進めています。

地盤改良事業


軟弱地盤の改良工事や液状化対策工事の施工、および関連する施工機械の賃貸等を行っています。陸上・海上を問わず多様な地盤条件に対応する技術を提供しています。

工事施工による請負代金や機械賃貸料が収益となります。運営は同社、株式会社ソイルテクニカ、Fudo Construction Inc.、愛知ベース工業などが担っています。

ブロック事業


港湾・河川・海岸等の護岸に使用される消波・根固ブロック(テトラポッド等)の製造用鋼製型枠の賃貸を中心に行っています。また、関連商品や実験設備、ソフトウェア等の販売も手掛けています。

型枠の賃貸料や商品販売代金が主な収益源です。運営は同社および株式会社三柱が行っており、同社は土木事業においてこれらの会社から型枠を貸借することもあります。

その他事業


グループ会社向けに保険代理等のサービスを提供しています。

保険代理店手数料等が収益となります。運営は福祉商事が担っており、同社グループ各社がこれらのサービスを受けています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は600億円台後半から700億円前後で推移しており、底堅い需要に支えられています。当期は増収増益となり、利益率も改善傾向にあります。当期利益についても前期を上回り、安定した収益性を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 723億円 668億円 705億円 679億円 696億円
経常利益 47億円 34億円 35億円 29億円 34億円
利益率(%) 6.5% 5.1% 4.9% 4.3% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 18億円 27億円 26億円 20億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益が増加しました。販管費も増加していますが、増収効果により営業利益は増加し、営業利益率は改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 679億円 696億円
売上総利益 93億円 107億円
売上総利益率(%) 13.7% 15.4%
営業利益 27億円 32億円
営業利益率(%) 3.9% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が46億円(構成比52%)、従業員給料手当が29億円(同33%)を占めています。売上原価においては、完成工事原価が556億円(構成比97%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


土木事業は、進捗遅れのあった大型工事の稼働が本格化し増収となりました。利益面では、前期に採算が悪化した工事の影響が残るものの、前期の営業損失から黒字転換して推移しています。

地盤改良事業は、下期の高稼働もあり増収となった一方、手持ち工事の採算性は良好を維持したものの、保有機械の修繕費が増加したことなどにより減益となりました。ブロック事業は、前期にあった大型案件向け型枠賃貸や商品販売の減少が大きく影響し、減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
土木事業 273.8億円 296.4億円 -15.0億円 5.6億円 1.9%
地盤改良事業 367.5億円 371.2億円 40.6億円 34.0億円 9.1%
ブロック事業 34.5億円 26.5億円 0.7億円 0.6億円 2.4%
その他 3.7億円 1.6億円 0.3億円 0.2億円 14.0%
調整額 - - -0.1億円 -8.6億円 -
連結(合計) 679.5億円 695.6億円 26.6億円 31.8億円 4.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFの縮小は、税金等調整前当期純利益や減価償却費を計上しているものの、売上債権及び契約資産の増加したことによるものです。また、投資CFのマイナス拡大は有形固定資産の取得などによる積極的な投資によるものです。

結果として本業で稼いだ現金(営業CF)を上回る投資を行っていますが、長期・短期の借入金によって資金調達を行っているため財務CFはプラスとなっており、配当金の支払いをこなしつつ期末の現金残高は約104億円を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 71億円 6億円
投資CF -36億円 -65億円
財務CF -23億円 53億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「豊かで安全・安心な国土づくりに貢献します」を使命(Mission)として掲げています。この使命に基づき、「あらゆる変化を進化に換えて未来に向かって歩み続けます」という価値観(Value)のもと、「世代を超えて生き続ける独自の技術を提供します」という目標(Vision)の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「土木、地盤改良、ブロックの3事業が協調し、海に陸に、持続的な成長を目指します」を経営方針としています。また、昨今の不正事案を受け、企業文化・風土の改革を掲げ、心理的安全性の確保や風通しの良い職場環境の確立、コンプライアンス意識の浸透に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2027年度に「売上高800億円以上、営業利益率5%以上」を目指す長期目標を掲げています。その最終段階となる中期経営計画(2024~2026年度)では、最終年度の目標として以下の数値を設定しています。

* ROE:9.0%以上
* 配当性向:40%程度

(4) 成長戦略と重点施策


「新規事業の創出と事業領域の拡大」「ESG経営の実践」「資本コストを意識した経営」「人的資本経営の推進」を基本方針としています。具体的には、土木事業でのリニューアル事業への参画、地盤改良事業での民間・海外市場拡大、ブロック事業での洋上風力発電事業への参画や海外展開等を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員の「働きやすさ(ウェルビーイング)」と「働きがい(エンゲージメント)」を追求し、魅力ある会社・選ばれる会社の実現を目指しています。人材の採用、育成、最適配置を通じて人的資本の最大化を図り、特に施工要員の確保や中堅・若手技術者の早期戦力化に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.0歳 19.3年 7,436,737円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.4%
男性育児休業取得率 110.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.1%
男女賃金差異(正規) 71.1%
男女賃金差異(非正規) 57.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規定期採用に占める女性労働者の割合(20.0%)、従業員に占める中途採用労働者の割合(28.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の変動


公共投資や民間設備投資の動向に業績が影響を受ける可能性があります。政府建設投資の縮小や発注時期の変更などがリスク要因となります。これに対し、顧客ニーズへの対応によるシェア拡大や、「維持補修」分野などの有望市場への参入により事業領域の拡大を図っています。

(2) 担い手不足と人件費高騰


少子高齢化による建設業界の就労人口減少が進む中、十分な人材を確保できない場合、事業活動に支障をきたす可能性があります。新卒・中途採用の強化や、働き方改革による離職防止、ICT活用による省人化などで対応を進めています。

(3) 資材価格の変動


建設資材価格の高騰が工事原価の上昇を招き、請負代金への転嫁が困難な場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。購買部門が早期から関与し、適正な価格での安定調達に努めています。

(4) 法的規制及びコンプライアンス


建設業法等の規制変更や法令違反が発生した場合、業績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。同社では従業員による架空発注事案が発生したことを受け、再発防止策として企業風土の改革や業務処理統制の強化、コンプライアンス教育の徹底などを進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。