ライト工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ライト工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証プライム市場に上場し、法面保護や地盤改良などの特殊土木工事を主力とする建設会社です。国内の防災・減災対策やインフラ老朽化対策の需要に加え、米国など海外事業も伸長しました。当連結会計年度の売上高は1,215億円と増収し、親会社株主に帰属する当期純利益は99億円の増益となりました。


※本記事は、ライト工業株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ライト工業ってどんな会社?


特殊土木分野で独自の地位を築く建設会社です。法面保護や地盤改良技術を核に、国内外でインフラ整備に貢献しています。

(1) 会社概要


1948年9月に株式会社ライト防水工業所として設立され、1951年1月に現社名へ変更しました。独自の特殊土木技術を強みに成長し、1961年10月に東証二部、1974年3月に東証一部へ上場しました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、東証プライム市場へ移行しています。近年では米国子会社やベトナム合弁会社を通じて海外事業も展開しています。

連結従業員数は1,385名(単体986名)です。大株主の構成は以下の通りです。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は大手生命保険会社です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 14.70%
太陽生命保険 6.12%
日本カストディ銀行 5.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性3名の計19名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役社長は阿久津 和浩氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
阿久津 和浩 代表取締役社長 1983年入社。東北統括支店長、常務執行役員関東支社長などを経て、2020年6月より現職。
川村 公平 専務取締役安全衛生環境本部長 1983年入社。東北統括支店長、技術営業本部長などを歴任し、2020年6月より現職。
西 誠 専務取締役経営企画本部長 1987年入社。執行役員人事総務担当、経営企画本部長などを経て、2021年6月より現職。
山本 明伸 専務取締役建築事業本部長 日宝工業を経て2009年入社。建築事業本部副本部長などを経て、2023年6月より現職。
村井 祐介 常務取締役関東支社長 1986年入社。執行役員中部統括支店長、西日本支社長などを経て、2019年6月より現職。
川本 治 常務取締役技術営業本部長 1986年入社。執行役員九州統括支店長、施工技術本部長などを経て、2023年6月より現職。
金藤 達也 常務取締役施工技術本部長 1997年入社。執行役員中部統括支店長などを経て、2023年6月より現職。
山根 智之 取締役海外事業本部長 1991年入社。経営企画部長、執行役員海外事業本部長などを経て、2022年6月より現職。
和平 好伸 取締役西日本支社長 1989年入社。執行役員西日本支社副支社長などを経て、2023年6月より現職。
高橋 恒歩 取締役経営管理本部長 三井住友銀行を経て2024年入社。常務執行役員経営管理本部副本部長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、白井 真(光和総合法律事務所パートナー)、清水 裕子(ISO/IEC JTC1 SC40/WG3国内委員会主査)、永田 武(永田武税理士事務所税理士)、浅野 浩美(事業創造大学院大学事業創造研究科教授)、佐々木 基(一般財団法人建設経済研究所理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 建設事業


法面保護工事、地盤改良工事を主体とした土木工事および建築工事を提供しています。国内では斜面対策や基礎補強、環境修復などを手掛け、海外では米国やベトナムなどで地盤改良工事等を行っています。官公庁および民間からの請負工事が中心です。

工事請負による収益が主な柱です。運営は主にライト工業が行っており、海外ではRAITO, INC.(米国)、RAITO FECON INNOVATIVE GEOTECHNICAL ENGINEERING JOINT STOCK COMPANY(ベトナム)などが担当しています。国内では小野良組などが建築・土木工事を行っています。

(2) その他


建設資材の販売、建設機械等のリース、保険代理店業、介護サービスなどを提供しています。建設事業を補完するサービスや、地域に密着した介護事業などを展開しています。

主な収益源は資材販売代金、リース料、介護サービス利用料などです。運営はアウラ・シーイー(資材・リース)、やさしい手らいと(介護)、エド・エンタープライズ(保険)などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上高は着実な増加傾向にあります。特に直近の2025年3月期は過去最高の1,215億円を記録しました。経常利益は110億円台から130億円台で推移し、安定した収益性を維持しています。当期純利益も増減はあるものの、直近では99億円と高い水準を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,082億円 1,095億円 1,150億円 1,173億円 1,215億円
経常利益 121億円 140億円 133億円 116億円 132億円
利益率(%) 11.2% 12.8% 11.6% 9.9% 10.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 74億円 100億円 82億円 79億円 99億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は19.7%から20.6%へ改善しました。販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収効果と利益率改善により、営業利益は112億円から128億円へと順調に伸長し、営業利益率は10.5%となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,173億円 1,215億円
売上総利益 231億円 250億円
売上総利益率(%) 19.7% 20.6%
営業利益 112億円 128億円
営業利益率(%) 9.6% 10.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が59億円(構成比48%)と最も大きな割合を占めています。売上原価については、労務費や外注費、材料費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は、国内の防災・減災工事や米国の地盤改良工事が寄与し、増収増益となりました。能登半島地震の応急復旧工事や高速道路の補修工事なども業績を牽引しました。一方、その他事業は売上・利益ともに小規模で推移しており、全社業績への影響は限定的です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 1,170億円 1,212億円 112億円 128億円 10.6%
その他 3億円 3億円 0.3億円 0.2億円 7.7%
調整額 -13億円 -12億円 0.0億円 0.0億円 -
連結(合計) 1,173億円 1,215億円 112億円 128億円 10.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFが利益増と減価償却・未払金の増加で堅調に拡大する「健全型」であり、設備投資やM&Aの増加で投資CFはやや流出寄りの「成長型」資本運用をしています。財務CFは借入・社債で資金調達を継続し、営業CFと連動したバランスの取れた財務体質です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 146億円 104億円
投資CF -43億円 -19億円
財務CF -53億円 -124億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来、「新たな価値に挑戦し、創造し続ける」を経営理念として掲げています。最先端技術への挑戦を通じて特殊土木という独自の分野を創造し、人々が安心して生活できる国土形成に尽力することを目指しています。また、全てのステークホルダーから信頼される企業であり続けるため、誠実で健全な経営に努めています。

(2) 企業文化


「技術×信頼×人財」を重視する文化があります。創業100周年を見据え、サステナブルな社会実現に向けて人と技術の力で貢献することを中長期ビジョンとしています。社員一人ひとりが挑戦し続ける姿勢を尊重し、健全な財務構造を維持しながら、社会課題の解決と企業の持続的成長の両立を目指す価値観を共有しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度を初年度とする中期経営計画「Raito2027」において、2027年度の数値目標を掲げています。

* 売上高:1,350億円
* 営業利益:155億円
* ROE:12.5%以上
* DOE:6.0%以上
* 配当性向:50%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「Raito2027」では、以下の4つの重点テーマを推進しています。特に防災・減災分野でのブランド確立と、特殊土木分野の国内外でのプレゼンス拡大に注力します。また、成長分野や人財への積極的な投資を行い、組織力を強化するとともに、成長投資と株主還元の両立を図ることで、中長期的な企業価値向上を目指しています。

* 防災・減災分野におけるブランド力の確立と社会課題の解決
* 特殊土木分野における国内外でのプレゼンス拡大
* 成長分野および人財への積極的な投資
* 成長投資と株主還元の両立

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「技術×信頼×人財で、次世代の成長へ」を基本方針とし、人的資本経営を推進しています。多様な人財の育成と働きがいのある環境づくりを重要課題とし、性別や国籍等を問わない公正な評価と管理職登用を進めています。特に資格取得支援や階層別研修を強化し、経営戦略に直結する専門性の高い人財の確保・育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.7歳 17.8年 9,491,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 73.9%
男女賃金差異(全労働者) 55.0%
男女賃金差異(正規雇用) 56.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 66.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職社員数(18人)、環境修復工事の施工高(1,284百万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外部環境に関するリスク


事業の約7割を国内公共事業に依存しており、国や地方自治体の予算削減が業績に影響する可能性があります。また、中長期的には国内建設市場の縮小や競争激化が見込まれ、価格競争や競合他社の技術革新が収益性に影響を及ぼすリスクがあります。建設技能労働者の慢性的な不足や労務単価の上昇も懸念材料です。

(2) 事業拡大に伴うリスク


中期経営計画に基づきM&Aや海外事業への投資を積極的に進めていますが、期待通りのリターンが得られない可能性があります。特にM&Aにおいては、デューデリジェンスを実施しても偶発債務の発生やのれんの減損リスクが残ります。また、海外事業では各国の政治・経済情勢の変化(カントリーリスク)が業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人財に関するリスク


事業遂行には国家資格や高い専門性を持つ人財が不可欠ですが、獲得競争の激化により十分な人員を確保できない可能性があります。また、有資格者の育成には期間を要するため、優秀な人財の流出や採用難が続いた場合、施工能力の低下や技術継承の断絶を招き、業績や財政状態に悪影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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