東鉄工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東鉄工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東鉄工業は東京証券取引所 プライム市場に上場する、鉄道関連工事を強みとする総合建設会社です。主にJR東日本エリアでの線路・土木・建築工事や駅周辺開発などを手掛けています。直近の業績は、鉄道分野の設備投資回復や大型工事の進捗により、売上高・各段階利益ともに増加する増収増益となりました。


※本記事は、東鉄工業株式会社 の有価証券報告書(第82期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東鉄工業ってどんな会社?


鉄道専門技術を活かした総合建設業として、線路メンテナンスから駅舎建築まで交通インフラを支えています。

(1) 会社概要


1943年、国鉄の輸送力確保の要請により東京鐡道工業として設立されました。1949年に一般建設業者として再発足し、1952年に現社名へ変更しています。1972年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。鉄道工事を中核に事業を拡大し、2022年には主要顧客である東日本旅客鉄道(JR東日本)がその他の関係会社となりました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は1,864名(単体1,663名)です。筆頭株主はその他の関係会社である東日本旅客鉄道で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は株式会社日本カストディ銀行(信託口)となっています。JR東日本グループとの強固な結びつきが特徴です。

氏名 持株比率
東日本旅客鉄道 19.40%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.55%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 10.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は伊勢勝巳氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
前川 忠生 取締役会長 1981年日本国有鉄道入社。JR東日本副社長、鉄道事業本部長を経て、2021年同社入社。社長を経て2025年6月より現職。
伊勢 勝巳 代表取締役社長執行役員社長 1988年JR東日本入社。常務執行役員、代表取締役副社長を歴任。2025年6月同社入社、代表取締役社長に就任。
下村 光 取締役専務執行役員 経営企画本部長 1985年富士銀行入行。みずほ銀行常務執行役員、みずほ証券常務執行役員を経て、2019年同社入社。2022年6月より現職。
飯塚 博之 取締役常務執行役員 管理本部長 1982年同社入社。人事部長、経営企画部長、高崎支店長などを歴任。2025年6月より現職。
小川 永一 取締役常務執行役員 建築本部長、DX推進室副室長 1981年同社入社。建築積算部長、東京建築支店長、埼玉支店長などを歴任。2025年6月より現職。


社外取締役は、髙橋清孝(元警視総監)、中山洋(元日立製作所執行役常務)、深山美弥(シティユーワ法律事務所弁護士)、玉川岳洋(JR東日本常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 土木事業


土木工事全般に関する企画、設計、施工、監理等の事業を行っています。具体的には、線路メンテナンス、耐震補強などの防災対策、交通インフラの長寿命化工事などが含まれます。主要な顧客は東日本旅客鉄道です。

収益は主に顧客からの工事請負代金によって得ています。運営は主に東鉄工業が行っており、施工の一部を連結子会社である東鉄メンテナンス工事、株式会社全溶に発注する体制をとっています。

(2) 建築事業


建築工事全般に関する企画、設計、施工、監理等の事業を行っています。駅舎の改良や新築、ホームドア設置に伴う工事、駅周辺の商業施設建設などが含まれます。主要な顧客は東日本旅客鉄道です。

収益は主に顧客からの工事請負代金によって得ています。運営は主に東鉄工業が行っており、施工の一部を連結子会社である東鉄創建に発注しています。

(3) その他


不動産事業および環境事業、保線機械や鉄道関連製品の製造販売などを行っています。商業ビルの賃貸や発電・緑化事業、保線機械の製作・修繕、鉄道関連製品の製造などを手掛けています。

収益は、不動産賃貸料、製品の販売代金、業務委託料などから得ています。運営は東鉄工業のほか、連結子会社の東鉄機工(保線機械)、興和化成(鉄道関連製品)、関連会社の株式会社日本線路技術(コンサルタント)などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な減少があったものの、直近では回復傾向にあり、当期は1,600億円に達しています。利益面でも、経常利益率が10%を超える水準まで回復しており、収益性が向上しています。当期純利益も増加基調にあり、堅調な業績推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,329億円 1,147億円 1,247億円 1,418億円 1,600億円
経常利益 143億円 76億円 95億円 121億円 160億円
利益率(%) 10.8% 6.6% 7.6% 8.5% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 90億円 48億円 68億円 74億円 104億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が増加しています。売上総利益率は前年の12.6%から13.9%へ改善しました。営業利益率も向上しており、増収効果に加え、採算性の改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,418億円 1,600億円
売上総利益 179億円 222億円
売上総利益率(%) 12.6% 13.9%
営業利益 118億円 155億円
営業利益率(%) 8.3% 9.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が37億円(構成比41%)、賞与引当金繰入額が6億円(同7%)を占めています。売上原価では、外注費や材料費が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


土木事業は、売上高が前期比14.3%増、セグメント利益が同43.6%増と大幅な増収増益となりました。全社利益の過半を稼ぎ出しており、業績を大きく牽引しています。

建築事業は売上高が前期比9.8%増、セグメント利益が同24.3%増と堅調に推移し、こちらも増収増益となりました。その他(主に鉄道関連製品の製造・販売)についても、売上高が前期比13.8%増、セグメント利益が同8.2%増と着実に増加して推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
土木事業 882億円 1,008億円 59.7億円 85.7億円 8.5%
建築事業 452億円 497億円 43.7億円 54.3億円 10.9%
その他 84億円 95億円 13.9億円 15.0億円 15.8%
調整額 - - 0.2億円 0.2億円 -
連結(合計) 1,418億円 1,600億円 117.5億円 155.3億円 9.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得たキャッシュを元に、借入金の返済や投資を行っている、財務的に健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 48億円 42億円
投資CF -37億円 -12億円
財務CF 16億円 -36億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「安全はすべてに優先する」を経営理念として掲げています。鉄道専門技術の特性を活かした総合建設業として、安全で快適な交通ネットワークと社会基盤の創造に貢献することを使命としています。鉄道工事業界における「ナンバーワン」、建設業界における「オンリーワン」を目指しています。

(2) 企業文化


「誠実で☆キラリと光る☆ナンバーワン&オンリーワン」をコーポレートメッセージとして掲げています。ステークホルダーから信頼される誠実な経営を推進し、安全・安定輸送を支えるスペシャリストとして最高レベルの安全と品質を提供することを重視する価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


創業100周年に向けた長期ビジョンの実現に向け、「アクションプラン2029」を策定しています。2029年3月期の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:1,900億円以上
* ROE:10%以上
* DOE:3%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「3つの重点事業領域」を中心に事業拡大を図ります。「JR東日本および公営・民間鉄道」では鉄道インフラのライフサイクルの担い手として、「鉄道近接工事など鉄道関連分野」では特殊資格と技術力を活かした難工事への展開、「公共事業体および民間事業者」ではインフラ老朽化対応などで存在感を発揮します。また、DXによる生産性向上や、過去最大規模の人的投資による組織力の強化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「アクションプラン2029」において人材戦略を重視し、過去最大規模の人的投資を計画しています。社員・協力会社の優秀な人材確保、持続的な能力開発、やりがいを持って働ける職場環境整備を推進します。特に、ベースアップや処遇改善、教育研修費の充実、協力会社の賃金水準向上支援などに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.1歳 14.7年 8,975,284円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.5%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 64.8%
男女賃金差異(正規) 70.8%
男女賃金差異(非正規) 55.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性技術者数(34名)、年次有給休暇取得日数(13.4日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 工事事故による影響


施工する工事において事故が発生した場合、行政処分や損害賠償等により信頼が失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に鉄道関連工事において重大事故が発生した場合、事業活動全般に大きな影響を与える可能性があります。

(2) 施工物等の不具合


施工品質には万全を期していますが、万一重大な契約不適合が発生し、その修復に多大な費用負担が生じた場合、業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。施工部門及び安全部門による各種パトロールを実施し、防止に努めています。

(3) 得意先との取引


売上高に占める鉄道部門のウェイトが高く、公共交通機関等の要因に大きく影響を受ける可能性があります。建築部門でも顧客の業績不振や契約打ち切り等のリスクがあります。適宜、情報収集や与信管理を行い、債権管理・保全を図っています。

(4) 人材の確保


同社グループ及び協力会社の採用や人材流出抑制が計画通り進まず、人材を十分に確保できなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。積極的な採用活動や研修センターでの教育、労働環境改善や協力会社への支援を通じて人材確保に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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