東鉄工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東鉄工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東鉄工業は東京証券取引所プライム市場に上場する企業で、東日本旅客鉄道を主要な得意先とし、鉄道工事を中心とした土木事業や建築事業を展開しています。直近の業績トレンドでは、売上高が前期比で増加し、経常利益および当期純利益ともに増益を達成しており、堅調な増収増益の推移を見せています。


※本記事は、東鉄工業株式会社の有価証券報告書(第83期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東鉄工業ってどんな会社?


東日本旅客鉄道を主要顧客とし、鉄道関連工事を中心とする総合建設事業を展開しています。

(1) 会社概要


1943年7月に東京鐡道工業として設立されました。1949年に一般建設業者として再発足し、1952年に現在の東鉄工業へ商号変更しています。1972年に東京証券取引所市場第一部に株式を上場しました。その後、2003年に東鉄機工等を子会社化し、2022年に東京証券取引所プライム市場へ移行しています。

現在の従業員数は連結1,921名、単体1,714名です。筆頭株主は事業会社(提携先)である東日本旅客鉄道で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
東日本旅客鉄道 22.12%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.11%
日本カストディ銀行(信託口) 8.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員社長は伊勢勝巳氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
伊勢勝巳 代表取締役社長執行役員社長 東日本旅客鉄道入社。執行役員総合企画本部投資計画部長、代表取締役副社長等を経て、2025年より現職。
前川忠生 取締役会長 東日本旅客鉄道入社。常務執行役員、代表取締役副社長等を経て、東鉄工業代表取締役社長に就任。2025年より現職。
下村光 取締役専務執行役員 経営企画本部長 富士銀行入行。みずほ銀行常務執行役員等を経て、2019年に東鉄工業へ入社し、2022年より現職。
飯塚博之 取締役常務執行役員 管理本部長 東鉄工業入社。管理本部人事部長、高崎支店長等を経て、2024年に取締役執行役員管理本部長に就任し、2025年より現職。
小川永一 取締役常務執行役員 建築本部長、DX推進室副室長 東鉄工業入社。建築本部建築企画部長、東京建築支店長、埼玉支店長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、髙橋清孝(元警視総監)、中山洋(元日立製作所執行役常務)、深山美弥(シティユーワ法律事務所弁護士)、玉川岳洋(東日本旅客鉄道常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 土木事業


土木工事全般に関する、企画、設計、施工、監理等の事業を行っています。東日本旅客鉄道を主要な得意先としており、安全対策としての重要施策である大規模地震対策工事などの安全施工に取り組むとともに、道路橋の長寿命化対応などにも対応しています。

顧客との工事請負契約に基づき、土木工事を行うことで収益を得ています。事業の運営は主に東鉄工業が担っており、施工する工事の一部を連結子会社である東鉄メンテナンス工事および全溶に発注する体制をとっています。

(2) 建築事業


建築工事全般に関する、企画、設計、施工、監理等の事業を行っています。東日本旅客鉄道を主要な得意先とし、利便性を高める駅の橋上化工事や駅に隣接する商業施設・オフィスビル建設などの大型工事にも幅広く取り組んでいます。

顧客との工事請負契約に基づき、建築工事を行うことで収益を得ています。事業の運営は主に東鉄工業が担っており、施工する工事の一部を連結子会社である東鉄創建に発注しています。

(3) その他


主に商業ビル等の賃貸事業および発電事業や緑化事業等の環境事業を行っています。また、保線機械の製作および検査修繕等や、鉄道関連製品の製造および販売、鉄道関連コンサルタント事業も展開しています。

賃貸収益や鉄道関連製品の販売等により収益を得ています。事業の運営は東鉄工業のほか、連結子会社である東鉄機工や興和化成が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は順調に拡大しています。経常利益および当期利益も毎期連続して増加しており、利益率も6%台から11%台へと着実に向上しているなど、安定した成長基調が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1147億円 1247億円 1418億円 1600億円 1630億円
経常利益 76億円 95億円 121億円 160億円 182億円
利益率(%) 6.6% 7.6% 8.5% 10.0% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 48億円 68億円 74億円 104億円 114億円

(2) 損益計算書


売上高が前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率および営業利益率もともに向上しており、収益力の高まりが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1600億円 1630億円
売上総利益 222億円 256億円
売上総利益率(%) 13.9% 15.7%
営業利益 155億円 176億円
営業利益率(%) 9.7% 10.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が41億円(構成比40%)、賞与引当金繰入額が7億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


土木事業は前期比で売上が増加し全体を牽引しています。建築事業やその他事業は減収となったものの、主力である土木事業の増収により、全体として増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
土木事業 1008億円 1080億円
建築事業 497億円 459億円
その他 95億円 91億円
連結(合計) 1600億円 1630億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 42億円 52億円
投資CF -12億円 -49億円
財務CF -36億円 45億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.1%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「~安全はすべてに優先する~」を経営理念に掲げています。鉄道専門技術の特性を活かした総合建設業として、安全で快適な交通ネットワークと社会基盤の創造に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


「誠実で☆キラリと光る☆ナンバーワン&オンリーワン」をコーポレートメッセージとしています。ステークホルダーから信頼される誠実な経営を推進し、安全・安定輸送を支えるスペシャリストとして最高レベルの安全と品質を提供し続ける姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


創業100周年に向けた長期ビジョン「TOTETSU VISION 100」および中期経営計画「アクションプラン2029」を策定し、交通インフラメンテナンスのリーディングカンパニーを目指しています。
・売上高 1,900億円以上
・ROE 10%以上
・DOE 3%以上

(4) 成長戦略と重点施策


東日本全体の鉄道インフラのライフサイクルの担い手として、既存の鉄道関連分野だけでなく、社会インフラ全体の課題解決に寄与する事業拡大を進めています。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した安全性・生産性の向上や、過去最大規模の人的投資を実施し、強靭な組織力の構築を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員・協力会社の優秀な人材確保」「持続的な能力開発」「やりがいを持って働ける職場環境整備」を人材戦略の柱としています。人的投資を積極的に行い、研修センターを活用した実践的教育により安全・品質・技術力の向上を図るとともに、多様な人材の活躍を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.7歳 14.5年 9,537,215円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.5%
男性育児休業取得率 95.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.7%
男女賃金差異(正規雇用) 70.0%
男女賃金差異(パート・有期) 56.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術系女性社員数(39名)、年次有給休暇取得日数(13.7日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 工事事故による影響

工事において事故が発生した場合、行政処分や損害賠償等により社会的信用を著しく失墜させる恐れがあります。特に鉄道関連工事では列車の脱線など重大事故が発生すると事業全般に影響を及ぼす可能性があるため、安全施工の審査やパトロール等の事故防止策を講じています。

(2) 施工物等の不具合

重大な契約不適合が発生し、その修復に多大な費用負担が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これを防ぐため、施工部門や安全部門による各種パトロールを密に実施し、施工中および将来にわたる品質不具合の発生防止に努めています。

(3) 得意先との取引への依存

売上高に占める鉄道部門の割合が高く、この分野の売上は公共交通機関などの外部要因に大きく影響を受ける可能性があります。また、顧客企業の業績不振等による予期しない契約の打ち切りや請負代金の見直し等が発生するリスクがあるため、情報収集や与信管理に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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