※本記事は、東鉄工業株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月11日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
東鉄工業は、建設業を主軸に事業を展開しています。同社グループは、土木工事や建築工事全般の企画、設計、施工、監理を手掛けています。また、商業ビル等の賃貸事業や発電事業・緑化事業等の環境事業も行っています。
単体従業員数は1,714名、連結従業員数は1,921名です。事業セグメントは土木事業、建築事業、その他の3つです。
主な国内グループ会社は、東鉄機工、東鉄メンテナンス工事(土木事業)、東鉄創建(建築事業)、興和化成などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
東鉄工業は、鉄道インフラのメンテナンスを主軸とする事業特性から、専門性の高い技術力と安定した事業基盤を持つ企業です。社員の長期的なキャリア形成を支援し、働きがいのある職場環境づくりに注力していることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、社員の定着を重視し、長期的な視点での人材育成に取り組んでいます。平均勤続年数や平均年齢からは、安定して長く働く社員が多い傾向が見られます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 9,537,215円 |
| 平均勤続年数 | 14年6ヶ月 |
| 平均年齢 | 40歳8ヶ月 |
| 単体従業員数 | 1,714人 |
| 連結従業員数 | 1,921人 |
| 単体のグループ内比率 | 89.2% |
退職給付制度
同社グループは、従業員の退職給付に充てるため、積立型および非積立型の確定給付制度(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度)を採用しています。適用範囲は当社および連結子会社です。
退職一時金制度もありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。なお、2026年3月31日時点の退職給付債務は99.1億円、年金資産は169億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、中期経営計画に基づき、事業運営に必要な人材を中長期的かつ安定的に確保・育成することを人材戦略の基本方針としています。鉄道インフラのライフサイクルを担う事業者として、人的資本の充実を経営上の重要課題と位置付け、総額200億円規模の人的投資を計画し実行しています。
賃金は、職務内容、役割、成果および業績等を総合的に勘案した上で決定されています。ベースアップを含む処遇改善や賃金水準の向上を人的投資の重要な要素とし、昇給および昇格は原則年1回、人事考課の結果を反映して実施されます。賞与は業績および個人の貢献度等を勘案して支給される方針です。
人材育成においては、東鉄総合研修センターを活用した実体験型の安全教育、品質管理、技術力向上等の各種教育・訓練を通じて、安全・品質・技術力のさらなる向上と確実な継承を図っています。若手社員の早期抜擢や公募制異動も推進されており、女性の活躍推進にも注力し、「えるぼし認定」も取得しています。また、働き方改革として時間外労働の削減や休暇取得を推進し、子育て世代支援制度の拡充にも取り組んでいます。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男性育児休業取得率は、人的資本に関する目標及び実績として開示されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 56.7% |
人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針
人的資本に関する目標及び実績は、提出会社単体の数値を記載しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 新卒採用者数 | 99名 |
| 社会人採用者数 | 16名 |
| 技術系女性社員数 | 39名 |
| 教育・研修の理解度 | 98.7% |
社内環境整備に関する方針
人的資本に関する目標及び実績は、提出会社単体の数値を記載しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性育休取得率 | 95.0% |
| 年次有給休暇取得日数 | 13.7日 |
| 健康経営優良法人の認定維持 | 認定継続達成 |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
東鉄工業グループは、建設業を主軸に事業を展開しています。特に鉄道関連工事に強みを持ち、社会インフラの維持・発展に貢献しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、土木事業、建築事業、その他の事業の3つのセグメントで構成されています。JR東日本をはじめとする鉄道関連分野や公共事業、民間事業を重点領域とし、社会課題の解決に寄与する事業拡大を進めています。中期経営計画『アクションプラン2029』のもと、安全、受注、人材、生産性向上、ESGの5つの戦略を推進しています。
主要な顧客は東日本旅客鉄道株式会社であり、同社グループの売上高の大部分を占めています。
土木事業
土木工事全般に関する企画、設計、施工、監理等の事業を行っています。収益は、大規模地震対策工事やホームドア整備に伴うホーム改良工事、駅設備の改良工事などの安全対策工事、道路等の線路交差部の長寿命化対応工事といった鉄道関連工事やインフラ関連工事から得ています。運営は、連結子会社である東鉄メンテナンス工事、株式会社全溶が一部を担っています。この事業は前期から売上高が増加しています。
建築事業
建築工事全般に関する企画、設計、施工、監理等の事業を行っています。収益は、駅の橋上化工事や駅に隣接する商業施設・オフィスビル建設などの大型工事、民間事業者が保有する建築構造物の長寿命化対応工事から得ています。運営は、連結子会社である東鉄創建が一部を担っています。この事業は前期から売上高が減少しています。
その他の事業セグメント
主に商業ビル等の賃貸事業、発電事業・緑化事業等の環境事業、鉄道関連製品の製造及び販売、保線機械の製作及び検査修繕、鉄道関連コンサルタント事業を営んでいます。運営は、連結子会社である東鉄機工、興和化成、関連会社である株式会社日本線路技術が行っています。この事業は前期から売上高が減少しています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 土木事業 | 1,008億円 | 1,080億円 |
| 建築事業 | 497億円 | 459億円 |
| その他の事業セグメント | 95.4億円 | 91.3億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績は、売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加傾向を示しています。特に直近の期では、売上高は前期から増加し、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益も大きく伸びています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,147億円 | 1,247億円 | 1,418億円 | 1,600億円 | 1,630億円 |
| 経常利益 | 75.8億円 | 94.9億円 | 121億円 | 160億円 | 182億円 |
| 経常利益率 | 6.6% | 7.6% | 8.5% | 10.0% | 11.2% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 53.3億円 | 79.1億円 | 83.0億円 | 116億円 | 128億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 154.72 | 229.65 | 241.00 | 335.87 | 372.99 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高(連結)は前期からわずかに減少しています。一方で、従業員1人あたり営業利益(連結)は前期から増加しており、収益性の改善や効率化の取り組みが進んでいる傾向が見られます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 85.9百万円 | 84.9百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 8.3百万円 | 9.2百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
東鉄工業グループの財務状況は、安定した経営基盤と将来に向けた投資のバランスを示しています。本業で得た資金を元手に、事業の成長と安定性を両立させている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
東鉄工業グループは、高い自己資本比率とROEを維持しており、強固な財務基盤を築いています。これは、安定した経営状況を示しており、入社後の雇用や給与の安定性にもつながる要素です。手元資金も十分に確保されており、不測の事態にも対応できる体制が整っています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 1,208億円 | 1,340億円 |
| 自己資本比率 | 66.0% | 65.1% |
| ROE(自己資本利益率) | 10.1% | 10.2% |
| 現金及び預金 | 157億円 | 206億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
東鉄工業グループのキャッシュフローは、本業で安定的に資金を創出している状況を示しています。営業活動によるキャッシュフローは前期から増加し、売上債権の増減額の減少などが主な要因となっています。これは、事業活動を通じて着実に資金を稼ぎ出していることを意味します。
一方で、投資活動によるキャッシュフローは関係会社株式の取得や有形固定資産の取得による支出が増加し、支出超過となっています。これは、将来の成長に向けた積極的な投資が行われていることを示しています。財務活動によるキャッシュフローは短期借入れによる収入の増加により、収入超過に転じています。
結果として、フリーキャッシュフローはプラスを維持しており、本業で得た資金を成長投資に充てつつ、余剰資金も確保できている状態です。この資金の流れは、同社グループが安定した事業基盤を持ちながら、将来の成長を見据えた投資を継続していることを示しており、長期的な雇用安定性や給与水準の維持に寄与すると考えられます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 41.6億円 | 52.4億円 |
| 投資CF | △12.5億円 | △49.0億円 |
| 財務CF | △35.8億円 | 45.2億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 29.1億円 | 3.4億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
東鉄工業グループは、売上高に占める鉄道部門のウェイトが高い状況にあり、公共交通機関等の外部要因に影響を受ける可能性があります。また、事業活動が東日本地域を中心であるため、この地域の景気変動や民間設備投資の縮小、公共投資の減少が建設工事の受注に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、人材の確保に関するリスクを認識しています。当社グループおよび協力会社の採用活動や人材流出抑制が計画通りに進まない場合、業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
東鉄工業グループは、鉄道専門技術を強みとする総合建設業として、社会基盤の創造に貢献しています。安全を最優先に、交通インフラの維持・発展を支える企業文化を築いています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「安全はすべてに優先する」という経営理念を掲げています。鉄道専門技術を活かした総合建設業として、安全で快適な交通ネットワークと社会基盤の創造に貢献することを目指しています。
事業ビジョンでは、鉄道関連工事を中心とした交通インフラメンテナンスのリーディングカンパニーとなることを目指しています。専門プロ集団として、鉄道工事業界で「ナンバーワン」、建設業界で「オンリーワン」であり続けることを目標としています。
さらに、2043年の創業100周年に向けた長期ビジョン「TOTETSU VISION 100」では、「交通インフラメンテナンスのリーディングカンパニー」を目指す姿としています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、「誠実で☆キラリと光る☆ナンバーワン&オンリーワン」をコーポレートメッセージとして掲げています。ステークホルダーから信頼される「誠実な経営」を推進し、「安全・安定輸送」を支えるスペシャリストとして最高レベルの安全と品質を提供することを目指しています。
鉄道工事施工ノウハウで「ナンバーワン」、高付加価値な施工力で建設業界の「オンリーワン」となることを重視する企業風土です。サステナビリティ基本方針では、安全・品質、地球環境、人権尊重、働きがい、協力会社との信頼、地域社会貢献、コンプライアンスの徹底を定めています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、技能労働者不足や働き方改革への対応を喫緊の課題と認識し、人的資本への積極的な投資を推進しています。具体的には、人材確保のための賃上げや従業員のスキルアップに繋がる研修などに取り組んでいます。
ITやAIを活用したDXによる安全確保と生産性向上、過去最大規模の人的投資による人材育成と働き方満足度の向上を目指しています。
また、同社グループ社員とその家族、協力会社の満足度向上を図り、「三位一体の経営」を推進することで、強靭でレジリエントな組織力の向上を目指しています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
東鉄工業は、監査役会設置会社として、社外取締役と社外監査役を選任し、経営の透明性と公正性を高める体制を構築しています。経営と業務執行を分離する執行役員制度を導入し、意思決定の迅速化と業務執行の機能強化を図っています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
東鉄工業は、東日本旅客鉄道が筆頭株主として経営を支える企業です。上位株主には複数の信託銀行も名を連ねています。特定の事業会社が筆頭株主である点が特徴的です。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東日本旅客鉄道 | 22.12% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.11% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.29% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は12名(男性10名・女性2名)で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員社長は伊勢勝巳氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊勢 勝巳 | 代表取締役社長執行役員社長 | 1988年東日本旅客鉄道入社。執行役員総合企画本部投資計画部長、常務執行役員総合企画本部復興企画部担当などを経て、2025年6月同社入社、代表取締役社長執行役員社長より現職。 |
| 下村 光 | 取締役専務執行役員 経営企画本部長 | 1985年富士銀行入行。みずほコーポレート銀行営業第二部長、みずほ銀行常務執行役員などを経て、2019年4月同社入社、2022年6月取締役専務執行役員経営企画本部長より現職。 |
| 飯塚 博之 | 取締役常務執行役員 管理本部長 | 1982年同社入社。管理本部人事部長、経営企画本部経営企画部長、執行役員高崎支店長などを経て、2025年6月取締役常務執行役員管理本部長より現職。 |
| 小川 永一 | 取締役常務執行役員 建築本部長、DX推進室副室長 | 1981年同社入社。建築本部建築積算部長、八王子支店建築部長、執行役員東京建築支店長などを経て、2025年6月取締役常務執行役員建築本部長、DX推進室副室長より現職。 |
| 前川 忠生 | 取締役会長 | 1981年日本国有鉄道入社。東日本旅客鉄道執行役員総務部長、常務取締役東京支社長、代表取締役副社長などを経て、2021年6月同社入社、2025年6月取締役会長より現職。 |
社外取締役は、髙橋清孝氏(元内閣危機管理監・指名・報酬委員会委員長)、中山洋氏(元日立製作所執行役常務・指名・報酬委員会委員)、深山美弥氏(シティユーワ法律事務所弁護士・指名・報酬委員会委員)、玉川岳洋氏(東日本旅客鉄道常務執行役員鉄道事業本部副本部長)です。
同社は監査役会設置会社であり、社外取締役4名と社外監査役2名を選任しています。社外取締役は、独立した客観的な立場から経営の意思決定の妥当性・適正性を確保する役割を担っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社は、役員報酬について固定報酬、短期的業績連動報酬(賞与)、中長期的業績連動報酬(株式報酬)を組み合わせた体系を採用しています。これらの報酬は概ね6:3:1の割合で構成されています。業績連動報酬の指標には、売上高、営業利益、ROE、DOEなどが用いられ、安全・品質レベルの達成度合いや個人成績も加味されます。社外取締役には業務執行から独立した立場であるため、固定報酬のみが支給されます。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 7名 | 2.3億円 | 33.4百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 17百万円 | 17.0百万円 |
| 社外役員 | 8名 | 53百万円 | 6.6百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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