南海辰村建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

南海辰村建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

南海辰村建設は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建築や土木工事等の建設事業と不動産事業を展開する企業です。直近の業績では、前期の大型工事進捗の反動等による減収となったものの、手持工事の利益改善や販売費及び一般管理費の減少により、営業利益、経常利益、当期純利益の増益を達成しています。


※本記事は、南海辰村建設の有価証券報告書(第83期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 南海辰村建設ってどんな会社?


建設事業と不動産事業を柱に、人や環境に配慮した社会インフラの整備に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1923年に創業し、1944年に土木建築岸和田工業を設立しました。1963年に株式を上場し、1975年に南海建設との合併を経て社名を変更しました。1995年には辰村組と合併して現在の南海辰村建設となりました。2001年には第三者割当増資を実施し、南海電気鉄道が親会社となっています。

従業員数は連結で511名、単体で458名です。筆頭株主は親会社である南海電気鉄道で、第2位は住之江興業、第3位は事業会社である奥村組となっています。

氏名 持株比率
南海電気鉄道 57.71%
住之江興業 3.02%
奥村組 2.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長は浦地紅陽氏です。社外取締役は4名です。

氏名 役職 主な経歴
高木俊之 代表取締役取締役会長 1983年南海電気鉄道入社。同社取締役、常務取締役、代表取締役、専務執行役員等を経て、2023年6月より現職。
浦地紅陽 代表取締役取締役社長社長執行役員〔内部監査室〕担当 1986年南海電気鉄道入社。同社総務室人事部部長、取締役、常務取締役等を経て、2021年6月より現職。
奥村透 取締役専務執行役員土木本部長 1985年南海電気鉄道入社。同社鉄道営業本部統括部長、阪堺電気軌道常務取締役等を経て、2020年6月より現職。
楠岡英人 取締役専務執行役員経営統括本部長 1993年南海電気鉄道入社。同社部長待遇、当社経営企画部長、上席執行役員等を経て、2026年4月より現職。
﨑井威洋 取締役 1980年東海興業入社。2011年当社入社。当社東京支店建築工事部担当部長、上席執行役員等を経て、2023年6月より現職。
吉田成夫 取締役 1983年当社入社。2009年当社建築本部工務部長、上席執行役員、常務執行役員等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、土居和良(元日本開発銀行参事役)、中川美雪(中川美雪公認会計士事務所所長)、岸本一藏(近畿大学建築学部教授)、今枝史絵(弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」および「不動産事業」を展開しています。

建設事業


建築、土木、電気工事などの建設工事全般に関する事業を行っています。官公庁や民間企業を主な顧客とするほか、親会社からの建設工事の一部受注も手掛けています。

収益は、顧客に提供した建設工事の進捗に応じた工事代金などから得ています。運営は南海辰村建設を中心に、連結子会社である南海建設興業や日本ケーモー工事が施工の一部や建設用仮設資材の提供などで協力しています。

不動産事業


不動産の売買および賃貸に関連する事業を展開しています。自社で保有する賃貸用マンションや賃貸用事務所などの運用管理を行っています。

収益は、保有する不動産の売買代金や賃貸事業から得られる賃料収入などから構成されています。同事業の運営は主に南海辰村建設が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が300億円台から500億円台で推移しており、一定の規模を維持しています。利益面では、外部環境の変化を受けながらも継続して黒字を確保しており、直近では利益率も向上して29億円の経常利益を計上するなど、収益力の強化が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 372億円 424億円 436億円 529億円 458億円
経常利益 19億円 18億円 16億円 24億円 29億円
利益率(%) 5.0% 4.3% 3.7% 4.5% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 19億円 11億円 17億円 21億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少したものの、売上総利益および営業利益は増加しています。手持工事の利益改善などにより売上総利益率が向上し、それに伴って営業利益率も改善を見せており、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 529億円 458億円
売上総利益 48億円 52億円
売上総利益率(%) 9.1% 11.3%
営業利益 24億円 28億円
営業利益率(%) 4.5% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が10億円(構成比41%)、雑費が3億円(同12%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が405億円(構成比100%)となっています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は前期の大型工事の進捗影響等により減収となりましたが、手持工事の利益改善により増益を達成しました。不動産事業は不動産賃貸収入の減少等により減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
建設事業 528億円 456億円 24億円 28億円 6.2%
不動産事業 2億円 2億円 0.4億円 0.3億円 16.3%
調整額 -億円 -億円 -0.5億円 -0.3億円 -%
連結(合計) 529億円 458億円 24億円 28億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業であることを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -61億円 84億円
投資CF -1億円 -3億円
財務CF 39億円 -54億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も56.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「建設事業を通じて、自然環境と調和した豊かな社会づくりに貢献する」ことを基本方針として掲げています。つねに創造と技術の向上に努め、時代の変化に即応して柔軟な発想と進取の行動で新たな事業に挑戦することで、社業の躍進とサステナブルな社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


普遍的な経営理念である社是を基本に、持続可能な社会の実現と企業価値の向上の両立を目指す「サステナブル経営」を推進しています。挑戦と変革を繰り返し、人と地球にやさしいまちづくりを通じた社会貢献や、効率的で透明性の高い企業経営の構築を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「3カ年経営計画(2025~2027)」において、「変革と成長の3年間~未来への挑戦、ともにここから~」をスローガンに掲げています。事業規模の拡大と利益創出力の強化、人財力と組織力の向上などを基本方針とし、最終年度である2028年3月期に向けて以下の連結数値目標を設定しています。

* 売上高 565億円
* 売上総利益 51億円
* 営業利益 26億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益 18億円
* ROE 8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


事業規模の拡大とさらなる収益力向上のため、DX推進による生産性の向上に取り組みます。また、最重要課題である「人財の確保・育成」を強化するため、戦略的採用活動や人財育成体制「NTアカデミー」の実効性向上を進めます。さらに、受注から竣工までのオペレーション改革を実施し、競争優位性を高めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の根幹である人財を最重要の経営資源と位置づけ、「人財の確保・育成」「働きがいの追求」「組織風土改革」に注力しています。採用活動の強化や資格取得支援に加え、給与水準の見直しや評価制度の公平性向上を通じて、多様な人材が働きがいを感じながら自ら成長し能力を発揮できる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.7歳 17.9年 7,512,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 22.2%
男女賃金差異(全労働者) 65.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 35.2%


また、同社は「人財の育成」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、資格保有率(71.7%)、離職率(5.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設資材価格及び労務単価の高騰等


建設資材及び労務外注の調達価格の高騰や調達遅れなど、工事着工後の状況変化を請負金額に反映することが困難な場合には、工事原価の上昇による利益率の低下などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人財の確保


労働人口の減少や建設業界における人手不足が顕著になる中、新規・中途採用の停滞や離職者の増加などにより、人財の確保に支障をきたした場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法令違反、訴訟等のリスク


コンプライアンス経営の維持、推進に努めていますが、重大な不正・不法行為が発生した場合や訴訟等の法的手続等の対象となる場合など、その結果によっては業績及び信用等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。