※本記事は、中外炉工業株式会社 の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中外炉工業ってどんな会社?
工業炉のリーディングカンパニーです。熱技術を核に、自動車や半導体向けの熱処理設備や環境設備を展開しています。
■(1) 会社概要
1945年に設立され、1954年に米国サーフェス・コンバッション社と技術提携し最新鋭技術を導入しました。1970年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。2023年には堺事業所内に新研究所「熱技術創造センター」を開設し、研究開発体制を強化しています。
連結従業員数は721名、単体では438名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も資産管理を担う株式会社日本カストディ銀行(信託口)です。第3位には生命保険会社の第一生命が名を連ねており、機関投資家や金融機関が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 13.07% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 7.36% |
| 第一生命株式会社 | 5.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は尾崎彰氏です。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 尾崎彰 | 代表取締役社長執行役員 | 1980年入社。執行役員、業務本部経営企画室長などを経て、2020年4月より現職。 |
| 阪田守 | 取締役常務執行役員プラント事業本部長兼開発本部長兼GXプロジェクト室長 | 1984年入社。執行役員、プラント事業本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 長濱満 | 取締役常務執行役員熱処理事業本部長 | 1983年入社。執行役員、常務執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 新谷昌徳 | 取締役執行役員業務改革推進室長 | 1981年入社。執行役員、技術統括本部事業開発室長などを経て、2016年6月より現職。 |
社外取締役は、野村正朗(元新日本理化取締役会長)、佐藤良(元ダニエリエンジニアリングジャパン代表取締役)、辻本要子(三井住友信託銀行審議役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「熱処理事業」「プラント事業」「開発事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 熱処理事業
自動車、機械、半導体、化学部材向けの熱処理炉や、電池、基板、触媒、磁性材などの熱処理炉、大気浄化設備を提供しています。主な顧客は自動車部品メーカーや電子部品メーカーなどです。
設備の設計、製作、施工および販売を行うことで対価を得ています。運営は主に中外炉工業が行っています。
■(2) プラント事業
鉄鋼や非鉄金属業界向けに、加熱炉や熱処理炉、金属ストリッププロセスライン、塗装ラインなどを提供しています。また、各種工業用バーナや省エネ制御機器も取り扱っています。
設備の設計、製作、施工および販売、ならびに機器販売による収益が主となります。運営は主に中外炉工業が行っています。
■(3) 開発事業
脱炭素関連の研究開発をはじめ、精密塗工・乾燥装置、キルン・環境プロセス設備などを提供しています。次世代エネルギー対応や環境負荷低減技術の開発を推進しています。
研究開発成果に基づく設備の設計、製作、施工および販売から収益を得ています。運営は主に中外炉工業が行っています。
■(4) その他
国内および海外の子会社が行う事業です。工業炉等の技術サービス、人材派遣業務、および海外における工業炉等の販売・メンテナンス業務などが含まれます。
製品販売やメンテナンスサービス、人材派遣などにより収益を得ています。運営は中外プラント、台湾中外炉工業、中外炉熱工設備(上海)有限公司などの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第79期の247億円から第83期の362億円まで右肩上がりで増加しています。経常利益も第79期の6億円から第83期には30億円へと大きく伸長し、利益率も改善傾向にあります。当期利益も順調に推移しており、全体として増収増益基調が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 247億円 | 263億円 | 280億円 | 293億円 | 362億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 15億円 | 16億円 | 17億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 2.3% | 5.7% | 5.6% | 5.9% | 8.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 11億円 | 10億円 | 19億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高は約70億円増加し、売上総利益も約13億円増加しました。売上総利益率は16.2%と微増しています。営業利益は前期の15億円から27億円へと倍増近く伸長し、営業利益率も改善しました。増収効果に加え、利益率の高い案件の寄与などが要因と考えられます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 293億円 | 362億円 |
| 売上総利益 | 46億円 | 59億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.8% | 16.2% |
| 営業利益 | 15億円 | 27億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 7.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当が23億円(構成比46%)、減価償却費が4億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで売上高が増加しました。特に熱処理事業とその他セグメントの伸びが顕著です。主力である熱処理事業とプラント事業が堅調に推移し、その他セグメントも大きく貢献しています。開発事業も増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 熱処理事業 | 132億円 | 180億円 |
| プラント事業 | 111億円 | 113億円 |
| 開発事業 | 19億円 | 24億円 |
| その他 | 31億円 | 46億円 |
| 調整額 | 31億円 | 46億円 |
| 連結(合計) | 293億円 | 362億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはマイナス、投資CFはプラス、財務CFはマイナスとなりました。これは「事業検討型(事業拡大に伴う運転資金増加)」に該当します。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -9億円 | -37億円 |
| 投資CF | 6億円 | 7億円 |
| 財務CF | 25億円 | -27億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「熱技術」を核として、エネルギー有効活用や地球環境保全などの社会的要請に応えるとともに、先端分野にも新しい価値を創造することを基本理念としています。公正な企業活動を通じて社会の発展に貢献し、企業の繁栄と社員の幸福を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
公正な企業活動を行い、株主や取引先、従業員などすべてのステークホルダーの期待と信頼に応えることを重視しています。確固たる事業基盤を確立し、収益力ある安定した企業体質を形成していくことを経営の基本方針としています。
■(3) 経営計画・目標
2022年5月に発表した中期経営計画「Chugai Ro Break Through(CBT)2022-2026」に基づき、経営ビジョン2026の実現を目指しています。2027年3月期の数値目標として以下を掲げています。
* 受注高:420億円
* 売上高:415億円
* 営業利益:36億2,000万円
* 売上高営業利益率:8.7%
* 自己資本利益率(ROE):10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
カーボンニュートラルを中心に新市場を創出すること、既存商品をニーズに合わせてブラッシュアップし拡販と利益向上を図ること、そして働きがいのある職場作りを重要戦略としています。具体的には、新研究所「熱技術創造センター」を活用した研究開発への投資や、水素・アンモニア燃焼などの脱炭素技術開発を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な発想や視点、価値観を持った人材の採用を重視しています。性別、国籍、キャリアにおいて幅広く優秀な人材を受け入れ、活躍できる人事制度や職場環境を整備しています。また、女性の新卒採用割合の増加や管理職登用、外国人管理職比率の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.2歳 | 15.0年 | 9,228,591円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.1% |
| 男性育児休業取得率 | 78.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 86.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(2.7%)、外国人管理職比率(12.6%)、中途入社管理職比率(37.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢について
主要製品である生産設備に対する需要は、国内外の経済情勢や設備投資動向の影響を受けます。また、国家間のサプライチェーン変動なども含め、市場における景気後退や設備投資意欲の減退は、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 為替相場の変動について
海外売上比率は2025年3月期で26.0%となっており、為替変動の影響を受けます。円建て契約や現地調達比率の増加、為替予約などの対策を行っていますが、完全にリスクを回避できる保証はなく、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 品質問題による業績への影響について
ISO9001を取得し品質確保に努めていますが、製品の開発、設計、製造上の契約不適合によるリスクを完全に排除することは困難です。高額な賠償請求を受けた場合、保険で十分にカバーできない可能性や、信用低下、取引停止などにより経営成績に影響が及ぶ可能性があります。



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