※本記事は、佐田建設の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 佐田建設ってどんな会社?
佐田建設は、群馬県を地盤として土木・建築工事を主力とする地域密着型の総合建設企業です。
■(1) 会社概要
1920年の創業から始まり、1949年に佐田建設を設立して東京支店を開設しました。1962年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1973年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2004年には複数社を連結子会社化してグループ体制を強化し、2020年に創業100周年を迎えています。
筆頭株主はスノーボールキャピタルで、第2位および第3位は同社の従業員や関係者で構成される持株会となっています。従業員数は連結で463名、単体で385名となっており、地域社会の実現に貢献する基幹産業としての役割を担っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スノーボールキャピタル | 9.36% |
| 佐田建設従業員持株会 | 8.26% |
| 佐田建設伸佐会持株会 | 6.57% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は星野克行氏が務めており、社外取締役比率は46.2%(13名中6名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 星野克行 | 代表取締役社長 | 1979年同社入社。大阪支店土木部長、土木本部土木推進部長、執行役員土木本部統括部長、取締役土木本部長などを経て、2023年より専務取締役土木本部長。2024年より現職。 |
| 荒井清彦 | 取締役専務執行役員経営本部長 | 1982年同社入社。経営企画部長、経営企画部長兼秘書室長、常勤監査役、取締役経営企画室長などを歴任。2024年より取締役専務執行役員経営企画担当を経て現職。 |
| 中尾信芳 | 取締役常務執行役員建築本部長 | 1977年同社入社。建築本部リニューアル部長、執行役員建築本部工事部第一工事部長、建築本部統括部長、取締役建築本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 狩野純公 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1982年同社入社。東京支店副支店長、東京支店営業部長、執行役員東京支店長、常務執行役員東京支店長、取締役営業本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 堀内金弘 | 取締役執行役員管理本部長 | 1982年同社入社。管理本部財務部次長、経営企画部長兼秘書室長、執行役員管理本部財務部長、取締役管理本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 中島克仁 | 取締役執行役員土木本部長 | 1983年同社入社。土木本部工事部次長、第一工事部長、執行役員土木本部統括部長などを経て、2024年より現職。 |
| 渡邊秀幸 | 取締役(監査等委員) | 1983年同社入社。さいたま支店営業部次長、さいたま支店営業部長、営業本部営業推進部長、監査役などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、富岡政明(富岡労務管理事務所代表社員)、桂川修一(南青山監査法人代表社員)、上原美奈子(群馬県老人保健施設協会事務局長)、丸山和貴(カネコ種苗社外取締役)、木部和雄(元群馬銀行代表取締役会長)、増田順一(元長野税務署長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「土木関連」「建築関連」および「兼業事業」を展開しています。
■(1) 土木関連
造成、トンネル、道路、橋梁などの土木工事全般の受注および施工を行っています。官公庁からの安定的な案件獲得に加え、民間案件の獲得も推進し、豊かな地域社会の基盤づくりに貢献しています。
官公庁や民間企業からの土木工事請負による収益が主な収入源です。同事業の運営は主に佐田建設が行うほか、子会社の佐田道路なども施工協力として事業を担っています。
■(2) 建築関連
工場、倉庫、教育施設、庁舎物件などの建築工事全般を担っています。営業部門と建築部門が一体となり、顧客のニーズに寄り添った技術提案を実施して多様な建築物を施工しています。
発注者からの建築工事の請負代金が主な収益源です。運営は主に佐田建設が主体となり、島田組やリフォーム群馬、彩光建設などの子会社も建築関連工事の施工に携わっています。
■(3) 兼業事業
建設事業の付帯事業として、アスファルト合材などの建設資材の販売や、建設資機材の賃貸事業などを展開しています。
建設業者などに対するアスファルト合材の販売代金や資機材の賃貸料が主な収益源です。同事業の運営は、主に佐田建設が主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は大型工事の受注進捗などにより変動しつつも増加傾向にあり、直近では368億円まで拡大しています。利益面では資材価格の高騰など厳しい事業環境の影響を受け一時的に落ち込む時期もありましたが、直近では採算改善の取り組みが奏功し、経常利益が大きく回復する傾向を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 267億円 | 301億円 | 261億円 | 323億円 | 368億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 18億円 | 2億円 | 10億円 | 17億円 |
| 利益率(%) | 2.8% | 6.1% | 0.8% | 3.0% | 4.7% |
| 当期利益 | 2億円 | 12億円 | -1億円 | 4億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期繰越工事の大幅な増加などを背景に増収となっています。利益面では、大型工事における採算改善や物価上昇分の価格転嫁交渉の進展により売上総利益率が改善し、それに伴い営業利益率も上昇して大幅な増益を達成しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 323億円 | 368億円 |
| 売上総利益 | 29億円 | 39億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.0% | 10.6% |
| 営業利益 | 10億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 4.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が6億円(構成比27%)、賞与引当金繰入額が2億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
土木関連は前期繰越工事の増加により大幅な増収となりました。建築関連も官庁工事などの受注進捗が寄与し増収となっています。一方で、兼業事業はアスファルト合材の出荷量減少や価格競争の影響により減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 土木関連 | 83億円 | 112億円 |
| 建築関連 | 235億円 | 251億円 |
| 兼業事業 | 5億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 323億円 | 368億円 |
同社のキャッシュ・フローは、営業CF、投資CF、財務CFがすべてマイナスとなる「末期型(売上債権の増加等に伴う運転資金の増加)」の傾向を示しています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均と同水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.8%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | -7億円 |
| 投資CF | -4億円 | -4億円 |
| 財務CF | -4億円 | -43億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「建設事業に特化し、豊かな地域社会の実現に貢献する」「公明公正を旨として経営する」「企業改革を持続的に実行する」を経営理念として掲げています。建設事業を通じて企業価値の向上を図るとともに、安全性に配慮して技術と創意工夫をもって顧客ニーズに応え、地域の基幹産業としての役割を果たすことを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「Challenge the Next Future with our Passion!」を基本理念とし、何事にも情熱をもって真摯に挑戦し、不断の自己革新を継続することで「次の100年」を創造する文化を重視しています。長年の歴史に安住することなく、変革を恐れずに挑戦し続ける姿勢が組織の基盤となっています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画(2025.4-2028.3)において、PBR1倍の前提となるROE10%の早期実現に向けた施策を推進しています。最終年度である2028年3月期に向けた具体的な数値目標を掲げています。
* 連結当期純利益:12億円
* 連結ROE:10%
* DOE:6%目標
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は利益追求に向けた事業戦略として、土木分野では造成やトンネル・道路などの注力分野において技術提案力の強化と民間案件の獲得を推進します。建築分野では工場や倉庫・教育・庁舎物件に注力し、両本部が一体となった技術提案を実施します。また、DX戦略による業務効率化や、人材育成・働きがいのある環境づくりに向けた人的資本投資も積極的に展開します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、持続的な企業価値向上と各事業戦略の実現のため、「人材育成」「人材確保」「働きがいのある/働きやすい環境づくり」を重要実施項目に位置付けています。外部コンサルティングを活用した研修強化や階層別研修の再整備、次期幹部クラスの中途採用強化、成果主義に基づく給与インセンティブの導入などを推進し、多様な人材が能力を発揮できる制度整備を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.1歳 | 21.5年 | 6,636,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 45.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設市場の動向
予想を上回る公共事業の削減や、経済情勢の変化によって民間設備投資の減少が進んだ場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、市場動向の見極めや営業・工事部門の協働態勢により安定的な受注獲得に努めています。
■(2) 取引先の信用リスク
建設業は施工物件の引渡時に未回収の工事代金が残るケースが多く、工事代金の回収前に発注者が信用不安に陥った場合や、仕入先・外注先が信用不安に陥った場合に業績へ影響を及ぼす可能性があります。同社は与信管理や情報収集の徹底により債権保全を図っています。
■(3) 資材価格の変動
予想以上に工事主要材料などの調達コストが高騰した際、請負金額に反映することが困難な場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は施工管理と原価管理のプロセスを強化することで、コスト変動リスクの低減に取り組んでいます。
■(4) 重大事故の発生
土木事業・建築事業において、人身や施工物などに関わる重大な事故が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社グループでは、安全管理の徹底を図るとともに、各種保険への加入により万が一の事態に備えています。



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