日特建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日特建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日特建設は、東京証券取引所プライム市場に上場する専門的な建設会社です。主な事業として法面工事や基礎・地盤改良工事などの建設事業を展開しています。直近の業績では、能登半島地震の復興工事や防災・減災関連工事の堅調な進捗により、売上高および利益ともに大きく伸長し、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、日特建設株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 日特建設ってどんな会社?


同社は、環境・防災工事や維持補修分野に特化した基礎工事のエキスパートとして事業を展開しています。

(1) 会社概要


1953年、地質調査や基礎工事を目的として北海道札幌市に設立された八千代地下工業を起源とします。1972年に現在の日特建設へと商号を変更しました。1985年には東京証券取引所市場第一部へ上場を果たし、2025年には麻生フオームクリートを完全子会社化するなど、事業基盤の強化を継続しています。

同社グループは、連結従業員数1206名、単体従業員数1023名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は同社の親会社グループであるエーエヌホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には自社の社員持株会が名を連ねており、安定的な資本関係と従業員の経営参画が特徴です。

氏名 持株比率
エーエヌホールディングス 57.83%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.75%
日特建設社員持株会 3.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役社長CEOは上直人氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
上直人 代表取締役社長 CEO 1987年入社。東京支店長、九州支店長等を経て2021年常務執行役員に就任。2026年4月より現職。
梶田文彦 代表取締役執行役員副社長 COO 事業本部長 1987年入社。海外事業部長、広島支店長等を経て2025年取締役常務執行役員に就任。2026年4月より現職。
山崎淳 代表取締役執行役員副社長 CMO 経営戦略本部長 1985年入社。札幌支店長、経営戦略本部副本部長等を経て2025年取締役常務執行役員に就任。2026年4月より現職。
和田康夫 取締役会長 1981年入社。経営企画室長、名古屋支店長等を経て2021年代表取締役社長に就任。2026年4月より現職。
川口利一 取締役 1983年入社。経理部長、経営企画室長等を経て2019年取締役常務執行役員に就任。2026年4月より現職。
麻生巌 取締役 1997年日本長期信用銀行入行。麻生セメント代表取締役等を経て2010年麻生代表取締役社長に就任。2018年10月より現職。


社外取締役は、渡邉雅之氏(弁護士法人三宅法律事務所パートナー)、中村克夫氏(陽光代表取締役会長)、岡田直子氏(ネットワークコミュニケーションズ代表取締役)、森清華氏(Career Creation代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 建設事業


ダムの基礎処理や法面保護工事、地盤改良工事、補修補強工事などの専門的な土木・建設工事を提供しています。国土強靭化やインフラ老朽化対策、災害復旧・復興に伴う官公庁向けの公共工事が中心ですが、鉄道や都市開発など民間向けの工事も手掛けています。

収益源は、官公庁や民間企業、大手ゼネコンからの工事請負代金です。運営は主に日特建設が行うほか、麻生フオームクリートや島根アースエンジニアリングなどの連結子会社も土木工事業を担い、グループ全体で連携して施工体制を構築しています。

(2) その他の事業


建設工事に関連する商品や資材の販売のほか、その他の付随する事業を展開しています。工事を円滑に進めるための建設材料などを主に取り扱い、グループ内外の建設プロジェクトをサポートする役割を担っています。

収益源は、建設材料や関連資材の販売代金です。この事業の運営は主に連結子会社である緑興産が行っており、日特建設への材料等の仕入れ供給を通じた事業展開も行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一時的に足踏みした時期があったものの、直近では800億円を突破し大きく伸長しています。経常利益も売上の拡大に連動して増加に転じており、利益率も7%台に回復するなど、事業環境の好転や大型工事の進捗を背景に力強い回復傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 661億円 729億円 719億円 672億円 838億円
経常利益 46億円 55億円 44億円 38億円 60億円
利益率(%) 7.0% 7.5% 6.1% 5.6% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 34億円 31億円 33億円 25億円 38億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益が大きく拡大しています。また、採算性の確認や原価管理の徹底により売上総利益率が改善し、それに伴って営業利益率も向上するなど、本業の収益性が高まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 672億円 838億円
売上総利益 125億円 158億円
売上総利益率(%) 18.6% 18.8%
営業利益 37億円 58億円
営業利益率(%) 5.5% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が38億円(構成比38%)、賞与引当金繰入額が7億円(同7%)を占めています。また、売上原価においては、外注費が318億円(構成比52%)、材料費が154億円(同25%)を占めており、施工を外部委託する比率が高い構造となっています。

(3) セグメント収益


同社の事業は建設事業がほぼ全てを占めています。主力である建設事業では、能登半島地震の復興工事や防災・減災関連の公共工事、さらには鉄道などの民間向け工事が堅調に進捗したことで、前期から大きく売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設事業 671億円 836億円
その他の事業 1億円 2億円
連結(合計) 672億円 838億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。営業利益で手元資金を生み出し、借入の返済と投資をバランスよく行う健全型のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 45億円 35億円
投資CF -40億円 -18億円
財務CF -20億円 -22億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「使命(Mission):安全・安心な国土造りに貢献する会社」「価値観(Value):基礎工事における総合技術力と効率的な経営」「あるべき姿(Vision):信頼される技術力に培われた、環境・防災工事を主力とした基礎工事のエキスパートであり続ける」を経営理念に掲げています。これらに基づき、企業価値の向上を目指すとともに、すべてのステークホルダーの信頼と期待に応える経営を行っています。

(2) 企業文化


同社は、社是として「私たちは、見えないところにこそ、誠実に技術を提供して、社会から必要とされる企業であり続ける」と掲げており、ブランドメッセージにも「見えないところにこそ、私たちのプライドがある」と定めています。また、「安全第一」「信用確立」「技術発展」という社訓のもと、目立たない基礎部分から誠実に社会インフラを支え、顧客や社会からの信頼を築く文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「長期ビジョン2035」および「中期経営計画2026」を策定し、単年度の案件構成による業績変動を抑え、安定的に収益を創出する経営を目指しています。規模の拡大だけでなく、収益性の維持・向上を図るため、以下の財務・業績目標を掲げています。

* 長期ビジョン2035目標:売上高1,500億円、営業利益120億円、時価総額1,000億円
* 中期経営計画2026目標(3か年平均):売上高815億円以上、営業利益57億円以上
* 2028年度財務目標:ROIC 10.0%以上、ROE 10.0%以上、PBR 1.5倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長を実現するため、最優先課題として「現場力の強化」を掲げ、これを支える技術開発、DX推進、人財育成を重点的に進めています。また、事業ポートフォリオの再構築を図り、法面工事を安定的な収益基盤として維持しつつ、成長領域である基礎・地盤改良工事の拡大や、社会インフラの更新需要を捉えたリニューアル工事を開拓することで、事業の新たな三本柱を確立する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は社員を会社の財産と位置づけ、現場で自ら課題を発見しチームで解決できる「自律的人財」の育成を目指しています。その実現に向け、「人財活用を進める組織の設置と施策推進」「エリアコミット経営を支える自律的人財の確保・育成」「人財が活躍できる現場組織の確立」の3つを基本方針としています。研修制度の拡充や人事制度改革を通じて、働きがいの向上や職場定着の促進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.0歳 18.5年 8,502,918円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 86.3%
男女賃金差異(全労働者) 66.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 58.6%


また、同社は「人的資本について」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性技術者として採用する新卒の割合(22.2%)、フルタイム労働者1人当たりの法定時間外労働および法定休日労働の合計時間数・月平均(23.1時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業への依存
同社は受注高の約8割を公共事業に依存しているため、予想を超える大幅な公共事業予算の削減が行われた場合、売上高や利益が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、民間工事や海外工事の受注拡大にも取り組むことで、特定の分野に偏らないバランスの取れた収益基盤の構築を目指しています。

(2) 資材・労務コストの上昇と技能労働者不足
建設資材や労務単価の急激な上昇、または技能労働者の不足が生じた場合、工事の採算悪化や工期遅延を招くリスクがあります。同社は工期が1年を超える大型工事の割合を抑え、コスト上昇時の交渉余地を確保しているほか、協力業者の配置調整や多能工の育成を通じて、コストや人員不足による影響の最小化に努めています。

(3) 建設現場における労働災害や事故の発生
建設工事の施工中に重大な労働災害や事故、トラブルが発生した場合、損害賠償や社会的信用の低下により業績に影響を与える可能性があります。同社では法令遵守にとどまらず、社内独自の厳しい基準で安全管理を実施しており、過去の災害事例を水平展開して再発防止を徹底するなど、安全パトロールを通じた災害防止に注力しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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