※本記事は、日特建設株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日特建設ってどんな会社?
ダム基礎工事や地盤改良、法面保護工事などの特殊土木分野に強みを持つ建設会社です。
■(1) 会社概要
1953年に北海道札幌市で八千代地下工業として設立され、1972年に現在の日特建設へ商号変更しました。1985年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。2025年3月には麻生フオームクリートを完全子会社化し、気泡コンクリート工事分野への展開も強化しています。
連結従業員数は1,196名、単体では1,003名が在籍しています。筆頭株主は、麻生グループの持株会社であるエーエヌホールディングス(持株比率57.85%)であり、実質的な親会社は福岡県飯塚市を拠点とする麻生です。第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エーエヌホールディングス | 57.85% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.41% |
| 日特建設社員持株会 | 3.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役社長は和田康夫氏です。社外取締役比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 和田康夫 | 代表取締役社長 | 1981年同社入社。事業本部長などを経て2021年社長就任。2022年より安全環境品質本部長を兼務し現職。 |
| 山田浩 | 代表取締役副社長 | 1981年同社入社。技術本部長、技術開発本部長などを歴任。2023年より副社長兼海外・技術開発管掌。2025年より現職。 |
| 上直人 | 取締役専務執行役員(安全環境品質本部長) | 1987年同社入社。九州支店長、東京支店長、事業本部長などを経て2025年より現職。 |
| 川口利一 | 取締役常務執行役員(経営戦略本部・管理本部管掌) | 1983年同社入社。経理部長、経営企画室長、経営戦略本部長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 萬克弘 | 取締役常務執行役員(管理本部担当) | 1983年北海道拓殖銀行入行。三井住友信託銀行支店長等を経て2012年同社入社。管理本部長を経て2025年より現職。 |
| 麻生巌 | 取締役 | 1997年日本長期信用銀行入行。2010年麻生代表取締役社長就任(現任)。2018年同社取締役就任より現職。 |
社外取締役は、渡邉雅之(弁護士法人三宅法律事務所パートナー)、中村克夫(陽光代表取締役会長)、岡田直子(ネットワークコミュニケーションズ代表取締役)、森清華(Career Creation代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、建設事業の単一セグメントです。
建設事業は、ダム基礎工事、地盤改良工事、法面保護工事、補修工事などの基礎工事や、土木一式工事、各種シールド工事などの土木工事、地質調査や測量を行う地質コンサルタント業務を提供しています。官公庁や民間企業が主な顧客です。
収益は、顧客との工事請負契約に基づき、工事の進捗に応じて、または工事完成引き渡し時に受け取る請負代金から成ります。運営は主に日特建設が行っており、連結子会社の緑興産、麻生フオームクリート、各地のアースエンジニアリング社なども土木工事業等を営んでいます。
また、その他の事業は、建設事業以外の事業として、建設資材等の商品販売や不動産事業などを展開しています。
収益は、建設資材の販売代金などが主な源泉です。運営は主に連結子会社の緑興産などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年3月期までは売上高700億円前後で推移していましたが、2025年3月期は減収となりました。利益面では、2023年3月期をピークに減少傾向にあり、当期は原材料価格の高騰や工事遅延の影響を受け、営業利益率も低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 680億円 | 661億円 | 729億円 | 719億円 | 672億円 |
| 経常利益 | 54億円 | 46億円 | 55億円 | 44億円 | 38億円 |
| 利益率(%) | 8.0% | 7.0% | 7.5% | 6.1% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 34億円 | 34億円 | 31億円 | 33億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高が減少したことに伴い、各利益段階でも減少が見られます。売上総利益率は微増しましたが、販管費の増加により営業利益率は低下しました。減収減益の決算となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 719億円 | 672億円 |
| 売上総利益 | 127億円 | 126億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.6% | 18.6% |
| 営業利益 | 44億円 | 37億円 |
| 営業利益率(%) | 6.1% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が35億円(構成比39%)、賞与引当金繰入額が4億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は建設事業の単一セグメントです。期首の手持ち工事不足や災害復旧工事の着工遅れ等の影響により減収となりました。その他の事業は微増収でした。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFのプラスで、投資CFおよび財務CFのマイナスをカバーしています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 44億円 | 45億円 |
| 投資CF | -23億円 | -40億円 |
| 財務CF | -20億円 | -20億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、社是として「私たちは、見えないところにこそ、誠実に技術を提供して、社会から必要とされる企業であり続ける」を掲げています。また、使命として「安全・安心な国土造りに貢献する会社」、あるべき姿として「信頼される技術力に培われた、環境・防災工事を主力とした基礎工事のエキスパート」を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、ブランドメッセージ「見えないところにこそ、私たちのプライドがある」のもと、社訓として「安全第一」「信用確立」「技術発展」を掲げています。また、価値観として「基礎工事における総合技術力と効率的な経営」を重視し、技術者としての誇りと誠実さを大切にする文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期経営計画2023(2023年度~2025年度)」において、2025年度の数値目標を掲げています。地盤改良工事や民間受注の拡大、構造物補修工事の強化などを目指しています。
* 地盤改良工事:受注高・完工高230億円(構成比30%以上)
* 民間受注:受注高230億円(構成比30%以上)
* 構造物補修工事:受注高100億円
* 営業利益:3カ年平均54億円以上
* ROE:10%以上(ROIC目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2023」では、「日特らしさ」を失わずに、働く人が「プライド」を持って事業に取り組める環境整備を進めています。重点課題として「人的資本の確保と育成」「生産性の向上」「安全衛生・品質管理の強化」「サステナビリティ経営の促進」「新分野への挑戦」の5つに取り組んでいます。
* 連結営業利益(3年間計):161億円
* EBITDA:3カ年平均61億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「日特らしさ」を失わずに働く人が「プライド」を持って事業に取り組める環境整備を目指しています。重点課題として「人的資本の確保と育成」を掲げ、DXによる業務効率化、多様な働き方の推進、職場環境・社員待遇の向上を実現し、日特らしい技術者を育成する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.5歳 | 18.2年 | 8,002,197円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 54.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公共事業への依存
同社グループは受注高の約8割を公共事業に依存しており、公共事業費の大幅な削減が行われた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、民間工事や海外工事の受注拡大に取り組んでいます。
■(2) 建設資材価格および労務単価の高騰
建設資材や労務費の急激な上昇、技能労働者の不足は、工事採算の悪化や工期の遅延を招くリスクがあります。価格交渉による影響の最小化や、多能工の養成などの対策を進めています。
■(3) 労働災害および事故の発生
工事施工において重大災害や事故が発生した場合、社会的信用の失墜や指名停止処分などにより、業績に影響を与える可能性があります。安全管理基準の徹底やパトロール強化により災害防止に努めています。
■(4) 気候変動に関するリスク
脱炭素社会への移行に伴う規制強化や炭素税の導入、気温上昇による自然災害の激甚化は、業績に影響を及ぼす可能性があります。CO2削減技術の開発や省エネ推進などで対応しています。



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