日比谷総合設備 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日比谷総合設備 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日比谷総合設備は東京証券取引所プライム市場に上場し、空調・衛生・電気設備工事を主体とする設備工事事業と、設備機器の販売・製造を展開しています。業績は堅調な需要に支えられ増収、利益面では生産性向上と採算改善により大幅な増益を達成しました。安定した財務基盤のもと持続的な成長と企業価値向上を目指しています。


※本記事は、日比谷総合設備株式会社の有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日比谷総合設備ってどんな会社?


空調・衛生・電気設備等の計画から設計、施工までを担う総合設備工事業を展開しています。

(1) 会社概要


1966年に設立され建築附帯設備の請負工事を開始し、同年に東京設備等と合併して総合設備工事業者の体制を確立しました。1977年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1995年には同第一部銘柄に指定されました。2003年にはニッケイを連結子会社化し、設備工事から機器の販売・製造までを手掛ける体制を強化しています。

現在の従業員数は連結で967名、単体で815名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は取引先で構成される日比谷総合設備取引先持株会、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.86%
日比谷総合設備取引先持株会 6.21%
光通信KK投資事業有限責任組合 5.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長社長執行役員の中北英孝氏が経営を牽引しています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
中北英孝 代表取締役社長社長執行役員 日本電信電話に入社後、NTTファシリティーズ取締役等を歴任。2022年日比谷総合設備取締役副社長を経て、2023年より現職。
芦川隆範 代表取締役副社長副社長執行役員 日本電信電話に入社後、NTTドコモ常務執行役員等を歴任。2024年日比谷総合設備専務執行役員を経て、2025年より現職。
享保裕彦 取締役常務執行役員LC営業統括本部長 日比谷総合設備に入社後、東京本店NTT本部工事部門長や執行役員中国支店長等を歴任。2025年より現職。
堀泰彰 取締役上席執行役員管理本部長兼管理本部企画部長兼ESG推進室長 日本電信電話に入社後、NTTコミュニケーションズ担当部長等を歴任。2020年日比谷総合設備上席執行役員を経て、2023年より現職。
荒井泰徳 取締役上席執行役員エンジニアリングサービス統括本部長 日比谷総合設備に入社後、東京本店都市設備本部工事部門長や上席執行役員西日本事業推進本部長等を歴任。2023年より現職。
金子昌史 取締役上席執行役員東京本店長兼技術戦略本部長兼東京本店都市設備本部長 日比谷総合設備に入社後、執行役員九州支店長や上席執行役員西日本事業推進本部長等を歴任。2025年より現職。


社外取締役は、橋本誠一(元キリンホールディングス常務執行役員)、大砂雅子(金沢工業大学産学連携室教授)、大串淳子(かなめ総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、設備工事事業、設備機器販売事業、設備機器製造事業を展開しています。

(1) 設備工事事業


空調設備、給排水衛生設備、電気設備、情報通信設備等の計画、設計、監督から施工までをトータルエンジニアリングとして手掛けています。民間企業や官公庁、特にNTTグループ向けや再開発案件、データセンター等の幅広い顧客に対して、建築附帯設備の工事サービスを提供しています。

顧客から請け負う設備工事の進捗や完成に応じた工事代金を収益源としています。これらの総合設備工事の運営は主に日比谷総合設備が担い、脱炭素社会に向けたカーボンニュートラル事業やBIMを活用した施工効率化など付加価値の高い提案を推進しています。

(2) 設備機器販売事業


設備工事事業に関連する建築設備機器や材料の販売及びメンテナンスサービスを提供しています。同社グループの設備工事部門や外部の顧客企業に対して、空調や衛生設備の構築に必要な各種機器を安定的に供給する役割を担っています。

顧客への設備機器や材料の販売代金、並びにメンテナンスサービス料を主な収益源としています。当該事業の運営は、連結子会社である日比谷通商が担当しており、設備工事事業との連携によりグループ全体の事業基盤を支えています。

(3) 設備機器製造事業


防火・排煙設備関連機器や入退室管理機器など、設備工事に関連する専用機器の製造および販売を行っています。同社グループの施工現場や外部顧客に対し、高い品質と機能を持つ設備機器を提供し、安全で快適な建築環境の実現に貢献しています。

製造した設備機器の顧客への販売代金を主な収益源としています。当該事業の運営は、連結子会社であるニッケイが担当しており、長年培われた製造ノウハウを活かして安定した製品供給体制を構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は4期前から当期にかけて着実に成長を続け、特に直近2期間では連続して増収を達成しています。経常利益も売上拡大と採算性の向上により直近で大幅に増加し、利益率も12.2%へと大きく改善しました。最終的な当期純利益も増益傾向が続いており、順調な事業成長が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 755億円 840億円 838億円 898億円 941億円
経常利益 62億円 66億円 64億円 81億円 115億円
利益率(%) 8.2% 7.9% 7.7% 9.1% 12.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 41億円 42億円 40億円 58億円 83億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も伸長し、売上総利益率は19.2%から22.4%へと大きく向上しました。営業利益は前期間から大幅に増加し、営業利益率も8.3%から11.3%へと上昇しており、原価管理の徹底や不採算工事の改善等による本業の収益力強化が鮮明に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 898億円 941億円
売上総利益 173億円 211億円
売上総利益率(%) 19.2% 22.4%
営業利益 75億円 107億円
営業利益率(%) 8.3% 11.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が31億円(構成比30.1%)、賞与引当金繰入額が17億円(同16.2%)を占めています。また、売上原価は730億円となり、売上高に対する構成比は77.6%となっています。

(3) セグメント収益


設備工事事業は豊富な繰越工事と新規受注の進捗により増収増益を牽引し、高い利益率を達成しました。設備機器販売事業は減収減益となった一方で、設備機器製造事業は堅調に推移し増収増益を確保しており、中核事業が全体の収益拡大に大きく寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
設備工事事業 803億円 863億円 67億円 101億円 11.7%
設備機器販売事業 71億円 53億円 6億円 4億円 7.9%
設備機器製造事業 24億円 25億円 1億円 1億円 5.1%
連結(合計) 898億円 941億円 75億円 107億円 11.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と投資回収によって有利子負債の返済や株主還元を進める改善型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -6億円 116億円
投資CF -18億円 14億円
財務CF -38億円 -44億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.6%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業60周年という節目を迎え、これまでの歩みと将来の持続的成長を見据えた新たな経営理念を制定しました。この経営理念は、同社グループの社会における存在意義を示す「パーパス」と、社員が共有すべき価値観および行動指針を示す「バリュー」によって構成されており、次世代に向けた事業展開の根幹として位置づけられています。

(2) 企業文化


同社グループにとって「人」は最大の財産であり、高度な技術力やサービス力、提案力もすべて「人」に起因するという価値観を持っています。性別や年齢、出身地等による差別を行わず多様性を尊重し、チャレンジする社員が報われる人事制度や風通しの良い対話重視の組織風土を構築し、全従業員が活き活きと働ける環境を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社は第62期から第64期までの3か年を対象とする「第9次中期経営計画」を策定し、中長期的な経営ビジョンとして「深化・拡大、“その先へ”」を掲げています。財務目標としては、受注高、売上高、営業利益等の持続的な成長と資本効率の向上を目指しています。

* 受注高:1,200億円
* 売上高:1,130億円
* 営業利益:125億円
* ROE:12%台

(4) 成長戦略と重点施策


持続的成長を目指す「事業成長戦略」と土台となる「経営基盤戦略」を両輪で推進します。成長領域であるデータセンターやリニューアル事業への経営資源の集中、外部パートナーとのアライアンス拡大を図ります。また、BIMやAIを活用した「オペレーションスマート戦略」により施工生産性の高度化を進め、組織力や資本効率の改善にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業環境の変化や人材不足という課題に対応するため、人的資本への投資による人材基盤の強化を重要施策に掲げています。性別や新卒・中途を問わない積極的な採用チャネルの拡大を進めるほか、OJTや専門研修を通じた能力開発、次世代リーダーの計画的な育成を推進し、多様な人材が活躍できる働きがいのある組織づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.1歳 18.4年 11,827,490円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 62.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新入社員入社後3年間の定着率(93.1%)、従業員のエンゲージメントスコア(71.6)、従業員一人あたり研修時間(51.7時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存に関するリスク


同社グループの売上高はNTTグループへの依存度が高く、同グループの建設投資が予想以上に変動・減少した場合は業績に影響が及ぶ可能性があります。この対策として、データセンターや不動産再開発など新規分野での受注活動を強化し、他顧客への展開を図っています。

(2) 事業環境の変化に関するリスク


地政学リスクや国内外の産業構造の変化により建設投資が縮小し、受注が減少するリスクがあります。これに対応するため、これまでに培ったリニューアル工事のノウハウを他分野へ展開するとともに、脱炭素社会に向けたカーボンニュートラル事業を推進しリスク分散を図っています。

(3) 新しい技術への対応に関するリスク


空調やエネルギー分野を中心とした急速な技術革新への対応が遅れた場合、市場競争力の低下を招くリスクがあります。同社は技術トレンドの情報収集やデータセンター等での冷却技術の検証、他企業とのアライアンスを通じて、新技術への対応力を積極的に高めています。

(4) 人材確保に関するリスク


少子高齢化や働き方の変化により人材不足が深刻化した場合、事業活動の支障となるリスクがあります。同社は性別や採用区分を問わない多様な人材の確保、データやAI活用による業務効率化、およびエンゲージメントの向上による働きやすい職場づくりを推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。