日比谷総合設備 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日比谷総合設備 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合設備工事会社です。空調・衛生・電気設備の計画から施工までを手掛け、NTTグループや大手ゼネコンを主要顧客としています。第60期の連結業績は、豊富な手持ち工事の進捗により売上高・経常利益ともに前期を上回り、増収増益を達成しました。


※本記事は、日比谷総合設備の有価証券報告書(第60期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日比谷総合設備ってどんな会社?


空調・衛生・電気設備工事を柱とする総合設備エンジニアリング企業で、データセンター等の高度な案件も手掛けます。

(1) 会社概要


1966年3月、建築附帯設備の請負工事を目的に設立されました。同年7月には東京設備、大恵工事を吸収合併し、総合設備工事業者としての体制を確立しています。1995年9月に東京証券取引所市場第一部へ指定されました。2010年6月にはHITエンジニアリングを子会社化するなど事業領域を拡大し、現在に至ります。

連結従業員数は975名、単体では815名です。大株主は、資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)が筆頭株主であり、次いで通信事業などを展開する光通信、第3位に日比谷総合設備取引先持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.04%
光通信 6.57%
日比谷総合設備取引先持株会 6.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長社長執行役員は中北英孝氏です。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
中北 英 孝 代表取締役社長社長執行役員 1987年4月日本電信電話入社。NTTファシリティーズ取締役などを経て2022年6月日比谷総合設備取締役副社長。2023年6月より現職。
香月 重 人 代表取締役副社長副社長執行役員 1984年4月日本電信電話公社入社。NTT都市開発常務取締役などを経て2019年6月日比谷総合設備代表取締役副社長。2022年6月より現職。
冨江 覚 司 取締役常務執行役員東京本店長兼技術戦略本部長兼東京本店NTT本部長 1982年4月日比谷総合設備入社。執行役員北海道支店長、取締役常務執行役員調達戦略本部長などを歴任。2024年6月より現職。
享保 裕 彦 取締役常務執行役員LC営業統括本部長兼東京本店都市設備本部長 1984年4月日比谷総合設備入社。執行役員中国支店長などを経て2022年6月取締役常務執行役員LC営業統括本部長兼東京本店都市設備本部長より現職。
堀 泰 彰 取締役上席執行役員管理本部長兼管理本部企画部長兼ESG推進室長 1990年4月日本電信電話入社。NTTコミュニケーションズソリューションサービス部企画部門長などを経て2022年6月日比谷総合設備取締役。2023年6月より現職。
荒 井 泰 徳 取締役上席執行役員エンジニアリングサービス統括本部長 1989年4月日比谷総合設備入社。上席執行役員西日本事業推進本部長兼関西支店長などを経て2023年6月より現職。


社外取締役は、橋本誠一(元キリンホールディングス常務執行役員)、大砂雅子(金沢工業大学産学連携室教授)、大串淳子(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業シニアパートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事事業」、「設備機器販売事業」および「設備機器製造事業」を展開しています。

**(1) 設備工事事業**
空調設備、衛生設備、電気設備などの計画、設計、監督および施工を行っています。オフィスビルやデータセンター、生産施設など幅広い建物の設備工事を請け負っており、主要な顧客は官公庁や民間企業(NTTグループや大手ゼネコン等)です。

収益は、顧客から受け取る工事請負代金が主な源泉です。工事の進捗に応じて収益を認識する契約が多くを占めます。運営は主に日比谷総合設備が行っています。

**(2) 設備機器販売事業**
空調機器や衛生機器、情報通信機器などの設備関連機器の販売およびメンテナンスを行っています。設備工事に伴う機器納入や、更新需要に対応した販売活動を展開しています。

収益は、顧客への機器販売代金およびメンテナンス料から成り立っています。運営は主に連結子会社の日比谷通商が行っています。

**(3) 設備機器製造事業**
設備工事に関連する機器の製造および販売を行っています。特定の設備ニーズに合わせた製品開発や製造を手掛けています。

収益は、顧客への製品販売代金が主な源泉です。運営は主に連結子会社のニッケイが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は731億円から898億円へと着実に増加傾向にあります。経常利益も46億円から81億円へと拡大しており、利益率も概ね向上しています。当期純利益も30億円から59億円へと伸長しており、全体として増収増益基調で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 731億円 755億円 840億円 838億円 898億円
経常利益 46億円 62億円 66億円 64億円 81億円
利益率(%) 6.3% 8.2% 7.9% 7.7% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 30億円 44億円 42億円 40億円 58億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の838億円から898億円へ増加しました。これに伴い売上総利益も149億円から173億円へ増加し、売上総利益率は17.8%から19.2%へ改善しています。営業利益も57億円から75億円へと大きく伸びており、利益率の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 838億円 898億円
売上総利益 149億円 173億円
売上総利益率(%) 17.8% 19.2%
営業利益 57億円 75億円
営業利益率(%) 6.8% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が38億円(構成比39%)、従業員給料手当が28億円(同29%)を占めています。売上原価においては、外注費や材料費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力の設備工事事業は、豊富な手持ち工事の進捗により売上・利益ともに増加し、全社業績を牽引しました。一方、設備機器販売事業と設備機器製造事業は減収減益となりました。特に設備機器製造事業は売上が大きく減少しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
設備工事事業 721億円 803億円 44億円 67億円 8.4%
設備機器販売事業 76億円 71億円 7億円 6億円 8.7%
設備機器製造事業 40億円 24億円 6億円 1億円 4.9%
連結(合計) 838億円 898億円 57億円 75億円 8.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっていますが、これは主に売上増に伴う売上債権の増加や仕入債務の減少など、運転資金の変動によるものです。投資活動、財務活動も支出超過となっており、手元資金を取り崩す形となっていますが、豊富な現金同等物を有しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 42億円 -6億円
投資CF 2億円 -18億円
財務CF -34億円 -38億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.6%で市場平均(24.2%)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「HIBIYA Vision」を掲げ、本業を通じてCSRを軸とした活動を進めることで社会的責任を果たし、ステークホルダーにとって魅力ある企業となることを使命としています。具体的には、光・水・空気と情報で建物に命を吹き込み、安全・安心・快適な環境を創造すること、建物のケア・マネージャーとしてライフサイクルをサポートすることなどをミッションとしています。

(2) 企業文化


同社は「HIBIYA Vision」のもと、たゆまぬ総合エンジニアリング力の向上によって地球環境保全に貢献すること、そして社員を大切にし、お客様・株主を大切にすることを重視しています。一人ひとりが誠実に社会と向き合い、技術力とサービス力を磨くことで、信頼されるパートナーとしての地位を確立することを目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2025年度までの「第8次中期経営計画」を推進しており、最終年度の連結財務目標として以下の数値を掲げています。
* 受注高:955億円
* 売上高:935億円
* 営業利益:78億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:60億円
* ROE:8.4%

(4) 成長戦略と重点施策


「コア事業を深める」「事業領域を拡げる」「経営基盤を高める」「ESG経営」の4つを基本方針としています。コア事業ではデータセンターソリューションやリニューアル工事の展開、事業領域の拡大ではカーボンニュートラル事業の推進に取り組みます。また、DXの推進や人的資本への投資を通じて経営基盤を強化し、持続的な成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を最大の財産と位置づけ、多様な人材の確保と育成に注力しています。性別や新卒・中途を問わず積極的に採用し、OJTや研修を通じて技術力と人間力を兼ね備えた人財を育成しています。また、働き方改革やICT活用による業務効率化を進めるとともに、ハラスメントのない安全で健康的な職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.4歳 18.5年 9,629,666円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.5%
男女賃金差異(正規) 64.2%
男女賃金差異(非正規) 62.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者に占める女性割合(48.1%)、管理職に占める中途採用者の比率(30.5%)、障がい者雇用率(2.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存に関するリスク


同社グループの売上高は、NTTグループへの依存度が高い傾向にあります。そのため、NTTグループの建設投資動向が予想以上に変動・減少した場合、同社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。これに対し、新規事業分野の開拓や他顧客への受注拡大を図っています。

(2) 資材調達に関するリスク


設備用機器・資材の需給逼迫やサプライチェーンの混乱等により、価格高騰や納入遅延が発生する可能性があります。これらは工事の採算性悪化を招き、経営成績に悪影響を及ぼす恐れがあります。同社は納期の把握、適正価格の算出、協力会社との連携強化、先行調達等により対策を講じています。

(3) 人材確保に関するリスク


少子高齢化や働き方の変化に伴い、建設業界全体で人材不足が課題となっています。必要な人材を十分に確保できない場合、事業活動に支障が生じ、経営成績等に影響を与える可能性があります。同社は積極的な採用活動、計画的な育成、業務効率化、エンゲージメント向上等により人材確保に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。