神田通信機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神田通信機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神田通信機は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、情報通信事業や照明制御事業などを展開する企業です。顧客の通信・情報インフラ構築やサポートを手掛け、DALIを用いた照明制御も提供します。直近の業績は、既存事業の市場縮小などの影響を受け、前年比で減収および経常減益の傾向となっています。


※本記事は、神田通信機株式会社の有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 神田通信機ってどんな会社?


同社は情報通信インフラの構築と照明制御システムの提供を主力とするエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


1947年に設立され、通信機器の部品製造や電気通信設備工事で事業を開始しました。1952年には日立製作所の特約店となり電話交換機等の販売を開始しています。1989年に日本証券業協会に店頭登録し、その後三菱電機との取引基本契約締結などを経て事業を拡大し、現在は情報通信事業と照明制御事業を主力としています。

従業員数は連結244名、単体208名です。筆頭株主は佐藤正氏で、第2位は佐山浄徳氏です。第3位にはUHPartners2投資事業有限責任組合無限責任組合員であるUHPartners2が名を連ねています。

氏名 持株比率
佐藤正 12.58%
佐山浄徳 9.98%
UHPartners2投資事業有限責任組合無限責任組合員 UHPartners2 7.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は神部雅人氏が務めています。社外取締役の比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
神部雅人 代表取締役社長 1984年同社入社。立川支店長、大阪支店長等を経て2006年取締役総務部長に就任。2011年代表取締役社長、2013年より社長執行役員。
小笠原雅浩 常務取締役 1990年三菱地所入社。ビル管理部副部長や三菱地所設計等を経て、2024年三菱地所関西支店副支店長。2025年より同社常務取締役。
森川幸一 常務取締役事業本部長 1993年同社入社。通信統括支店長等を経て2019年取締役。情報通信事業本部長を務め、2025年より常務取締役事業本部長。
神藤善行 取締役 2003年同社入社。情報通信事業本部システムプロデュースセンター長等を経て、2023年執行役員。2024年より取締役制御照明事業支店長。
杉岡久紀 取締役 1982年日立電子入社。日立国際電気中国支社長等を経て2015年日神電子代表取締役社長。2019年より同社取締役。


社外取締役は、土生哲也(IPディレクション代表取締役等)、佐々木邦治(元丸の内熱供給代表取締役専務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報通信事業」「照明制御事業」および「不動産賃貸事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 情報通信事業


同社および子会社の日神電子、日本電話工業が、電話交換設備や各種ネットワークシステム、情報機器等の販売、企画、提案、構築、サポートサービスを提供しています。主に官公庁や医療法人、金融機関、民間企業などが顧客です。

収益は、インフラ構築による工事請負代金や機器販売代金のほか、回線サービスやクラウドシステムなどの利用料、保守料として顧客から受け取ります。同社が主体となり、子会社とともに事業を運営しています。

(2) 照明制御事業


国際標準規格であるDALIを採用した照明制御システムの企画、提案、構築、サポートサービスを提供しています。建物設備とIT機器を接続するマルチゲートウェイも展開し、ビルの省エネや省人化を支援します。

収益は、照明制御システムの設計・施工による工事請負代金や機器の販売代金として顧客から受け取ります。同社が単独で主体となって事業を運営しています。

(3) 不動産賃貸事業


同社が所有するビルなどの不動産を有効活用し、テナントや利用者に賃貸スペースを提供しています。

収益は、不動産の賃貸による賃貸料として利用者から受け取ります。運営は同社が単独で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第87期まで増加傾向にありましたが、直近は既存のPBX市場の縮小などの影響を受け、やや減少しています。経常利益も原材料価格や人件費の高騰、先行投資の負担増などにより、直近2期間は連続して減少する傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 59.5億円 59.8億円 71.5億円 71.8億円 67.8億円
経常利益 4.4億円 5.6億円 8.0億円 7.1億円 5.2億円
利益率(%) 7.5% 9.4% 11.3% 9.9% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.4億円 3.5億円 4.7億円 4.1億円 3.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で減少しており、これに伴い売上総利益も減少しました。また、人材投資や先行投資の継続により販売費及び一般管理費が一定水準で推移しているため、営業利益および営業利益率ともに前年を下回る結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 71.8億円 67.8億円
売上総利益 22.2億円 19.5億円
売上総利益率(%) 30.9% 28.8%
営業利益 6.3億円 4.4億円
営業利益率(%) 8.7% 6.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が5.5億円(構成比36%)、役員報酬が1.3億円(同8%)を占めています。また、同社単体の完成工事原価では、材料費が17.3億円(構成比46%)、経費が16.0億円(同42%)となっています。

(3) セグメント収益


主力である情報通信事業は、クラウドサービスなどの利用料ビジネスが堅調に推移したものの、既存のPBX市場での大型案件の減少等によりわずかに減収となりました。照明制御事業は、前期にあった大型案件が完工した反動により、売上高が大きく減少しています。不動産賃貸事業は安定して推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
情報通信事業 63.5億円 62.3億円
照明制御事業 7.6億円 4.9億円
不動産賃貸事業 0.6億円 0.6億円
連結(合計) 71.8億円 67.8億円


営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4.7億円 6.6億円
投資CF -0.8億円 2.4億円
財務CF -4.2億円 -2.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会貢献」「改革・成長」「明朗・誠実・協力」の3つを経営理念として掲げています。独自のエンジニアリング力を集結し、ネットワークに繋がる機器を制御・最適化することで社会に貢献するとともに、日々の改革と前進を通じて社会の発展に寄与し、良き企業人として活動することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「顧客の事業環境や事業空間を顧客と共に創り、守り、育てる会社」という方針のもと、中長期的な信頼関係の構築を重視しています。安全と安心を提供し続ける責任感を持ち、新しい価値の創出に向けて、挑戦する姿勢を称える文化を醸成するための社内技術競技大会なども実施しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画『Change & Challenge 80th』(2024年4月~2027年3月)を推進しており、最終年度の目標として以下の数値を掲げています。

- 売上高:70億円
- 経常利益:6.1億円
- ROE(自己資本利益率):9.0%

(4) 成長戦略と重点施策


レガシー分野からクラウドサービス等の成長分野へのシフトを加速させています。「マルチゲートウェイ」を活用したスマートビルディング市場の開拓を進め、利用料ビジネスの拡大を図っています。また、AI等の先端技術を取り入れたソリューションの創出や、高度な技術者の育成に向けた人的資本への投資も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源と位置づけ、高度専門人材の確保と育成に注力しています。多様なスキルの修得を促す「リスキリング」や「2スキル2ライセンス」を推進し、組織横断的な人材配置による付加価値創出を目指しています。また、健康経営の推進など働きやすい環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.6歳 20.6年 7,316,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※育児休業取得率および男女賃金差異については、関連法令の公表義務に基づく公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、2スキル取得者(16.2%)、2ライセンス取得者(11.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主力事業の市場縮小


主力事業であるPBX市場はクラウド化などにより相対的に縮小傾向にあります。既存設備の維持や保守には継続して取り組むものの、市場の縮小が急激に加速し、契約数が大幅に減少した場合には、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新規事業・先端技術への先行投資


既存の事業構造からの転換を図るため、AIやセンシング技術などの先端技術を取り入れた新規ソリューションの開発に多額の先行投資を行っています。想定通りの市場が立ち上がらないなど計画通りに進捗しない場合、投下資金を回収できず財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) スマートビルディング市場の開拓遅延


照明制御事業の拡大を図るべく、マルチゲートウェイを活用したスマートビルディング市場の開拓を実施しています。しかし、スマートビルディングの社会的な普及や標準化が想定よりも遅れた場合、新たな事業展開や業績に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。