神田通信機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神田通信機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する情報通信システムおよび照明制御システムのエンジニアリング企業です。電話交換設備やネットワーク構築を主力とし、近年はスマートビル関連事業も展開しています。直近の業績は、売上高が72億円と増収を確保しましたが、経常利益は7億円となり減益で着地しました。


※本記事は、神田通信機株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 神田通信機ってどんな会社?


情報通信インフラの構築と照明制御システムを柱に、オフィスの快適な環境づくりを支援するエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


1947年に設立され、1952年には日立製作所の通信機特約店第1号となりました。その後、1989年に日本証券業協会へ店頭登録し、2004年にJASDAQ証券取引所へ上場を果たしました。2015年には日神電子を子会社化し、2016年には日本電話工業を子会社化するなど事業基盤を拡大しています。

連結従業員数は240名、単体では206名体制です。筆頭株主は創業者の関係者とみられる佐藤正氏で、第2位は個人株主の佐山浄徳氏、第3位は情報通信サービス大手である光通信となっています。

氏名 持株比率
佐 藤 正 12.63%
佐 山 浄 徳 10.02%
光通信 7.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は神部雅人氏が務めています。なお、社外取締役は2名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
神 部 雅 人 代表取締役社長 1984年同社入社。総務部長等を経て2011年代表取締役社長就任。2013年より社長執行役員を兼務。
森 川 幸 一 取締役事業本部長 1993年同社入社。通信統括支店長、情報通信事業本部長等を経て、2024年より現職。
神 藤 善 行 取締役 2003年同社入社。社長室長、執行役員等を経て2024年制御照明事業支店長。同年6月より現職。
杉 岡 久 紀 取締役 1982年日立電子入社。日立国際電気中国支社長等を経て、2015年日神電子代表取締役社長就任。2019年より現職。


社外取締役は、土生哲也(株式会社IPディレクション代表取締役)、佐々木邦治(元丸の内熱供給代表取締役専務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報通信事業」、「照明制御事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) 情報通信事業


日立製作所の特約店および三菱電機の代理店として、電話交換設備、各種ネットワークシステム、情報機器、ソフトウェアの販売・構築を行っています。顧客は官公庁、医療・福祉法人、金融機関、民間企業など多岐にわたります。

収益は、機器・システムの販売代金および設計・施工・保守サービス料として顧客から受領します。運営は、同社および連結子会社の日神電子、非連結子会社の日本電話工業が行っています。

(2) 照明制御事業


オフィスの照明制御システムの企画、提案、構築およびサポートサービスを展開しています。国際標準規格「DALI」等を用いた制御技術により、省エネと快適性を両立する環境を提供しています。

収益は、照明制御システムの構築・施工および関連サービス料として顧客から受領します。運営は主に同社が行っています。

(3) 不動産賃貸事業


東京都内およびその他の地域において、所有する不動産(ビルや駐車場等)を有効活用するための賃貸事業を行っています。

収益は、テナント等からの賃貸料として受領します。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 65億円 59億円 60億円 72億円 72億円
経常利益 6億円 4億円 6億円 8億円 7億円
利益率(%) 8.7% 7.5% 9.4% 11.3% 9.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 6億円 3億円 5億円 4億円


売上高は直近で72億円規模を維持しており、2024年3月期に大きく伸長した後、当期は横ばいで推移しました。利益面では、2024年3月期に高い水準を達成しましたが、当期は減益となり、利益率はやや低下しています。全体としては堅実な黒字経営を継続しています。

(2) 損益計算書

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 72億円 72億円
売上総利益 22億円 22億円
売上総利益率(%) 30.5% 30.9%
営業利益 7億円 6億円
営業利益率(%) 10.1% 8.7%


売上高は微増となりましたが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少しました。売上総利益率は30%台を維持しており、収益性は安定していますが、営業利益率は前期より低下しています。

販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が6億円(構成比35%)、賞与引当金繰入額が1億円(同6%)を占めています。人的資本への投資や企業風土改善のための費用が増加要因となっています。

(3) セグメント収益

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報通信事業 64億円 64億円 6億円 4億円 7.0%
照明制御事業 7億円 8億円 1億円 1億円 19.2%
不動産賃貸事業 1億円 1億円 0億円 0億円 50.5%
連結(合計) 72億円 72億円 7億円 6億円 8.7%


主力である情報通信事業は、レガシーPBX市場の縮小傾向などを受け売上・利益ともに減少しました。一方、照明制御事業は新築ビル案件のスマートビル化需要などを取り込み増収増益となり、高い利益率を達成しています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

健全型


本業で得た資金(営業CFプラス)の範囲内で投資(投資CFマイナス)を行い、同時に借入金の返済や配当支払い(財務CFマイナス)を進めている、財務的に安定した状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5億円 5億円
投資CF -0億円 -1億円
財務CF -3億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%でスタンダード市場平均の7.2%とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.5%で市場平均の57.5%を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会貢献」「改革・成長」「明朗・誠実・協力」の3つを経営理念として掲げています。すべての技術を結集し、顧客に満足される情報通信ネットワークソリューションを提供することで社会に貢献するとともに、日々の改革・改善を通じて社会の発展に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


「明朗・誠実・協力」を社是とし、遵法精神の下、良き企業人として活動することを重視しています。顧客インフラに対する重い責任を自覚し、中長期にわたって安全と安心を提供し続けることを使命と捉え、技術の高度化にも対応し続ける姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年3月期を最終年度とする中期経営計画『Change & Challenge 80th』を推進しています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:70億円
* 経常利益:6.1億円
* ROE(自己資本利益率):9.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「顧客の事業環境や事業空間を顧客と共に創り、守り、育てる会社」として、ITとOT(制御)技術を融合させ、ネットワークに繋がる全ての機器を制御するエンジニアリング会社を目指しています。具体的には、スマートビルディングの実現に向けた「マルチゲートウェイ」のアライアンス戦略、回線コンサルティング等の利用料ビジネスの推進、PBXのクラウド化対応による事業変革に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を競争力の源泉と捉え、「リスキリング」と「2スキル2ライセンス」を推進しています。社内技術競技大会の実施などを通じ、挑戦する企業文化の醸成を図っています。また、多様な人材が活躍できる環境整備として、待遇改善や株式報酬制度の導入、健康経営への投資などを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.2歳 21.0年 7,522,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異について、同社は公表義務に基づく公表項目として選択しておらず公表していないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、2スキル取得者(16.2%)、2ライセンス取得者(3.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動について


特定の取引先に依存せず幅広い顧客基盤を有していますが、景気動向により設備投資の抑制が進み、プロジェクトの延期や中止が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 主力事業の縮小傾向について


主力であるPBX市場はクラウド化等により縮小傾向にあります。既存設備の維持・保守等の需要は残るものの、市場縮小が加速し契約が大幅に減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 新規事業について


市場縮小への対応として「マルチゲートウェイ」等の新規事業を展開していますが、見通しと異なる状況が発生し計画通りに進まない場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。

(4) 災害等について


地震や台風等の自然災害により施設に物理的な損害が生じた場合や、取引先・流通ネットワークに事故等が発生した場合、事業計画や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。