※本記事は、日建工学の有価証券報告書(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日建工学ってどんな会社?
消波ブロックの型枠貸与とコンクリート二次製品の販売を通じ、国土の防災と環境保全を支える企業です。
■(1) 会社概要
同社は1964年に消波根固用ブロックを事業化し設立されました。1967年に土木シート事業、1974年に緑化ウォール事業を開始するなど製品群を拡充してきました。1984年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たし、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しています。
現在の従業員数は連結で132名、単体で86名です。筆頭株主は事業会社の技研ホールディングスで、第2位は個人の菊池恵理香氏、第3位は事業会社のナガワとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 技研ホールディングス | 16.78% |
| 菊池恵理香 | 6.06% |
| ナガワ | 5.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は皆川曜児氏が務めており、取締役7名のうち社外取締役は2名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 皆川曜児 | 代表取締役社長 | 1983年同社入社。管理部長や財務部長などを経て、2016年より現職。 |
| 植田剛史 | 常務取締役 | 1984年建設省入省。国土交通省等の要職を経て、2018年より現職。 |
| 相田和也 | 取締役 | 1998年同社入社。各営業所長や消波根固事業部長を経て、2025年より現職。 |
| 坂田昌也 | 取締役 | 2000年同社入社。各営業所長や製品販売事業部長を経て、2025年より現職。 |
| 西村博一 | 取締役 | 2001年同社入社。国土保全事業等の各部門長や技術部長を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、金木誠(元国土交通省流域管理研究官)、髙木大地(弁護士法人関西法律特許事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、型枠貸与事業および製品販売事業を展開しています。
■(1) 型枠貸与事業
本セグメントでは、主に消波根固ブロックを製造するための鋼製型枠の貸与および販売を行っています。顧客は各地の土木・建設業者などが中心であり、海岸や河川における防災・減災対策の工事に広く利用されています。
収益源は、顧客に貸与した鋼製型枠を利用して製作されたブロックの個数に応じた利用料や、型枠そのものの販売代金です。運営は日建工学のほか、三省水工や東洋水研、NK関西工建などの子会社が行っています。
■(2) 製品販売事業
本セグメントでは、協力工場で製造した護岸ブロックなどのコンクリート二次製品や、連結した自然石製品、土砂の吸出防止や遮水機能を持つ土木シート製品などの販売を行っています。災害復旧事業や気候変動対策に伴うインフラ整備に活用されています。
収益源は、各種製品を顧客である土木建設業者などに納入した際に受け取る販売代金です。同セグメントの運営も日建工学が中心となり、三省水工などのグループ会社とともに事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、社会基盤整備の事業量変動を受けつつも安定した売上高を維持しています。直近の決算では河川用護岸ブロック等の需要が増加したことで、増収増益の傾向を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 63億円 | 62億円 | 55億円 | 62億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 4億円 | 4億円 | 4億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 10.4% | 6.6% | 6.4% | 7.5% | 7.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 3億円 | 3億円 | 3億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が増加する中で、各利益項目も一定の水準を維持しています。グループ全体での事業運営の合理化や効率化の施策が功を奏し、営業利益も堅調に推移しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 55億円 | 62億円 |
| 売上総利益 | 17億円 | 18億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.8% | 28.7% |
| 営業利益 | 3億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 5.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が6億円(構成比42%)、法定福利及び厚生費が1億円(同10%)を占めています。また、売上原価については、当期商品仕入高が33億円(構成比92%)、商品運搬費が1億円(同3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
型枠貸与事業は災害復旧事業などの減少により減収減益となった一方、製品販売事業は河川用護岸ブロックや土木シート製品の出荷量が増加し、売上・利益ともに大幅な増益を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 型枠貸与事業 | 17億円 | 15億円 | 2億円 | 0.6億円 | 3.9% |
| 製品販売事業 | 39億円 | 47億円 | 1億円 | 3億円 | 6.3% |
| 連結(合計) | 55億円 | 62億円 | 3億円 | 4億円 | 5.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良な「健全型」に分類されます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.9億円 | 2億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -2億円 |
| 財務CF | -3億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
さまざまな自然災害に対する国土の防災と、豊かな自然環境の保全を目指しています。新技術や新工法の開発と普及に取り組み、快適な未来社会の創造に貢献していくことを同社グループの使命として実践しています。
■(2) 企業文化
創立以来一貫して培ってきた消波根固ブロック工法の技術を核としています。社会の期待に適応した製品や工法を提供し、安定した利益を生み出す企業体質への変換を進めながら、事業環境の変化とリスクに耐えうる柔軟な事業運営を進めています。
■(3) 経営計画・目標
有価証券報告書内に具体的な数値を用いた中長期の目標数値は明記されていませんが、単年度事業計画における実績との乖離を月次経営成績表などを基に定期的に確認し、行動計画の修正を行いつつ事業を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
防災・減災による国土強靭化およびブルーカーボン推進のための取り組みを通じた新たな市場開拓を事業戦略の柱としています。今後の具体的な施策として、社会資本整備の在り方を捉えた付加価値のある新事業や新製品の開発、既存事業の選択と集中によるコアビジネスの強化などを掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高度な技術開発と事業展開を牽引する最大の源泉は人材であると位置づけています。事業を牽引する専門人材の育成と、イノベーションを創出できる組織づくりを人材戦略の基本方針としており、研究開発部門における資格取得や論文発表を会社制度として支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 54.2歳 | 16.8年 | 5,363,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公共事業の事業量減少
継続する物価上昇により、執行できる公共事業の事業量が減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。同社グループでは持続的成長に向け、新製品や新工法の開発・普及を通じた新たな需要の創出に取り組んでいます。
■(2) 公共工事関連予算の執行遅延
同社グループの売上の大部分は官公庁発注の工事関連であり、発注の遅れや事業の中止などが発生した場合には業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。早期の正確な情報入手に努め、グループ内で情報を共有することでリスク低減を図っています。
■(3) 販売先の信用悪化
販売先の大部分が土木建設業であり、受注競争の激化や資材の高騰等により販売先が経営不振に陥った場合、売上債権の回収ができなくなる可能性があります。各地域の協力会社や販売店と信用情報の交換を行い、債権の早期回収につながる契約締結に努めています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。