日建工学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日建工学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、消波根固ブロックの型枠貸与およびコンクリート二次製品の販売を行う企業です。河川や海岸の防災・減災事業に関連する製品を提供しています。直近の業績は、災害復旧事業の減少等により減収となりましたが、利益率の改善等により営業利益は増益、経常利益も微増益を確保しました。


※本記事は、日建工学株式会社の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日建工学ってどんな会社?


消波根固ブロックの型枠貸与事業と、護岸ブロック等の製品販売事業を主軸とする土木関連企業です。

(1) 会社概要


同社は1964年に設立され、消波根固用ブロック「3連ブロック」の事業化を開始しました。1979年に株式を店頭公開し、1984年には東京証券取引所市場第二部に上場を果たしています。2017年には三省水工を完全子会社化し、グループ体制を強化しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は136名、単体従業員数は89名です。筆頭株主は、産業機械や土木試験機等の製造販売を行うフリージア・マクロスで、第2位は同じくフリージアグループの技研ホールディングスです。

氏名 持株比率
フリージア・マクロス 12.44%
技研ホールディングス 7.11%
菊池 恵理香 6.06%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は皆川曜児氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
皆川 曜児 代表取締役社長 1983年入社。財務経理部長、管理部長、常務取締役などを経て、2016年4月より現職。
植田 剛史 常務取締役 元国土交通省近畿地方整備局建政部部長。2017年入社。2018年6月より現職。
五十嵐敏也 取締役 1983年入社。土木シート事業部長、事業統括管理部長、東北復興事業部長などを経て、2015年6月より現職。
大門 忠志 取締役 1980年入社。関東営業部長、西日本事業部事業部長、型枠貸与事業部長などを経て、2017年6月より現職。


社外取締役は、金木誠(元国土交通省国土技術政策総合研究所)、髙木大地(弁護士法人関西法律特許事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「型枠貸与事業」および「製品販売事業」を展開しています。

(1) 型枠貸与事業


主に消波根固ブロックを製造するための鋼製型枠の貸与を行っています。顧客は主に土木建設業者であり、公共事業等で使用されるブロックの製造に必要な機材を提供しています。

収益は、顧客が貸与された鋼製型枠を使用して製作したブロックの個数に基づく賃貸料や、型枠自体の販売代金から得ています。運営は主に日建工学、三省水工、東洋水研、NK関西工建が行っています。

(2) 製品販売事業


協力工場で製造した護岸ブロック等のコンクリート二次製品、自然石製品、土木シート製品(吸出防止、洗掘防止、遮水等)の販売を行っています。災害復旧事業や河川・海岸工事などで利用されています。

収益は、これらの製品を顧客である建設会社等へ販売することによる代金から得ています。運営は主に日建工学、三省水工、東洋水研、NK関西工建が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 106億円 83億円 62億円 62億円 55億円
経常利益 13億円 9億円 4億円 4億円 4億円
利益率(%) 12.1% 10.4% 6.6% 6.4% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.5億円 6.4億円 2.5億円 2.5億円 2.8億円


売上高は2021年3月期以降、減少傾向にあります。これは公共事業量の変化や災害復旧工事の減少等が影響しています。一方、利益面では、2023年3月期以降は売上規模の縮小に伴い利益額も減少しましたが、直近の2025年3月期は減収ながらも経常利益は微増し、利益率は改善しています。

(2) 損益計算書

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 62億円 55億円
売上総利益 17億円 17億円
売上総利益率(%) 27.3% 30.8%
営業利益 2.9億円 3.4億円
営業利益率(%) 4.7% 6.2%


売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益はほぼ横ばいを維持しており、利益率が向上しています。販管費の抑制効果もあり、営業利益は増益となりました。効率的な事業運営が進められていることがうかがえます。

販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が6.1億円(構成比45%)、法定福利及び厚生費が1.4億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


型枠貸与事業は、災害復旧事業の減少等の影響を受け、売上高、利益ともに減少しました。製品販売事業も出荷量が減少し減収となりましたが、利益率は改善し、大幅な増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
型枠貸与事業 20億円 17億円 2.7億円 2.2億円 13.5%
製品販売事業 42億円 39億円 0.2億円 1.2億円 3.1%
連結(合計) 62億円 55億円 2.9億円 3.4億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6.6億円 0.9億円
投資CF -3.2億円 -0.2億円
財務CF -2.9億円 -2.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、自然災害に対する国土の防災と豊かな自然環境の保全を目指しています。新技術・新工法の開発と普及に取り組み、快適な未来社会の創造に貢献していくことを使命としています。

(2) 企業文化


社会基盤整備の進捗や気候変動といった環境変化に対応し、防災・減災に対する機能強化や強靭化に向けた社会的要求に応える姿勢を重視しています。また、サステナビリティへの取り組みとして、国土防災と環境との調和に貢献する製品・工法の提供を掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社は、単年度事業計画における実績との乖離を取締役会等で定期的に確認し、行動計画の修正を行っています。具体的な中期経営計画等の数値目標については、有価証券報告書内での詳細な記載はありません。

(4) 成長戦略と重点施策


消波根固ブロック工法の技術を核に、既存事業の収益拡大と市場占有率増大を目指しています。具体的には、大規模災害への対応を見据えた付加価値のある新事業・新製品の開発、既存事業製品の選択と集中によるコアビジネスの強化、および協力会社ネットワークの維持強化に取り組んでいます。また、海外ではアジアの港湾整備需要に対応していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


年齢、国籍、性別等を区別することなく、意欲と能力のある従業員が平等に管理職へ登用される機会やキャリアプランを整備しています。研究開発部門では博士号取得のサポート等も行っています。従業員が能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に努め、適性のある人材を育成・登用していく方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 52.9歳 15.5年 5,123,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業の事業量減少のリスク


同社グループの事業領域である公共事業において、継続する物価上昇等の影響により、執行できる事業量が減少する可能性があります。これにより業績に影響が及ぶリスクがあります。対策として、新製品・新工法の開発・普及による新たな需要創出に取り組んでいます。

(2) 公共工事関連予算の執行リスク


売上の大部分が官公庁発注の工事関連であるため、発注の遅れや事業の中止などが業績に影響を与える可能性があります。早期の情報入手に努めるとともに、グループ内で情報を共有することでリスクの低減を図っています。

(3) 販売先の信用リスク


主な販売先である土木建設業界において、受注競争の激化や資材高騰等により経営不振に陥る企業が出る可能性があります。これにより売上債権の回収ができなくなるリスクがあります。各地域の協力会社や販売店と信用情報の交換を行い、債権の早期回収につながる契約締結に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。