タカセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タカセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するタカセは、国内外で運送・保管・作業を組み合わせた総合物流事業、運送事業、流通加工事業を展開しています。直近の業績は、主要顧客の業務取扱量増加や収受料金改定の実現により、売上高が前期比で増収となり、経常利益は大幅な増益を達成するなど好調に推移しています。


※本記事は、タカセ株式会社の有価証券報告書(第110期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タカセってどんな会社?


国内外で運送・保管・作業を組み合わせた総合物流サービスを提供し、顧客の多様なニーズに応えています。

(1) 会社概要


1922年東京市芝区で海陸運送取扱業として髙瀬組を設立。1963年に髙瀬運輸、1981年にタカセへ社名変更しました。1989年に店頭売買登録銘柄として株式を公開し、2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。近年は中国や米国への海外展開や、医療機器分野等へも事業領域を拡大しています。

従業員数は連結199名、単体61名です。筆頭株主は大東港運で、同社貨物の流通加工業務を受託するなど営業取引関係を強化しています。第2位はタカセ国際奨学財団、第3位は東京中小企業投資育成で、事業会社や財団法人が上位を占める安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
大東港運 8.22%
公益財団法人タカセ国際奨学財団 7.11%
東京中小企業投資育成 6.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大宮司典夫氏が務めており、社外取締役比率は20.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
大宮司 典夫 代表取締役社長 1976年同社入社。国際本部東京営業所長、雅達貨運中山董事長兼総経理、取締役執行役員営業本部長、常務取締役を経て、2014年より現職。
笹岡 幹男 取締役副社長管理本部長 1978年富士銀行(現みずほ銀行)入行。2006年同社入社。執行役員内部監査室長、取締役執行役員管理本部長、専務取締役等を経て、2023年より現職。
赤澤 紀之 常務取締役事業推進統括兼営業本部長 1992年同社入社。タカセ物流代表取締役社長、取締役執行役員営業本部長、タカセ運輸集配システム代表取締役社長等を経て、2025年より現職。
今井 康晴 取締役執行役員物流事業本部長 1987年同社入社。物流事業本部川崎支店長などを歴任。執行役員物流事業本部長、タカセ物流代表取締役社長を経て、2019年より現職。


社外取締役は、髙田忠美(元安田生命保険札幌中央支社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、総合物流事業、運送事業、流通加工事業およびその他の事業を展開しています。

(1) 総合物流事業


国内外の顧客に向けて、貨物運送の取次を行う利用運送サービス、貨物の保管サービス、および倉庫内オペレーション等の作業サービスを組み合わせた総合的な物流サービスを提供しています。また、湾岸地区にある自社保有施設などを活用した倉庫施設の賃貸事業も展開しています。

顧客から運送費、保管費、作業費などの物流サービス対価や、倉庫の賃貸料を収受する収益モデルです。運営はタカセに加え、米国や香港、上海に拠点を置く複数の海外現地法人が担い、国内外で一貫した物流体制を構築して多岐にわたる顧客ニーズに対応しています。

(2) 運送事業


貨物自動車による実運送事業を展開し、顧客の貨物を指定された場所まで確実かつ安全に配送するサービスを提供しています。総合物流事業に対する運送分野の中核を担い、環境負荷低減に向けたグリーン経営認証の取得など、環境に配慮した運送業務にも取り組んでいます。

顧客からの運送依頼に基づき、貨物の配送が完了するまでの進捗に応じて運送運賃を収受する収益モデルです。本事業の運営は、子会社であるタカセ運輸集配システムが主に担っており、グループ全体の物流サービスの機動力を支える重要な役割を果たしています。

(3) 流通加工事業


顧客の貨物に対する検品、梱包、ラベル貼りなどの流通加工業務や、倉庫内でのオペレーション作業を提供しています。人の手を用いたきめ細やかな作業に機械およびシステムを組み合わせることで、高品質なサービスと競合他社との差別化を実現しています。

顧客から人材派遣又は業務受託による倉庫内オペレーションの作業対価を収受する収益モデルです。運営は子会社であるタカセ物流が担当しており、国内物流業務における取扱量の増加に伴い、省人化や業務効率化を通じた利益率の改善に継続して取り組んでいます。

(4) その他の事業


グループの主要な物流サービスに付随する業務として、トラックシャーシの保管場所を賃貸する事業などを展開しています。保有する資産を有効活用し、安定的な収益基盤の補完に貢献しています。

トラックシャーシの保管場所を利用する顧客から、利用期間に応じた賃貸料を収受する収益モデルです。運営は同社が主体となって行っており、湾岸地区の立地特性を活かした付随的な収益獲得を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は80億円台で安定して推移しており、底堅い事業基盤を有しています。経常利益は一時的なコスト増等の影響で変動が見られたものの、直近では収受料金の改定や倉庫の保管受託量増加により大幅に改善し、利益率も回復基調にあります。当期利益も安定した水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 87億円 89億円 82億円 83億円 85億円
経常利益 3.3億円 3.7億円 2.2億円 1.2億円 2.5億円
利益率(%) 3.8% 4.2% 2.7% 1.4% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.2億円 2.4億円 3.2億円 1.8億円 1.7億円

(2) 損益計算書


売上高は主要顧客の業務量増加等により堅調に推移し、増収となっています。売上総利益も改善しており、これは収受料金の改定や自社倉庫における保管貨物受託量の増加が寄与したためです。その結果、営業利益は前期比で大幅な増益を達成し、営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 83億円 85億円
売上総利益 10億円 11億円
売上総利益率(%) 11.7% 13.4%
営業利益 0.8億円 2.1億円
営業利益率(%) 1.0% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給与が3.9億円(構成比41.9%)、賞与引当金繰入額が0.4億円(同4.6%)を占めています。また、売上原価においては、運送費が26.6億円(構成比36.1%)、外注作業費が17.8億円(同24.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の総合物流事業は、一部顧客との収受料金改定や海外現地法人のコスト削減が進み、大幅な増益を達成しました。運送事業は業務取扱量が減少したものの、原価率の改善により黒字転換を果たしています。流通加工事業も国内物流の取扱量増加により増収となり、利益面でも改善が見られます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
総合物流事業 83億円 84億円 0.6億円 1.8億円 2.2%
運送事業 0.6億円 0.5億円 -0.0億円 0.0億円 4.1%
流通加工事業 10億円 11億円 -0.0億円 0.1億円 0.6%
その他の事業 0.3億円 0.3億円 0.1億円 0.0億円 16.3%
調整額 -12億円 -13億円 0.1億円 0.2億円 -
連結(合計) 83億円 85億円 0.8億円 2.1億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ利益を成長投資や借入金の返済に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.6億円 5.7億円
投資CF -0.9億円 -1.5億円
財務CF -4.4億円 -4.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、社是として「ADD SYSTEM(アドシステム)」を掲げています。これは、同社グループが物流システムの創造にたゆまぬ努力を続け、顧客に貢献するという意味が込められています。顧客目線を大切にしながら、革新的なサービス開発と確実な業務の実行により、顧客のみならず広く社会に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社グループは、社訓として「まごころ」を定めています。顧客やステークホルダー、社会に対してだけでなく、従業員に対しても奉仕の心を持ち、業務に当たるという姿勢を重視しています。また、企業行動指針の中で、環境問題への配慮や地域社会への貢献、人権や個性を尊重する働きやすい職場環境の整備を規範としています。

(3) 経営計画・目標


2025年度からの3年間を対象とした経営戦略では、「既存事業の収益力強化と新たな収益構造を確立する」ことをテーマに掲げています。足元の業績立て直しや事業基盤の強化、新たな事業領域の創造に取り組み、最終的には骨太の収益構造の確立を目指しています。2026年度事業計画として以下の数値を定めています。

* 売上高:88.5億円
* 営業利益:3.7億円
* 経常利益:4.2億円

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、国内・国際物流業務の規模拡大や、医療機器物流の育成に注力します。流通加工業務では人の手によるきめ細やかな作業にシステムを組み合わせ、省人化と差別化を図ります。さらに、既存サービスと医療機器物流を掛け合わせた新サービスの構築や、シナジーが見込める企業とのM&A検討を進め、骨太の収益構造の確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の成長には、高品質な物流サービスの提供とそれを支える人材の確保・育成が不可欠と考えています。人種、国籍、性別等にこだわらない多様な人材の採用を推進し、海外人材や中途採用も積極的に行っています。また、エンゲージメントサーベイを通じた課題解決や、社内外の教育制度の充実により、働きがいのある環境作りに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.2歳 18.1年 5,795,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

同社および連結子会社は常時雇用する労働者数が100人以下であり、開示義務の対象外であるため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規採用における女性の割合(100.0%)、労働者数に占める女性の割合(35.9%)、管理職に占める中途採用者の割合(22.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要取引先との契約解除や委託形態の見直し


顧客企業の経営戦略の変更により、物流業務が見直されるリスクがあります。主要な顧客であっても、業務委託形態の変更要請や、委託業者見直しのためのコンペティションで同社の提案が採用されなかった場合、契約が解除されて営業収益が大きく落ち込み、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 労働力不足と幹部人材の確保・育成


物流業界における労働人口減少による人手不足や運送事業における従業員の高齢化、さらに「2024年問題」など労働力に起因する課題が顕在化しています。事業成長や高品質なサービス提供には、先見性や実行力を備えた幹部人材の確保・育成が不可欠であり、これらが計画通りに進まない場合、事業の維持成長に影響が生じるリスクがあります。

(3) 海外事業における地政学要因や法的規制


香港、中国、米国に営業拠点を設け、国際的な一貫物流体制を構築していますが、海外事業には予期せぬリスクが内在しています。中東問題やウクライナ情勢の緊迫化といった地政学リスクのほか、進出先の法律や税制の変更、不利な政治・経済要因、人材確保の難航などが生じた場合、事業展開や業績にマイナスの影響を与える可能性があります。

(4) 環境規制の強化と気候変動への対応


環境問題への関心が高まる中、同社グループは「グリーン経営認証」の取得や温室効果ガス排出量の削減目標(前年比3%削減)を掲げるなど、環境負荷低減に取り組んでいます。しかし、今後想定を上回る厳しい環境規制が導入され、事業活動に制限が課されたり、対応コストが増加したりした場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。