タカセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タカセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する総合物流企業です。主力事業は「総合物流事業」で、国内外での運送取次、保管、倉庫内作業などを提供しています。2025年3月期の連結業績は、収受料金改定や取扱量増加により増収となりましたが、コスト増や子会社清算の影響などで経常減益となりました。


※本記事は、タカセ株式会社 の有価証券報告書(第109期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タカセってどんな会社?


創業100年以上の歴史を持つ老舗総合物流企業です。国際物流から倉庫保管、流通加工まで幅広く手掛けます。

(1) 会社概要


1922年に海陸運送取扱業・倉庫業を目的として設立され、1943年に海運貨物仲立業を開始しました。1989年に店頭売買登録銘柄として株式を公開し、2004年にはジャスダック証券取引所へ上場しました。海外展開も進めており、1994年に香港、1998年に米国、2003年に上海へ現地法人を設立し、国際物流網を構築しています。

2025年3月31日現在の連結従業員数は207名(単体65名)です。筆頭株主は大東港運で、同社はタカセの主要顧客でもあります。第2位は公益財団法人タカセ国際奨学財団、第3位は企業の成長支援を行う東京中小企業投資育成です。大株主構成からは、取引先との安定的な関係や社会貢献活動への関与がうかがえます。

氏名 持株比率
大東港運 7.93%
公益財団法人タカセ国際奨学財団 6.86%
東京中小企業投資育成 6.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大宮司 典夫氏です。取締役5名のうち、社外取締役は1名で、比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大宮司 典 夫 代表取締役社長 1976年同社入社。国際本部東京営業所長、営業本部長等を歴任。2008年常務取締役、2010年代表取締役社長に就任。2014年7月より現職。
笹 岡 幹 男 取締役副社長管理本部長 1978年富士銀行(現みずほ銀行)入行。2006年同社内部監査室長。執行役員、常務取締役、専務取締役を経て、2023年6月より現職。
赤 澤 紀 之 常務取締役事業推進統括兼営業本部長 1992年同社入社。国内事業本部長、タカセ物流代表取締役社長、株式会社タカセ運輸集配システム代表取締役社長等を歴任。2025年4月より現職。
今 井 康 晴 取締役執行役員物流事業本部長 1987年同社入社。物流事業本部長等を歴任。2019年タカセ物流代表取締役社長(現任)。2019年6月より現職。


社外取締役は、髙田 忠美(元明治安田生命保険相互会社東京事務サービスセンター長・オリジン電気監査等委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合物流事業」「運送事業」「流通加工事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 総合物流事業


国内外において、貨物運送の取次を行う利用運送サービス、貨物の保管サービス、倉庫内オペレーションなどの作業サービスを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提供しています。また、倉庫施設の賃貸事業も行っています。

利用運送、保管料、荷役作業料などが主な収益源です。運営は、国内では主にタカセ(親会社)が行い、海外ではTAKASE ADD SYSTEM, INC.(米国)、ADD SYSTEM COMPANY LIMITED(香港)、高瀬国際貨運代理(上海)有限公司などの海外子会社が担っています。

(2) 運送事業


貨物自動車を使用した実運送を行っています。具体的には、トラックによる輸配送業務を提供し、顧客の貨物を指定場所まで確実に届けるサービスを展開しています。

収益源は、荷主企業からの運送運賃です。運営は、同社の子会社である株式会社タカセ運輸集配システムが行っています。

(3) 流通加工事業


倉庫内オペレーションを専門に行う事業です。人材派遣や業務受託という形態で、物流センター内での検品、梱包、タグ付けなどの流通加工業務を提供しています。

収益源は、業務委託料や人材派遣料です。運営は、同社の子会社であるタカセ物流株式会社が行っています。

(4) その他の事業


上記報告セグメントに含まれない付随的な事業を行っています。具体的には、トラックシャーシの保管場所を賃貸する事業などが含まれます。

収益源は、賃貸料収入などです。運営は主にタカセ(親会社)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2023年3月期にかけては増収増益傾向にありましたが、直近の2024年3月期および2025年3月期は、売上収益は80億円台で推移しているものの、利益面では減少傾向が見られます。特に2025年3月期は営業収益が微増した一方で、経常利益や当期純利益は減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 75.2億円 86.5億円 89.0億円 81.9億円 83.5億円
経常利益 2.2億円 3.3億円 3.7億円 2.2億円 1.2億円
利益率(%) 2.9% 3.8% 4.2% 2.7% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.8億円 2.7億円 2.8億円 3.1億円 1.6億円

(2) 損益計算書


売上収益は増加しましたが、売上原価の増加率がそれを上回ったため、売上総利益は減少しました。販売費及び一般管理費も増加しており、結果として営業利益率は低下しました。売上高に対する利益率の低下が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 81.9億円 83.5億円
売上総利益 10.5億円 9.7億円
売上総利益率(%) 12.8% 11.7%
営業利益 1.7億円 0.8億円
営業利益率(%) 2.1% 1.0%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給与が3.3億円(構成比37.0%)、減価償却費が0.8億円(同8.9%)を占めています。売上原価においては、運送費が27億円(構成比36%)、外注作業費が18億円(同24%)と大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


主力の総合物流事業は増収となったものの、コスト増などにより減益となりました。運送事業は増収ながら赤字幅が拡大し、流通加工事業は減益で赤字となりました。全体として、売上規模の拡大は図れていますが、各セグメントともに収益性の確保に苦戦しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
総合物流事業 81.0億円 82.6億円 1.3億円 0.6億円 0.8%
運送事業 0.5億円 0.6億円 -0.0億円 -0.0億円 -6.0%
流通加工事業 0.0億円 - 0.2億円 -0.0億円 -%
その他 0.3億円 0.3億円 0.1億円 0.1億円 26.3%
調整額 - - 0.2億円 0.1億円 -%
連結(合計) 81.9億円 83.5億円 1.7億円 0.8億円 1.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* パターン判定: **健全型**
* 営業で利益を出し、その範囲内で投資を行い、借入金の返済も進めている健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6.7億円 2.6億円
投資CF -1.9億円 -0.9億円
財務CF -5.0億円 -4.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.1%で市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.2%で市場平均(48.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「ADD SYSTEM」(同社グループが物流システムの創造にたゆまぬ努力を続け、顧客に貢献すること)を社是として掲げています。顧客目線を大切にし、革新的なサービス開発と高い信頼性を目指す確実な業務実行を通じて、顧客だけでなく広く社会に貢献していくことを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、社訓である「まごころ」と社是「ADD SYSTEM」を念頭に置き、顧客目線を大切にした品質第一のサービス提供を重視しています。また、サステナビリティへの取り組みとして「タカセグループ 企業行動指針」を定め、環境問題や社会貢献、働きやすい環境整備などを推進する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な定量目標は掲げていませんが、翌連結会計年度においては単年度の事業計画達成を目指しています。2025年度(2026年3月期)の事業計画として、以下の数値を設定しています。

* 営業収益:86億円
* 営業利益:2億円
* 経常利益:2.3億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:1.8億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「既存事業の収益力強化と新たな収益構造を確立する」をテーマに掲げています。既存事業では、顧客パートナーシップ強化やアセンブリ作業への機械・システム導入による差別化と効率化、医療機器物流の拡大を進めます。また、新サービス「COLサービス」の育成やM&A、倉庫物件の取得などを通じ、新たな収益の柱の構築を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を重要な経営資源と位置づけ、性別、年齢、人種、国籍等に関わらない採用と公正な評価を行っています。将来の成長実現のため、先見性とリーダーシップを備えた多様な幹部人材の確保・育成に注力しており、社内外の教育制度の充実や働きやすい職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.7歳 17.1年 5,443,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は常時雇用する労働者数が100人以下であり、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規採用における女性の割合(100.0%)、労働者数に占める女性の割合(27.7%)、男女間の賃金格差(91.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 価格面等の競争の激化


物流業界では、最低賃金や燃料費などのコスト上昇圧力が強まる一方で、顧客からのコスト削減要求は根強く、競争が激化しています。業界再編の可能性もあり、価格競争や顧客離れが起きた場合、同社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 主要取引先との契約解除


顧客企業の戦略変更等により物流業務の見直しが行われるリスクがあります。主要顧客であっても、契約形態の変更や他社への切り替えが発生し、同社の提案が採用されなかった場合、営業収益が大きく減少し、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保や育成に関するリスク


高品質な物流サービスの提供には優秀な人材が不可欠ですが、労働人口減少や「2024年問題」など、物流業界は深刻な労働力不足に直面しています。有能な幹部人材や現場スタッフの確保・育成が計画通りに進まない場合、事業の維持成長や業績に支障をきたす恐れがあります。

(4) 海外進出に潜在するリスク


香港、中国、米国に拠点を展開していますが、地政学的リスクや法規制の変更、伝染病などの予期せぬ事象が発生する可能性があります。特に中国や香港の情勢変化、あるいはパンデミックのような社会的混乱が生じた場合、海外事業の運営が困難になり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。