※本記事は、日本基礎技術株式会社 の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本基礎技術ってどんな会社?
建設基礎技術を核に、法面保護やダム基礎、アンカー工事などを展開する専門技術者集団です。
■(1) 会社概要
1953年に日本グラウト工業として設立され、1985年に現社名へ変更しました。1988年に大証二部へ上場し、1995年には東証・大証一部へ指定替えを行いました。2009年には米国に現地法人JAFEC USA,Inc.を設立して海外進出を本格化し、2010年にはオーケーソイルを子会社化しています。
現在の従業員数は連結379名、単体337名です。筆頭株主は日本基礎技術取引先持株会、第2位は総合建設会社の日本国土開発、第3位はりそな銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本基礎技術取引先持株会 | 13.98% |
| 日本国土開発 | 5.36% |
| りそな銀行 | 4.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は中原 巖氏が務めています。なお、社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中原 巖 | 代表取締役社長 | 1981年入社。技術本部長、東京支社長などを経て、2007年より現職。 |
| 田中 邦彦 | 専務取締役執行役員 | 1983年入社。事務管理本部長、技術本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 持田 裕晋 | 取締役執行役員 | 1984年入社。東京支社長、技術本部長などを経て、2015年より現職。 |
社外取締役は、厨川 道雄(元独立行政法人産業技術総合研究所研究顧問)、岡村 裕(敷島印刷会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設工事」および「建設コンサル・地質調査等」事業を展開しています。
**(1) 建設工事**
法面保護、ダム基礎、アンカー、重機、注入工事などの特殊土木工事を行います。公共工事への依存度が高く、国や地方自治体によるインフラ整備や防災・減災対策が主な需要です。独自の技術力を活かし、地盤改良や環境保全などの分野で施工を提供しています。
収益は、官公庁や民間企業(ゼネコン等)からの工事請負代金として受け取ります。運営は主に日本基礎技術が行っており、連結子会社のオーケーソイルが都市部の地盤改良工事等を、JAFEC USA,Inc.が米国での建設工事を担当しています。
**(2) 建設コンサル・地質調査等**
建設工事に関連する地質調査や測量、設計業務、建設コンサルタント業務を行います。また、不動産賃貸事業もこの区分に含まれています。工事施工前の調査・設計段階から関与することで、技術提案力を高めています。
収益は、調査・設計業務の委託料や不動産賃貸料として受け取ります。運営は日本基礎技術のほか、関連会社の日本施設管理がダム施設管理等を、オリオン計測が計測・解析業務を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は220億円台から300億円台へと推移しており、特に最新期において大きく伸長しています。経常利益も増加傾向にあり、利益率も改善しています。2025年3月期は米国での大型案件の進捗等が寄与し、過去5期で最高の売上高と利益を記録しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 229億円 | 221億円 | 239億円 | 236億円 | 303億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 10億円 | 10億円 | 14億円 | 19億円 |
| 利益率 | 3.3% | 4.4% | 4.2% | 5.9% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 6億円 | 7億円 | 10億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で大幅に増加し、利益面でも増益となりました。米国事業の大型案件が順調に進捗したことが寄与しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 236億円 | 303億円 |
| 売上総利益 | 39億円 | 50億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.7% | 16.7% |
| 営業利益 | 10億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 4.3% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が10億円(構成比31%)、賞与引当金繰入額が2億円(同6%)を占めています。売上原価においては、外注費や材料費が主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
報告セグメントは「建設工事」のみですが、工種別の売上高を見ると、米国での大型工事を含む重機工事が大幅に増加しました。一方、アンカー工事などは減少しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 法面保護工事 | 29億円 | 33億円 |
| ダム基礎工事 | 11億円 | 5億円 |
| アンカー工事 | 32億円 | 13億円 |
| 重機工事 | 89億円 | 169億円 |
| 注入工事 | 37億円 | 39億円 |
| 維持修繕工事 | 3億円 | 6億円 |
| 環境保全工事 | 4億円 | 9億円 |
| その他土木工事 | 19億円 | 20億円 |
| 建設コンサル・地質調査その他 | 11億円 | 8億円 |
| 連結(合計) | 236億円 | 303億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、利益面で計画を上回る堅調な業績を達成しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や売上債権の減少等により資金を獲得したものの、仕入債務の減少や法人税等の支払い等により、前年同期比で減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得により、前年同期比で支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入があったものの、短期借入金の減少や自己株式の取得、配当金の支払い等により支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 4億円 |
| 投資CF | -14億円 | -19億円 |
| 財務CF | -4億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
人と環境の共生を目指し、建設基礎技術で豊かな社会創りに貢献することを理念としています。独自の技術力を最大限に発展・活用し、国土の保全や環境創りを通じて社会的存在価値を高めることを目的としています。
■(2) 企業文化
社員一人ひとりの可能性を引き出し、顧客そして社会から信頼される技術者集団を目指しています。技術の向上や新知識の習得に努めるとともに、社員の多様性を尊重し、健康で働きがいのある職場環境の実現を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
持続的に成長できる企業グループを目指し、2026年3月期(令和8年3月期)に向けた数値目標を掲げています。
* 受注高:289.5億円
* 売上高:293.3億円
* 営業利益:14.6億円
* 経常利益:16.3億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:9.8億円
■(4) 成長戦略と重点施策
技術の伝承と生産性の向上、および働き方改革の推進を重点施策としています。階層別教育の強化や新技術開発による技術伝承、社内業務・システムの刷新による業務効率化を進めています。また、米国現地法人での事業展開など、海外市場への参入も図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材確保を重要課題と捉え、中途採用者や外国人、女性など多様な人材の採用・起用を積極的に進めています。また、社員の成長を支援するための教育制度や表彰制度を整備し、ワークライフバランスに配慮した働きやすい職場環境づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.0歳 | 19.0年 | 7,946,793円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 1.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 62.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 69.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 64.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(8.6%)、女性労働者の育児休業後の復帰割合(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制に関するリスク
国内売上の約6割が公共工事であるため、建設業法や入札契約適正化法などの法的規制の影響を強く受けます。法令違反による営業停止や指名停止処分が発生した場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 公共工事依存に関するリスク
公共工事への依存度が高いため、国や地方自治体の公共投資予算の動向に業績が左右されます。公共投資の削減や競争激化により、受注高や利益が減少する可能性があります。
■(3) 技術水準維持に関するリスク
専門性の高い建設基礎工事を行うため、高度な技術力と人材の確保が不可欠です。技術者の育成や技術継承が円滑に進まない場合、施工品質の低下や競争力の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外事業リスク
米国子会社を通じて海外事業を展開しており、為替変動や現地の政治・経済情勢、法制度の変更などの影響を受けます。予期せぬ事象により海外事業の業績が悪化した場合、グループ全体の業績に影響を与える可能性があります。



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