※本記事は、日本基礎技術株式会社の有価証券報告書(第73期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本基礎技術ってどんな会社?
同社は、法面保護工事やダム基礎工事など、土木・建設の基礎技術を専門に提供する建設会社です。
■(1) 会社概要
1953年(昭和28年)設立(日本グラウト工業)。1985年(昭和60年)に新技術開発と合併し、現在の日本基礎技術に商号変更しました。2009年に米国での海外工事参入を図るため現地法人を設立し、2010年には都市部の地盤改良に強みを持つオーケーソイルを子会社化して事業領域を拡大しています。
従業員数は連結391名、単体346名です。筆頭株主は取引先で構成される日本基礎技術取引先持株会で、第2位は事業会社の日本国土開発、第3位は自社の従業員持株会となっています。特定の創業家ではなく、取引先や従業員、事業パートナーなどが主要株主として同社を支える安定した資本構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本基礎技術取引先持株会 | 14.68% |
| 日本国土開発 | 5.64% |
| 日本基礎技術従業員持株会 | 4.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長営業本部担当役員技術本部担当役員機械施工推進本部担当役員の中原巖が経営を牽引しています。社外取締役比率は0.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中原巖 | 代表取締役社長営業本部担当役員技術本部担当役員機械施工推進本部担当役員 | 1981年同社入社。重機事業本部技術部長、東京支店長等を経て2004年に常務執行役員技術本部長に就任。その後、常務取締役、東京支社長等を経て2007年に代表取締役社長に就任。2025年より現職。 |
| 田中邦彦 | 専務取締役執行役員事務管理本部長 | 1983年同社入社。事務管理本部総務部長等を経て、2013年に取締役執行役員に就任。首都圏支店長、東京支社長、社長室長等を歴任し、2021年に常務取締役執行役員に就任。2024年より現職。 |
| 持田裕晋 | 取締役執行役員 | 1984年同社入社。東北支店工事部長、技術本部統括工事部長、首都圏支店長、東京支社長を歴任。2015年に執行役員技術本部長を経て、同年取締役執行役員に就任。2017年オーケーソイル代表取締役社長に就任し現職。 |
社外取締役は、厨川道雄(元産業技術総合研究所研究顧問)、岡村裕(元りそな総合研究所代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設工事」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建設工事
土木・建設の基礎技術を活かし、法面保護工事、ダム基礎工事、アンカー工事、重機工事、注入工事などの専門工事を提供しています。主に官公庁からの公共工事や、民間企業からの設備投資・インフラ整備関連の工事を受注し、社会インフラの構築と維持保全を支えています。
収益源は、発注元である官公庁や民間企業から受け取る工事請負代金です。当事業は主に日本基礎技術が主体となって展開しているほか、子会社のオーケーソイルが都市部の地盤改良工事を、米国現法が海外でのプラント地盤改良工事を担い収益を上げています。
■(2) 建設コンサル・地質調査等
建設工事に関連する事前の地質調査やデータ解析、建設コンサルタント業務、ならびにダムなどの施設管理業務を提供しています。正確な地盤データと高度な解析技術をもとに、より安全で確実な基礎工事を実施するためのエンジニアリングサービスを展開しています。
主な収益源は、官公庁や民間企業からの調査・コンサルティング業務や施設管理業務の委託料、および不動産の賃貸収入です。主に日本基礎技術がコンサルティング等の業務を受託するほか、関連会社の日本施設管理やオリオン計測が各専門業務を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が220億円台から300億円規模へと成長傾向にありましたが、直近は大型案件の一服等により減収となっています。一方で、経常利益は継続的に増加傾向を示しており、収益性は着実に改善しています。特に利益率は4%台から7%台へと向上し、効率的な稼ぐ力が高まっていることが分かります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 221億円 | 239億円 | 236億円 | 303億円 | 274億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 10億円 | 14億円 | 19億円 | 21億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | 4.2% | 5.9% | 6.4% | 7.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 7億円 | 10億円 | 9億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益ともに減益となりました。売上総利益率はほぼ同水準を維持していますが、販管費の負担率が相対的に上昇したことで、営業利益率はやや低下しています。利益確保に向けたコストコントロールが今後のポイントとなります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 303億円 | 274億円 |
| 売上総利益 | 50億円 | 46億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.7% | 17.0% |
| 営業利益 | 19億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 5.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が9億円(構成比29%)、賞与引当金繰入額および通信交通費がそれぞれ2億円(同7%)を占めています。また、売上原価のうち、外注費が82億円(構成比51%)、経費が44億円(同28%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金に加えて、借入等の財務活動で資金を調達し、事業成長のための投資へと積極的に振り向ける「積極型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 1億円 |
| 投資CF | -19億円 | -8億円 |
| 財務CF | -3億円 | 18億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均をわずかに下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「人と環境の共生を目指し、建設基礎技術で豊かな社会創りに貢献する」ことを経営理念に掲げています。社員一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、高度な技術力をもって顧客や社会から信頼される技術者集団となることを目指し、建設基礎工事を通じて持続可能な社会インフラの整備に尽力しています。
■(2) 企業文化
同社は、高い技能と技術力、管理能力を備えた「技術者集団」としての誇りを重んじる企業文化を有しています。工事品質の保持やオリジナル工法の開発・向上を事業の要と位置づけ、技術の継承と専門技術者の育成に注力しています。また、社員が働きやすい現場環境の整備やワークライフバランスの推進にも取り組み、多様な人材が活躍できる健全な職場環境づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的に成長できる企業グループとして生き残るため、付加価値技術の早期展開による業績拡大を掲げています。中期的な経営の数値目標として、2027年3月期までに以下の達成を目指しています。
* 受注高:276億円
* 売上高:323億円
* 営業利益:18億円
* 経常利益:21億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:15億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、将来に向けた重点施策として、「高齢化対策と若年者の入職助長」および「付加価値技術の早期展開による業績拡大」を推進しています。具体的には、自動機械の開発と施工を推進して生産性と現場環境を向上させるとともに、社員直営による確実な技術・技能の継承を図ります。また、日本国内および米国市場における技術需要に対し、技術開発から現場実装までの期間を短縮することで、競争力強化とシェア拡大を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、事業継続において人材の確保が最重要課題であると認識し、多様な人材の採用・育成を推進しています。様々な職歴を持つ中途採用者や、技術系社員としての外国人材、建設業に関心を持つ女性の登用を積極的に行っています。また、新入社員から幹部社員に至るまで定期的な社内教育を実施し、技術力の向上と知識の習得をサポートするとともに、各種表彰制度を通じて社員のモチベーション向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.7歳 | 18.4年 | 7,989,013円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.3% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 69.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公共工事への高い依存度と法的規制対応
同社の国内事業は売上高の約6割を公共工事が占めているため、国や地方自治体の財政事情に伴う公共投資の動向に大きく影響を受けます。公共投資が削減された場合、過当競争による業績悪化の可能性があります。また、入札参加資格における厳格な審査や独占禁止法等の法的規制に違反した場合、営業停止等の行政処分を受け、経営に重大な影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 技術水準の維持と人材育成の課題
専門性の高い基礎工事を手がける同社にとって、工事品質の保持とオリジナル工法の技術力向上は事業の競争力に直結します。そのため、社員一人ひとりに高い技能や管理能力が求められますが、昨今の建設業界における技能労働者不足の深刻化に伴い、優秀な技術者の確保・育成が計画通りに進まない場合、技術水準の低下や業績悪化につながるリスクがあります。
■(3) 不測の事態による不採算工事の発生
工事の施工中における予期せぬ人的・物的事故や災害の発生、あるいは工事引き渡し後の手直し工事の発生により、想定外の追加費用が生じる可能性があります。また、施工段階での地盤状況の変化等による追加原価の発生により不採算工事となった場合、同社の収益を圧迫し、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 海外事業および国際情勢・為替変動の影響
同社は米国に現地法人を設立し、海外工事を展開しています。そのため、海外市場における予期せぬ為替相場の変動や、進出国の政治・経済・法制度の著しい変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、中東情勢の緊迫化や円安を背景とした資源・エネルギー価格の高騰が長期化した場合、資材価格や労務費の高止まりにより収益性が低下するリスクがあります。



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