北陸電気工事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北陸電気工事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北陸電気工事は東京証券取引所プライム市場に上場し、電気工事や管工事などの設備工事業を主力とする企業です。直近の業績は、売上高が前期比で増収となる610億円、経常利益も55億円と増益を達成しており、堅調な成長を続けています。北陸地域を地盤に社会インフラを支え、安定した事業基盤を築いています。


※本記事は、北陸電気工事株式会社の有価証券報告書(第112期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北陸電気工事ってどんな会社?


同社は北陸地方を地盤とし、電気工事や管工事などの設備工事業を主力事業として展開する企業です。

(1) 会社概要


1944年、北陸配電(現北陸電力)後援のもと電気工事業者13社が統合し設立されました。1963年に屋内管工事、1982年に水道施設工事や土木工事を開始して事業領域を広げ、1992年には東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。近年は同業他社のM&Aも積極的に行い、事業基盤の拡大を進めています。

従業員数は連結で1,354名、単体で1,153名です。筆頭株主は事業会社であり同社のその他の関係会社にあたる北陸電力で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行や投資事業組合となっています。

氏名 持株比率
北陸電力 49.38%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.95%
光通信KK投資事業有限責任組合 3.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長 社長執行役員は山崎勇志氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
水谷和久 代表取締役会長 北陸電力で総務部長や執行役員石川支店長などを経て、2020年代表取締役副社長副社長執行役員に就任。2023年より現職。
山崎勇志 代表取締役社長社長執行役員 1985年同社入社。高岡支店副支店長や総合企画部長などを経て、2021年常務取締役に就任。2023年より現職。
北克彦 専務取締役専務執行役員 1984年同社入社。富山支店長や内線工事部長などを経て、2021年常務取締役に就任。2023年より現職。
早瀬庄一郎 常務取締役常務執行役員 1986年同社入社。小松支店長や七尾支店長、営業部長などを経て、2023年より現職。
村田良昭 取締役 北陸電力で燃料部長や福井支店長などを経て、2024年同社取締役に就任。現在、北陸電力常務執行役員等を兼任。


社外取締役は、佐野みゆき(元パソナHS常務執行役員)、多賀満(元北陸コンピュータ・サービス社長)、南果(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 設備工事業


同社グループの中核を担う事業であり、電気工事、電気通信工事、管工事、水道施設工事、消防施設工事、土木工事などの幅広いインフラ設備工事の請負施工を提供しています。官公庁や一般民間企業のほか、電力供給設備に関わる電気工事については主に北陸電力グループを顧客としています。

収益は、これらの設備工事における請負金額として顧客から受け取っています。事業の運営は主に同社が行うほか、電力供給設備以外の電気工事をスカルトが、管工事を蒲原設備工業および日建が担当するなど、子会社と連携した施工体制を構築しています。

(2) その他


設備工事業を補完する事業として、不動産賃貸やクライミング施設の運営、海外でのリース事業、PFI事業など多角的なサービスを提供しています。これにより、地域社会のニーズに合わせた付加価値の創出を目指しています。

収益は、不動産の賃貸料や施設の利用料などの名目で顧客から受け取っています。運営は、不動産賃貸等をホッコー商事が、クライミング施設の運営等をBlue・Skyが、リース事業を海外関連会社が担うなど、複数の関連事業会社で展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は448億円から610億円へと順調に拡大しており、安定した成長基盤を維持しています。経常利益も一時的な減少から回復し、直近では55億円と高い水準を記録しています。利益率も上昇傾向にあり、収益力の向上が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 459億円 448億円 534億円 556億円 610億円
経常利益 33億円 25億円 36億円 46億円 55億円
利益率(%) 7.2% 5.6% 6.8% 8.3% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 17億円 24億円 33億円 38億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、これに伴い売上総利益と営業利益も拡大しています。売上総利益率は17.9%から18.4%へ、営業利益率も7.8%から8.4%へとそれぞれ改善しており、より効率的な収益確保が進んでいることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 556億円 610億円
売上総利益 100億円 112億円
売上総利益率(%) 17.9% 18.4%
営業利益 44億円 51億円
営業利益率(%) 7.8% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が29億円(構成比47%)、退職給付費用が1.1億円(同2%)を占めています。

(3) セグメント収益


設備工事業の売上高は前期比で大きく伸びており、完成工事総利益も増加しています。これは、繰越工事が順調に進捗したことや好調な受注によるものです。一方、その他の事業は売上高および利益ともに微減となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
設備工事業 534億円 589億円 100億円 112億円 19.1%
その他の事業 22億円 22億円 4億円 3億円 15.2%
連結(合計) 556億円 610億円 104億円 116億円 19.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 76億円 6億円
投資CF -34億円 -33億円
財務CF -14億円 -21億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「複雑なことはしない。正しい取引を貫き、シンプルに生きる」「明るく公平な職場で、一生懸命働き、お客さまから信用を得る」「仕事を通して社会の発展に貢献し、健康で幸せな人生を目指す」を経営理念に掲げています。総合設備企業として「電気の安定供給」や「安心・安全な設備の提供」という社会的使命を果たし、地域に貢献していくことを目指しています。

(2) 企業文化


建設業の原点である安全と品質の確保を徹底し、お客さまや地域社会からの信頼を第一に考えています。法令や社会規範を遵守しながら誠実に業務に取り組む姿勢を重視しています。また、ライフラインを守る企業集団として、防災・減災などの社会的優先度の高い需要にしっかりと対応し、地域社会とともに持続的に発展していく価値観を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画「アクションプラン2027」において、「一段高い成長路線を進み、変化に強い企業集団へ」をテーマに掲げています。創立100周年を迎える2044年度に向けた「目指すべき姿」の実現に向けて、企業価値の向上と持続的な成長に取り組んでいます。株主還元に関する指標として以下の目標を設定しています。

・DOE(株主資本配当率):3.0%

(4) 成長戦略と重点施策


安定した工事量と利益を確保するため、北陸地域でのシェア拡大や大都市圏における受注・施工体制の強化を推進しています。また、M&Aや海外をはじめとする新たな事業領域の拡大、人材への積極的な投資を重点施策としています。さらに、AIの利活用を含めたデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、業務の省力化や高度化を実現することで、付加価値の向上を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人財に積極投資⇒人財・組織力の向上⇒適正な収益を獲得⇒収益力の向上⇒人財に積極投資」という好循環の実現を方針に掲げています。年齢に関係なく実績に基づき昇格できる人事制度の改定や、会社目標に沿った個人目標の設定など、組織への貢献を適切に評価する仕組みを整備しています。また、従業員のスキルアップ支援や、多様な人材の確保にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.0歳 17.0年 6,598,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 102.7%
男女賃金差異(全労働者) 69.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 60.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 官公庁および特定取引先への依存リスク


同社の売上高において、北陸電力グループなどの特定取引先からの受注が大きな割合を占めています。公共投資や電力設備の投資が予想を上回って削減された場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 取引先の経営状態による代金回収リスク


建設業界では一契約の請負金額が大きく、工事完了後に代金を受け渡す条件が一般的です。そのため、取引先の資金繰り悪化や経営破綻により工事代金が回収できなくなるリスクが存在します。

(3) 材料価格の高騰リスク


工事材料の調達において、調達先の分散化や代替材料の選定を行っていますが、材料価格が高騰し、それを請負金額に適切に反映させることが困難な場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティインシデントの発生


不正アクセスやサイバー攻撃によって機密情報の漏洩や基幹システムの停止が発生した場合、損害賠償の発生や事業活動の停滞を招くリスクがあります。同社は専門委員会を通じてセキュリティ体制の維持・向上に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。