北陸電気工事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北陸電気工事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の北陸電力グループの総合設備企業です。電気・空調管・配電線工事等を主力とし、北陸地域を基盤に事業を展開しています。業績は、建設投資の増加や原価管理の徹底等により、売上高556億円、経常利益46億円と増収増益を達成しました。


#北陸電気工事転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社北陸電気工事 の有価証券報告書(第111期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北陸電気工事ってどんな会社?


北陸電力グループに属する総合設備企業です。北陸3県を中心に、電気、空調、配電線などの設備工事を通じて地域のインフラを支えています。

(1) 会社概要

1944年、北陸配電(現・北陸電力)の後援により北陸3県の主要電気工事業者13社が統合して設立されました。1949年に建設大臣登録を受け、1986年に大阪証券取引所市場第二部に上場。1992年には東京・大阪両証券取引所市場第一部へ上場しました。近年では2022年以降、スカルト、蒲原設備工業、日建を相次いで子会社化し、体制を強化しています。

2025年3月31日時点の連結従業員数は1,333名(単体1,150名)です。筆頭株主は親会社である北陸電力で49.99%を保有しています。第2位は投資・通信事業を行う光通信(7.04%)、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(6.22%)となっています。

氏名 持株比率
北陸電力 49.99%
光通信 7.04%
日本マスタートラスト信託銀行 6.22%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長社長執行役員は山崎勇志氏です。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山崎勇志 代表取締役社長社長執行役員 1985年同社入社。管理部長、総合企画部長、常務取締役などを経て2023年6月より現職。ホッコー商事代表取締役社長等を兼任。
水谷和久 代表取締役会長 2013年北陸電力総務部長。同社代表取締役副社長、地域共生本部長などを歴任し、2023年6月より現職。
北克彦 専務取締役専務執行役員 1984年同社入社。富山支店長、内線工事部長、常務取締役などを経て2023年6月より現職。
早瀬庄一郎 常務取締役常務執行役員 1986年同社入社。小松支店長、営業部長などを歴任し、2023年6月より現職。Blue・Sky代表取締役社長等を兼任。
村田良昭 取締役 北陸電力燃料部長、執行役員福井支店長、常務執行役員営業本部長などを経て2024年6月より現職。


社外取締役は、佐野みゆき(パソナHS常務執行役員)、多賀満(北陸コンピュータ・サービス代表取締役社長)、南果(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 設備工事業

電気工事、電気通信工事、管工事、水道施設工事、消防施設工事、土木工事などを請負施工しています。特に配電設備等の電力供給設備に関わる電気工事は、親会社である北陸電力グループから受注しています。
主な収益源は顧客からの工事請負代金です。運営は主に北陸電気工事が行い、子会社のスカルトは電力供給設備以外の電気工事、蒲原設備工業および日建は管工事を担当しています。

(2) その他の事業

不動産賃貸、クライミング施設の運営、リース事業、PFI事業などを行っています。
収益源は不動産賃貸料、施設利用料、リース料などです。運営は、ホッコー商事(不動産賃貸)、Blue・Sky(クライミング施設)、PT AWINA RIKUDENKO SOLAR ENGINEERING INDONESIA(リース)、大山ファースト(PFI)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台後半から500億円台へと順調に拡大しています。経常利益も増加傾向にあり、利益率も改善が進んでいます。特に直近では積極的なM&Aや工事進捗の順調さが寄与し、増収増益基調を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 449億円 459億円 448億円 534億円 556億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 41億円 33億円 25億円 36億円 46億円
利益率(%) 9.1% 7.2% 5.6% 6.8% 8.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 31億円 22億円 17億円 24億円 33億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も拡大しています。売上総利益率は18.6%まで向上しており、収益性が高まっています。営業利益率も前期の6.4%から7.8%へと改善しており、効率的な事業運営が行われていることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 534億円 556億円
売上総利益 84億円 100億円
売上総利益率(%) 15.7% 17.9%
営業利益 34億円 44億円
営業利益率(%) 6.4% 7.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が27億円(構成比46%)を占めています。売上原価においては、完成工事原価が434億円(構成比96%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益

設備工事業は、受注および工事進捗が順調に推移し、売上高が増加しました。その他の事業も保守業務等が好調で増収となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
設備工事業 514億円 534億円
その他の事業 20億円 22億円
連結(合計) 534億円 556億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

健全型

営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスです。本業で得た現金を、将来への投資や借入金の返済、株主還元に充当している健全な状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 23億円 76億円
投資CF -14億円 -34億円
財務CF -13億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.3%で市場平均(24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「複雑なことはしない。正しい取引を貫き、シンプルに生きる」「明るく公平な職場で、一生懸命働き、お客さまから信用を得る」「仕事を通して社会の発展に貢献し、健康で幸せな人生を目指す」を経営理念に掲げています。総合設備企業としての社会的使命を果たし、安全と高い技術力で地域に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化

同社は「北陸電工グループ中期経営方針」に基づき、変化に強い企業集団を目指しています。SDGsの達成や創立100周年に向けた「目指すべき姿」の実現を重視し、安全の確保、信頼される会社づくり、生産性と働き方の変革といった課題に取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標

同社は中期経営計画「アクションプラン2027」を策定しており、SDGs最終年となる2030年度および創立100周年を迎える2044年度に向けたバックキャスト計画を実行しています。「一段高い成長路線を進み、変化に強い企業集団へ」をテーマに、企業価値向上と持続的成長に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策

安定した工事量と利益を確保するため、北陸地域でのシェア底上げや大都市圏での受注・施工体制強化、海外事業の拡大などを推進しています。また、DXの活用による業務効率化や生産性向上、働き方改革を強力に後押しし、競争力を強化します。さらに、防災・減災などの社会的ニーズに対応し、地域の発展に貢献する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

多様な人材の確保に向け、女性、外国人、中途採用を積極的に進めています。能力開発センターでの階層別・専門分野別教育を通じてスキルアップを支援するとともに、スーパーフレックスタイムや在宅勤務制度など柔軟な働き方を推進しています。また、健康経営や育児・介護休業制度の拡充により、働きやすい環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.1歳 17.3年 5,984,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 97.4%
男女賃金差異(全労働者) 67.2%
男女賃金差異(正規) 73.6%
男女賃金差異(非正規) 59.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 官公庁、特定取引先との取引

官公庁の公共投資動向や、親会社である北陸電力グループからの受注工事量が業績に大きな影響を与えます。そのため、公共投資や電力設備投資が予想以上に削減された場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は北陸地域シェアの底上げや大都市圏での受注強化により、顧客基盤の多様化に努めています。

(2) 取引先の経営状態

建設工事は請負金額が大きく、工事完了後に代金を受け取る条件が一般的です。そのため、取引先の資金繰り悪化や経営破綻により工事代金が回収不能となるリスクがあります。同社は与信管理や情報収集を強化していますが、多額の貸倒れが発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 材料価格の変動

工事材料の価格高騰に対し、調達先の分散や代替材料の選定を行っていますが、価格上昇分を請負金額に十分に転嫁できない場合、利益率が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。