テノックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テノックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テノックスはスタンダード市場に上場する建設会社で、基礎工事に特化した事業を展開しています。独自開発した工法を強みに、建設および建設資材の販売を行っています。直近の業績は、大型杭工事の寄与や営業活動の成果により、売上高237億円、経常利益12億円と増収増益を達成しています。


※本記事は、テノックス の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テノックスってどんな会社?


同社は基礎工事分野のリーディングカンパニーとして、独自技術や工法の開発・普及に注力する建設会社です。

(1) 会社概要


1970年7月、旭化成工業の代理店として設立され、コンクリートパイルの販売・施工を開始しました。1984年には独自のテノコラム工法の特許を取得し、技術力を確立します。1991年11月に株式を店頭登録し、2004年12月にジャスダック証券取引所へ上場しました。2022年4月には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は369名、単体では215名体制です。筆頭株主は投資会社の光通信で、第2位は事業上の関係を持つ住商セメント、第3位は投資会社のUH Partners 2となっています。

氏名 持株比率
光通信 7.50%
住商セメント 6.30%
UH Partners 2 5.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長営業本部長は若尾 直氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
若尾 直 代表取締役社長営業本部長 住友商事入社後、住商セメント西日本社長やアイジー工業社長を経て、2021年に同社入社。営業本部長などを歴任し、2024年6月より現職。
堀切 節 取締役常務執行役員 管理本部長 1989年同社入社。工務部長、技術本部長、施工技術本部長、経営戦略本部長などを経て、2024年7月より現職。
高橋 勝規 取締役執行役員 社長付(特命担当) 1989年同社入社。営業第一部長、西日本営業部長、営業本部長などを歴任し、2023年12月より現職。
児玉 勝久 取締役執行役員 営業本部副本部長 1987年同社入社。西日本営業部長、経営戦略本部副本部長などを経て、2024年6月より現職。
又吉 直哉 取締役執行役員 施工本部長 1989年同社入社。設計部長、技術本部副本部長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、水井 利行(元エコ・パワー社長)、鈴木 みき(光和総合法律事務所パートナー弁護士)、久保 知一(中央大学商学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「土木建築コンサルティング全般等事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 建設事業

基礎工事に特化した事業であり、杭工事や地盤改良工事などの施工および建設資材の販売を行っています。また、基礎工事に関連する機材の賃貸も手掛けています。

工事の請負および施工は主にテノックス、テノックス技研、広島組、大三島物産が行い、機材賃貸はテノックス技研が担当しています。海外においては、TENOX ASIA COMPANY LIMITEDがベトナムで事業を展開しています。

(2) 土木建築コンサルティング全般等事業

土木や建築に関するコンサルティング全般を行うほか、工事物件の斡旋業務などを提供しています。専門的な技術力を活かし、構造設計へのソリューション提案を行っています。

この事業は主に複合技術研究所が運営しています。同社グループ内でプロジェクトや戦略を共有し、顧客への技術提案を高度化させています。

(3) その他の事業

上記セグメントに含まれない事業として、不動産の賃貸事業などを展開しています。

この事業は主にテノックスが運営しており、保有する不動産の有効活用を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間において売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は237億円まで拡大しています。利益面でも、経常利益は一時的な減少があったものの、直近では12億円へと回復・成長しており、当期利益も増加基調です。利益率は3〜5%程度で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 159億円 148億円 183億円 202億円 237億円
経常利益 3億円 5億円 7億円 6億円 12億円
利益率(%) 2.1% 3.5% 3.8% 2.8% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 4億円 4億円 4億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに大きく伸長しています。直近の営業利益率は4.7%となり、前年から改善が見られます。売上原価や販管費のコントロールが進み、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 202億円 237億円
売上総利益 28億円 36億円
売上総利益率(%) 14.0% 15.3%
営業利益 5億円 11億円
営業利益率(%) 2.6% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が10億円(構成比38%)、支払手数料が3億円(同14%)を占めています。売上原価については、大部分が工事原価等で構成されています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は、大型の杭工事が寄与し増収増益となり、利益も倍増しました。土木建築コンサルティング事業は増収ながらも減益、その他の事業は横ばいで推移しています。全体として建設事業が業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 197億円 232億円 5億円 11億円 4.8%
土木建築コンサルティング全般等事業 5億円 5億円 0.1億円 0.0億円 0.9%
その他の事業 0.2億円 0.2億円 0.1億円 0.1億円 30.3%
調整額 -0.3億円 -0.4億円 - - -
連結(合計) 202億円 237億円 5億円 11億円 4.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで得た資金の範囲内で投資と借入返済を行っており、健全な財務運営が行われています(健全型)。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1億円 30億円
投資CF -9億円 -8億円
財務CF -3億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、土木・建築構造物の基礎工事を担当することで、上部構造物を利用する全ての人々に「安全」「安心」を届けることを事業目的としています。基礎工事分野のリーディングカンパニーとして、常に新技術・工法の開発と普及に努め、企業価値の増大を図ることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「100年企業」を目指したサステナビリティ経営を推進し、社会への貢献を重視する文化を持っています。変化の激しい社会ニーズに対応するため、技術革新に積極的に取り組み、新たな価値と市場の創出を図っています。また、人材を企業の価値創造の源泉と捉え、従業員の多様性を尊重し、創造力を育む風土づくりに注力しています。

(3) 経営計画・目標


2024年度からスタートした中期経営計画「未来を拓く、新たな一歩」に基づき、2026年度に向けた数値目標を掲げています。また、資本効率を高めるためROEを重視し、株主還元の方針としてDOE(純資産配当率)の基準も設けています。

* 売上高:270億円
* 経常利益:15億円
* ROE:8.0%
* DOE:2%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「事業別戦略」「開発戦略」「環境・デジタル戦略」「経営基盤の強化」「資本効率経営の推進」の5つを重要戦略としています。具体的には、防災・減災ニーズへの対応、海外(ベトナム)事業の拡大、脱炭素技術の開発、DXによる業務効率化、および人的資本への投資などを重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材の確保と育成」「組織力の最大化」を経営の重要テーマとしています。求める人材像として、広い視野と高い専門性を持ち、自律的に課題解決できる人材を掲げています。これらを実現するため、機動的な採用活動、育成カリキュラムの実施、働きやすい環境づくり、エンゲージメント向上施策などを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 14.2年 7,606,482円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒・中途採用人数(17名)、男性社員の育児休業・育児目的休暇取得促進(取得率62.5%)、女性従業員の採用比率の向上(12%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向及び価格競争

景気変動による建設投資の減少や同業他社との競争激化、さらに建設資材価格の高騰や労務費の上昇が、工事採算の悪化を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 人材の確保と育成

事業継続には有資格者や優秀な技術者の確保が不可欠ですが、建設業界の高齢化や若年層の入職者減少の中でこれらを十分に確保・育成できない場合、事業活動の維持・拡大に支障をきたす可能性があります。

(3) 労働事故災害

屋外での重機作業を伴うため、重大な労働災害のリスクがあります。安全教育を徹底していますが、万一事故が発生した場合、人的損失や社会的信用の失墜、補償費用などにより業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。