テノックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テノックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テノックスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、土木・建築構造物の基礎工事や地盤改良工事などの建設事業を主力とする企業です。直近の業績では、大型工事の減少等により減収となったものの、契約条件の最適化や施工効率の向上などにより増益を達成するなど、堅実な事業運営と収益力の改善を推し進めています。


※本記事は、株式会社テノックスの有価証券報告書(第56期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テノックスってどんな会社?


土木・建築構造物の基礎工事や地盤改良工事に特化した建設事業を展開するリーディングカンパニーです。

(1) 会社概要


1970年に設立され、コンクリートパイルの販売と施工を開始しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2020年には広島組を、2022年には大三島物産を買収し子会社化しました。2025年にはジャパンホームシールドと資本業務提携を結び、基礎工事分野での事業拡大と体制強化を続けています。

現在の従業員数は連結で384名、単体で224名となっています。筆頭株主は投資事業組合のUH Partners 2投資事業有限責任組合で、第2位も同じく光通信KK投資事業有限責任組合、第3位には事業会社の住商セメントが名を連ねており、多様な株主構成となっています。

氏名 持株比率
UH Partners 2投資事業有限責任組合 7.47%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.40%
住商セメント 6.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は若尾直氏が務めており、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
若尾直 代表取締役社長 1983年住友商事に入社。住商セメント西日本やアイジー工業で代表取締役社長を務めた後、2021年に同社へ入社。執行役員営業本部長などを歴任し、2024年より現職。複合技術研究所の取締役社長も兼務。
高橋勝規 取締役執行役員 海外部長 1989年に同社入社。営業第一部長や西日本営業部長などを歴任。2018年に取締役へ就任し、執行役員営業本部長、社長付(特命担当)などを経て、2025年より現職。
又吉直哉 取締役執行役員 開発担当 1989年に入社し、設計部長や執行役員技術本部副本部長などを歴任。2022年に執行役員施工本部長に就任し、2024年より取締役。2025年より現職。複合技術研究所の取締役も兼務。
谷山敦之 取締役執行役員 管理本部長 1994年同社入社。管理本部総務部長や内部監査室長などを歴任。2024年に執行役員管理本部副本部長兼経理部長に就任し、2025年より現職。広島組の監査役も兼務。
佐野雅哉 取締役執行役員 企画部長 1988年三菱商事入社。海外関連会社の代表取締役副社長やMUCC商事の木材部長などを経て、2024年に同社へ入社。執行役員管理本部企画部長を務め、2025年より現職。
黒河徹 取締役執行役員 パイル事業本部長兼土木営業部長 1997年同社入社。営業本部土木営業部長や執行役員施工本部工事第一部長、施工本部副本部長などを歴任。2025年より現職。テノックス技研の取締役も兼務。


社外取締役は、水井利行氏(元コスモエコパワー代表取締役社長)、鈴木みき氏(光和総合法律事務所パートナー弁護士)、久保知一氏(中央大学商学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「土木建築コンサルティング全般等事業」および「その他の事業」を展開しています。

建設事業


土木・建築構造物の基礎工事及び地盤改良工事全般に関する事業、並びに建設機械のリース等の付随事業を展開しています。防災・減災、国土強靭化に係る構造技術提案や、多様化する建築ニーズに応じた基礎工事の施工を通じて、社会に安全と安心を提供しています。

発注者から基礎工事の請負代金や機材の賃貸料を収益として受け取ります。運営は主に同社が担い、テノックス技研、広島組、大三島物産が基礎工事に特化した建設事業を営んでいます。海外においてはTENOX ASIA COMPANY LIMITEDが事業を行っています。

土木建築コンサルティング全般等事業


土木建築コンサルティング全般に関する事業および工事物件の斡旋業務を提供しています。プロジェクトと戦略を共有し、土木・建築構造設計に対する高度なカスタマーソリューションを展開して、基礎工事に係る技術的課題の解決を支援しています。

顧客に対して設計・解析などのコンサルティング業務や物件斡旋を提供し、その対価としてコンサルティング料や手数料を収受するモデルです。本事業の運営は、主に同社の連結子会社である複合技術研究所が担当しています。

その他の事業


同社グループが保有する不動産資産の有効活用を図るための不動産賃貸事業などを展開しています。主力である建設関連事業を補完し、安定した収益基盤を形成することを目的としています。

所有する不動産物件を外部のテナント等に賃貸し、賃借人から毎月の不動産賃貸料を収益として受け取るモデルです。この事業は、同社自身が直接運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は2025年3月期まで増加傾向にありましたが、2026年3月期は大型工事の減少等により減収に転じています。一方、利益面では契約条件の最適化や施工効率の向上などにより、2024年3月期を底として順調に改善が進み、2026年3月期には経常利益および当期利益ともに過去5年間で最高益を記録し、利益率も向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 148億円 183億円 202億円 237億円 211億円
経常利益 5億円 7億円 6億円 12億円 13億円
利益率(%) 3.5% 3.8% 2.8% 4.9% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 4億円 4億円 8億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益状況を見ると、売上高が減少した一方で、売上原価の減少と工事収益の改善により売上総利益は増加し、売上総利益率も大きく向上しています。販売費及び一般管理費は人件費等の増加により拡大しましたが、結果として営業利益の増益を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 237億円 211億円
売上総利益 36億円 40億円
売上総利益率(%) 15.3% 19.0%
営業利益 11億円 13億円
営業利益率(%) 4.7% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が10.2億円(構成比38%)、支払手数料が3.7億円(同14%)、役員報酬が1.8億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の状況を見ると、主力である建設事業は大型の杭工事の減少により減収となったものの、契約条件の最適化や施工効率の向上により増益を達成しました。また、土木建築コンサルティング全般等事業は設計・計算業務の増加によって増収となり、利益面でも売上構成の変化により増益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
建設事業 232億円 205億円 11億円 13億円 6.2%
土木建築コンサルティング全般等事業 5.2億円 5.9億円 - 0.1億円 2.4%
その他の事業 0.2億円 0.2億円 0.1億円 0.1億円 34.3%
連結(合計) 237億円 211億円 11億円 13億円 6.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 30億円 14億円
投資CF -8億円 -33億円
財務CF -3億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、土木・建築構造物の基礎工事を担当し、上部構造物を利用される全ての方々に「安全」「安心」をお届けすることを事業目的として掲げています。基礎工事分野におけるリーディングカンパニーとして、常に新しい技術や工法の開発・普及に努め、企業価値を増大させることで、株主・取引先・社会の期待に応える企業を目指しています。

(2) 企業文化


従業員一人ひとりの多様性を尊重し、創造力を培うことを重視しています。夢と希望を抱き、「テノックスで働いてよかった」と実感できる企業風土の醸成を目指しています。また、広い視野と高い専門性を自主的・自律的に身につけ、常に好奇心と向上心を持ち、自ら課題の解決まで導くことのできる人材像を求め、ともに成長できる組織づくりを実践しています。

(3) 経営計画・目標


2024年度からスタートした中期経営計画「未来を拓く、新たな一歩」において、資本効率の向上が企業価値向上に資するとの考えのもと、収益性の向上と資本コストを意識した経営に注力しています。最終年度である2026年度に向けて、以下の数値目標を掲げています。

- 売上高:270億円
- 経常利益:15億円
- ROE:8.0%
- 1株当たり配当:DOE2%以上

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョンである「100年企業を目指したサステナビリティ経営の実現」に向け、社会、環境、労働、経営における事業課題に対し5つの重要戦略で挑戦しています。保有技術のブラッシュアップによる高付加価値化や、DX推進による業務効率化を図り、持続的な成長を実現します。また、将来の成長に向けた既存事業投資、成長分野投資(海外事業、環境関連、M&A)等を実施します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材の確保と育成」「組織力の最大化」を重要な経営テーマと位置づけ、①人材育成、②ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)、③エンゲージメントの向上、④心理的安全性の確保を柱とした戦略を推進しています。働きやすい環境づくりや新人事制度の運用を通じて、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.7歳 14.4年 7,472,216円


※平均年間給与は、税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.2%
男女賃金差異(正規雇用) 67.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 75.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、雇用期間延長の対象者数率(100%)、女性従業員の採用比率(25%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 工事原価の変動と採算悪化


建設資材や燃料価格の高騰、労務費の上昇、所要工期の見積りと実績の差異等により工事採算が悪化した場合、同社グループの業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。これに対し、見積り段階における原価計算の精度の向上や工事進行中の原価状況の確認、設備機器の効率的運用等により採算性向上に取り組んでいます。

(2) 施工品質不良に伴う影響


同社グループが手がける杭工事や地盤改良工事では、十分な事前調査を行っていますが、地盤は様々な土質で構成されており、予見できない事象により施工の不備が生じる可能性があります。万一、施工の品質不良に伴う工事のやり直しや損害賠償請求という事態が生じた場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材の確保と育成


建設事業においては、優秀な資格者と施工実績の良好な評価が事業継続と拡大の基礎となっています。技術の伝承や優秀な人材の採用・育成は重要な経営課題であり、今後必要な人材を継続的に確保できなかった場合、同社グループの事業活動の維持や拡大、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(4) 法的規制の抵触・変更リスク


同社グループは建設業法に基づく許可を受けており、関連法規等の遵守に努めています。万一法令違反等により許可の取消等の事態が発生した場合や、法規制の改正によって事業の継続性に問題が生じた場合、事業展開や業績、財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス委員会を設置し適切な対応体制を構築しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。