ヤマト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマトは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建築・土木、空調・衛生設備などの建設工事業を主力とする企業です。直近の業績では、大型案件の順調な進捗などにより売上高が過去最高を更新し、収益性重視の方針が寄与して営業利益も連続最高益となる増収増益を達成しました。施工の工業化を推進し成長を続けています。


※本記事は、ヤマトの有価証券報告書(第81期、自 2025年3月21日 至 2026年3月20日、2026年6月15日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ヤマトってどんな会社?


建設工事業を主力とし、設計から施工、保守までを総合的に手掛ける設備工事のリーディングカンパニーです。

(1) 会社概要


1946年7月に大和工業として群馬県前橋市に設立されました。1964年10月に東京証券取引所市場第二部に上場し、1999年9月には同市場第一部へ指定されています。2000年9月に現在のヤマトへ商号を変更しました。近年では、2018年4月にロードステーション前橋上武を設立し商業施設運営業を開始しています。

同社グループの従業員数は連結で1,161名、単体で805名です。筆頭株主は同社の従業員で構成されるヤマト社員持株会で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は金融機関である群馬銀行となっています。

氏名 持株比率
ヤマト社員持株会 6.50%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.78%
群馬銀行 4.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長執行役員最高経営責任者(CEO)は町田豊氏が務めています。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
町田豊 代表取締役社長執行役員最高経営責任者(CEO) 1975年3月同社入社。取締役、常務執行役員、専務取締役事業本部長、取締役副社長を経て、2016年6月代表取締役社長執行役員に就任。2026年3月より現職。
吉井誠 取締役副社長執行役員事業本部・グループ会社担当 1972年3月同社入社。取締役、常務執行役員、専務執行役員、事業本部長を経て、2021年3月副社長執行役員に就任。2026年3月より現職。
片沼聡 取締役専務執行役員首都圏事業部長 1987年2月同社入社。執行役員冷熱部長、取締役、常務執行役員を経て、2022年6月専務執行役員に就任。2024年6月より現職。
木村哲夫 取締役専務執行役員設計本部・技術本部・購買本部担当 1987年4月同社入社。設計部長、執行役員技術本部長、常務執行役員、専務執行役員、取締役を経て、2026年3月より現職。
佐藤邦昭 取締役専務執行役員事業本部長、兼冷熱部長 1988年4月同社入社。執行役員冷熱部長、常務執行役員、取締役、事業本部副本部長を経て、2025年4月専務執行役員に就任。2026年3月より現職。
藤井政宏 取締役常務執行役員管理本部長 1987年4月群馬銀行入行。2019年5月同社入社顧問。同年6月取締役、執行役員、管理本部長を経て、2025年4月より現職。
鳥居博恭 取締役常務執行役員エンジニアリング事業部長、兼企業連携プロジェクトリーダー 2001年5月同社入社。執行役員企画推進部長、取締役、エンジニアリング事業部長を経て、2026年3月より現職。


社外取締役は、石田哲博(元エフエム群馬代表取締役社長)、河本榮一(河本工業取締役会長)、江頭幸代(関東学院大学経営学部経営学科教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設工事業」および「商業施設運営業」を展開しています。

建設工事業


建築・土木、空調・衛生、電気・通信、水処理プラント、冷凍・冷蔵に関する工事の設計・監理および施工と、それらに関連する保守・点検業務を手掛けています。民間企業や官公庁の施設を主な対象としています。

収益源は、顧客からの工事請負代金やメンテナンス・維持管理業務の委託料です。運営は同社のほか、大和メンテナンス、埼玉ヤマト、サイエイヤマトなどの各子会社が分担して行っています。

商業施設運営業


群馬県前橋市にある「道の駅まえばし赤城」の運営業務を行い、地域住民や観光客を顧客としてサービスを提供しています。

収益源は、同施設内での物品販売や温浴施設の利用料などです。運営は同社の子会社であるロードステーション前橋上武が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は456億円から543億円へと堅調に拡大しています。経常利益は一時落ち込みが見られたものの、直近2期間で大幅に改善し、利益率も4.8%から11.3%へと上昇傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 456億円 445億円 483億円 532億円 543億円
経常利益 39億円 25億円 23億円 53億円 61億円
利益率(%) 8.6% 5.7% 4.8% 9.9% 11.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 16億円 16億円 30億円 38億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に伸長しています。売上総利益率は14.8%から16.0%に、営業利益率も9.0%から9.9%へとそれぞれ改善しており、収益力の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 532億円 543億円
売上総利益 79億円 87億円
売上総利益率(%) 14.8% 16.0%
営業利益 48億円 54億円
営業利益率(%) 9.0% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が8億円(構成比25%)、役員報酬が2億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の建設工事業が売上高の大部分を占めており、堅調な受注を背景に増収を牽引しています。商業施設運営業も小規模ながら順調に売上を伸ばしており、施設運営の安定化が進んでいることがうかがえます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設工事業 526億円 537億円
商業施設運営業 5億円 6億円
連結(合計) 532億円 543億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期の営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に分類されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 45億円 14億円
投資CF -6億円 -20億円
財務CF -12億円 -26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.2%で同じく市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、常にお客様価値を高めた製品・サービスの提供を追求し、業界最高の「技術とものづくり」の力を高め、地域社会の発展に貢献することを基本理念としています。「建設プロダクトで、未来を築く」を長期ビジョンに掲げ、建設工業化のリーディングカンパニーを目指しています。

(2) 企業文化


同社は社是として「自然と調和し、豊かな地域社会づくりに貢献する」「変化に対応し、創造と革新に挑戦する」「人間性を尊重し、活力ある人づくりの経営に徹する」ことを掲げています。社会課題に真摯に向き合い、誠心誠意の対応と創意工夫を重んじる文化が息づいています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を初年度とする3か年の中期経営計画において、最終年度の2028年度の経営目標を定めています。工業化の基盤確立と将来成長に向けた投資を実行する「投資フェーズ」として位置付けており、収益性の向上と資本効率の改善を目指しています。

* 売上高600億円
* 売上高550億円
* 営業利益48億円

(4) 成長戦略と重点施策


鉄骨加工と設備加工の自動化・ロボット化を促進する「ヤマトテクノパーク」を稼働させ、施工の工業化による生産性向上を図ります。また、ポートフォリオ戦略を通じた成長領域への資源集中や、DX推進による効率化、人的資本投資の強化を重点施策として実行します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは人材を「資本」と捉え、技術力とマネジメント力に優れた社員の育成に取り組んでいます。従業員の各職務に応じた知識・技術習得の機会を提供し、多様な人材の能力を十分に発揮させるため、女性や高齢者の活躍促進に向けた職場環境の整備とワークライフバランスの推進に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.1歳 15.5年 6,959,657円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.1%
男性育児休業取得率 70.6%
男女賃金差異(全労働者) 76.3%
男女賃金差異(正規雇用) 77.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性育児休業取得率(100%)、健康診断受診率(100%)、ストレスチェック受検率(92%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設業界の市場環境による影響


建設工事業は受注請負産業であり、民間企業による設備投資の減少や公共投資の削減が発生した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はニーズの変化をタイムリーに捉え、リニューアルやリノベーション分野へ経営資源を戦略的に投入することで安定的な受注確保に努めています。

(2) 気候変動に対する需要変化


気候変動に伴う顧客の需要変化に対する対応が遅れた場合、競争力の低下により業績に影響を与える可能性があります。これに対し、同社は省エネルギーや食品ロス削減など、顧客の環境に対する要望に合致した技術とサービスの強化に継続して取り組んでいます。

(3) 取引先の信用不安の発生


建設工事は請負金額が高額であり、工事目的物の引き渡し時に多額の代金が支払われる契約が多くなっています。そのため、代金受領前に取引先が信用不安に陥った場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。同社は客観的評価に基づいた与信管理の徹底に努めています。

(4) 資材調達価格の高騰


調達する機器や材料の価格が高騰し、それを請負金額に適切に反映させることが困難な場合、収益性が低下する可能性があります。同社は価格動向のモニタリングや集中購買、早期発注を通じた安定的な調達の確保に加え、スライド条項の合意を目指しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。