#記事タイトル:ヤマト転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社ヤマト の有価証券報告書(第80期、自 2024年3月21日 至 2025年3月20日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヤマトってどんな会社?
群馬県を地盤に、空調・衛生・水処理設備等の設計施工を行う総合設備工事会社です。道の駅運営も手掛けます。
■(1) 会社概要
1946年に給排水衛生設備等の工事を目的として大和工業が設立されました。1964年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1999年には市場第一部へ指定替えとなりました(2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行)。近年では2023年に「道の駅まえばし赤城」の運営を開始し、2025年には上毛建設を完全子会社化するなど事業拡大を進めています。
同社の連結従業員数は1,146名、単体では791名です。筆頭株主は同社の役員・従業員で構成される持株会で、第2位および第3位は、同社と取引関係のある地方銀行が名を連ねています。安定した株主構成のもと、地域に根差した経営を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ヤマト社員持株会 | 5.89% |
| 群馬銀行 | 4.92% |
| 東和銀行 | 4.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員業務執行最高責任者は町田豊氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 町田 豊 | 代表取締役社長執行役員業務執行最高責任者 | 1975年同社入社。事業本部長、取締役副社長などを経て、2016年6月より現職。サイエイヤマトなど子会社の代表取締役も兼務。 |
| 吉井 誠 | 取締役副社長執行役員事業本部長、購買部担当 | 1972年同社入社。環境事業部長、企画営業本部長などを歴任。2021年3月より現職。大塚製作所など子会社の代表取締役も兼務。 |
| 片沼 聡 | 取締役専務執行役員首都圏事業部長、兼東京支店長 | 1987年同社入社。冷熱部長、ヤマト・イズミテクノス代表取締役社長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 木村 哲夫 | 取締役専務執行役員設計本部長、兼技術本部長、兼購買部担当 | 1987年同社入社。設計部部長、技術本部長などを歴任。2023年6月より現職。 |
| 佐藤 邦昭 | 取締役専務執行役員事業本部副本部長、兼冷熱部長 | 1988年同社入社。冷熱部営業統括部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 藤井 政宏 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1987年群馬銀行入行。同行事務集中部部長等を経て2019年同社入社。2025年4月より現職。 |
| 鳥居 博恭 | 取締役執行役員エンジニアリング事業部長 | 2001年同社入社。企画推進部長などを経て、2023年3月より現職。 |
社外取締役は、石田哲博(元エフエム群馬代表取締役社長)、河本榮一(河本工業取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設工事業」および「商業施設運営業」事業を展開しています。
■(1) 建設工事業
建築・土木、空調・衛生、電気・通信、水処理プラント、冷凍・冷蔵設備に関する工事の設計・監理および施工を行っています。官公庁や民間企業を顧客とし、オフィスビル、工場、公共施設など幅広い建築物の設備工事を手掛けています。
収益は、顧客から受け取る工事請負代金が中心です。運営は、ヤマトが主体となり、連結子会社である大和メンテナンス、埼玉ヤマト、ヤマト・イズミテクノス、サイエイヤマト、スズデン、上毛建設などが、それぞれの専門分野や地域において工事、保守、点検業務などを分担して行っています。
■(2) 商業施設運営業
群馬県前橋市にある「道の駅まえばし赤城」の運営業務を行っています。地域住民や観光客を対象に、農産物や物産の販売、飲食の提供、温浴施設の運営などを行い、地域の交流拠点としての役割を担っています。
収益は、施設利用者からの商品購入代金やサービス利用料などから得ています。運営は、同社の連結子会社であるロードステーション前橋上武が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりを続けています。特に当期は売上高が500億円を突破し、利益面でも経常利益が前期比で倍増するなど、大幅な増収増益を達成しました。利益率も大きく改善しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 438億円 | 456億円 | 445億円 | 483億円 | 532億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 39億円 | 25億円 | 23億円 | 53億円 |
| 利益率(%) | 7.7% | 8.6% | 5.7% | 4.8% | 9.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 23億円 | 28億円 | 19億円 | 15億円 | 39億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益が前期から大きく伸長しました。原価管理の徹底等により利益率が向上しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、増収効果がそれを上回り、営業利益率が大幅に改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 483億円 | 532億円 |
| 売上総利益 | 46億円 | 79億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.6% | 14.8% |
| 営業利益 | 18億円 | 48億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 9.0% |
販売費及び一般管理費(31億円)のうち、従業員給料手当が7.4億円(構成比24%)、賞与引当金繰入額が1.1億円(同4%)を占めています。売上原価は453億円で、完成工事原価がその大半を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の建設工事業が好調で、売上・利益ともに全体を牽引しました。商業施設運営業も売上・利益ともに増加し、高い利益率を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設工事業 | 478億円 | 526億円 | 18億円 | 47億円 | 8.8% |
| 商業施設運営業 | 5億円 | 5億円 | 0.8億円 | 2億円 | 30.2% |
| 調整額 | -0.5億円 | -0.2億円 | -0.4億円 | -0.2億円 | - |
| 連結(合計) | 483億円 | 532億円 | 18億円 | 48億円 | 9.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で得た資金で借入金の返済や株主還元を行いつつ、投資も実施している健全型です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 39億円 | 45億円 |
| 投資CF | -6億円 | -6億円 |
| 財務CF | -11億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、常にお客様価値を高めた製品・サービスの提供を追求し、業界最高の「技術とものづくり」の力を高め、地域社会の発展に貢献することを基本理念として掲げています。創業以来、豊かな社会づくりに欠かせないエッセンシャル企業として、顧客の期待に応え続けています。
■(2) 企業文化
同社は「自然と調和し、豊かな地域社会づくりに貢献する」「変化に対応し、創造と革新に挑戦する」「人間性を尊重し、活力ある人づくりの経営に徹する」という社是を掲げています。また、創意工夫や安全第一、顧客ニーズの先取りを重視する社訓のもと、地域に必要とされる企業を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画を策定しています。2025年度(最終年度)の数値目標として以下を掲げ、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
* 連結売上高:530億円
* 連結経常利益:39億円
* 連結ROE:8.0%以上
* 連結配当性向:30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「コア事業の強化・拡大」「グリーンイノベーションの推進」「経営基盤の強化・地域貢献」の3つを成長戦略としています。独自の「カタチにする力」(見える化・工業化)の推進や、脱炭素社会実現のための技術・サービスの提供、人的資本投資やDX・ガバナンスの強化に取り組んでいます。
* 生産性向上投資:60億円
* 成長投資(企業連携・M&A・人財投資):10億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を「資本」と捉え、多様な人材が能力を発揮できる環境整備を進めています。具体的には、定年延長や人事制度改革による長く安心して働ける環境づくり、教育センターや技術講習の改革による人材育成と学び直しを推進しています。また、ダイバーシティへの取り組みを通じて、企業競争力の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.9歳 | 15.7年 | 6,509,956円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.3% |
| 男性育児休業取得率 | 81.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 65.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(99%)、ストレスチェック受検率(93%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設業界の市場環境に関わるリスク
同社の主力事業である建設工事業は受注請負産業であり、民間企業の設備投資動向や政府・地方公共団体の公共投資の動向に業績が左右される可能性があります。投資削減等が行われた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 気候変動に関わるリスク
気候変動に伴い、省エネルギーや環境負荷低減に対する市場のニーズが変化しています。こうした需要の変化への対応が遅れ、競争力が低下した場合、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 取引先の信用に関わるリスク
建設工事は請負金額が高額になる傾向があり、工事代金の回収前に取引先が信用不安に陥った場合、代金回収が困難になるリスクがあります。多額の貸倒れが発生した場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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